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第7章 文化祭編

第266話「木村の強さ」

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上位構成員の強さに、武道場にいる全ての人が怯える中、紗耶が1人立ち上がり、上位構成員の言葉を否定する。



紗耶: そんなことないです!


菊山: ちょっ、やんちゃん?!


上位: あ?


紗耶: 能高の風紀委員は、弱い人ばっかりじゃないです!


菊山: マジ?ボソッ……(この展開はマズい…誰かに連絡を…)


上位: ほうw……そうか。良いな、お前。大人でさえ、こうやってビビってんのに、俺に面と向かって意見を言えるとは。


紗耶: …ゴクン


上位: 気に入った。俺と戦え。


紗耶: え?


菊山: は?


部員: ん?



予想外の言葉に、その場にいた全員が頭に疑問符を浮かべた。



上位: wどうした。思ってた言葉と違うか?例えば、俺の女になれ、とか俺と遊ぼうぜ、みたいな言葉を予想してたんだろ。


紗耶: ま、まぁ…


上位: 残念ながら、俺はあんまりそういうのに興味がなくてな。とにかく人を殴るのが好きでよ。その殴る感触も好きだし、こうやって人を痛めつけるのも、痛がってる奴を見るのも好きなんだよ。


グリグリ


部長: グッ…


上位: ってことで、こっちに来い。


紗耶: い、嫌です!紗耶は戦えないので!


上位: そんなのどうでも良いんだよ。今言っただろ、俺は人が痛がってるのを見るのが好きなんだって。そりゃあ、俺も男だから、より美人な女が痛がってる様子を見る方が好きだし。


部員: だ、だったらその子の代わりに私が!


上位: お前、ソイツより自分の方が美人だって思ってんのか、自意識過剰だなww


部員: ち、違う!そういう事じゃなくて…


上位: まず、お前はソイツと違って、俺にビビってたんだから、そもそも俺と戦う権利がもうねぇんだよ。お前には。


部員: そ、そんなの…


上位: ま、良いや。やるんならさっさとかかってこい。


部員: クッ……はぁぁ!!


上位: おっそw


バコッ!!


部員: グハァッ!



簡単に顔を殴り飛ばされ、女性部員は倒れた。



上位: あ、俺は女でも手加減しないタイプだから、どうなったかは知んねぇよw


紗耶: っ!!…


上位: それと、そこの女以外は邪魔だから、どっかに行け。



そう上位が言ったことで、武道場にいた大半の人々が、大慌てで武道場を出て行き、武道場には、上位と倒れている部長に女性部員、下位構成員、そして紗耶と菊山も残った。



上位: で、なんでお前は残ってんの?


菊山: 私はその子の友達だからです。


紗耶: さぁちゃん…


上位: wwお前も良いな。ソイツの後はお前に決めた。


菊山: やんちゃん、どうするつもりボソッ


紗耶: そ、そんなの紗耶も分かんないよボソッ


上位: よし、コイツらを退かして…っと…



畳の上に倒れている3人を、蹴って壁際に寄せる。



上位: お前が、そこの畳から内側に入ってきたら、勝負開始で、これから1分間内側に入ってこなかったり、逃げようとしたら、問答無用で勝負開始だ。


紗耶: …


上位: 残り60秒w


菊山: …


紗耶: …さぁちゃん。紗耶、行ってくる。だから、紗耶が戦ってる間に、さぁちゃんは逃げて。


菊山: いや、戦うって言っても……それに…


紗耶: お願い。さぁちゃんだけでも。


菊山: …嫌だよ…


紗耶: お願いだからね。じゃ、またね。



そう言って、紗耶は上位に向かって歩き始める。



上位: wwやっぱり良いな、お前。


菊山: やんちゃん!!


紗耶: ゴクン……ふぅ…ふぅ…



緊張と恐怖で浅くなっている呼吸を繰り返し、鳴り止まない鼓動を何とか落ち着けようとする紗耶だが、それができないまま、上位が示したラインの一歩手前まで歩き…



紗耶: お願いします。



頭の中で、昔から見てきた木村道場での祖父や兄の様子を思い浮かべつつ、一礼をして戦場に足を踏み入れた。



紗耶: (じいじ、兄貴。紗耶に力を貸して!)


