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第8章 生徒会選挙編
第286話「料理対決の準備 後編」
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伊衛能病院
陽芽叶: 葵波、どうだった?
未だに病院のベッドの上にいる陽芽叶は、つい先程、部屋にやって来た葵波にそう尋ねる。
葵波: 残念ながら、まだダメだそうです。
陽芽叶: …
葵波: お嬢様。ここは、もう少し我慢してください。
陽芽叶: …直談判する。
葵波: え?ちょっ、お嬢様!
机の上の携帯を手に取り、葵波の制止の声を無視して、自分の父に電話をかける。
プルルル
ピ
葵波: はぁ…
陽芽叶: もしもし、お父さん?
紫音 T: おぉ、陽芽叶。どうしたんだい?
陽芽叶: あのさ、今日とは言わないから、日曜日までに退院しても良いよね?
紫音 T: ん~~護衛にも伝えたと思うんだけど。
陽芽叶: 葵波から、ちゃんと聞きはしたけど、納得いかない。
紫音 T: 納得いかないって言われてもな~
陽芽叶: じゃあ、怪我もほぼ全快してる私を、まだここに入院させている理由は?
紫音 T: 本当にもう怪我は治ったの?
陽芽叶: 私の言葉を疑うなら、お医者さんの診断を電話で直接聞く?
紫音 T: …分かった。陽芽叶の言葉は信じるよ。それで、未だに陽芽叶を入院させている理由だったね。
陽芽叶: 私もお父さんの言い分は分かってるけど、もう一回聞きたい。
紫音 T: 陽芽叶を伊衛能病院に入院させている理由は、伊衛能病院は防衛団が重点的に守っている施設であり、そこの中でも、今、陽芽叶がいる地下は、防衛団の最優先護衛ポイントの1つだからだ。
陽芽叶: うん。
紫音 T: 陽芽叶には、アンチの動きが落ち着くまで、そこに避難しておいてほしいんだよ。
陽芽叶: …じゃあさ、それっていつまで?
紫音 T: それは……景信の方から、完全に問題なしって言われるまで…
陽芽叶: 完全に問題なしって、アンチがいなくなんないと、出ない言葉じゃん。特に、守里のお父さんは発言も慎重に選ぶんだから。
紫音 T: …
陽芽叶: ってか、アンチの動きが落ち着くまでって、こんな感じで閉じ込められるんなら、僕が能高に通い始めた意味がないじゃん!!せっかく、みんなと仲良くなれたのに……また1人になるの?!
感情的になった陽芽叶は、携帯の向こうにいる紫音に、そう訴えかける。
葵波: お嬢様、落ち着いてください。
陽芽叶: ………ごめん、葵波。お父さんも。
紫音 T: いや……そうだな。陽芽叶の言う通りだ。
陽芽叶: それじゃあ…
紫音 T: 景信に言っておく。
陽芽叶: ありがとう!お父さん。
紫音 T: ただ、今の状況を完全に把握するために、少しだけ時間をくれないかい?週末までには終わらせるから。
陽芽叶: 分かった。
紫音 T: 笑、また陽芽叶と会えるのを、楽しみにしとくよ。
陽芽叶: うん。あ、その時は、前に言ってた通り…
紫音 T: あぁ。もう一度、一緒に考えてみよう。
陽芽叶: よろしく!
紫音 T: じゃ、またね。
陽芽叶: またね。
ピ
電話を切り、陽芽叶は笑顔で、葵波の方を見る。
陽芽叶: やったよ、葵波。週末までには退院できるって。
葵波: 良かったですね、お嬢様。守里に手料理を振る舞えますよ笑
陽芽叶: 本格的に何を作るか考えないと。
葵波: ところで、お嬢様は料理ができるんでしたっけ?
陽芽叶: う~ん、少しはやったことあるってぐらい。
葵波: ……料理人に頼んどきましょうか?
