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第7章 文化祭編

第239話「なでなでは時間が大事」

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文化祭2日目

午前



守里: お帰りなさいませ、お嬢様。


美月: それでは、美味しくな~れ、萌え萌えキュン!♡


飛香: さっさと帰れ、ご主人様。



文化祭が始まって、30分程度経ち、昨日の勢いと同じ、いやそれ以上の勢いで来店するお客さんを、全力で捌いていく守里達。


リピーターも数多くいる中で、初日の様子が噂になったのか、新規のお客さんも増えつつ、それぞれの執事やメイドが担当としてつくお客さんのタイプに、ある程度の傾向が見え始めた。

最も分かりやすいのは飛香で、飛香のお客さんは、かなりの割合でMの人が多いようだった。


と、2組の教室前の廊下の壁に寄りかかって、腕を組む東野は分析している。



東野: (さすがにカップル層は来ないけど、他の層はそれぞれに合った執事かメイドがいるから、人は集まり続ける。それに、うちの狙いはリピーター勢だからね。)


??: あ!えっと…


東野: ん?



近くで発せられた声から、自分に向けたもののような雰囲気を感じ取ったので、その声がした方向を見ると…



東野: 確か……春時の妹だ!名前は…


紗耶: 木村紗耶です!


東野: そうそう、紗耶ちゃんだ。飛香のライバルの笑


紗耶: え?


東野: あと、後ろにいる子達は…


菊山: 菊山沙也加です。


珠美: 中村珠美です!


東野: 沙也加ちゃんに、珠美ちゃんか。2人とも可愛い笑(飛香のライバルの1年生が、2人とも揃ってんじゃん。)


珠美: え~嬉しいです!


菊山: 先輩も、すごく可愛いです。お名前は何て言うんですか?


東野: 笑、ありがと。東野澪奈よ。紗耶ちゃんとは、前に1回だけ会ったことがあるの。ね?


紗耶: はい!(東野澪奈先輩。ちゃんと名前を覚えとかないと。)


菊山: そうだったんですか。


東野: うん。3人は、喫茶店に来たんだよね?


紗耶: はい。兄貴がちゃんと働いてるのかの確認と、あとは…


珠美: 守里先輩に会いに来たんです!


菊山: あとは、いつも仲良くさせてもらってる先輩方も。


東野: おっと、そうなると…今は守里君と飛香、美月が1組にいて、日向子と春時が2組にいるの。だから、どっちにも入るか、どちらか片方に入って、もう片方は廊下から遠目で様子を見るか、になっちゃうかな。まぁ、うちの場合は1人しか担当を選べないから、たとえ同じ教室にいても、全員と話すことはできないんだけどね。


菊山: なるほど……どうする?


紗耶: 日向子先輩には申し訳ないですけど、1組の方に行きます。


東野: 春時は?笑


紗耶: どうでもいいです。そして、担当は…


珠美: 担当はもちろん、守里先輩です!


東野 菊山: だよね笑……あ。


菊山: 被っちゃいましたね笑


東野: 気が合う、というよりポジションが近いのかな笑


菊山: そうかもしれません笑


珠美: では、行ってきます!


紗耶: え、たまちゃん?!すみません、失礼します!


菊山: 私も行きます。


東野: うん、楽しんでね~



そうして、東野に見送られ、3人は1組の教室へ行った。




守里: ご注文がお決まりになりましたら、このボタンを押して、お呼びください。それでは、失礼します、お嬢様方。


紗耶: //は~い。


珠美: //はい!


菊山: 笑



言っていた通りに、守里を指名した3人は、執事姿の守里に見蕩れながらも(特に紗耶と珠美)、案内された席に座り、笑顔でお辞儀をして歩いて行く守里を眺める。



紗耶: やっば~~超カッコいい…


珠美: バイトもあの格好でやってくれないかな~


菊山: ほんと2人とも顔に出すぎだよ笑


紗耶: え?出てた?!


菊山: うん。守里先輩じゃなきゃ、自分に好意があるって、すぐに分かるぐらいに顔が赤くて、目が蕩けてた。


珠美: ひゃ~


菊山: 笑、どういう声。


紗耶: い、今は大丈夫?!


菊山: う~ん、まだほんのちょっと顔は赤いけど、目はキリってしてる。


紗耶: まだ赤いんだ…


珠美: 珠美は?!


