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第7章 文化祭編

第276話「陽芽叶も意外と甘えん坊」

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七星に肩を貸してもらいつつ、向かいの病室の前まで移動した守里は、扉をノックする。



コンコン


「どうぞ~」



ガラガラ



守里: 失礼します。


陽芽叶: あ、守里!と、七星先輩。


七星: 笑、ついで扱いかい。お邪魔すんで。


葵波: それはしょうがないよ、七星。


七星: 分かっとるって笑


守里: えっと…まずは…陽芽叶、助けてくれてありがとう。


陽芽叶: 笑、ほんとだよ。私がいなかったら、守里は死んでたんだからね、多分。


守里: うん……怪我は…


陽芽叶: 後遺症はほとんど残らないって、お医者さんは言ってたよ。


守里: そっか…それなら良かったけど……


陽芽叶: あ、今、謝ろうとしてる?


守里: …


陽芽叶: ごめんだけど、守里からの感謝は受け取っても、謝罪や反省の言葉は受け取らないからね。別に、これは守里のせいじゃないんだから。


守里: いや…


陽芽叶: この怪我は私自身のせい。


守里: …


陽芽叶: う~ん、これで納得できないんなら、じゃあ、私は守里を銃弾から守って、守里は私をあの男から守ってくれたんだから、おあいこってことでどう?


守里: ああいこ…


葵波: 守里。陽芽叶の言う通り、お前は感謝を伝えるだけで良いんだよ。敵も倒した上、こうやってみんな元気にしてるんだから。ここでお前が、空気を暗くするんじゃねぇ笑


七星: せやで。陽芽叶ちゃんもこう言っとることやし、謝罪の言葉は心に留めとくだけで、その償いはこれからの行動で示せば良いんや。


守里: …分かった。じゃあ、陽芽叶、本当にありがとう。


陽芽叶: うんうん。私もありがとう!


葵波: 笑、ほら、もっと陽芽叶に感謝を伝えてやれ、守里。


守里: えっと…


七星: 感謝を伝えるって、ありがとう以外なんかあるか?笑


葵波: あ、確かに、ありがとう以外にないわ笑


陽芽叶: じゃあ、私への褒め言葉でも良いよ!


守里: なら…陽芽叶は勇敢で優しい!


陽芽叶: ニコニコ


守里: そして、可愛い!


陽芽叶: それでそれで?


守里: しっかりしてるし、賢い!


陽芽叶: 他には他には?


守里: あとは…


葵波: (この機会を存分に利用してるな、お嬢様笑)



その後、陽芽叶の気が済むまで、守里は陽芽叶へ褒め言葉を送ったのだった。




20分後…



陽芽叶: ねぇ、守里はいつ退院するの?


守里: 明日の朝には退院かな。ここから直接、学校に行って、家に帰るって感じになると思う。


陽芽叶: そっか~~



葵波と七星が部屋の外に出て、病室内では、ベッドの上の陽芽叶と、隣の椅子に座る守里が話していた。



陽芽叶: じゃあ、明日の朝になるまで、一緒にいよう!


守里: 同じ病室にいるってこと?


陽芽叶: うん。看護師さんに、守里のベッドをこっちに運んでもらって、同じ部屋で過ごそう!


守里: そんなことできるのかな?


陽芽叶: できるよ…いや、そうさせるよ、絶対に。



そう言って、陽芽叶は葵波と連絡を取る。


するとすぐに…



コンコン


陽芽叶: どうぞ!


守里: ?



ガラガラ



幸村: 失礼します。森崎君のベッドは、陽芽叶さんの隣でよろしいでしょうか?


陽芽叶: はい!お願いします!


幸村: 分かりました。


葵波: 私も手伝います。


幸村: はい、お願いします。


守里: え、マジ?



幸村と葵波が、ベッドを隣の守里の部屋から陽芽叶の部屋に移動させ、ついでに荷物も全て移動させた。



幸村: では、失礼します。


葵波: また、用があったら呼ぶんだぞ~



ガラガラ



陽芽叶: はい!これで守里と一緒だね。


守里: う、うん…



行動力の高さよ。

まぁ、これに僕は助けられたわけで、本当に尊敬しかない。



陽芽叶: こうしてると、なんか、小さい頃を思い出すな~


守里: あ、お泊まりのこと?


陽芽叶: そうそう。よく私の部屋でお泊まり会したよね!


守里: 笑、そうだね。


陽芽叶: 楽しかったな~私と守里と日向子の3人で、探検したり、映画見たり、同じベッドで寝たり。


守里: うん笑


陽芽叶: …昔みたいに、一緒のベッドで寝てみる?笑


守里: 何言ってんの笑。こんな状態だから、同じ部屋で寝はするけど、さすがに同じベッドでは寝ない。


陽芽叶: 残念笑


守里: もう、美月みたいなこと言わないの笑


陽芽叶: 美月ね~…笑、家に帰った後が怖いんじゃない?


守里: …若干…いや、かなり…


陽芽叶: 笑、ま、頑張って。


守里: うん。


陽芽叶: よし!守里が退院するまで、喋り通すぞ!


守里: まさかのオールする気?笑


陽芽叶: それもやむを得ないかもね!


守里: 笑、しょうがない。



こうして、守里と陽芽叶は2人きりの空間で、会話を弾ませるのだった。


◇◇◇◇◇


翌朝



陽芽叶: え~もう行っちゃうの?


