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第7章 文化祭編

第241話「ヒヤヒヤな紗耶の演劇」

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午後


シフトが入っていない守里、日向子、飛香、春時の4人は、予定していた通り、紗耶達の演劇を見に行くために、教室の前に集まる。



守里: よし、早めに第2体育館に行こう。


飛香: だね。席を取っとかないと。


日向子: やんちゃんのジュリエット、楽しみ!


春時: …


飛香: なに、春時も緊張してるの?


春時: いや、そういうわけじゃないが……紗耶も今頃、めちゃくちゃ緊張してるんだろうなって思って。


飛香: まぁ、そうだろうね。


守里: でも、紗耶ちゃんは強い子だから、きっと大丈夫。


春時: 笑、だよな。


飛香: それに、守里からも背中を押してもらったみたいだし。


春時: そうなのか?


守里: 背中を押したって言うか、エールを送っただけ。


春時: 笑、1組の方に行ったのな。


飛香: そりゃそうでしょ。やんちゃんに加えて、たまちゃんもいたんだから。


守里: それと、さぁちゃんも。


春時: じゃあ、1組に行くのは必然だったのか笑


飛香: うん笑。守里に、なでなでしてもらってたよ、やんちゃんとたまちゃん。


春時: へぇ~


守里: 全然、OK出してくれなかったから、結構長いことやったよ笑


飛香: その時の美月の目がさ笑


春時: うわ、そりゃ怖ぇ笑



美月: …(誰かが噂をしてる気が…)お帰りなさいませ、ご主人様♡



日向子: ちょっと、何やってるの!早く行かないと!!


守里: はいはい笑。日向子がもう待ちきれないみたいだから、行こう。


飛香: 一応、開演まで残り30分はあるんだけどね笑


春時: 小腹満たすために、途中で何か買ってくか。


守里: あ、それ良い。日向子!何か食べたいものある?


日向子: 食べたいもの?…ドーナッツ!!


飛香: ないでしょ笑


守里: …いや、あったような…


春時: マジ?


守里: ほら、ここ。


飛香: ほんとだ。しかも第2体育館の近くじゃん。


春時: まさか、この状況を見越して…


守里: そんなわけ笑、たまたまでしょ。


日向子: ドーナッツ食べれる?!


飛香: うん。途中で買ってから行こう。


日向子: やったー!!!ドーナッツ!ドーナッツ!!


春時: おいおい、声が大きいぞ笑


日向子: あ、ごめんごめん笑


守里: 笑、さ、行こう。



そうして、守里達は途中でドーナツをいくつか買い、外で食べ終わってから、第2体育館の中に入った。


◇◇◇


第2体育館



守里: やっぱ、結構人いるな。


飛香: うん。あ、前の方空いてるけど…


守里: 良いじゃん。行こ。


春時: いや、紗耶のためにも前は止めたが良いかもだぞ。


守里: え、そうなの?


飛香: 確かにね……でもまぁ、やんちゃんなら大丈夫でしょ。日向子ももう行っちゃったし。


春時: やべ、こっちに手振り出した。早く行こうぜ。(紗耶、すまん。)



演劇専用の体育館ということで、少ない装飾で上品な雰囲気にまとまっているステージを、一番近くのど真ん中で見られる席に、守里達は座った。



日向子: ソワソワ


守里: 笑、日向子はソワソワし過ぎ。


日向子: だって、楽しみなんだもん!


守里: あと少ししたら、始まるんだからさ笑


日向子: やんちゃんと、さぁちゃん、どんな感じなんだろう~


飛香: やんちゃん、緊張して失敗しないといいけど…


春時: さくちゃんの方は、ロミオ役がかっきーだって聞いてるから安心だが、紗耶の方はどうなんだ…


飛香: 聞いてないの?


春時: あぁ。聞くに聞けなくてな。


飛香: 笑、何気に心配なんだね。


春時: いや、俺じゃなくて……おそらく、まだ会ってはないが、じいちゃんも来てるはずなんだよ。


飛香: え、あのやんちゃんが大好きな、おじいちゃん?


春時: おう。となると、劇の途中でもロミオ役を殴りに行きかねなくて…


飛香: そんなに?


春時: その可能性の方が高い。


飛香: だったらヤバいじゃん。


春時: マジで、キスシーンがないことか、ロミオ役が女の子なこと、あとじいちゃんが奇跡的にキスシーンを見ないことを願うしかない。


飛香: さぁちゃんが台本の作成に関わってるって言ってたから、やんちゃんがキスシーンをやるようにはなってないと思うけどな~


春時: そう信じる…



と、春時が両手を合わせて願ったところで、体育館の照明が消され、真っ暗になり…



日向子: 始まる始まる!


