ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

文字の大きさ
上 下
271 / 340
第7章 文化祭編

第271話「陽芽叶の脱出劇」

しおりを挟む
翌日


病室にいる守里は、起床してすぐ、看護師が運んで来た朝食を食べ終わった後、体の調子を確認しつつ、体を動かしていた。



守里: フッ!


ビュンッ!!



う~ん…もうちょっと蹴り出しをスムーズに…



ビュンッ!!



お、良い感じ。


いや~広い病室で良かった。

こうして、リハビリがてら動けるし。



ピロン



守里: …また美月かな。



そう言いながら、ベッドの横に置いてある携帯を確認すると、案の定、メッセージの送り主は美月だった。



美月 M: 今何してるの?


守里: 全く同じ質問…



と、守里が言うように、守里が起きてしばらくしてから、定期的に同じようなメッセージを美月が送ってきており、その度に守里は嘘の返事を考えて返していた。



守里 M: ゲームやってる。


美月 M: なんの?


守里 M: モン○ン。


美月 M: 誰と?


守里 M: 七星さん。


美月 M: ズルい。


守里 M: これ何回目?


美月 M: 気持ち的には1回目。



というやり取りが、既に10回ほど行われていた。


正直、返すのも面倒になってきたんだけど、返さなかったら返さなかったで、鬼電してきそうだし、ここは地道に返していくべきだよな。


そう考えながら、守里は新たにメッセージが来ないことを確認して、携帯を置いた。


その瞬間…



ピロン



守里: また美月か…



再び携帯を取り、通知を確認すると、送られてきたメッセージは美月からのものではなく、七星からのものであった。



守里: いや、なぁちゃんかい。


七星 M: ちゃんと大人しくしてるか?


守里: …



まるで、見透かされているような気分…



守里 M: もちろん。大人しくベッドの上で動画を見てる。


七星 M: そっか。こっちの用事を終わらせたら、お見舞いに行くからな。


守里 M: 何時ぐらいになりそう?


七星 M: そんな、私に会いたいんか?笑


守里 M: 別に、そういうわけではないけど。


七星 M: うわぁ、寂しいわ~


守里 M: もう、良いから質問に答えてよ。


七星 M: 多分、明日の朝や。


守里 M: そんなにかかるの?むしろ、用事の内容が気になるんだけど笑


七星 M: 秘密。


守里 M: だよね。


七星 M: そんなに守里が寂しい言うんなら、祐希に行かせるけど?


守里 M: それは遠慮しときます。僕を追い出してベッドで寝そうなんで笑


七星 M: 祐希に報告しとくな笑


守里 M: やめて笑


七星 M: ま、勘弁したるわ。じゃ、また明日。


守里 M: うん。頑張って。



明日の朝か。

それまでに、無事に戻って来れたら良いけど。


と思いながら、携帯を置くと…



ピロン



守里: 次は誰!……って飛香?珍しい…


飛香 M: 何してんの?


守里: 美月と同じ質問かよ!



こんな感じで、守里のことが気になる人達からのメッセージを返しながら、守里は決戦の準備を整えて行く。


◇◇◇◇


17時半頃


陽芽叶の部屋



陽芽叶: …



うん、そろそろいけるかな?

お父さんが部屋に戻ってくる頃だろうし。



陽芽叶: …脱出しよう。



自分の部屋から、いや、勝手に守里の元に向かわないようにと、外から鍵をかけられた部屋から、脱出しようと思った陽芽叶は、まず扉の外に向かってこう言った。



コンコン


陽芽叶: ねぇ、お腹空いたんだけど…


「かしこまりました、少々お待ちください。」



やっぱり、すぐ外にいたんだ。

随分と用心されてる笑


葵波辺りが、警戒を促してたのかな。


よし、最低限の物だけ持ってと…


机の上にあった携帯をポケットに入れ、身だしなみを整えながら、扉が開かれるのを待つ。



コンコン



お、来た。



陽芽叶: 良いよ。



ガチャ

 

使用人: 失礼します。軽食をお持ちいたし…


陽芽叶: ごめんね。



バチッバチッ!



