ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

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第7章 文化祭編

第261話「弱点と強み」

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実習校舎4階



守里: ふぅ…


黒峰: お前、さっきも聞いたが、風紀委員か?


守里: …あぁ。


黒峰: ふ~ん、やっぱりか。


守里: 腕章はつけてないが、よく分かったな。


黒峰: まぁ、偶然かもしれないが、俺の動きを嗅ぎつけてここまでやって来たんだから、普通の生徒ってよりは、風紀委員の方が可能性は高いんじゃないかな、って思って。


守里: じゃあ、逆にお前は誰だ?



睨み合いながら会話を続ける2人。


守里としては、誰かが気づいて手助けに来てくれるまでの時間稼ぎをしたくて、会話を試みているのだが、なぜ守里がそうする必要があると考えたのか。

それは…


コイツ、ヤバすぎる。

京都で会った、あの紫雲和麒と同等の雰囲気を感じる。


おそらく、今の俺では、1人でコイツに勝つことはできない。

いや、確実に無理だ。


だから、誰か助っ人を呼びたいんだが、携帯を触れるような余裕はない。

取り出した携帯に意識を向けた瞬間に倒されて、コンピュータを破壊されるだろう。


つまり、今ここで、俺がすべきことは、誰かがこの異常に気づいて来てくれるまで、この男を後ろに通さないってことだ。


だが、あの監視カメラの映像をリアルタイムで監視している灰崎君が、行動を起こしていないということは、向こうでも何か起こっている可能性が高い。

しかもコイツらの作戦通り、各所のトラブルに意識を取られて、生徒会や他の風紀委員がこっちの異常に気づくことは、ほとんどありえないか…


どれぐらいの時間、持ちこたえ続けられるだろう…


笑、違うな。

絶対に持ちこたえて、みんなを守るんだ!



守里: 何だ、答えてくれないのか?


黒峰: うん、お前が時間稼ぎをしたいのは分かった。だから、わざわざ俺がお前の作戦に乗ってやる必要はないんだが……まぁ良いだろう。教えてやるよ。


守里: へぇ…


黒峰: 俺…いや、俺らはアンチって組織だ。もうすぐ一般層にも広まると思うがな。


守里: っ!アンチ…ねぇ。



初日に来た愛理ちゃんの推測通りか。


嵐の前の静けさのよう…

この、嵐っていうのは、この能高への襲撃のこと。



守里: この襲撃は、前々から計画してたわけ?


黒峰: wwあぁ。ちょっとお前らに、俺らの仕事を邪魔されたもんでね。その仕返しだよ。


守里: …白仮面の件か。


黒峰: おぉ、そうだそうだ。白仮面だよw。あの薬ばらまいたヤツ。


守里: あれも、お前らが…


黒峰: …もしかして、初っ端に白仮面を見つけた風紀委員って、お前だったりする?w


守里: どうだろうな笑。そうかもしれないぞ。


黒峰: w、良い度胸だ。さぁ、そろそろお喋りは止めにして、やろうぜ。


守里: …来い。


黒峰: 行くぞw



瞬時に構えた黒峰は、一歩で守里の懐に入り込み、左拳を顔目掛けて伸ばす。



バシッ!


守里: …



その拳を、右に重心を寄せつつ右手で下に弾くが、弾かれたと分かった瞬間に、黒峰が腰を回転させ、右のフックを放つ。



守里: フッ!



それに対し、守里は下がることなく、少し体を左に傾けて拳を避けつつ、素早く左手を黒峰の顔目掛けて突き出す。



黒峰: おっと…



左足を下げて、一歩分後退することで、守里の拳を喰らうことなく次の動作に入ろうとした黒峰だったが…



守里: ハッ!



その動作を見た守里が、すぐに右の横蹴りを出したことで、さらに後ろに下がる羽目となった。



黒峰: まだまだ!w



再び、一気に距離を詰め、拳や蹴りを守里に向かって放ったが、全て小さな動作で弾かれるか、避けられるかして、中々その場から守里を動かすことができない。



黒峰: オラッ!


守里: フンッ!



黒峰の蹴り込みを両手で弾き、床に落とし、守里はそのまま押し込む。



黒峰: そんなんで良いのかよっ!



押し込まれて、後ろに仰け反りつつも、後退はしなかった黒峰が、守里の顔を、守る腕の隙間から狙う。



ビュンッ!



しかし、それを瞬時に察知した守里は、その拳の軌道から顔を離しつつ、押し込みから掌底に体勢を変える。



黒峰: ほぉw…



その掌底も、結局は後ろに跳んだ黒峰には避けられてしまうが、当初の目的通り、守里は黒峰を後ろに通すことはしなかった。



黒峰: …随分と見切りが上手いな。


守里: そりゃどうも。



◆◆◆◆◆◆◆


およそ1週間前


木村道場



一: よし、一時休憩じゃ。


守里 春時: はい!



