ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

文字の大きさ
上 下
217 / 340
第7章 文化祭編

第217話「何度も行けば流石に慣れる」

しおりを挟む
放課後


風紀委員室


いつも通りに何事もなく見回りを終わらせた、守里と美月の2人は、若月にその報告をしに来ていた。



若月: 報告ありがとう。


守里: いえ。


美月: そういえば、香蓮達の仕事ぶりはどんな感じなんですか?香蓮ったら、いつも通りって言うだけで、何も教えてくれないんです。


若月: 笑、そうか。良くやってくれてるぞ、梅達は。


守里: 松高さんと林原さんは、風紀委員に慣れてきてます?


若月: あぁ。楽しそうに仕事をやってくれてる。


守里: 笑、あの2人は香蓮と一緒だったら、なんでも楽しめそうですけどね。


若月: 笑


美月: 良くやってくれてる……それなら心配ないです。


若月: そうか笑。あ、ところで守里。


守里: なんです?


若月: 文化委員の手伝いをするんだってな。


守里: はい、頼まれましたね。


若月: お前は本来風紀委員だから、例の約束が風紀委員の仕事の妨げになってはいけないんだが、今回は特別扱いだ。


守里: え?


若月: 水曜日は、見回りに参加しなくていい。美月は梅と組ませるから、守里は文化委員の手伝いの方をやれ。


美月: は?


守里: それで良いんですか?


若月: あぁ。麗華となぁちゃん、そして麻里と話し合いを重ねた結果だからな。しょうがない。


守里: …了解です。


若月: ってことで、美月は水曜日は梅と組んで、金曜日は守里と組むって形になる。


美月: ムー……文化委員の手伝いの方に、女の子はいますか?


若月: 多分いないぞ。体育館チームは力仕事が中心だから。


美月: それなら良かったです!


若月: 笑、素直だな。あと、文化祭本番の見回りも、美月は梅と一緒になるだろうから、よろしく。


美月: な、なんでですか?


若月: おそらく、守里は仕事に埋もれることになりそうだし笑


守里: そんな縁起でもないこと言わないでください!本当に、そんなことになったらどうするんですか。


若月: すまんすまん笑。でも、もしそうならなくて、守里が見回りを行える場合、誰と組ませることになるか…


美月: はっ!!


守里: そんなの誰でも…


美月: 他の子…特に女子…特に珠美と組むことにならないよう、守里にいっぱい仕事を与えてください!


守里: ちょっ、美月!何言ってるの?!


若月: 分かった笑。麗華に言っとく。


守里: 若月さんも了承しないでくださいよ!


美月: ほら守里、家に帰ろ笑



笑顔の美月が、守里の背中を押す。



若月: 笑、また来週な。


守里: 絶対ダメですからね!若月さん!


美月: 失礼します!



ガラガラ



守里: もう、最後の最後にどデカい爆弾を…


美月: ごめんって笑


守里: はぁ…まぁいいや、帰ろ。


美月: うん!



と、風紀委員室を出て、歩き始めたところで…




パチ




守里: …



急に立ち止まる守里。



美月: どうしたの?


守里: 病院に行かないと。


美月: あ、分かった。(もう1ヶ月経ったんだ。修学旅行があったせいか、すごく早く感じたな~)


守里: 美月も行く?


美月: うん。(段々と、お姉さんとの記憶も戻ってきてるみたいだし、この状態の守里も、ちょっと人間らしくなってきたし。)


守里: よし、行こう。


美月: OK。っとその前に、お姉ちゃんに連絡を…



プルルルル


ピ



美月 T: もしもし、お姉ちゃん?


結真 T: どうしたの?美月。


美月 T: これから、伊衛能病院に寄ってくるから。


結真 T: 伊衛能病院…あぁ、分かった。ちゃんと何を思い出したか、メモするのよ。


美月 T: 分かってる。


結真 T: じゃ、家でね。


美月 T: うん。



ピ



守里: …


スタスタ


美月: あ、待ってよ~


◈◈◈


伊衛能病院



守里: こんにちは。


看護師: あら、森崎君。こんにちは。それと美月さんも。



この、いつも対応してくれる看護師さんとは、毎月、守里と一緒に来ているおかげで、随分と仲良くなった。

最初の印象と違って、中々気さくな人なんだよね。



美月: こんにちは。


看護師: 笑、修学旅行はどうでした?


