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第7章 文化祭編
第220話「武炎」
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朝の木村道場では、守里と春時の祖父…木村一の模擬戦が行われ、守里は次の模擬戦に備えて水分補給をし、春時は先程の模擬戦を見て呆然としていた。
春時: …
一: 春時、どうじゃったか?
春時: ほんと、凄すぎるぜ…
一: 諦めたかの?
春時: いや、逆に燃えた。絶対、守里に追いついてやる!
一: 笑、それは良い心掛けじゃの。しかし…
春時: ?
一: 追いつくだけで良いのか?
春時: え?
一: 追い抜かしたくはないのか、と問うておる。
春時: …もちろん、それができるに越したことはない!
一: 笑、なら、次の模擬戦を見ときなさい。
春時: は、はい!
守里: 準備できた!師範!
一: すぐに行く。
春時との会話を終え、一は守里の待つ道場の中央へと移動する。
守里: 次は、敵の動きを誘導するような攻撃を、意識すれば良いか?
一: いや、それはまだ難しいじゃろうから、次は、自分の攻撃で、相手がどう動くのか、というのを考えるだけで良い。
守里: 分かった。
一: あと、さっきは受け手に回っていたが…
守里: …
一: 次は、儂から攻撃も仕掛けるから、覚悟するように。
守里: はい!
一: では春時!
春時: はい!始め!!
再びの春時の合図で、守里は構え、一は自然体で立つ。
守里: ふぅ…
一: 春時、よく見とくんじゃ。
守里: え?
一: はぁ~…
息を吐きながら、ゆっくりと構え…
一: 武炎・臨越!!
そう叫んだ瞬間に、一の体から強烈なプレッシャーが溢れ出した。
守里: っ!!
春時: なっ…(何やったんだ、じいちゃん!これは、守里以上の…)
一: さぁ…こちらから行くぞい!
ダンッ!
畳を蹴り、流れるように守里に近づく。
守里: …
そして、左の縦拳を守里の顔へ。
守里はそれを見て、首を傾けて拳を避け、左のカウンターを合わせようとしたが…
一: ほれ!
伸ばした左拳を手刀に変え、体を回転させ、水平に切る。
守里: あぶっ!
予想外の攻撃に、慌てて屈み、何とか回避しつつ、無理やりカウンターを決めようとする。
一: そんな体勢で、まともな攻撃になると思うのか?
守里: それでも!
ダンッ!!
一: はっ!!
守里のカウンターに、手での防御が間に合わないと思った一は、再び畳を蹴り、右膝で守里の左腕を弾く。
守里: クッ…
タッタッ
このままでは劣勢だと考え、守里は一旦距離をとった。
一: 笑、良い判断じゃ。
守里: 次はこっちから!
ダッ!!
一: ほぉ~目で追いきれんわい…
中央にいる一の周りを、守里は全速力で駆ける。
一: じゃがの…
守里: っ!!
今だ!!
ダッ!!
背後は読まれると考えた守里は、体勢を低くし、斜め後ろから、一気に距離を詰める。
一: この状態の儂は、気配を読めるんじゃよ。だから…
ダンッ!!
左足で畳を蹴り、突っ込んで来た守里に体を向けた後、一瞬力を溜め、右足で畳を蹴って、後ろから右足を回転させ、上に上げる。
守里: なっ!!
一: ちゃんと防御せんと、ちと危ないぞ。
回転の力をそのまま使った踵落としが、守里を襲う。
ドンッ!!
守里: グッ!
交差させた両腕を頭上に上げ、何とか一の足を受け止める。
重っ!!
これまでに受けた攻撃の比じゃねぇ…
守里: フンッ!!
一: おっと…
足を弾かれた一は、守里に対して構え直す。
守里: ふ…
一: 一息ついとる暇があるんか!
ダンッ!!
ビュンッ!!
守里が息を吐こうとしたタイミングで、一は下段の蹴りを放ち…
守里: クッ…
もちろん、反応した守里は、それを足を上げて避けようとしたが…
一: はっ!!