稽古を中断し、2人が壁際に寄り、水分補給をし始めたところで、一が話し出す。



一: 守里。改めて、お前の弱点と強みをきちんと教えとかんとな。


守里: え、いきなりどうしたんですか?


一: いきなりと言っても、儂はこの2週間、じっくりとお前を分析しておったんじゃ。最初にお前に言ったことが正しいかどうかも含めてな。


守里: なるほど……その分析が終わったということですね。


一: まぁ、そんなところじゃ。


守里: では、お願いします。


春時: それって俺も聞いてて良いわけ?守里の弱点とか。


一: 笑、守里とお前が闘うことなんかないじゃろうから、問題ないと思うが?


守里: うん、構わないよ春時。むしろ、一緒に聞いてもらって、僕の弱点を知ってもらってた方がありがたいかも笑


春時: 了解。


一: それに、守里の力は春時相手には使えんみたいじゃからな。たとえ闘うことになっても、弱点もクソもなく守里がボコボコにされて終わりじゃ笑


春時: いやいや笑、それは分からないって。


守里: いや、師範の言う通りだよ。素の状態じゃ、僕は春時に攻撃できないし、あの武術を使った春時の攻撃は、かなり効くからさ。


一: ま、春時は武炎の扱いに関しては、まだまだじゃが笑


春時: これからだよ笑


一: さ、本題に入るぞい。


守里: はい。


一: まず、初めにお前に言った、スピードは中々で、パワーは一級品、反応速度も良いが、攻撃がド下手。この言葉は変わらん。要するに基礎能力値は高いが、攻撃の技術が拙すぎるんじゃ。


守里: 攻撃の技術ですか…


一: それは、半分お前の、最速で敵を倒したいという考え方のせいなんじゃがな。


守里: では、その考え方を改善すれば、多少は良くなるんですか?


一: まぁな。しかし、初めは中々難しいじゃろう。じゃから、フェイントや重心移動といった技術を身につけつつ、同時に意識改善を少しずつやっていくべきじゃ。


守里: 分かりました。


一: ちなみに、お前自身も分かっていることだとは思うが、攻撃がド下手なのは、お前が長い間、敵の攻撃を受け続けるだけで、攻撃を全くしなかったせいじゃ。


春時: ま、それはしょうがないな笑


守里: うん…


一: だが、その代わりにお前は、防御に関してはかなり上手い。


守里: それが、僕の強みってことですか?


一: そうじゃ。というか自分で途中で気づきそうなものじゃがの笑


守里: いや、気づかないですよ。ただ必死に、敵の攻撃を受け続けていたんですから。


一: 笑、そこじゃ。それがおかしいと思わんか?


守里: え?


一: いくら敵の攻撃が弱いと言っても、普通、数分間も複数から攻撃を受け続ければ、人は立っておられん。漫画の世界じゃあるまいし。お前のその頑強さは、別に人間離れしとるわけでもないからの。


春時: まぁ、言われてみれば確かに。


守里: ほんとだ…


一: つまり、お前は単純に攻撃を受け続けていたわけではなかったということじゃ。


春時: えーっと?


一: 敵の攻撃を見切った上で、急所に入りそうな攻撃は、急所を外して受けつつ、勢いのある攻撃は、その勢いを抑えるような形で受けていたんじゃよ。


春時: おぉ、お前、そんな高度なことを…


守里: いやいや、そんなことは別に考えてなかったけど…


一: ふむ。それこそ、長い間、敵の攻撃を受け続けた経験から、無意識的に体が動いていたんじゃろ。


春時: なら、防御においては、めちゃくちゃ強くね?


一: まぁ、防御だけに意識を向けた守里を倒し切るのは、儂でもちとキツい。


春時: だって。すげぇじゃん、守里。


守里: 笑、ありがとうございます。


一: ただ、上には上がおるからな。それに、強い相手に対して、防御だけしておれば、逆にそれを利用される可能性もあるから、あまり調子に乗らんことじゃ笑


守里: はい!


一: 肝心なのは、攻撃と防御の意識の比率。慣れてくれば、そんなこと考えんでも戦えるが、今のお前は考えるべきじゃろう。そうじゃな…防御に8割で、牽制と間合いを取るための攻撃に2割ほど、意識を回せば、自分より強い相手に対しても戦えるはずじゃ。


守里: 分かりました。頑張ります!


一: 笑、よし、稽古を再開するぞい!


守里 春時: はい!!



◆◆◆◆◆◆◆



黒峰: ww、こりゃ崩すのに、少し時間がかかりそうだ。


守里: ふぅ…



防御に8割、攻撃に2割。

牽制や間合いを取るのに、攻撃を仕掛けるだけで、あくまで今回は、敵を倒すための攻撃は使わない。


ここを守りつつ、時間を稼ぐんだ!


そう考えながら、守里は格上との戦闘に全神経を集中させるのだった。




to be continued


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