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第7章 文化祭編

第217話「何度も行けば流石に慣れる」

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放課後


風紀委員室


いつも通りに何事もなく見回りを終わらせた、守里と美月の2人は、若月にその報告をしに来ていた。



若月: 報告ありがとう。


守里: いえ。


美月: そういえば、香蓮達の仕事ぶりはどんな感じなんですか?香蓮ったら、いつも通りって言うだけで、何も教えてくれないんです。


若月: 笑、そうか。良くやってくれてるぞ、梅達は。


守里: 松高さんと林原さんは、風紀委員に慣れてきてます?


若月: あぁ。楽しそうに仕事をやってくれてる。


守里: 笑、あの2人は香蓮と一緒だったら、なんでも楽しめそうですけどね。


若月: 笑


美月: 良くやってくれてる……それなら心配ないです。


若月: そうか笑。あ、ところで守里。


守里: なんです?


若月: 文化委員の手伝いをするんだってな。


守里: はい、頼まれましたね。


若月: お前は本来風紀委員だから、例の約束が風紀委員の仕事の妨げになってはいけないんだが、今回は特別扱いだ。


守里: え?


若月: 水曜日は、見回りに参加しなくていい。美月は梅と組ませるから、守里は文化委員の手伝いの方をやれ。


美月: は?


守里: それで良いんですか?


若月: あぁ。麗華となぁちゃん、そして麻里と話し合いを重ねた結果だからな。しょうがない。


守里: …了解です。


若月: ってことで、美月は水曜日は梅と組んで、金曜日は守里と組むって形になる。


美月: ムー……文化委員の手伝いの方に、女の子はいますか?


若月: 多分いないぞ。体育館チームは力仕事が中心だから。


美月: それなら良かったです!


若月: 笑、素直だな。あと、文化祭本番の見回りも、美月は梅と一緒になるだろうから、よろしく。


美月: な、なんでですか?


若月: おそらく、守里は仕事に埋もれることになりそうだし笑


守里: そんな縁起でもないこと言わないでください!本当に、そんなことになったらどうするんですか。


若月: すまんすまん笑。でも、もしそうならなくて、守里が見回りを行える場合、誰と組ませることになるか…


美月: はっ!!


守里: そんなの誰でも…


美月: 他の子…特に女子…特に珠美と組むことにならないよう、守里にいっぱい仕事を与えてください!


守里: ちょっ、美月!何言ってるの?!


若月: 分かった笑。麗華に言っとく。


守里: 若月さんも了承しないでくださいよ!


美月: ほら守里、家に帰ろ笑



笑顔の美月が、守里の背中を押す。



若月: 笑、また来週な。


守里: 絶対ダメですからね!若月さん!


美月: 失礼します!



ガラガラ



守里: もう、最後の最後にどデカい爆弾を…


美月: ごめんって笑


守里: はぁ…まぁいいや、帰ろ。


美月: うん!



と、風紀委員室を出て、歩き始めたところで…




パチ




守里: …



急に立ち止まる守里。



美月: どうしたの?


守里: 病院に行かないと。


美月: あ、分かった。(もう1ヶ月経ったんだ。修学旅行があったせいか、すごく早く感じたな~)


守里: 美月も行く?


美月: うん。(段々と、お姉さんとの記憶も戻ってきてるみたいだし、この状態の守里も、ちょっと人間らしくなってきたし。)


守里: よし、行こう。


美月: OK。っとその前に、お姉ちゃんに連絡を…



プルルルル


ピ



美月 T: もしもし、お姉ちゃん?


結真 T: どうしたの?美月。


美月 T: これから、伊衛能病院に寄ってくるから。


結真 T: 伊衛能病院…あぁ、分かった。ちゃんと何を思い出したか、メモするのよ。


美月 T: 分かってる。


結真 T: じゃ、家でね。


美月 T: うん。



ピ



守里: …


スタスタ


美月: あ、待ってよ~


◈◈◈


伊衛能病院



守里: こんにちは。


看護師: あら、森崎君。こんにちは。それと美月さんも。



この、いつも対応してくれる看護師さんとは、毎月、守里と一緒に来ているおかげで、随分と仲良くなった。

最初の印象と違って、中々気さくな人なんだよね。



美月: こんにちは。


看護師: 笑、修学旅行はどうでした?


美月: 楽しかったです。


看護師: そう笑。森崎君は?


守里: …良かったです。許可証をください。



感想を言った…



看護師: っ!…笑、分かりました。はい、どうぞ。


守里: ありがとうございます。


看護師: 美月さんも。


美月: ありがとうございます……やっぱり、段々とロボットっぽさが無くなってきてますよねボソッ


看護師: そうですね、この調子で行けばボソッ


守里: ?行きましょう。


看護師: はい。



そうして、3人はエレベーターに乗り込む。



看護師: あちらを向いていてください。


美月: はい。


守里: …



結構変化が出てるっぽいから、守里の記憶も相当戻ってるかも…

もしかしたら、お姉さんのことは全部思い出してたりして。




チーン



看護師: では、いってらっしゃい。


美月: いってきます笑


守里: …ありがとうございます。


看護師: 笑



笑顔の看護師に見送られ、守里と美月は歩き出す。



美月: 私も、さすがに慣れてきたよ、ここの雰囲気に。


守里: そう。



相変わらず、病院らしくないな。

こんなに奥まで廊下が続いてるのに、人っ子一人いない。


と、2人が病室に向かっていると…


ガラガラ



美月: え?


??: っ!!