ビュンッ!!
空振った下段の蹴りを戻した弾みで、上段まで足を引き上げる。
守里: っ!!
バチンッ!!
守里: ガッ!!
左手での防御は間に合ったものの、守里は一の蹴りの衝撃を逃がしきれなかった。
一: まだまだ続けるぞ!
守里: やばっ!
バンッ!!
ダンッ!!
バチンッ!!
体勢が崩れたところに、一が打撃蹴撃を四方八方から浴びせるのに対し、守里は何とか防御を合わせていたが…
一: 受け続けるだけか?
守里: このっ!
受け止めた一の腕を思いっきり弾き、少しの余裕を生み出した後、拳を振り被り、一の腹を狙う。
一: 簡単な挑発に乗りおって笑……はっ!!
ダンッ!!!
守里: グハッ!!!
一撃で仕留めるためにと、一瞬の力の溜めをしようと拳を振り被った隙を狙い、一は守里の胸に、掌底を打ち込む。
それにより、守里は後ろに吹き飛び、畳に背をつけた。
一: ふむ…
春時: ちょっ、やめ!!
慌てて立ち上がった春時が、一と守里の間に立つ。
守里: は、春時、止めんな…
春時: 何言ってんだ、そんな状態で。
一: そうじゃな。
守里: ま、まだ…
異能を解放している時間が長かったためか、興奮状態になってる守里は、まだ闘いを続けようとするが…
春時: 一旦落ち着け!休憩だ。
守里: ……すまん…
春時の一言で、守里は心を落ち着かせた。
守里: ふぅ…
カチ
守里: 師範、ありがとうございました。
一: 笑、しばらく休憩じゃ。腕と足を冷やしてきなさい。
守里: はい!
一: 春時、守里を…
ガラガラ
紗耶: 失礼します。
模擬戦が終わったタイミングで、道場に紗耶がやって来た。
一: おぉ、紗耶ちゃん!どうしたんじゃ?
紗耶: いや、守里先輩の様子を見に来たんだけど…うわっ!守里先輩!痣ができてますよ!!
守里: 笑、大丈夫だから。全然痛くないし。
紗耶: …じいじ?
一: さ、紗耶ちゃん、違うんじゃ、これは…
守里: 僕が頼んだんだ。師範は何も悪くないし、むしろ感謝しかないから。
紗耶: そ、そうですか…
春時: なぁ、じいちゃん。守里の手当てと話し相手は、紗耶に任せたらどうだ?
紗耶: っ!!
一: でも、儂、紗耶ちゃんと話したいし。春時がやってやれば…
紗耶: はーい!紗耶が守里先輩と一緒にいまーす!良いよね?じいじ!
一: う、うむ…
春時: 笑、よろしくな、紗耶。
紗耶: 任せといて、兄貴!守里先輩、行きましょう。ってか、歩けます?
守里: 歩ける、歩ける笑
紗耶: いやいやいや、ふらついてるので、紗耶に掴まってください!
守里: 汗かいてるけど…
紗耶: 大丈夫です!もはやごほう…///い、いえ、とにかく大丈夫ですから!!
守里: …は、春時?
春時: 行ってこい笑
グッドサインを向けながら笑う。
紗耶: リビングに行きましょう!
守里: う、うん…では、失礼します。
こうして、守里は紗耶の肩に手を回し、支えてもらいながら、道場を出て行った。
一: ……春時。
春時: なに?
一: ちょいと聞きたいことがあるんじゃが…
春時: お、奇遇じゃん。俺も聞きたいことがあるんだ。
一: まずは儂の質問に答えろ。
春時: うん。
一: 紗耶ちゃんは、守里のことを好いておるのか?
