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第7章 文化祭編

第270話「再試合に向けて」

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伊衛能病院



七星: お、ここからもギリギリ見えるやん。ほら、早く目覚まし、守里。花火綺麗やで。



病院のベッドの上で、未だに意識を取り戻さない守里のそばで、そう呼びかける七星。



七星: ふぅ……もう限界やろうな。守里、ごめん。



そう言いながら、守里の顔を優しく撫でる。



守里: う…ううん……


七星: お、守里~一旦、起きて~


守里: ……な、なぁちゃん?


七星: そやで。七星や。


守里: あれ?ここは…


七星: 病院。


守里: ……あぁ、そうか…



混濁していた頭が、段々と整理され、なぜ自分がこういう状況になっているのかを、理解し始める。



守里: 僕は…


七星: …


守里: 負けたんだ…



静寂な病室に、守里の言葉が響く。


しかし…



七星: 笑、何言うてんねん。


守里: え?



その言葉を、七星は笑って否定した。



七星: 守里はあのコンピュータを、なな達の文化祭を、能高への信頼を、1人で守り切ったんやで。


守里: …


七星: それのどこが負けなんや。いわゆる、試合に負けて、勝負に勝ったっちゅうやつやろ。なら、勝負に勝てたことを誇れ、喜べ。そして、笑うんや。


守里: ……でも、悔しいんだよ…


七星: うん。その気持ちは大事。絶対に忘れたらアカンで。やり返すまではな笑


守里: …うん。


七星: 笑、さぁ、まだギリギリ花火やってるから、一緒に見よ。


守里: え?ここから見えるの?


七星: ほら、あそこ。


守里: どこ…っ!イテテ…


七星: 無理せんと、ゆっくり体を動かし笑


守里: だね笑……ほんとだ、綺麗。


七星: …あれも、守里が頑張ったから見れるものなんよ。


守里: そっか…


七星: 今頃、学校では全校生徒が、楽しんでると思うで。


守里: …なら、良かったかな笑


七星: 笑



こうして、守里と七星は遠くの方に見える花火を、2人で眺めるのだった。




10分後…



七星: さ、改めて、守里が倒れた後のことを説明しよか。


守里: うん、お願い。



ベッドに戻った守里に、隣の椅子に座った七星は、これまでの経緯と今の状況を説明し始める。



七星: 守里が倒れとるのを、なな達が見つけてすぐ、救急車を呼んで、守里と後ろに倒れとった先生2人を、ここ伊衛能病院に搬送。先生2人はもう学校に戻って、今頃は他の先生に報告しとるんちゃうかな。


守里: 良かった。改造したスタンガンとか言ってたから、心配してたんだけど、大丈夫だったんだね。


七星: まぁ、普通に手に入るスタンガンじゃ、人は気絶させられへんから。


守里: そうなんだ。


七星: うん。で、多分、守里が相手しとったヤツが逃げるのに合わせて、校内各所でトラブルを起こしてた奴らも逃げ始めて、結果として捕まえられたのは、28人やった。


守里: いや、逆にそんなに捕まえたんだ。


七星: みんなが頑張ったおかげやな。ちなみに、梅ちゃんと、梅ちゃんの舎弟コンビが、10人ぐらいは捕まえたんやで。


守里: おぉ…大手柄じゃん。


七星: そして、トラブルが完全に治まったっちゅうことで、みんな笑顔で最後まで突っ走って、文化祭が終了。1時間後に、後夜祭開始って感じや。あの、後夜祭が始まった瞬間の、みんなの歓声は凄かったで笑


守里: へぇ~


七星: 歴代最高レベルで盛り上がってたんとちゃうかな?


守里: 校舎揺れた?笑


七星: もう揺れに揺れたよ笑


守里: そっか笑


七星: 笑…あと守里に言うこととしたら……あ、今のこの守里の状況なんやけど。


守里: うん。


七星: 知ってるのは、生徒会役員と各委員長、それから祐希と春時と梅ちゃんだけやから。


守里: え?なんで?


七星: だって、さすがに入院したってことは言えへんよ。入院した理由が理由やし。それとも、あの美月や、白城先輩に説明できるんか?守里が隠したいことを隠したままで。


守里: …確かに。


七星: ってことで、今さっき言った子達以外には、ななと一緒に外仕事をして、そのまま、ななの家に泊まるってことで通してあるから。携帯でのやり取りと、退院後の口裏合わせはよろしくな。


守里: 僕、なぁちゃんの家に泊まることになってんの?笑


七星: うん。なんか問題あるか?


守里: 別にないけど。


七星: ならええやんな笑


守里: 笑、お世話になります。


七星: こりゃご丁寧に笑。ごゆっくりどうぞ。


守里: さすがに返しが早いね笑


七星: 伊達に11年も幼なじみやっとらんわ笑


守里: …ありがとう。


七星: 笑、いいえ。さ、ななはそろそろ家に帰るから。学校に戻るわけにいかんし。守里は、ゆっくり病室で過ごしとくんやで。あのレベルのダメージやと、完全回復までにしばらく時間がかかるやろうからな!


守里: 笑、自分の体のことは、自分が1番分かってるよ。


七星: ほんまか?笑。じゃ、また。


守里: またね。



ガラガラ


笑顔の七星が病室を出て行き、1人となった守里は七星が出て行った扉を見ながら考える。



守里: …やっぱり、そうなのかな…



僕の意識が途切れる寸前に聞いた、なぁちゃんの声。

それに、今さっきの話。


もう、そうじゃないと説明がつかないよな…



守里: はぁ……次会った時に、聞いてみよう。でも、その前に…



あの男が言っていた、明日の19時に~~~~~。

ここは、おそらく…


守里は携帯で、黒峰に言われた住所を、マップに入力する。


うん、町外れの工場跡地。

道理で覚えがある住所なわけだ。


美月が連れ去られた場所なんだから。


どうするべきか…

いや、僕が行かなければ、また学校が襲われるんだから、僕は絶対に行くんだけど…

確実に罠だし、もし、アイツ以外のアンチもいたら、勝ち目ないし、たとえ、アイツ1人だったとしても、勝てない。

だから、何かしらの作戦を練るべきだ、防衛団と一緒に。


でも、それがアンチ側にバレれば…

アイツを倒せたとしても、他の奴らが学校を襲うに違いないだろうし…


ここは、僕1人で行くべきか。

そして、なんとしてでもアイツを倒すんだ、僕1人で。


そのためには、防御重視の戦い方を変えるか、武器を持って行くか、それとも「解放」の段階を上げられるようにするか…

一番手っ取り早いのは、武器を持っていくことだけど、拳銃ならまだしも、刃物ぐらいなら、アイツはすぐに対応してきそうだし、僕も武器を持って戦ったことなんかないんだから、無しだな。


あと、「解放」の段階を上げる……これに関しては、父さんも使っていけばコツを掴めるようになるって言ってたから、そのコツが分かればいけると思うんだけど…

今のところ、まだよく分からないんだよね。

だから、これもまだ無理だろう。


ってことで、残るは防御重視の戦い方を変えること。

今日、アイツと戦った時は、防御8の攻撃2で、間合いを取るためか、牽制のためにしか攻撃は出さなかった。

その結果、僕がボロボロになっていくだけで、アイツに全くダメージを与えられなかったんだよな、牽制の攻撃も当たらなかったし。

まぁ、これは、アイツを倒す必要はなくて、ただアイツを後ろに通さなければ良いっていう目的があったから、今日は問題なかったんだけど。


明日は違う。

アイツを倒さないといけないんだ。


じゃあ、攻撃の意識をもうちょっと大きくするか?

攻撃を…5…いや、4だな。

元々、僕は攻撃が下手で、カウンターをもらいやすいんだから、攻撃が多すぎると、逆に僕がやられる。


よし、明日は防御6攻撃4で、アイツの攻撃をできるだけ捌いたり、流したりすることで防御して、体勢が少し崩れたところに、強めの攻撃を加えていこう。

そうすれば、こっちのダメージを抑えつつ、向こうにダメージを与えられるはずだ。

しかも、あのアイツが電話してた時の表情から見て、向こうは僕が攻撃してくるとは思ってないだろうから、最初の方は上手くいくと思う。

うん、こうしよう。


ま、頭で考える分には、いくらでも自分有利に進められるからな。

今考えたことを頭に残しつつ、実際に戦い始めてから、戦い方を組み直していかないと。


と、守里が明日の決戦に向けて、頭を回していると…



プルルル



守里: ん?……あ…美月からだ。



うわぁ…どうしよう、出るか?


いや、出ないと後々がめんどくさいか。

僕が寝てる間も、めちゃくちゃ電話してきてたみたいだし…笑


携帯に残っているメッセージや不在着信の量に、もはや笑ってしまう守里。


よし、出よう。

僕は今、なぁちゃんの家にいるはず…



ピ



守里 T: もしも…


美月 T: あ!!!!やっと出た!!!!守里!!!!



これを予測していた守里が、耳との距離を離していた携帯から、美月の咆哮が轟く。



美月 T: 今まで何してたの!!!!


守里 T: ご、ごめんね、連絡できなくて。


美月 T: ほんと、心配したんだよ!!!!


守里 T: ごめんって笑


美月 T: で、今何してるの?!!!


守里 T: えっと今は、手伝ってた七星さんの仕事が終わって、七星さんの家にお邪魔してるとこ。


美月 T: やっぱり本当だったんだ……


守里 T: う、うん…


美月 T: いつぐらいに帰ってくるの?


守里 T: そうだな……明後日?



明日は黒峰との戦いで、帰れないだろうと考えた守里は、美月の質問にそう答えた。



美月 T: あ、明後日?!!


守里 T: ごめんだけど、そうなるかな。だから、結真姉さん達にも…


美月 T: うぇ~ん、美月ちゃん寂しいよ~!!


守里 T: ほんとごめんって、でも今回だけは我慢して。


美月 T: 今回だけ?


守里 T: 多分、今回だけだから…うん、おそらく。


美月 T: ダメ!!今回だけにして!!ほんとは今回も嫌だけど!!


守里 T: もう、分かったから笑


美月 T: よし、じゃあ今回は許す。


守里 T: 笑、ありがと。


美月 T: …ってかさ、それってつまり、明日も七星先輩の家に泊まるってことだよね?


守里 T: うん。そうなるね。


美月 T: …クッ


守里 T: でも、昔はよく七星さんの家に泊まってたから、懐かしいよ笑


美月 T: へ、へぇ~………ちなみにさ、小さい頃に七星先輩と一緒にお風呂に入ったこととかは?


守里 T: 一緒にお風呂?笑、いやさすがに…………あ。


美月 T: ん?


守里 T: い、いや、なんでもないよ。


美月 T: いや!!絶対に今のおかしかった!!絶対に一緒に入ったことあるんでしょ!!


守里 T: そ、そんなことないって…


美月 T: 嘘つき!!!


守里 T: で、でも小さい頃だから…


美月 T: やっぱり、一緒にお風呂に入ってんじゃん!!!ズルい!!!私は1回も一緒に入ったことないのに!!!


守里 T: だから、小さい頃だったからさ…


美月 T: そんなの関係ないもん!!!って、一緒にお風呂に入ったこともあるんなら、七星先輩は、他にも羨ましいことを守里としてるんじゃ…


守里 T: …あ、そろそろ時間もアレだし、電話を切ろうかな…


美月 T: そんなことしたら、今この場で泣き叫びつつ、夜も鬼電しまくるからね!!!


守里 T: それは……


美月 T: さぁ、全部吐いてもらおうか!!七星先輩との………ん?七星先輩となら、その妹である祐希とも…


守里 T: …


美月 T: ねぇ守里。祐希とも一緒にお風呂に入ったことある?


守里 T: ……ノーコメントで。


美月 T: 守里!!!!!!



その後、駆けつけた梅澤に美月がアイアンクローをされるまで、守里の携帯から放たれた美月のバカでかい声が、病室に響き続けたのだった。




to be continued
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