上位: もしかして、格闘技を齧ってるタイプか?w


紗耶: ふぅ…


上位: 楽しめそうだな!!!



そう叫び、上位の拳が、紗耶の顔目掛けて放たれ…



紗耶: っ!!



その迫力に、紗耶は目を瞑ってしまう。



上位: チッ…死ね!!


菊山: っ!!!


パシンッ!



武道場に、拳を手で受け止める音が響いた。



??: 俺の妹に、何してやがんだ。


紗耶: え…


上位: んだ、てめぇは。


紗耶: あ、兄貴…


菊山: 良かった、間に合った……春時先輩…


春時: 俺は、お前が殴ろうとしてた、この子の兄貴だよ!!



そう言って、紗耶を抱き寄せつつ、掴んだ上位の拳を押し戻す。



春時: 後ろに下がっといて、紗耶。


紗耶: う、うん…


菊山: やんちゃん、外に出よ!


紗耶: で、でも…


春時: 紗耶。さぁちゃんと一緒に、外に出とけ。危ないから。


紗耶: …分かった。



そうして、紗耶と菊山は無事、武道場の外に出た。



上位: ったく。せっかくの獲物を逃がしやがって。


春時: 獲物だと?


上位: でも、さらに楽しめそうな奴が来てくれたから、良いかw


春時: 何者だ、お前は。


上位: 俺は…そうだな。どうせ捕まったヤツがいたら、バレるだろうし良いだろう。俺らはアンチっていう組織の構成員だ。


春時: アンチ…


上位: ま、そんなことどうでも良いがな。早速やり合おうぜ。


春時: ふぅ…(コイツが本当にアンチなら、ここで倒さないと。それに、紗耶を傷つけようとしたコイツは、絶対許さん!)



2人は向かい合って構える。



上位: 行くぞ!!


ブンッ!!



畳を踏みしめて上位が放った右拳を、春時は少し横に移動して回避する。



春時: …


上位: オラッ!!



その春時を追うように、上位は上半身を回転させて、裏拳を当てようとするが…



バチンッ!


春時: クッ…(重っ)



両腕を顔の前で閉じて、春時は裏拳を防御する。



上位: フンッ!!



防御した瞬間の硬直を見逃さず、上位は振りかぶった左拳を春時に叩きつけた。



ドンッ!!


春時: グッ…すげぇ威力…



それも何とか防御し切った春時だが、これまでに受けたことのないような上位のパワーに腕が痺れる。



上位: wwお前、俺よりは弱いが、ここ最近で戦った敵の中では、一番強いぜ。


春時: そりゃどうも……ふぅ…(何とかして勝ち筋を見つけなきゃだな……そのためには攻め手に回らないと)


ダンッ!!



畳を蹴り、春時は上位に接近しつつ、右手を顔に突き出す。

突き出した右手で、上位の死角を作り出し、右足の下段を入れにかかる。



上位: うぉっ…危ねぇw



当たる寸前で上位が足を上げて、それは避けられるが、片足を上げて体勢が不安定な状態を好機と捉え、すぐに連撃を仕掛けた。



春時: ハッ!!


上位: クッw



左拳、右拳、右膝、右肘、左肘と、防御される前提で、威力が高く、隙の少ない攻撃を打つ。


しかし、上位はそれを全て捌いた上で、春時の腹を前蹴りで押し込んだ。



春時: グハッ!……ふぅ…ふぅ…(コイツ、多分、あの京都で守里と戦ってたヤツより強いぞ。)


上位: ほらほら、こんなもんじゃないだろ?wもっと遊ぼうぜ!


ブンッ!!


ビュンッ!!


パシンッ!


ドンッ!!



腹の痛みを堪えつつ、痺れる腕を無理やり動かして、最小限の動きで、上位の攻撃を避け、弾く。



春時: (正直、今の状態じゃ、コイツは倒せない。)


上位: どうしたどうした?!もっと楽しませろ!!