陽芽叶: いや…
葵波: 少なくとも飛香は、かなり料理ができますよ。
陽芽叶: ……お願い。
葵波: 笑、かしこまりました。お嬢様のご都合の良い時に、すぐに動けるように準備させておきます。
陽芽叶: よろしく、って言っておいて。
葵波: はい。
陽芽叶: ふぅ…料理対決もだけど、やっと学校に行けるよ。
葵波: 今は、生徒会選挙と、それによる新生徒会の始動に向けて、学校全体が動いてるって感じです。
陽芽叶: うん。守里から聞いてる。
葵波: それこそ、守里はものすごく忙しそうです。朝も昼も放課後も、空いている時はずっと生徒会室にいるみたいですから。
陽芽叶: なんかさ、それだけ守里が優秀で頼られてるってことは、嬉しいことなんだけど、その分、守里と一緒にいられる時間が少なくなるから、ちょっと複雑な気分なんだよね。
葵波: なるほど……でも、この期間さえ乗り越えれば、しばらく守里の出番はないでしょうし、お嬢様との時間はたくさん作れると思いますよ。
陽芽叶: え~フラグっぽくない?それ笑
葵波: おっと笑…すみません。
陽芽叶: 笑、よし、まずは日曜日の料理対決に向けて、頑張って行くぞ~
◇◇◇
梅澤の家
ガチャ
美月: お邪魔しま~す。
林原: あ、美月先輩、こんにちは~
扉を開けて、部屋の中に入ってきた美月を、林原が出迎える。
美月: 笑、やっぱり今日も、瑠奈ちゃん来てたんだ。
林原: そりゃもちろんですよ~
美月: ってことは、美結ちゃんもいる?
林原: はい!奥で梅澤先輩と話していると思います。
美月: そっか笑
林原: では、どうぞ~
と、林原が美月を中の方に案内しようとすると…
ペシッ
林原: あイタッ!
美月: そんなペシっと叩かないの、香蓮。
いつの間にか、真後ろに立っていた香蓮が、林原の頭を軽く叩いた。
梅澤: ったく。自分もお邪魔してる身分のくせして。
林原: もう、痛いですって~
梅澤: たったこれぐらいで痛いって言うんなら、鍛え方がまだ足りねぇな。愛衣さんに、もっと厳しくやってもらうよう頼んどくか笑
林原: ゲッ……ど、どうかそれだけは…
梅澤: 笑、私が言わなくても、いずれ、もっとキツくなるぞ。
林原: 今すぐだと、話が違うってことですよ!まだ心の準備ができてないんです!
梅澤: はいはい笑
林原: はっ!なんかその顔は、よからぬ事を企んでるような気がする!ヤバい!美結~
自身が感じた危機を相棒に知らせようと、林原は玄関からリビングにいる松高の元へと走っていった。
美月: いや~元気だね~
梅澤: うるせぇだけだよ。
美月: じゃ、改めて、お邪魔しま~す。
梅澤: …今日も随分と買ってきたな。見た感じお菓子も多いし。
美月: 料理の練習で使う分と、香蓮が使う分と…まぁ、あとは可愛い後輩の分。
梅澤: はぁ……毎度、自分が使う分だけで良いっつってんのに。
美月: そんなわけにはいかないよ。料理を教えてもらうお返しなんだから。
梅澤: ……友達なんだから、そんなのいらねぇよボソッ
面と向かって言うのを避けるように、振り返りながらそう呟く。
美月: ん?今なんか言った?
梅澤: //な、なんも言ってねぇよ!さっさと上がれ!
美月: 笑、はーい。
そうして、美月はリビングに入る。
松高: 美月先輩、こんにちは。
美月: お、美結ちゃん。こんにちは。
松高: それで……訓練を厳しくするように、愛衣先輩に頼むって、本当ですか?梅澤先輩。
梅澤: …じゃあ、美結はどっちが良い?
松高: 私としては、早く強くなりたいので、訓練をより厳しいものにしてもらった方が良いですが……今すぐにはしてもらいたくないです。心の準備がまだなので。
美月: ブフッ笑
真剣な表情の松高の言葉に、美月は思わず吹き出してしまう。
松高: え?
梅澤: 瑠奈と全く同じ答えかよ笑
美月: ほんとに息ぴったりだね笑
松高: …マジですか…チラッ
林原: それで、本気なんですか?冗談なんですか?
梅澤: フッ笑、さぁ、どうかな?美月、行こう。
林原: え、秘密ですか?教えてくださいよ!
梅澤: 敵の嘘を見抜く力も、ある意味、戦いに必要な力だぞ。
松高: お、名言かも……なぜそう思われるのか、聞かせてください!
林原: 聞かせてください!
キッチンに向かう足を、2人に止められた梅澤は、仕方ないという表情で、話し始める。
梅澤: ……嘘を見抜く力ってのは、要するに、相手の機微を読み取る力であり、それがあるってことは、それだけ相手を観察して、微小な変化を捉えているってことだ。じゃあ、そんな力があったら、戦いの中でどう使える?
林原: う~ん…
松高: …敵の次の動きを予測できる…ですか?相手を観察して、視線だったり、体のどこに力が入っているかの変化を捉えられたら、相手の次の動きを予測できるはず…
梅澤: ま、そうだな。美結の言う通りだ。
松高: やった!