春時: (無事に終わってくれ…)



「それでは、1年1組のチームBLUEによる、ロミオとジュリエット、開演です。」




「ロミオ、おはよう!」


「おはよう?…まだ、そんな時間だったのか。」


「あぁ。まだ朝だぞ。にしても、随分と浮かない顔をしているな。何か悩みでもあるのか?」


「はぁ…俺は、君から見ても分かるぐらいに、悩む表情をしているんだな笑…」


「…もしや、その悩み…恋か?」


「…愛する人の好意を得られない。その人は恋をしないと誓っているんだよ。」


「だったら、俺の言うことを聞いて、そんな女のことは、忘れてしまえ!」


「どうやって?」


「俺が、その人以上に美しく魅力的な人を見せてやる!」


「笑、無理だよ。」


「絶対に口だけでは終わらせないから、覚えておけ。」



春時: (ロミオ役…あれは、女の子じゃないな。正真正銘、男だ。)


守里: (ロミオ役の子、緊張してるな。笑顔がぎこちない。)



「ジュリエット様~」


「なに、誰か呼んだ?」


「お母様ですよ。」


「はい!お母様、なんの御用?」


「実はね…と、その前に婆や。少し席を外して…」


「ん?笑」


「い、いえ、やはり居てちょうだい。知っての通り、ジュリエットも、もう年頃。」


「そりゃもう。お嬢様のお年なら何時何分何秒、地球が何回回ったかまでも、存じ上げております。なんなら、お嬢様が産まれてからこれまでの行動から心情まで、一からご説明させていただいても…」


「やめて!婆や。」


「かしこまりました、止めます。」


「笑、婆やの娘に対する愛情の深さは分かったわ。それで、今、お話したいことは、あなたのお嫁入りのことなの。」


「お嫁入りですか?」



日向子: (やんちゃん可愛い!!それと、さぁちゃんも…可愛い?)


飛香: (なんか、婆や役がしっくりきてるんだけど笑。演技力が高いって事なのかな。)



「もしも僕の卑しい手が聖なる御堂を汚すなら、それより優しい罪はこれ。こうして控え、そっと口付けして、手荒な手の跡を清めよう。」


「巡礼様、そう仰っては貴方の手が可哀想。こんなにも礼儀正しく、帰依する心を示しているのに。聖者の像の手は、巡礼の手が触れる為にある。掌の触れ合いは、巡礼たちの口付け。」



春時: (ヤバい、キスシーンが来るぞ!)


飛香: (さて、どうなるか…ってか、やんちゃんは私達に気づいてないな。)



「では…動かないで。祈りの成就を見るまでは。」



そう言って、ロミオ役の男が跪き、ジュリエット役の紗耶の手を取り、手の甲に唇を重ねた。


ガタンッ



春時: (ふぅ…手の甲へのキスに変えてたか…)


飛香: (まずは、セーフね。)


日向子: (きゃ~やんちゃん!)


守里: (紗耶ちゃんの演技良いな~)



「さぁ来たぞ。見よ!あの軽やかな足取り。」


「ごきげんよう、神父様。」


「あぁ、ジュリエット!」



春時: (二度目のキスシーンだ。ここは、結婚のシーンだから、さっきのような回避はできないはず…どうか…どうか…)



「さぁ、誓いの口付けを!」



日向子: (ひゃーーー)


守里: おぉ…


春時: っ!!(やばっ)


飛香: (やって……ないか…でも、ここまでやってるフリが上手いと…)


「こんの…」


バシンッ!!!


守里: ん?(なんか今、すごい音が……気のせいかな。)


春時: (今さっきのはじいちゃんの声……ってことは、お袋も一緒に来てるのか。なら安心だ。)



状況を把握した春時は、安心して、演劇を楽しむのであった。


◇◇◇


体育館の外



日向子: いや~良かったね~


守里: うん。みんな演技上手だったし、楽しめた。


日向子: あのキスシーンのところは、ほんとにやってたのかな?ニヤニヤ


飛香: んなわけないでしょ。やってるフリ。


日向子: な~んだ。一番最後のシーンは、やんちゃんも顔真っ赤になってたから、本当にやってたのかと思ったよ。


飛香: あれは多分、目の前にいる私達に気づいたから。


守里: そうっぽかったよね笑


日向子: やんちゃんは、その最後だけだったけど、ロミオの方は、ずっと顔赤かったよ!


飛香: 笑、うん。


春時: …


守里: ん?春時は誰か探してるの?


春時: いや、じいちゃんとお袋はもう行っちゃったかなって思って。


守里: え、来てたの?…って、そりゃ来るか。


春時: まぁ、見つけたところで、話しかけるつもりもないし。次、どうする?


守里: 良いの?


春時: おう。だって、話しかけたところでだろ。一緒に回るわけでもあるまいし。


守里: 笑、一緒に回ったら良いじゃん。


春時: 嫌だよ笑


日向子: ねぇ、みんな!次どこ行く?!私は、お腹空いたんだけど!


飛香: ドーナツ食べたじゃん笑


日向子: それでもなの!


守里: はいはい笑


春時: まともに昼飯食ってないからな……ちょっとこの時間に食べるのは、アレかもしれないが、俺が前から気になってるのは、粉物ランドっていう模擬店で…


日向子: 粉物ランド?!楽しそう!


飛香: いや、遊べるところじゃないから。


日向子: え…


守里: 粉物ランドって確か、七星さんのクラスだよね?


飛香: …


春時: あぁ。たこ焼きやお好み焼き、それにパンケーキとか、とにかく粉物を揃えてるらしい。


日向子: パンケーキ!!食べたい!!


守里: うん。僕もそこがいい。


春時: 飛香は?


飛香: え、あ、うん。私も。


春時: よっしゃ、なら早速、教室校舎に戻ろう。


日向子: いぇーい!!
 


こうして、守里達は教室校舎へと戻り、途中で自分達のクラスの様子も見つつ、3階に向かうのだった。




to be continued
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