菊山: いや、どうせ2人とも、また守里先輩が来たら、同じことになるんだし、気にしてもしょうがないでしょ。それとも、あのカッコいい執事姿の守里先輩と顔を合わせて、照れずに顔赤くならない自信があるの?


珠美: ないです!!


紗耶: 紗耶もない…かな。


菊山: だろうね笑。だから、もう諦めて、注文を決めよ。


珠美: はい!!


紗耶: な~んにしよっかな~


菊山: ってか、やんちゃんはさ、ここに来た一番の目的、忘れてないよね?


紗耶: もちろん…


菊山: ちゃんと、自分から言うんだよ。


紗耶: うん。


珠美: あ、珠美は抹茶パフェにする!


菊山: 抹茶パフェも良いな~


紗耶: ふぅ…


菊山: やんちゃんは何にする?


紗耶: え?えーっとね~




そして、注文を決めて…



ピロロロ



珠美: 守里せんぱ~い!!


菊山: そんな呼ばないの笑


守里: 笑、呼ばなくても、ちゃんと来ますよ、お嬢様。


菊山: ほら……って笑


珠美: ///


紗耶: ///


菊山: (自分で呼んでおいて、顔赤くなってんじゃん。)


守里: ?


菊山: あ、えっと、パフェのいちごと抹茶と桃をください。


守里: かしこまりました。では、少々お待ち…


菊山: チラッ、ちょっ、あの…この後、少しだけ話せませんか?


守里: はい、大丈夫ですよ。


菊山: じゃあ、お願いします。


守里: では、注文を通してから、また来ます。


菊山: はい。


守里: なら一旦、失礼しますね笑



そう言って、守里が笑顔で席を離れる。



菊山: ちょっとやんちゃん、なに固まってんの?


紗耶: あ、え、いや、あまりにカッコよすぎて。


菊山: はぁ……守里先輩にすぐ来てもらうから、ちゃんと話してよ。


紗耶: う、うん…


菊山: 次来た時に固まってても、助けてあげないからね。


紗耶: え~


菊山: いくら気まずい雰囲気になっても、知らんぷりするから笑


紗耶: マジ?


菊山: 大マジ。ね?たまちゃん。


珠美: はぁ~写真撮りたい…


菊山: うん、この調子だったら、どっちにしても助けてはくれなさそうだね笑


紗耶: …頑張ります。


菊山: 笑、まぁ、演劇本番のエールを貰うだけなんだけど笑


紗耶: その貰うだけが、ハードル高いんだって。


菊山: 普段はグイグイいける方なのに、なんでこう弱気になってんのかな~


紗耶: それとこれとは話が違うよ。


菊山: ふ~ん、ま、そういうものなのか。


紗耶: …笑、さぁちゃんが、コスプレしてカッコよくキメてる優太君の目を見れないのと一緒。


菊山: ///は、はぁ?違うし、目見れるし。


珠美: 優太がどうしたの?


菊山: な、なんでもない!なんでもないから!


紗耶: 笑


守里: 戻りましたけど、盛り上がってますね笑


紗耶: //守里先輩!


珠美: 先輩!めちゃくちゃカッコいいです!!


守里: そう?笑


菊山: ふぅ…(落ち着け、私。私はそっちの立ち位置ではない…)


紗耶: さ、紗耶もそう思います!


守里: ありがと。


珠美: バイトでも、その格好でやってくれませんか?!


守里: いや、さすがに笑


珠美: 絶対にもっとお客さんが増えるはずです!


守里: でもな~…あ、それで言うなら、僕だけがこういう格好してるのもおかしな話だから、店長や珠美、それと奈々未さんにも同じような格好してもらう必要があるでしょ?


珠美: た、確かに…


守里: ってことで、珠美が発案なんだから、店長と、あと奈々未さんも説得できたら、良いよ笑


珠美: な、奈々未先輩を説得………頑張ります。


守里: 笑、頑張ってみて。まぁ、奈々未さんは嫌がるだろうけど。


珠美: ですよね~


菊山: ちょっと、やんちゃんボソッ


紗耶: 分かってるってボソッ


守里: ん?どうしたの?紗耶ちゃん。


紗耶: へ?!あ、いや、あの…


守里: ってか、今日の午後からだよね?演劇。


紗耶: は、はい!