春時: 笑、じいちゃんも気づいたか。まぁ、あんだけあからさまなら、気づかないのは守里ぐらいだろうけど。
一: …もっとやっとくべきだったか
春時: そうしたら、紗耶に嫌われるぞ笑
一: なっ……どうすれば良いんじゃ、儂は。
春時: 守里を認めれば良いんだって。
一: ……時間がかかる。
春時: 笑(否定をしないということは…良かったな、紗耶。最大の関門は、何とか突破できそうだ。)
一: ふ~む…
春時: さっ、次は俺の質問に答えてもらうよ。じいちゃん。
一: 分かった。
春時: 単刀直入に聞く。さっきのは何?
一: …ま、そう来るじゃろうな。そこに座れ。
春時: は、はい…
突然変わった一の雰囲気に、少し緊張しながらも、春時は言われた通りに座る。
一: まず、春時。お前は、ここが何の道場か分かるか?
春時: 何の道場って、武道の道場じゃないの?
一: 笑、その武道とは、詳しく言うと何じゃ。空手道か?柔道か?
春時: …ん、あれ、何なんだ?
一: 自分がやっておったものが何なのかも、分かっておらんかったんか笑
春時: だって、じいちゃんは教えてくれたことないだろ?
一: あぁ。一度も口に出したことはないな。お前にはもちろん、平日の夕方からここで、護身術を教えておる皆さんにも、教えたことは無い。
春時: なら知るわけもないじゃん。で、何なんだ?
一: …儂が使っている武術…今から、お前に教えようと思っている武術は…
春時: …
一: 「武炎」と呼ばれる武術じゃ。
春時: 武炎…
一: 一応、古武道に分類されるが、この武術を身につけている者は、ほとんどいないじゃろう。というか、儂が知る限り、もう儂しかおらん。
春時: つまり、その武炎を教えるのが、ここの道場ってことか?
一: あぁ。この道場は代々、武炎の継承者が管理しておる。
春時: まさか、うちにもそんな秘密があったとは…
一: 春時。儂はお前に武炎の継承者になってもらおうと思うとる。この話を聞いて、受け入れるか?
春時: もちろんだ。武炎の強さは、さっき実際に見たばっかだし、アレが使えれば、俺は守里と肩を並べられる。お願いだ、じいちゃん!俺に武炎を教えてくれ。
一: これまでとは、比にならんぐらい厳しい稽古となるが、それでもか?
春時: おう!
一: 笑、分かった。では早速、守里が帰ってくる前に、武炎の歴史をさらっと教えるぞ。
春時: ドンと来い!
そうして、一は春時に、判明している限りの武炎の歴史を教えた。
◇◇◇
一: …ということだ。
春時: …要するに、今は失われてしまったけど、武炎に関する巻物を偶然発見した初代が、武炎を身につけて、その技術が後世に引き継がれて行った。で、武功を上げる人もいたけど、そういう人は周りに危険視され殺された結果、細々と小さな道場で、伝わっていくことになったと。
一: ま、そんなとこじゃ。
春時: ちなみにさ、これって他人に言うのはマズいヤツ?
一: 信頼できる者には、構わん。
春時: そっか、それは良かった。
一: 守里に言うのか?
春時: あぁ。
一: ま、問題ないじゃろ。
春時: ってか、守里には武炎は教えないの?
一: 使えんこともないじゃろうが、あいつには合わんじゃろ。それに、別の力も持っておるんじゃから、そっちを使いこなせるようになるのが先じゃ。
春時: そうか……よし、じいちゃん。守里もまだ時間かかりそうだし、じいちゃんが使ってた、臨越だっけ?アレを教えてくれ。
一: まぁ、焦るな。そんな簡単に身に付けられるものでも無いし、地道にやって行くぞい。
春時: おう!
と、道場では一による、春時への稽古が始まった。
一方、リビングでは…
紗耶: 守里先輩、はい!どうぞ!
守里: う、うん…パクッ…モグモグ……あの、自分でも食べられるんだけど…
紗耶: そんなこと言わず、怪我してるんですから、紗耶に全部任せてください!ほら、あ~ん…
春時母: 相変わらず仲が良いのね。守里君が、紗耶を貰ってくれたら、安心なんだけどな~
守里: え?いや…
紗耶: ///もう、何言ってるの?ママ!
