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第7章 文化祭編

第273話「守里vs黒峰 前編」

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黒峰: さぁ、始めるぞ!


タッ!


守里: 来い!



地面を蹴り、接近してきた黒峰に対し、守里は昨日と違い、ドシッと構えるのではなく、軽くステップを踏んで、すぐに動けるように構える。



黒峰: ニヤッ…オラッ!


ブンッ!



昨日と同じように、まずは直線的なパンチを、ものすごい速度で放つ黒峰。

それを、守里は横に避け、真横に来た黒峰の腹に、拳をめり込ませようと、右腕を振るう。



黒峰: っぶなw


守里: ハッ!



右拳をギリギリで回避した黒峰に、守里は蹴りを放つ。



ドンッ!


黒峰: クッ…すげぇ威力。


守里: っ!まだまだ!



思いの外、威力が高かった蹴りを防御したことで、少し怯んだ黒峰の隙を見逃さずに、守里は追い討ちの連撃をかける。



バンッ!


ドスンッ!


バコンッ!


黒峰: 良いなぁ…昨日のは全力じゃなかったのか…オリャ!


ブンッ!!



しかし、2、3撃加えたところで、防御を止め、瞬時に後退した黒峰がその長い足を振り、広範囲に攻撃を仕掛けたことで、守里は連撃を中断せざるを得なくなる。



守里: ふぅ…


黒峰: いや~昨日とのギャップに驚いた。お前、攻撃もできたんだな。てっきり、他人を攻撃できない腰抜けかと思ってたぜ。


守里: …


黒峰: だが…



再び、黒峰は守里に詰め、右膝を上げる。



守里: フンッ!


パシンッ!



両腕で膝を下に弾き、その反動で跳ね上がった手を、そのまま、黒峰の顎目掛けて動かす。



黒峰: …



それを、顔を動かし寸前で避け、右フックを、守里の脇腹目掛けて放つが、守里はそれを左膝で受けつつ、蹴り込む。



黒峰: う~ん…


ガシッ


守里: クッ…


黒峰: オリャッ!!


ブンッ!!



掴んだ守里の足ごと、黒峰は守里を投げ飛ばし、投げ飛ばされた守里は地面に背中をつける。



タッ!


守里: っ!マズっ…



仰向けに倒れている守里を踏みつけようと、飛び上がった黒峰を見て、守里は瞬時に体を回転させて避ける。



ドンッ!!!


黒峰: 避けたかw


守里: …


ダッ!



そして、笑う黒峰を見て、そこに最短、最強の攻撃を加えるべく、地面を左足で全力で蹴り、右足を前に出して、真っ直ぐに突っ込む。



黒峰: ま、そう来るよなw


守里: っ!!



片足を残した状態で、黒峰は反転し、守里の蹴りを最小限の動きで避けつつ…



黒峰: ほらっ!w


バコンッ!!


守里: ブハッ!!



回転した体を戻すかのように、再び反転し、飛び込んできた守里の顔面に裏拳を当てる。



タッ


ポタポタ


守里: …



もろに攻撃を受けた守里は、たまらず後ろに下がり、鼻血が出ていることを確認し、黒峰を睨む。



黒峰: やっぱり、お前の攻撃、読みやすいわw


守里: …


黒峰: おかげで、カウンターも決めやすいこと。


守里: そうかよ…



クソ、師範と同じことを言ってやがる。

つまり、これからの俺の攻撃は、師範と同じように簡単に避けられて、カウンターをきめに来られるってことか。


どうにかしないと…



黒峰: さぁさぁ、どんどんギア上げていくぞ!w



その瞬間から、黒峰の攻撃は苛烈さを増して行った。



黒峰: おらおら!w


ビュンッ!


バシンッ!!


ドスンッ!



身長が190cm近くあり、手足も長い黒峰の殴打や蹴撃は、段々と鞭のようにしなり始め、攻撃のモーションのある時点から、一気に加速するようになる。

そのため、守里は黒峰の攻撃モーションの初動から中盤までの動きで、最終的な狙いを予測し、防御をなんとか追いつかせていくが…



ビュンッ!!!