林原: くぅ…
梅澤: ただ、その変化を捉えられたところで、次の動きを予測するには、また別の力が必要だが。
林原: な、なら、その別の力というのは…
梅澤: 笑、それは先輩方に聞け。私から教えるのは、ここまでだ。
林原: え~
松高: いえ、十分過ぎるぐらいです。ありがとうございます!(さすが梅澤先輩、カッコいい!!)
梅澤: ……で、お前はなんでニヤニヤしてるんだ?美月。
隣に立つ美月の方を見ながら、梅澤は言う。
美月: ん?別にそんなことないけどニヤニヤ
梅澤: めちゃくちゃしてんぞ。
美月: 笑、なんか香蓮が後輩に教えを説いてて、成長を感じちゃってただけ。
梅澤: …バカにしてんな。
美月: んもう~そんなことないって~
梅澤: あ、ちなみにだが、コイツの嘘を見抜く力はピカイチだぞ。
林原: そ、そうなんですか?!美月先輩!
松高: コツを教えてください!
美月: いやいや。香蓮が適当に言ってるだけで、別に私に嘘を見抜く力なんてないよ笑
梅澤: 全く、どの口が言ってんだか。2人も、コイツの前で嘘をついても、すぐにバレるからな。気をつけろ。
林原: うわぁ……この嘘が蔓延る社会では、無敵に近いですね。
松高: やはり、梅澤先輩の大親友なだけある…
美月: 笑、さ、そろそろ料理の練習に付き合ってよ、香蓮。
梅澤: それもそうだな。よし、お前ら。今日も試作をたくさん食べてもらうからな。腹空かせてとけよ。
林原: はい!了解です!
松高: 任せてください。
美月: ……あ、この流れで出すものじゃないけど、これ。2人用のお菓子だから、待ってる間に食べて良いよ。
梅澤: お前なぁ…笑
林原: ありがとうございます!食べさせていただきます!
松高: 安心してください、梅澤先輩。私達は先輩方の手料理なら、お腹いっぱいでも限界を超えて食べれますから。
林原: 美結の言う通り、プルスウルトラ行けます!
梅澤: 笑、そうかよ。
美月: じゃ、よろしく~
こうして、美月は梅澤に見てもらいながら、守里のための料理を練習するのだった。
to be continued
陽芽叶: 葵波、どうだった?
未だに病院のベッドの上にいる陽芽叶は、つい先程、部屋にやって来た葵波にそう尋ねる。
葵波: 残念ながら、まだダメだそうです。
陽芽叶: …
葵波: お嬢様。ここは、もう少し我慢してください。
陽芽叶: …直談判する。
葵波: え?ちょっ、お嬢様!
机の上の携帯を手に取り、葵波の制止の声を無視して、自分の父に電話をかける。
プルルル
ピ
葵波: はぁ…
陽芽叶: もしもし、お父さん?
紫音 T: おぉ、陽芽叶。どうしたんだい?
陽芽叶: あのさ、今日とは言わないから、日曜日までに退院しても良いよね?
紫音 T: ん~~護衛にも伝えたと思うんだけど。
陽芽叶: 葵波から、ちゃんと聞きはしたけど、納得いかない。
紫音 T: 納得いかないって言われてもな~
陽芽叶: じゃあ、怪我もほぼ全快してる私を、まだここに入院させている理由は?
紫音 T: 本当にもう怪我は治ったの?
陽芽叶: 私の言葉を疑うなら、お医者さんの診断を電話で直接聞く?
紫音 T: …分かった。陽芽叶の言葉は信じるよ。それで、未だに陽芽叶を入院させている理由だったね。
陽芽叶: 私もお父さんの言い分は分かってるけど、もう一回聞きたい。
紫音 T: 陽芽叶を伊衛能病院に入院させている理由は、伊衛能病院は防衛団が重点的に守っている施設であり、そこの中でも、今、陽芽叶がいる地下は、防衛団の最優先護衛ポイントの1つだからだ。
陽芽叶: うん。
紫音 T: 陽芽叶には、アンチの動きが落ち着くまで、そこに避難しておいてほしいんだよ。
陽芽叶: …じゃあさ、それっていつまで?
紫音 T: それは……景信の方から、完全に問題なしって言われるまで…
陽芽叶: 完全に問題なしって、アンチがいなくなんないと、出ない言葉じゃん。特に、守里のお父さんは発言も慎重に選ぶんだから。
紫音 T: …
陽芽叶: ってか、アンチの動きが落ち着くまでって、こんな感じで閉じ込められるんなら、僕が能高に通い始めた意味がないじゃん!!せっかく、みんなと仲良くなれたのに……また1人になるの?!