美月: 楽しかったです。


看護師: そう笑。森崎君は?


守里: …良かったです。許可証をください。



感想を言った…



看護師: っ!…笑、分かりました。はい、どうぞ。


守里: ありがとうございます。


看護師: 美月さんも。


美月: ありがとうございます……やっぱり、段々とロボットっぽさが無くなってきてますよねボソッ


看護師: そうですね、この調子で行けばボソッ


守里: ?行きましょう。


看護師: はい。



そうして、3人はエレベーターに乗り込む。



看護師: あちらを向いていてください。


美月: はい。


守里: …



結構変化が出てるっぽいから、守里の記憶も相当戻ってるかも…

もしかしたら、お姉さんのことは全部思い出してたりして。




チーン



看護師: では、いってらっしゃい。


美月: いってきます笑


守里: …ありがとうございます。


看護師: 笑



笑顔の看護師に見送られ、守里と美月は歩き出す。



美月: 私も、さすがに慣れてきたよ、ここの雰囲気に。


守里: そう。



相変わらず、病院らしくないな。

こんなに奥まで廊下が続いてるのに、人っ子一人いない。


と、2人が病室に向かっていると…


ガラガラ



美月: え?


??: っ!!



車椅子に乗った男が、すぐ隣の病室から出てくる。



守里: …


ペコッ


スタスタ



表情を変えず会釈だけして、そのまま歩く守里。



??: (マジ?!こんなところで、坊ちゃんとばったり会うなんて……それに、この子は確か…情報部統括の娘さん…)



初めてここで、あの看護師さん以外の人と会った。


ってか、人いたんだ…

車椅子に乗って…あ、足に包帯巻いてる…



??: (聞いた感じだと、この子は俺らのことは知らないんだよな……なんか話しかけようとしてる雰囲気あるし、逃げよ。)


美月: あ、あの…


??: (やっべ、どうする…聞こえてないふりを…)


美月: …こんにちは。


??: こ、こんにちは…


守里: 美月、何やってるの?


美月: っ!ごめん、すぐ行く。すみません。


??: い、いえ…



ちょっと話を聞きたかったけど、しょうがない。



??: (ふぅ…間一髪だったな……よし、早めにいちご大福だけ買ってこよ。)




森崎優茉の病室


ガラガラ



守里: 失礼します。姉ちゃん久しぶり。


美月: 失礼します。お久しぶりです!お姉さん。



変わらず、病室の中央にあるベッドで眠る森崎優茉。



守里: 修学旅行に行ってきたよ。渡月橋にも行った。姉ちゃんが楽しそうに話してた理由が、よく分かった気がする。あそこは、すごく綺麗というか、心に響く景色だよね。姉ちゃんも同じ感想を抱いたのかな。


美月: あ…



もしかして、お姉さんも修学旅行で京都の渡月橋に…



美月: お姉さんから、渡月橋のこと聞いてたんだ。


守里: うん。修学旅行の後に、よく聞かせてくれた。


美月: へぇ…



だから守里は、あんなに渡月橋のことを気にしてというか、意識してたのか…



美月: お姉さんも、修学旅行の行先、京都だったんだね。


守里: そうだよ。今考えると、姉ちゃんが持ってた、あのキーホルダーは肝試しでもらったヤツなのかな。


美月: 例のご当地キャラクターのキーホルダー?お姉さんも、持ってたの?


守里: うん。僕に見せてくれたんだ。


美月: そっか。



守里が中1ってことは、お姉さんは高2の春に、ここに入院したはず…

つまり、修学旅行に行った年に、寝たきりの状態になっちゃったのか。


というか、元能高生でお姉ちゃんの1つ上なら、お姉さんと仲良かった人ぐらい探せそうだけど…



守里: 懐かしいな……姉ちