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第7章 文化祭編

第245話「1年生組vs守里」

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第5体育館

裏手



守里: ふぅ…



とにかく、学校の中心から離れたところに来たけど…

ここら辺で隠れとけば、残り40分ぐらいやり過ごせるかな?


…いや、無理か。

この赤の宝石をどれだけの人が狙ってるのかは、分からないけど、たくさんの人が虱潰しに探し始めると考えると、同じ場所に隠れ続けるのは、ダメだ。

同じ場所に隠れる時間を決めて、周りを警戒しつつ、移動していかないと。


よし、まずは、ここで10分ぐらい隠れて、その間に、次の隠れ場所を考えよう。

まぁ、周りが騒がしくなってきたら、早めに動くことも検討して…



守里: お、ここ良さそう。



こうして、守里は1時間逃げ切るための作戦を立て、実行に移していくのだった。




教室校舎2階



新里: 守里先輩は……カフェにはいなさそうだね。


珠美: うん。どこに行ったんだろう…あ、東野先輩!



力を貸してもらうためにと、守里を探しに執事&メイド喫茶にやってきた新里と珠美は、廊下に立っていた東野に話しかける。



東野: あれ、確か…珠美ちゃん。また来たの?


珠美: あ、いえ。今は…


東野: 笑、赤い宝石を探してるんでしょ。


珠美: はい!


東野: でも、それでなんでここに?


珠美: 守里先輩なら、なにか知ってるかもってことで、守里先輩を探してるんです!


東野: なるほど…だけど、残念ながら、今日はもう、守里君はオフだから、ここにいないよ。


珠美: そうですか。ありがとうございます!別の所を探してみます!


東野: 頑張って……って、紗耶ちゃん達も来てるじゃん笑


珠美: え?


紗耶: たまちゃん?!


新里: あ、さ、さぁちゃん…


菊山: っ!…お、優太じゃん。やっほ~



3人で話していたところに、紗耶と菊山も来た。



東野: もしかして、紗耶ちゃん達も、守里君を探しにここに来たの?


紗耶: はい…って、紗耶も?


珠美: 珠美も、守里先輩を探しに、ここに来たの!


紗耶: そうだったんだ。


菊山: みんな、考えることは同じだったんだね笑


新里: ふぅ……うん。そうみたいだね。


東野: さっき、珠美ちゃんにも言ったけど、ここには守里君はいないよ。


紗耶: そうですか……じゃあ、守里先輩は一体どこに…


珠美: とにかく探し回るしかないのかな?



と、2人がお店の前で立ち止まり、考えていると…



春時: …澪奈、ちょっと。



お店の入口から、春時が東野を呼ぶ。



東野: ん?どうしたの?春時。


春時: …2人へ、赤の宝石の在処についての大ヒントボソッ


東野: …あぁ、そういう事ね笑


紗耶: え?



2人が来ている理由に勘づいた春時は、執事として仕事をしている自分が、2人と普通に話すわけにはいかないということで、プロデューサーとして知れ渡っている東野を通して、ヒントを伝えようとする。



春時: 守里を捕まえればいいボソッ


東野: 守里君を?ボソッ


春時: あぁ。志帆が言うには、守里が赤の宝石を持ってるみたいだからボソッ


東野: 志帆が言うなら、間違いないね。分かった、伝えとくボソッ


春時: じゃ……アドバイス、ありがとうございます。



そう言って、一礼して、春時は仕事に戻って行った。



紗耶: まさか兄貴のやつ、何かやらかしたんですか?


東野: 笑、いや、2人へのヒントだって。


珠美: ヒント?!


東野: 赤の宝石は、守里君が持ってるんだって。だから、そのまま守里君を探せば良いのよ笑


紗耶: 守里先輩が赤の宝石を持ってるんですか?!


珠美: なんと?!


東野: すごいわね、2人とも笑。偶然とはいえ、答えに迫ってたんだから。


紗耶: いえ…でも、どっちにしろ、どこに守里先輩がいるのか…


珠美: そこだよね~う~ん…


菊山: 守里先輩が、赤の宝石を持ってるってことなら、守里先輩は今頃、その宝石を奪われないように、逃げてるわけじゃん。


東野: うん、そうなるね。


紗耶: それで?


菊山: だったら、できるだけ人に見つかりにくい場所、人がいない場所に隠れると思う。少なくとも、私が守里先輩の立場なら、そうするよ。


紗耶: 確かに…


珠美: 人が少ない場所か…


新里: 人が少ない場所と言えば、昨日も今日も見回りした感じ、第5付近は、人がほとんどいなかったよね。


珠美: あ!ほんとだ!いなかった!


紗耶: ってことは、今、守里先輩は、第5体育館と第5グラウンドの近くに隠れてるってこと?


菊山: まぁ、その可能性が高いってだけだけど。


新里: とりあえず、行ってみる価値はあるんじゃないかな。


珠美: 珠美いってきます!!東野先輩、ありがとうございました!!


紗耶: さ、紗耶も行く!!先輩、ありがとうございました!!



そう叫び、2人は大急ぎで、走っていった。



菊山: あ、置いて行かれた。


新里: 笑、僕達も行こう。


菊山: うん。


東野: あの子達には、2人がついてれば問題なさそうね。


新里: え?


東野: 沙也加ちゃんは、紗耶ちゃん派。君は、珠美ちゃん派なんでしょ?


菊山: …あぁ、守里先輩を狙ってる女の子を、応援してる人ってことですか。


東野: そうそう。


菊山: だったら、そうですね。私はやんちゃんを応援してます。


東野: 春時と同じだ笑


新里: 僕は……珠美を。


東野: へぇ~笑(この顔はもしかしたら……面白い)


菊山: 東野先輩は、誰派なんですか?


東野: 私は飛香派。だから、一応、敵同士なのよ笑


菊山: でも、先輩とは仲良くしたいです!


東野: そんなの、私も一緒よ。ま、それぞれのポジションはあるけど、仲良くしていきましょ。


菊山: はい!


新里: はい。


東野: じゃ、早くあの2人を追わないと。


菊山: そうですね。


東野: またね。


菊山: はい!また!


新里: ありがとうございました。



東野に見送られ、菊山と新里の2人も、紗耶と珠美を追って、第5体育館と第5グラウンドの方に向かうのだった。


◇◇◇


第5体育館裏手



守里: …



そろそろ10分経つし、移動しようかな。

次は、木を隠すなら森の中、人を隠すなら人混みの中理論で、1番人が多そうな、第3グラウンドに行くことに決めたけど……実際に、僕が紹介されてるってやつも見ときたいし。


でも、これは、ほぼ賭けに近いんだよな。

どれぐらいの人が、赤の宝石を持ってるのが僕だって気づいてるのかが分からないから、もしかしたら、人が多いとこに行った瞬間、追いかけられることになるかもしれない。


まぁ、悩むけど、一旦行ってみて、危なそうだったら逃げれば良いし、その次の隠れ場所も決めてるから、どうにかなるでしょ。


じゃあ、早速、周りを警戒しながら…


と、隠れている木の影から、守里が顔を出そうとしたところで…



ガサガサ



守里: っ!!!



物音が聞こえ、守里は出そうとした顔をすぐに引き戻す。



「こっちにいるかな?」


「やんちゃん、さすがにそっちにはいないんじゃないの?!」



守里: …



この声は、紗耶ちゃんとさぁちゃんだ。


誰かを探してる?

まさか、僕を…



紗耶: でも、本気で逃げてる守里先輩なら、隠れるかもじゃん!こういうところにも!


菊山: じゃあ、一応確認してみて!


紗耶: うん!……ヨイショ



ガサガサ



草を掻き分けながら、守里が隠れている所に、段々と近づいてくる紗耶。


マズい!

このままじゃ、見つかる!


どうすれば………あ、良い枝発見。


足元にある、良い感じの木の枝を拾い上げた守里は、真横に向かって、その枝を投げた。



カツン…ガサ



紗耶: ん?守里先輩!いるんですか?!



その枝が音を鳴らした方向に、紗耶が移動し始める。



守里: …



よし、今のうちに、静かに移動を…



菊山: どうしたの?やんちゃん!


紗耶: いや、あっちから音が聞こえてさ!


菊山: 音?……それって、足音っぽかった?


紗耶: いや、なにかが木に当たった音みたいだった!


菊山: 木に当たる……ねぇ、その音が鳴った方向と逆の方に行ってみて。私も行くから!


守里: …



さぁちゃんの勘が鋭すぎるぞ!

…仕方ない、全速力で逃げる!!



ガサッ!!



落ち葉を踏み地面を蹴った守里は、木の影を飛び出し、木の間を駆け抜ける。



紗耶: あ!守里先輩!!


菊山: やっぱり!!やんちゃん!捕まえるよ!


紗耶: うん!!



その守里の動きに反応した2人も、走り出す。



守里: ちょっとは手加減して欲しいな!紗耶ちゃん、足速いから!!


紗耶: 先輩の方が速いんですから、紗耶のためにも止まってください!!


守里: ごめんだけど、無理!!


紗耶: 守里先輩が赤の宝石を持ってるんですか?!


守里: それはどうかな!!


菊山: 絶対に持ってますね!!


守里: 持ってない!!


紗耶: 嘘です!!


守里: 嘘じゃないよ!!


菊山: あ、ちょっと待って、もう無理かも!


紗耶: え?!早いって!!


菊山: やんちゃん、頑張れ!!…ハァハァ



喋りながらだったせいか、菊山は早い段階で息が切れて立ち止まり、紗耶1人で、走る守里を追いかけることになった。



紗耶: 待ってください!!(やっぱり守里先輩は速い…それに、まだこのぐらいだと、全速力じゃないはずだから……紗耶1人じゃキツいよ~)


守里: ふぅ…



そろそろペースを上げて引き離さないと、次の目的地がバレるな…



珠美: あ!守里先輩!!


守里: っ!!


新里: ほんとにいた!



紗耶を引き離しにかかったところで、真正面に珠美と新里が飛び込んで来て、守里は驚きつつも、なんとか2人を避ける。



守里: あっぶな…2人も来てたのか…


紗耶: たまちゃん!優太!止めて!


珠美: 分かってる!守里先輩!珠美に捕まってください!


新里: 逃がしません!


守里: 笑、じゃあね!



先程の考え通り、守里は全速力に近いペースまで速度を上げ、追ってきている3人を引きちぎった。



紗耶: ハァハァ…守里先輩…


珠美: …ハァハァ…ぴえん…


新里: きっつ……やっぱ、単純な追いかけっこで、守里先輩に適うわけないよ。


珠美: 優太!…そんな弱気になっちゃ…ダメでしょ!…ハァハァ…


紗耶: で、でも…優太の言う通り、さっきみたいな感じじゃ、勝ち目ない…


珠美: …どうする?


紗耶: とりあえず追いかけて…


菊山: みんな~



守里の姿が見えなくなり、立ち止まって息を整えていた3人に、菊山が追いつく。



菊山: 守里先輩は…ダメだったか。


紗耶: うん…


新里: 守里先輩、めっちゃ速い。


菊山: だろうね。でもこれで、守里先輩がいる場所を制限できたじゃん。


紗耶: え?


新里: 確かに。


菊山: こっちの第4、第5側に続く道は、ここ1つしかないんだから、私がここに立っとけば、守里先輩がこっちに入ってくることはないでしょ。


珠美: あぁ!そういうことか!


紗耶: なるほど……でも、さぁちゃんはそれで良いの?


菊山: うん、任せて。


紗耶: …じゃあ、よろしく。


菊山: ってことで、早く守里先輩を捕まえてきな。


紗耶: はい!


珠美: いってきます!!



そうして、2人は守里を探すために、再び走り出した。



新里: …


菊山: 優太は行かないの?


新里: ……ほんとは走りたくないだけなんじゃ…


菊山: ん?笑、なんか言った?


新里: …い、いや、いってきます。


菊山: うん!頑張って~



そのすぐ後に、少し引き攣った顔をした新里も、走り出したのだった。




to be continued


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