春時母: ウフフフフ笑
守里: …
この状況、一体どうすれば良いんだ!!!
to be continued
春時: …
一: 春時、どうじゃったか?
春時: ほんと、凄すぎるぜ…
一: 諦めたかの?
春時: いや、逆に燃えた。絶対、守里に追いついてやる!
一: 笑、それは良い心掛けじゃの。しかし…
春時: ?
一: 追いつくだけで良いのか?
春時: え?
一: 追い抜かしたくはないのか、と問うておる。
春時: …もちろん、それができるに越したことはない!
一: 笑、なら、次の模擬戦を見ときなさい。
春時: は、はい!
守里: 準備できた!師範!
一: すぐに行く。
春時との会話を終え、一は守里の待つ道場の中央へと移動する。
守里: 次は、敵の動きを誘導するような攻撃を、意識すれば良いか?
一: いや、それはまだ難しいじゃろうから、次は、自分の攻撃で、相手がどう動くのか、というのを考えるだけで良い。
守里: 分かった。
一: あと、さっきは受け手に回っていたが…
守里: …
一: 次は、儂から攻撃も仕掛けるから、覚悟するように。
守里: はい!
一: では春時!
春時: はい!始め!!
再びの春時の合図で、守里は構え、一は自然体で立つ。
守里: ふぅ…
一: 春時、よく見とくんじゃ。
守里: え?
一: はぁ~…
息を吐きながら、ゆっくりと構え…
一: 武炎・臨越!!
そう叫んだ瞬間に、一の体から強烈なプレッシャーが溢れ出した。
守里: っ!!
春時: なっ…(何やったんだ、じいちゃん!これは、守里以上の…)
一: さぁ…こちらから行くぞい!
ダンッ!
畳を蹴り、流れるように守里に近づく。
守里: …
そして、左の縦拳を守里の顔へ。
守里はそれを見て、首を傾けて拳を避け、左のカウンターを合わせようとしたが…
一: ほれ!
伸ばした左拳を手刀に変え、体を回転させ、水平に切る。
守里: あぶっ!
予想外の攻撃に、慌てて屈み、何とか回避しつつ、無理やりカウンターを決めようとする。
一: そんな体勢で、まともな攻撃になると思うのか?
守里: それでも!
ダンッ!!
一: はっ!!
守里のカウンターに、手での防御が間に合わないと思った一は、再び畳を蹴り、右膝で守里の左腕を弾く。
守里: クッ…
タッタッ
このままでは劣勢だと考え、守里は一旦距離をとった。
一: 笑、良い判断じゃ。
守里: 次はこっちから!
ダッ!!
一: ほぉ~目で追いきれんわい…
中央にいる一の周りを、守里は全速力で駆ける。
一: じゃがの…
守里: っ!!
今だ!!
ダッ!!
背後は読まれると考えた守里は、体勢を低くし、斜め後ろから、一気に距離を詰める。
一: この状態の儂は、気配を読めるんじゃよ。だから…
ダンッ!!
左足で畳を蹴り、突っ込んで来た守里に体を向けた後、一瞬力を溜め、右足で畳を蹴って、後ろから右足を回転させ、上に上げる。
守里: なっ!!
一: ちゃんと防御せんと、ちと危ないぞ。
回転の力をそのまま使った踵落としが、守里を襲う。
ドンッ!!
守里: グッ!
交差させた両腕を頭上に上げ、何とか一の足を受け止める。
重っ!!
これまでに受けた攻撃の比じゃねぇ…
守里: フンッ!!
一: おっと…
足を弾かれた一は、守里に対して構え直す。
守里: ふ…
一: 一息ついとる暇があるんか!
ダンッ!!
ビュンッ!!
守里が息を吐こうとしたタイミングで、一は下段の蹴りを放ち…
守里: クッ…
もちろん、反応した守里は、それを足を上げて避けようとしたが…
一: はっ!!
ビュンッ!!
空振った下段の蹴りを戻した弾みで、上段まで足を引き上げる。
守里: っ!!