感情的になった陽芽叶は、携帯の向こうにいる紫音に、そう訴えかける。
葵波: お嬢様、落ち着いてください。
陽芽叶: ………ごめん、葵波。お父さんも。
紫音 T: いや……そうだな。陽芽叶の言う通りだ。
陽芽叶: それじゃあ…
紫音 T: 景信に言っておく。
陽芽叶: ありがとう!お父さん。
紫音 T: ただ、今の状況を完全に把握するために、少しだけ時間をくれないかい?週末までには終わらせるから。
陽芽叶: 分かった。
紫音 T: 笑、また陽芽叶と会えるのを、楽しみにしとくよ。
陽芽叶: うん。あ、その時は、前に言ってた通り…
紫音 T: あぁ。もう一度、一緒に考えてみよう。
陽芽叶: よろしく!
紫音 T: じゃ、またね。
陽芽叶: またね。
ピ
電話を切り、陽芽叶は笑顔で、葵波の方を見る。
陽芽叶: やったよ、葵波。週末までには退院できるって。
葵波: 良かったですね、お嬢様。守里に手料理を振る舞えますよ笑
陽芽叶: 本格的に何を作るか考えないと。
葵波: ところで、お嬢様は料理ができるんでしたっけ?
陽芽叶: う~ん、少しはやったことあるってぐらい。
葵波: ……料理人に頼んどきましょうか?
陽芽叶: いや…
葵波: 少なくとも飛香は、かなり料理ができますよ。
陽芽叶: ……お願い。
葵波: 笑、かしこまりました。お嬢様のご都合の良い時に、すぐに動けるように準備させておきます。
陽芽叶: よろしく、って言っておいて。
葵波: はい。
陽芽叶: ふぅ…料理対決もだけど、やっと学校に行けるよ。
葵波: 今は、生徒会選挙と、それによる新生徒会の始動に向けて、学校全体が動いてるって感じです。
陽芽叶: うん。守里から聞いてる。
葵波: それこそ、守里はものすごく忙しそうです。朝も昼も放課後も、空いている時はずっと生徒会室にいるみたいですから。
陽芽叶: なんかさ、それだけ守里が優秀で頼られてるってことは、嬉しいことなんだけど、その分、守里と一緒にいられる時間が少なくなるから、ちょっと複雑な気分なんだよね。
葵波: なるほど……でも、この期間さえ乗り越えれば、しばらく守里の出番はないでしょうし、お嬢様との時間はたくさん作れると思いますよ。
陽芽叶: え~フラグっぽくない?それ笑
葵波: おっと笑…すみません。
陽芽叶: 笑、よし、まずは日曜日の料理対決に向けて、頑張って行くぞ~
◇◇◇
梅澤の家
ガチャ
美月: お邪魔しま~す。
林原: あ、美月先輩、こんにちは~
扉を開けて、部屋の中に入ってきた美月を、林原が出迎える。
美月: 笑、やっぱり今日も、瑠奈ちゃん来てたんだ。
林原: そりゃもちろんですよ~
美月: ってことは、美結ちゃんもいる?
林原: はい!奥で梅澤先輩と話していると思います。
美月: そっか笑
林原: では、どうぞ~
と、林原が美月を中の方に案内しようとすると…
ペシッ
林原: あイタッ!
美月: そんなペシっと叩かないの、香蓮。
いつの間にか、真後ろに立っていた香蓮が、林原の頭を軽く叩いた。
梅澤: ったく。自分もお邪魔してる身分のくせして。
林原: もう、痛いですって~
梅澤: たったこれぐらいで痛いって言うんなら、鍛え方がまだ足りねぇな。愛衣さんに、もっと厳しくやってもらうよう頼んどくか笑
林原: ゲッ……ど、どうかそれだけは…
梅澤: 笑、私が言わなくても、いずれ、もっとキツくなるぞ。
林原: 今すぐだと、話が違うってことですよ!まだ心の準備ができてないんです!
梅澤: はいはい笑
林原: はっ!なんかその顔は、よからぬ事を企んでるような気がする!ヤバい!美結~
自身が感じた危機を相棒に知らせようと、林原は玄関からリビングにいる松高の元へと走っていった。
美月: いや~元気だね~
梅澤: うるせぇだけだよ。
美月: じゃ、改めて、お邪魔しま~す。
梅澤: …今日も随分と買ってきたな。見た感じお菓子も多いし。
美月: 料理の練習で使う分と、香蓮が使う分と…まぁ、あとは可愛い後輩の分。
梅澤: はぁ……毎度、自分が使う分だけで良いっつってんのに。
美月: そんなわけにはいかないよ。料理を教えてもらうお返しなんだから。
梅澤: ……友達なんだから、そんなのいらねぇよボソッ
面と向かって言うのを避けるように、振り返りながらそう呟く。
美月: ん?今なんか言った?