守里: 僕も見に行くから。応援してるよ。


紗耶: あ、ありがとうございます!


菊山: …


トントン



紗耶の脇腹を、肘でつつく菊山。



紗耶: そ、それと…


守里: なに?


紗耶: えっと、午後から頑張れるように、エールを貰えないかと…


守里: 笑、良いよ。紗耶ちゃんが持つ魅力があれば、絶対に成功するから、とにかく堂々と自分らしく頑張って。


紗耶: はい!ありがとうございます!!


守里: いえいえ笑


菊山: 先輩、ついでに頭なでなでをしてあげてくださいボソッ



紗耶が頭を下げた瞬間を狙い、守里に耳打ちをする。



守里: う、うん…


ナデナデ


紗耶: ///ふわぁ~


菊山: よし、そのまま言葉をボソッ


守里: 紗耶ちゃんならできるよ~


ナデナデ


紗耶: ///が、頑張ります!!


菊山: ありがとうございます、先輩。これで、絶対成功します。


守里: 笑、なんかさぁちゃんは、東野さんに似てるね。


菊山: え、東野先輩にですか?


守里: うん。プロデューサー気質というか、なんというか……同じ空気を感じる。


菊山: へぇ~って、先輩やり過ぎです!


守里: え?


ナデナデ


紗耶: ///////ふぇゃぁ~


菊山: やんちゃんが溶けてるので、頭から手を離してください!


守里: ご、ごめん!


紗耶: ///ふぇぇ?


菊山: 5秒で十分だったのに、これじゃあ……っ!!


紗耶: っ!!!


珠美: え、え?


守里: おぉ…なんかゾワゾワする…



菊山達から見て、守里の後方、執事とメイドの待機場所から、強いプレッシャーが飛ぶ。



紗耶: み、美月先輩…


菊山: や、やり過ぎたか…


守里: ん?…どうしたんだ、美月は。あんなに目を見開いて。


珠美: 大きな目が、さらにおっきくなってます!


守里: だね笑


珠美: 威圧を感じます…


紗耶: ふぅ…なんか元に戻った…


菊山: あ、良い感じになった。よし、守里先輩、結果オーライです!


守里: それなら良かったけど。


紗耶: 先輩!紗耶、頑張ります!


守里: うん笑


菊山: これでいける。


珠美: って、守里先輩!やんちゃんだけズルいです!珠美もなでなでしてください!


守里: 珠美も?


珠美: 珠美だって、コスプレカフェ頑張ってるんですから!黒猫になりきって!


守里: 笑、分かってるって。珠美のとこにも行くから。


ナデナデ


守里: 頑張って、珠美。


珠美: //ありがとうございます!


美月: …


菊山: やべ、美月先輩が近づいてきてるボソッ…


紗耶: 睨みつけてるわけじゃないのに、あの眼圧ボソッ…


守里: えっと…


ナデナデ


珠美: まだお願いします!


ナデナデ


紗耶: た、たまちゃん…


菊山: そろそろやめた方が…



ゴゴゴゴゴゴ



美月: ジー


守里: …


ナデナデ


珠美: //ふ、へへへ…


菊山: (たまちゃんは強心臓が過ぎる…)


紗耶: (紗耶も負けじと続けるべきだったか……あの強い先輩達に勝つには、たまちゃんぐらい強気で行かないと!!)


美月: ふむ…


守里: 珠美、そろそろ…


珠美: はい!ありがとうございます!


守里: 笑、頑張れそ?


珠美: エネルギー満タンです!


守里: そっか笑


美月: …


菊山: (真後ろに美月先輩がいることに、気づいてないのかな……いや、気づいてはいるけど、仕事でって思ってるのか。これからの展開が読めない…)



ニャンニャン



美月: あ。



ピロロロ



守里: おっと、僕はもう行かなきゃだから。みんな頑張ってね。美月も一言どう?



そう言って、守里が振り返ると、美月は瞬時に笑顔に変わる。



美月: うん。頑張ってね笑


珠美: はい!頑張ります!


紗耶: が、頑張ります!


菊山: はい笑(表情管理が完璧…)


守里: それでは、失礼します。



3人にエールを送った後、笑顔でお辞儀をして、守里は仕事に戻り、目的を達成した3人も、パフェを食べて笑顔でお店を出て行くのだった。




to be continued
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