バチンッ!!
守里: ガッ!!
左手での防御は間に合ったものの、守里は一の蹴りの衝撃を逃がしきれなかった。
一: まだまだ続けるぞ!
守里: やばっ!
バンッ!!
ダンッ!!
バチンッ!!
体勢が崩れたところに、一が打撃蹴撃を四方八方から浴びせるのに対し、守里は何とか防御を合わせていたが…
一: 受け続けるだけか?
守里: このっ!
受け止めた一の腕を思いっきり弾き、少しの余裕を生み出した後、拳を振り被り、一の腹を狙う。
一: 簡単な挑発に乗りおって笑……はっ!!
ダンッ!!!
守里: グハッ!!!
一撃で仕留めるためにと、一瞬の力の溜めをしようと拳を振り被った隙を狙い、一は守里の胸に、掌底を打ち込む。
それにより、守里は後ろに吹き飛び、畳に背をつけた。
一: ふむ…
春時: ちょっ、やめ!!
慌てて立ち上がった春時が、一と守里の間に立つ。
守里: は、春時、止めんな…
春時: 何言ってんだ、そんな状態で。
一: そうじゃな。
守里: ま、まだ…
異能を解放している時間が長かったためか、興奮状態になってる守里は、まだ闘いを続けようとするが…
春時: 一旦落ち着け!休憩だ。
守里: ……すまん…
春時の一言で、守里は心を落ち着かせた。
守里: ふぅ…
カチ
守里: 師範、ありがとうございました。
一: 笑、しばらく休憩じゃ。腕と足を冷やしてきなさい。
守里: はい!
一: 春時、守里を…
ガラガラ
紗耶: 失礼します。
模擬戦が終わったタイミングで、道場に紗耶がやって来た。
一: おぉ、紗耶ちゃん!どうしたんじゃ?
紗耶: いや、守里先輩の様子を見に来たんだけど…うわっ!守里先輩!痣ができてますよ!!
守里: 笑、大丈夫だから。全然痛くないし。
紗耶: …じいじ?
一: さ、紗耶ちゃん、違うんじゃ、これは…
守里: 僕が頼んだんだ。師範は何も悪くないし、むしろ感謝しかないから。
紗耶: そ、そうですか…
春時: なぁ、じいちゃん。守里の手当てと話し相手は、紗耶に任せたらどうだ?
紗耶: っ!!
一: でも、儂、紗耶ちゃんと話したいし。春時がやってやれば…
紗耶: はーい!紗耶が守里先輩と一緒にいまーす!良いよね?じいじ!
一: う、うむ…
春時: 笑、よろしくな、紗耶。
紗耶: 任せといて、兄貴!守里先輩、行きましょう。ってか、歩けます?
守里: 歩ける、歩ける笑
紗耶: いやいやいや、ふらついてるので、紗耶に掴まってください!
守里: 汗かいてるけど…
紗耶: 大丈夫です!もはやごほう…///い、いえ、とにかく大丈夫ですから!!
守里: …は、春時?
春時: 行ってこい笑
グッドサインを向けながら笑う。
紗耶: リビングに行きましょう!
守里: う、うん…では、失礼します。
こうして、守里は紗耶の肩に手を回し、支えてもらいながら、道場を出て行った。
一: ……春時。
春時: なに?
一: ちょいと聞きたいことがあるんじゃが…
春時: お、奇遇じゃん。俺も聞きたいことがあるんだ。
一: まずは儂の質問に答えろ。
春時: うん。
一: 紗耶ちゃんは、守里のことを好いておるのか?
春時: 笑、じいちゃんも気づいたか。まぁ、あんだけあからさまなら、気づかないのは守里ぐらいだろうけど。
一: …もっとやっとくべきだったか
春時: そうしたら、紗耶に嫌われるぞ笑
一: なっ……どうすれば良いんじゃ、儂は。
春時: 守里を認めれば良いんだって。
一: ……時間がかかる。
春時: 笑(否定をしないということは…良かったな、紗耶。最大の関門は、何とか突破できそうだ。)
一: ふ~む…
春時: さっ、次は俺の質問に答えてもらうよ。じいちゃん。
一: 分かった。
春時: 単刀直入に聞く。さっきのは何?