梅澤: //な、なんも言ってねぇよ!さっさと上がれ!
美月: 笑、はーい。
そうして、美月はリビングに入る。
松高: 美月先輩、こんにちは。
美月: お、美結ちゃん。こんにちは。
松高: それで……訓練を厳しくするように、愛衣先輩に頼むって、本当ですか?梅澤先輩。
梅澤: …じゃあ、美結はどっちが良い?
松高: 私としては、早く強くなりたいので、訓練をより厳しいものにしてもらった方が良いですが……今すぐにはしてもらいたくないです。心の準備がまだなので。
美月: ブフッ笑
真剣な表情の松高の言葉に、美月は思わず吹き出してしまう。
松高: え?
梅澤: 瑠奈と全く同じ答えかよ笑
美月: ほんとに息ぴったりだね笑
松高: …マジですか…チラッ
林原: それで、本気なんですか?冗談なんですか?
梅澤: フッ笑、さぁ、どうかな?美月、行こう。
林原: え、秘密ですか?教えてくださいよ!
梅澤: 敵の嘘を見抜く力も、ある意味、戦いに必要な力だぞ。
松高: お、名言かも……なぜそう思われるのか、聞かせてください!
林原: 聞かせてください!
キッチンに向かう足を、2人に止められた梅澤は、仕方ないという表情で、話し始める。
梅澤: ……嘘を見抜く力ってのは、要するに、相手の機微を読み取る力であり、それがあるってことは、それだけ相手を観察して、微小な変化を捉えているってことだ。じゃあ、そんな力があったら、戦いの中でどう使える?
林原: う~ん…
松高: …敵の次の動きを予測できる…ですか?相手を観察して、視線だったり、体のどこに力が入っているかの変化を捉えられたら、相手の次の動きを予測できるはず…
梅澤: ま、そうだな。美結の言う通りだ。
松高: やった!
林原: くぅ…
梅澤: ただ、その変化を捉えられたところで、次の動きを予測するには、また別の力が必要だが。
林原: な、なら、その別の力というのは…
梅澤: 笑、それは先輩方に聞け。私から教えるのは、ここまでだ。
林原: え~
松高: いえ、十分過ぎるぐらいです。ありがとうございます!(さすが梅澤先輩、カッコいい!!)
梅澤: ……で、お前はなんでニヤニヤしてるんだ?美月。
隣に立つ美月の方を見ながら、梅澤は言う。
美月: ん?別にそんなことないけどニヤニヤ
梅澤: めちゃくちゃしてんぞ。
美月: 笑、なんか香蓮が後輩に教えを説いてて、成長を感じちゃってただけ。
梅澤: …バカにしてんな。
美月: んもう~そんなことないって~
梅澤: あ、ちなみにだが、コイツの嘘を見抜く力はピカイチだぞ。
林原: そ、そうなんですか?!美月先輩!
松高: コツを教えてください!
美月: いやいや。香蓮が適当に言ってるだけで、別に私に嘘を見抜く力なんてないよ笑
梅澤: 全く、どの口が言ってんだか。2人も、コイツの前で嘘をついても、すぐにバレるからな。気をつけろ。
林原: うわぁ……この嘘が蔓延る社会では、無敵に近いですね。
松高: やはり、梅澤先輩の大親友なだけある…
美月: 笑、さ、そろそろ料理の練習に付き合ってよ、香蓮。
梅澤: それもそうだな。よし、お前ら。今日も試作をたくさん食べてもらうからな。腹空かせてとけよ。
林原: はい!了解です!
松高: 任せてください。
美月: ……あ、この流れで出すものじゃないけど、これ。2人用のお菓子だから、待ってる間に食べて良いよ。
梅澤: お前なぁ…笑
林原: ありがとうございます!食べさせていただきます!
松高: 安心してください、梅澤先輩。私達は先輩方の手料理なら、お腹いっぱいでも限界を超えて食べれますから。
林原: 美結の言う通り、プルスウルトラ行けます!
梅澤: 笑、そうかよ。
美月: じゃ、よろしく~
こうして、美月は梅澤に見てもらいながら、守里のための料理を練習するのだった。
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