バチンッ!


バコンッ!!


守里: グッ…


黒峰: 昨日と同じじゃねぇか!!w



今の守里は、黒峰の攻撃を防御するのに精一杯であるため、昨日と同じ…いや、もはや、牽制や間合いを取るための攻撃すらできずにいて、完全なる防戦一方になっていた。


マジでヤバい…


このままだと、腕や足に限界が来る。

その前に、なんとかコイツの弱点を見つけて…


そう考えながら、守里は黒峰の攻撃に耐える。



黒峰: お前を倒して、ボスの前に連れてった後は、どうしようかな~能高にまた襲撃をかけるか。アンチが息を潜める必要もなくなるし。その時はやりたい放題できるぜ!


守里: ギロッ!


黒峰: おぉ、睨むだけじゃなく、攻撃してこいよ!w


ドンッ!!!


バコンッ!!


守里: グハッ……このっ!


ブンッ!!



思いっきり腕を振るい、黒峰を遠ざけようとする。



黒峰: 危ない、危ないw



しかし、その拳も当たることなく、黒峰は笑って守里の間合いの外に立ったままだった。



守里: ふぅ…


黒峰: さすがに息が上がってきたか?


守里: 笑、全く。


黒峰: w虚勢張りやがって。ま、どっちにしろ、どれだけお前のパワーがあろうが、攻撃自体させなけりゃ一緒だからな。そのままお前の限界が来るまで、殴り続けてやるよ。


守里: …



ん?今の言葉…

コイツ、もしかして、俺のパワーを恐れてんのか?


確か、今日の初っ端に当てた蹴り……腕で防御して怯んでたな……それ以降、コイツは俺の攻撃を受けるどころか、捌くことなく、避け続けている。

ってことは、俺のパワーは、コイツの耐久力を上回ってるのかも…なら、一発でも攻撃を当てれば、かなりのダメージが入るはず…


じゃあ、どうすればコイツに避けられることなく、攻撃を当てられるか、だが…



黒峰: よし、殴り合い…いや一方的な暴力を再開しようぜw


守里: …笑



突然、守里が笑う。



黒峰: あ?どうしたんだ?急に笑って。


守里: …いや、俺はバカだな、って思ってよ。


黒峰: あっそ。まぁ、1人でここに来てる時点で、かなりのバカだと思うぞ。


守里: 笑、どうも。



ほんとバカだな、俺は。

今回は別に自由に動いて良いのに、なんで俺はわざわざ、あいつとの正面戦闘、殴り合いに応じてるんだよ。


師範のお墨付きの、強みを活かせっての。

せっかく、場所も広いんだし。



「スピードは中々で、パワーは一級品、反応速度も良い。」



この俺のスピードを活かして、コイツに攻撃を当てる。



守里: ふぅ…


黒峰: (なんか、企んでやがるな、コイツ。目が変わった。)


ダンッ!!



最初の蹴り出しの音を空間に響かせて、守里は黒峰の周りを全速力で走り始めた。


もっと周りを見ろ。

ここは、ただ広いだけの空間じゃない。


まぁまぁな数のガラクタが、まだ残ってる。



黒峰: チッ、ちょこまかと動き回りやがって。それは俺の専門じゃないっての。



と、悪態をつきながら、周りを走る守里を、なんとか視界に入れ続ける。


すると…


ビュンッ!!!



黒峰: あっぶ!



鉄製の細い棒が飛んでくる。



黒峰: 物は投げちゃいけないって、先生から教わらなかったのか?!w



ビュンッ!!!


次は金属製のバケツ。



黒峰: 聞く耳無しかよw



ビュンッ!!!


ビュンッ!!!


ガランッ!ダンッ!カランッ!