守里: だって、そろそろ出ないと、遅刻しちゃうから。


陽芽叶: あとちょっとだけ、話そうよ!


守里: いや、昨日十分話したじゃん。ふぁ~あ……少し寝不足なぐらいに。


陽芽叶: まだ話し足りないの!


守里: …笑、大人っぽくなったって思ってたけど、昔と変わらず甘えん坊だね、陽芽叶。


陽芽叶: なっ///


守里: 昨日から一緒にいて分かったよ。陽芽叶は小さい頃と変わってないって。あ、あと寝言が可愛いってことも変わってない笑


陽芽叶: ////……早く学校に行け~!!!


守里: 笑、は~い。いってきます!



ガラガラ


顔を真っ赤にした陽芽叶に急かされながら、荷物をまとめた守里は病室を出た。



葵波: 楽しげだね~


七星: 笑、随分と朝から騒がしかったな。


守里: やば、響いてた?


七星: 他の病室には聞こえてないやろうから、安心せぇや。さ、早く学校に行くで。


守里: うん。


葵波: 少し急がないと、ギリ遅刻かなって感じだからな。


守里: ですね。


七星: 笑、タメ語に敬語にって、忙しそうや。


葵波: 別に、私にもタメ語で良いんだけど?


守里: じゃあ、全部敬語の学校モードに切り替えます。


七星: え~笑


守里: さぁ、七星さん、葵波さん、行きましょう。


葵波: 笑、おう。


守里: って、僕、ここの出方知らないじゃん。


七星: 締まらんな~笑、ついてきや。


守里: はーい。


葵波: ほんと、仲良い笑



七星を先頭に、守里は廊下を進み、エレベーターの前までやってくる。



守里: ここって、エレベーター1つしかないんですか?


七星: せや。階段もないで。


守里: ふ~ん、珍しいですね。


葵波: 守里はここに来たことないの?


守里: この地下には来たことないです。


葵波: そうなんだ。



チーン



幸村: お待たせしました。


守里: あ、いつもの看護師さん。


七星: ほら、乗るで。


守里: はい。


葵波: お願いしまーす。



幸村と守里達3人が乗るエレベーターが上昇を始める。



守里: …


七星: …


葵波: …


幸村: 学校、頑張ってくださいね。



全員が黙って上の方を見ている中、幸村がそう言う。



守里: 笑、頑張ります。


幸村: …笑



チーン



幸村: それでは、いってらっしゃい。


葵波: いってきます!


守里: いってきます笑


七星: いってきます。



幸村に見送られ、3人がエレベーターから入口の方に歩いていると…



七星: …見当たらんな。


守里: ん?なにがですか?


七星: 祐希や。朝からこの辺で待っとくように言っとたんやけど。


守里: あぁ、そっか。僕は七星さんの家に泊まってることになってるから、祐希とも一緒に行かないと変ですもんね。


七星: そういうこと。


葵波: あ、いた!ここで寝てる笑



受付の近くの椅子に座って寝ている祐希を、葵波が発見する。



守里: 笑、祐希だな~


七星: 全く……祐希、はよ起き!


祐希: わっ!…あ、お姉ちゃん…おはよ~


七星: おはよ~やないわ。早く学校に行くで。


祐希: うん。


葵波: 祐希、おはよう笑


祐希: おはようございます、葵波先輩。あと守里。


守里: 笑、おはよう。ゆっくり寝れた?


祐希: 多少はね。


守里: そっか笑


七星: さ、行くで。



起きたばっかりの祐希を連れて、守里達は病院を出て、学校に向かうのだった。


◇◇◇


伊衛能高校

教室


ガラガラ



守里: ギリギリセーフ…


祐希: 間に合った~


日向子: あ!やっと守里と祐希ちゃん来た!!!


飛香: ほんとギリギリだよ笑


春時: 随分と遅かったな。



2人が教室に入ると、1人を除いた、いつメンが周りに集まってくる。



守里: いや~祐希が中々起きなくてさ。


祐希: ごめんって~


春時: そういうことか笑


日向子: ねぇねぇ、お泊まり会で何したの?!


守里: ずっとゲームしてた。な?祐希。


祐希: うん。


飛香: 祐希はずっと寝てたんじゃないの?笑


祐希: よく分かったね、飛香。その通り。


春時: 誰でも分かるわ笑


日向子: お泊まり会、楽しかった?!


守里: まぁ、楽しかったよ笑


飛香: ふ~ん…じゃあ、早めに自分のお姉ちゃんのご機嫌取りをすることね。


守里: え?


春時: 早めにやっとかないと、めんどくさいと思うぞ~



そう言って春時と飛香が、手で指した方向を見ると…



美月: ムッスー



すごく不機嫌そうな顔をしながら、こちらを睨み、腕を組んでいる美月が、席に座っていた。



守里: おっと…


飛香: 一昨日の夕方ぐらいから、美月への連絡が雑になったんだって?笑


守里: …すぐに行ってまいります。


春時: おう、そうした方が良い……いや、後からだな。志帆がこっちを見てる。


飛香: ほんとだ。時間だね。


日向子: 席に座ろう!!


祐希: は~い。


守里: 後から……大丈夫かな…



と、美月のご機嫌を取り戻すことができるのか、という不安を抱えながら、守里は席に座った。


そして、不幸なことに、休み時間中はタイミングが合わず、美月と話すことができないまま、昼休みにまで美月の不機嫌状態と守里の不安は続くのであった。




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