一: …ま、そう来るじゃろうな。そこに座れ。
春時: は、はい…
突然変わった一の雰囲気に、少し緊張しながらも、春時は言われた通りに座る。
一: まず、春時。お前は、ここが何の道場か分かるか?
春時: 何の道場って、武道の道場じゃないの?
一: 笑、その武道とは、詳しく言うと何じゃ。空手道か?柔道か?
春時: …ん、あれ、何なんだ?
一: 自分がやっておったものが何なのかも、分かっておらんかったんか笑
春時: だって、じいちゃんは教えてくれたことないだろ?
一: あぁ。一度も口に出したことはないな。お前にはもちろん、平日の夕方からここで、護身術を教えておる皆さんにも、教えたことは無い。
春時: なら知るわけもないじゃん。で、何なんだ?
一: …儂が使っている武術…今から、お前に教えようと思っている武術は…
春時: …
一: 「武炎」と呼ばれる武術じゃ。
春時: 武炎…
一: 一応、古武道に分類されるが、この武術を身につけている者は、ほとんどいないじゃろう。というか、儂が知る限り、もう儂しかおらん。
春時: つまり、その武炎を教えるのが、ここの道場ってことか?
一: あぁ。この道場は代々、武炎の継承者が管理しておる。
春時: まさか、うちにもそんな秘密があったとは…
一: 春時。儂はお前に武炎の継承者になってもらおうと思うとる。この話を聞いて、受け入れるか?
春時: もちろんだ。武炎の強さは、さっき実際に見たばっかだし、アレが使えれば、俺は守里と肩を並べられる。お願いだ、じいちゃん!俺に武炎を教えてくれ。
一: これまでとは、比にならんぐらい厳しい稽古となるが、それでもか?
春時: おう!
一: 笑、分かった。では早速、守里が帰ってくる前に、武炎の歴史をさらっと教えるぞ。
春時: ドンと来い!
そうして、一は春時に、判明している限りの武炎の歴史を教えた。
◇◇◇
一: …ということだ。
春時: …要するに、今は失われてしまったけど、武炎に関する巻物を偶然発見した初代が、武炎を身につけて、その技術が後世に引き継がれて行った。で、武功を上げる人もいたけど、そういう人は周りに危険視され殺された結果、細々と小さな道場で、伝わっていくことになったと。
一: ま、そんなとこじゃ。
春時: ちなみにさ、これって他人に言うのはマズいヤツ?
一: 信頼できる者には、構わん。
春時: そっか、それは良かった。
一: 守里に言うのか?
春時: あぁ。
一: ま、問題ないじゃろ。
春時: ってか、守里には武炎は教えないの?
一: 使えんこともないじゃろうが、あいつには合わんじゃろ。それに、別の力も持っておるんじゃから、そっちを使いこなせるようになるのが先じゃ。
春時: そうか……よし、じいちゃん。守里もまだ時間かかりそうだし、じいちゃんが使ってた、臨越だっけ?アレを教えてくれ。
一: まぁ、焦るな。そんな簡単に身に付けられるものでも無いし、地道にやって行くぞい。
春時: おう!
と、道場では一による、春時への稽古が始まった。
一方、リビングでは…
紗耶: 守里先輩、はい!どうぞ!
守里: う、うん…パクッ…モグモグ……あの、自分でも食べられるんだけど…
紗耶: そんなこと言わず、怪我してるんですから、紗耶に全部任せてください!ほら、あ~ん…
春時母: 相変わらず仲が良いのね。守里君が、紗耶を貰ってくれたら、安心なんだけどな~
守里: え?いや…
紗耶: ///もう、何言ってるの?ママ!
春時母: ウフフフフ笑
守里: …
この状況、一体どうすれば良いんだ!!!
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