使用人: ガハッ!おじょう…さま…


ドサ


陽芽叶: まさか、こんなところでお父さんの部屋から持ってきてた物が役に立つとは……あ、このサンドイッチ1つだけ持って行こ。



そう言って、使ったスタンガンを倒れた使用人のそばに置きつつ、皿に乗せられていたサンドイッチを1つ咥えて、部屋を出た。


さぁ、ここからが難関だよ。

みんなに見つからないように出ないと…


伊衛能病院には、確かあそこから行けただろうから、向かうべきは第4通路口だね。

ここからだと……資料室の前を通った方が、見つからなさそうだ。


そう考えて、陽芽叶は幅の広い廊下を、音を立てないようにしながら歩いて行く。




5分後…


ガチャ



陽芽叶: ふぅ…



数回危ない場面はあったけど、なんとかここまで来れたね。


大きく4と書かれた扉の前に立つ陽芽叶。


ここから道沿いに行けば、伊衛能病院近くの駐車場に出られるはず。


ガチャン



陽芽叶: うわ、相変わらず暗いな。



転ばないように気をつけながら、進まないと。


ってか、どのぐらいかかるんだろう…

前に使ったのが、3年半前ぐらいだから、さすがに覚えてないや笑


蛍光灯の微かな光だけが照らす、先の見えない通路を陽芽叶は見回し…


あ、これって…笑


通路の横に立て掛けられてあった、キックボードを手に取る。


こんなとこにあったんだ。

私のキックボード。


そういえば、すぐ使うと思って、ここに置きっぱにしてたんだった。


にしても懐かしい。

昔、守里と日向子と一緒に、これに乗って家の中を走り回ったっけ?笑


よし、これに乗って行こう。


陽芽叶は、少し古びたキックボードに乗り、伊衛能病院までの道を進んで行った。




30分後…



陽芽叶: あ、やっとか。



目の前に出口らしき扉が見える。



陽芽叶: よいしょっと…



キックボードから降り、扉のそばに立て掛ける。


ありがとね、帰りもよろしく。


そう思いながら、ハンドル部分を撫で、扉に向き直る。



陽芽叶: さぁ、行こうか。



扉の横にあるパネルに触れる。


ガチャ

ガチャ


すると扉が開き、陽芽叶は通路から外に出て…



陽芽叶: …えーっと…位置情報的には……うん、正解だね。



無事、伊衛能病院の近くに辿り着く。



陽芽叶: 早く、守里のとこに行こう。



そうして、陽芽叶は伊衛能病院の中に入り、真っ直ぐにエレベーターの方へ。



陽芽叶: あの。


看護師: はい、なんでしょう。


陽芽叶: 下にお願いします。


看護師: …下とは?


陽芽叶: これ、見てください。



そう言って、陽芽叶は携帯の画面に映った病院の通路の画像を、エレベーターの前に立つ看護師に見せる。



看護師: これ…は……患者さんのご家族ということでしょうか?


陽芽叶: はい。


看護師: どなたか聞いても?


陽芽叶: …森崎守里です。


看護師: …嘘、ですね。


陽芽叶: お願いします。守里のお見舞いに来たんです。


看護師: 申し訳ございませんが、ご案内することはできません。


陽芽叶: …それなら、今ここで、団長さんに直談判します。


看護師: は?



プルルル



看護師: え?ちょっ…



ピ



陽芽叶 T: もしもし、守里のお父さんですか?


景信 T: ど、どうしたのかな?陽芽叶ちゃん。おじさん、突然の電話過ぎて、めちゃくちゃ驚いてるんだけど…


陽芽叶 T: 守里が入院してるのは聞いていますか?


景信 T: 無視か笑……あぁ。知ってるよ。もしかして、お見舞いに行きたいとか?


陽芽叶 T: はい。


景信 T: 確か、今、陽芽叶ちゃんは部屋にいるはずなんじゃ…


陽芽叶 T: お父さんには内緒にしといてください。


景信 T: さすがにそれは…


陽芽叶 T: では、お父さんが捕まえに来るまでの時間だけでも、守里のお見舞いをさせてください。


景信 T: う~ん……しょうがない。その代わり、今度からはこういうことしないようにね。


陽芽叶 T: はい!


景信 T: 次、同じようなことを言われても、承諾しないから。


陽芽叶 T: もし、同じようなことになったら、次はちゃんと正規の手順を踏みますよ笑


景信 T: 笑、分かった。よし、エレベーター前の看護師と代わってくれ。


陽芽叶 T: 分かりました。


看護師: えっと…


陽芽叶: はい、団長さんと繋がってます。


看護師: ……



戸惑いながらも、看護師は陽芽叶の携帯を受け取る。



看護師 T: あ、あの…もしもし?


景信 T: お疲れ様。突然ですまないが、その子を守里のところに連れて行ってやってくれ。


看護師 T: …本当に団長ですか?


景信 T: ふぅ……防衛団戦闘部1級団員"幸村華ゆきむら はな"。その子を俺の息子の病室に連れて行け。


幸村 T: っ…かしこまりました。


景信 T: 笑、頼んだよ。じゃ、返してあげて。


幸村 T: はい。


陽芽叶 T: 代わりました。


景信 T: 今、この電話を切ったら、すぐにお父さんに電話をかけるから、多分、猶予は10分ぐらいだよ笑


陽芽叶 T: はい笑。その間に、たくさん守里と話します。


景信 T: 笑……陽芽叶ちゃんが、普通の学校生活を楽しんでくれてるみたいで、良かった。


陽芽叶 T: おじさんのおかげです笑。また。


景信 T: あぁ笑



ピ



幸村: では、ご案内します。



そう言って、幸村は歩き出す。



陽芽叶: あれ?下じゃないんですか?


幸村: はい。今回、森崎君は一般の方に入院しています。


陽芽叶: あ、そうだったんだ。


幸村: 今回は、事情を知っている方が、一般の方にもいますので。


陽芽叶: 私みたいにですか?笑


幸村: はい。そういう方が、お見舞いに来られた際に、下に入院してると、困りますから。


陽芽叶: じゃあ、わざわざお姉さんに言わなくても、受付の人に聞けば良かったのか。


幸村: ですね………ところで、前に1度、来られたことあります?


陽芽叶: え?はい、1回だけ。


幸村: やっぱり…3年半前に森崎君が入院した時に。


陽芽叶: 笑、よく覚えてますね。


幸村: あの時は…まぁ、団長も一緒に来てましたから。


陽芽叶: なるほど笑



こうして、2人は話しながら歩き、守里の病室へ到着した。




to be continued
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

処理中です...