守里が投げる物は、全て空気を切る音を鳴らしながら、黒峰の元に飛んで行き、もちろん黒峰は、それを難なく避けるのだが、工場内には投げた物が落ちる音が反響し続ける。


その結果…



黒峰: (これ、見失ったらマズいな…足音で場所を特定できなくなった。ってか、物を拾って投げるまでの速度よ。どんだけ投げてきてんだ。)



そして、守里は仕上げにかかる。



守里: …



ビュンッ!!!


黒峰がいる方向とは違う方向、自分の進路方向に向かって、比較的大きいものを投げる。



黒峰: っ!!!



人間は速く動くものに目が行ってしまうため、これまでは自分の方向にしか物は飛んで来ず、自分から見て、横に移動していたのは守里だけであった黒峰にとって、その横に飛んで行った物は、視線を向けずにはいられないものであった。

さらに、黒峰が守里から視線を外してしまった隙に、大きく薄い板材を下から黒峰に向かって投げる。


ビュンッ!!


面積が広く、風の抵抗を受けやすい板材は、ちょうど黒峰と守里の間で起き上がり、一瞬だけ留まる。



黒峰: なっ…(物を上手く使いやがる……アイツはこの裏か!)



そう考えた黒峰は、これまでに物を投げ続けられ、自身は避ける一方だったストレスからか、すぐに板材の目の前まで走り、板材の後ろにいると思われる守里を、板材ごと蹴り飛ばしにかかろうとする。



黒峰: 正々堂々やれや!!!!


バキッ!!!



右足が板材を割る。


しかし、その先には…



黒峰: いなっ…


守里: こっちこそ、読んでたよっ!!!



利き手も利き足も右であると、推測していた守里は、黒峰がストレスから板材を右拳または右足で蹴り抜くと考え、黒峰の右側…黒峰からすれば、自分の右足で死角となっている場所に、姿勢を低くして構え、黒峰が板材を割った瞬間に、飛び上がる。


そして…



バコンッ!!!


黒峰: グハッ!!!



守里の右拳が、黒峰の顎を撃ち抜いた。



守里: 良いのが入ったぞ…



顎を抑えながら、"立っている"黒峰に、守里はそう言う。



黒峰: …あぁ。良いのをもらっちまったぜ。もし、流すのがあと少し遅かったら、今頃倒れてただろうな。


守里: なっ…


黒峰: いや~油断した、油断した。格下相手でも、ちゃんとやんないと、負けるからな、勝負ってのは。


守里: …



マジかよ…


いや、全く効いてないわけではないはずだ。

流すって言っても、流せる衝撃には限度があるからな。


また、同じ作戦で…



守里: …


ダッ!!


黒峰: ww同じ作戦はつまんないぞ!



ビュンッ!!!


その場に落ちていた鉄の棒を、お返しとばかりに守里に向かって、回転させながら投げ、守里はそれを避けるために、方向転換する。



黒峰: まぁ、位置的に右に避けるよな。


守里: っ!!!


ドンッ!!!


守里: ガッ!!



避ける方向を読んでいた黒峰が、一気に守里との距離を詰め、右足で守里を蹴り込んだ。



守里: クッ…



後ろに飛ばされた守里は、すぐに黒峰を見つつ、構えを正す。



黒峰: で、次はどうするんだ?w



と、見下すように笑いながら、黒峰が守里に向かって、そう言っていると…



ガヤガヤ



黒峰: ん?


中位: しゅ、襲撃です!!



という声が、建物の内に響く。



守里: え?


黒峰: …ほぉw…お前の作戦か?


守里: い、いや…


黒峰: まぁ、どっちでも良い。俺がやることは変わらないからな。だが…


守里: …


黒峰: 予定変更だ。お前をすぐに仕留める。



そう言って、黒峰は左手を腰辺りに持って行き…



守里: (なんだ?)


黒峰: おつかれw


カチャ


守里: っ!!銃?!



銃口を向けられて、守里は驚き、一瞬だけ体が硬直した。



バンッ!!!



その一瞬は、拳銃から放たれた弾丸が、守里の元へ到達するまでには十分な時間であった。




to be continued



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