車椅子に乗った男が、すぐ隣の病室から出てくる。



守里: …


ペコッ


スタスタ



表情を変えず会釈だけして、そのまま歩く守里。



??: (マジ?!こんなところで、坊ちゃんとばったり会うなんて……それに、この子は確か…情報部統括の娘さん…)



初めてここで、あの看護師さん以外の人と会った。


ってか、人いたんだ…

車椅子に乗って…あ、足に包帯巻いてる…



??: (聞いた感じだと、この子は俺らのことは知らないんだよな……なんか話しかけようとしてる雰囲気あるし、逃げよ。)


美月: あ、あの…


??: (やっべ、どうする…聞こえてないふりを…)


美月: …こんにちは。


??: こ、こんにちは…


守里: 美月、何やってるの?


美月: っ!ごめん、すぐ行く。すみません。


??: い、いえ…



ちょっと話を聞きたかったけど、しょうがない。



??: (ふぅ…間一髪だったな……よし、早めにいちご大福だけ買ってこよ。)




森崎優茉の病室


ガラガラ



守里: 失礼します。姉ちゃん久しぶり。


美月: 失礼します。お久しぶりです!お姉さん。



変わらず、病室の中央にあるベッドで眠る森崎優茉。



守里: 修学旅行に行ってきたよ。渡月橋にも行った。姉ちゃんが楽しそうに話してた理由が、よく分かった気がする。あそこは、すごく綺麗というか、心に響く景色だよね。姉ちゃんも同じ感想を抱いたのかな。


美月: あ…



もしかして、お姉さんも修学旅行で京都の渡月橋に…



美月: お姉さんから、渡月橋のこと聞いてたんだ。


守里: うん。修学旅行の後に、よく聞かせてくれた。


美月: へぇ…



だから守里は、あんなに渡月橋のことを気にしてというか、意識してたのか…



美月: お姉さんも、修学旅行の行先、京都だったんだね。


守里: そうだよ。今考えると、姉ちゃんが持ってた、あのキーホルダーは肝試しでもらったヤツなのかな。


美月: 例のご当地キャラクターのキーホルダー?お姉さんも、持ってたの?


守里: うん。僕に見せてくれたんだ。


美月: そっか。



守里が中1ってことは、お姉さんは高2の春に、ここに入院したはず…

つまり、修学旅行に行った年に、寝たきりの状態になっちゃったのか。


というか、元能高生でお姉ちゃんの1つ上なら、お姉さんと仲良かった人ぐらい探せそうだけど…



守里: 懐かしいな……姉ちゃん、買ってきたお土産を、日向子達にも配ってたっけ。


美月: ほんと仲良かったんだ。


守里: 一緒に遊んでたしね。それこそ、陽芽叶も仲良かったよ。


美月: あ、確かに…守里と陽芽叶がお互いの家で遊ぶぐらいなら、お姉さんも陽芽叶のこと知ってるか。


守里: 陽芽叶はさ、あんな性格だし、お母さんも亡くなってたから、姉ちゃんが同性で唯一甘えられる存在だったみたいなんだよね。陽芽叶のお父さんがそう言ってた。


美月: え…陽芽叶のお母さん、亡くなってたんだ…


守里: そうだよ。陽芽叶を産んだ後すぐに。


美月: 知らなかった…


守里: まぁ、陽芽叶はあんまり自分のことを話したがらないから。結局、陽芽叶は自分がお嬢様かどうかも、教えてくれないし。


美月: 笑、それは私も気になるから、今度聞いてみよう。


守里: うん。あとは…文化祭でメイド喫茶やることになった。


美月: 執事&メイド喫茶ね。


守里: そうそう。すごく楽しみなんだ。だってさ、メイド服が似合うと思わない?日向子とか飛香、祐希も。


美月: …


守里: それと、美月。絶対に似合うと思うんだよ。姉ちゃんにも見せたいな~


美月: 笑、私としては、守里の執事姿も見せたいところなんだけど。


守里: え?


美月: お互いに写真撮っとこ。後からお姉さんに見せる用に。


守里: …分かった。


美月: よし。って、文化祭については、お姉さんが何か言ってたこととか、覚えてないの?


守里: 文化祭か…1回目はお化けのコスプレ、2回目はシスターみたいなののコスプレを家で見せてくれたかも。


美月: そうなんだ。


守里: 確か、そのコスプレをしたまま、晩ご飯を作ってくれたこともあったよ。


美月: ふ~ん笑


守里: ま、覚えてるのはこのぐらいかな。文化祭の準備期間でも、いつも通りの感じだったし。あ、でもちょっとだけ、朝の家を出る時間が早かったかな。


美月: いつも通りの感じって、お姉さんが家事をやってたってこと?


守里: そう。姉ちゃんは、放課後すぐ家に帰ってきて、家事をやりつつ、僕の面倒も見てくれてたんだ。大変だっただろうに…ほんと、感謝しかないよ。



放課後に文化祭の準備ができない代わりに、朝早めに行って準備をしてたってことかな。



美月: 改めて、ありがとうございます!お姉さん。


守里: …よし、帰ろっか。言いたいことも全部言ったし。


美月: …そうだね。また1ヶ月後に来よう。


守里: うん。バイバイ、姉ちゃん。


美月: また今度。



こうして、守里と美月は病室を出て、エレベーターの前の看護師と共に、病院の受付付近まで戻って来た。



美月: ありがとうございました。


看護師: いえ、仕事ですので。また、待ってますね。


美月: はい!


守里: 行くよ、美月。


美月: うん。




to be continued

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