春時: (だが、あれを使えば……)


上位: このままだと、負けちまうぞ!


春時: (いや、でも…)


上位: そうなれば、お前の妹はどうなるんだろうな!


春時: ふぅ…(やるしかないな。今の俺にできる最強の一撃をコイツにぶつけてやる!)


上位: 倒れてるお前の目の前でボコボコに…


春時: いつまで喋ってんだよ!!クッ…


ドンッ!!



受け続ける一方だった春時が、一旦距離を取るためにと、捨て身で上位の腹に左の縦拳を打ち込む。



上位: ww距離なんか開けさせるかっての!!



だが、その威力に後退することもなければ、怯むこともなく、上位はさらに春時との距離を詰めた。


春時の思惑通りに。



上位: 死ねや!!w



左の縦拳を打った体勢のままの春時を見て、上位は笑いながら右拳を十分に引き上げて、打ち出そうとする。


その瞬間…



「ざっと言えば、武炎というのは、自身の体が受けた力を、余すことなく攻撃や移動に費やす武術なんじゃ。」



春時: 武炎!!


ダンッ!!!



音を鳴らして畳を踏み、それによって畳から返ってきた力を、腰の回転と肘の回転で右の掌底まで運び、その力を上位の肩にぶつけた。



ゴキッ!!


上位: グガッ!!


春時: ハッ!!



そしてすぐに、春時は上位の腹に横蹴りを入れ、後退させる。



上位: グフッ…ふぅ…


春時: 舐め過ぎだぞ…


上位: クッ…肩がぶっ壊れたか…w


春時: まだやるか?


上位: …



少し距離が開いた状態で、構えを崩さないまま、睨み合う2人。



上位: チッ、やめだ。今は遊びじゃなくて仕事だからな。これ以上のダメージはマズい。


春時: …


上位: 追ってくんなよw



そう言って、上位は右肩を押さえながら、武道場を走り去り、その背中が見えなくなった後…



春時: はぁぁあああ~


ダンッ



畳に背中をつけ、天井を眺めながら、長い息を吐いた。



春時: マジで助かった……(あのまま戦ってたら、確実に死んでたわ。腕も限界だったし、あの武炎の一撃は初見の時でしか当たらないだろうからな。まだまだ習得途中で、地面を蹴る音が鳴る……もっと強くなんないと。)



と、少し体を休めながら、考えていると…



紗耶: 兄貴!大丈夫?!


菊山: 春時先輩!!


春時: あ、紗耶、さぁちゃん。



武道場に戻ってきた2人が、倒れている春時に駆け寄る。



春時: すぐに、厚生委員と風紀委員を呼んでくれ。あの2人は早めに診てもらった方が良いだろうし、あの男は早く捕まえないと目を覚ます。


菊山: 既に呼んでます!


春時: 笑、さすが。


紗耶: それよりも、兄貴は?!


春時: 俺は…まぁ大丈夫だ。あと少し休めば動ける。


紗耶: ほんと?


春時: あぁ……よいしょ…ほら。


紗耶: ほらじゃないよ……もう!心配させないで!


春時: それはこっちのセリフだぞ笑。さぁちゃんから、紗耶がピンチって連絡が来た時には、肝が冷えたんだから。


紗耶: …ありがと。


春時: 当たり前だ。兄貴なんだから。それに、紗耶もよく頑張ったよ。


紗耶: うん……紗耶は頑張った。


春時: 笑、俺はもう行くから。2人はここ、よろしく。


紗耶: どこ行くの?


春時: …守里を探してくる。


紗耶: 守里先輩を?


菊山: なんでですか?


春時: ま、ちょっとな。2人は守里がどこにいるとか知ってる?


紗耶: いや知らない。


菊山: 私もです。


春時: 了解。じゃ、気をつけて。


紗耶: うん、兄貴こそ!


菊山: 頑張ってください!



笑顔の2人に見送られて、春時は武道場を出て、守里を探しつつ、各所のトラブルの解決に協力するのであった。




to be continued

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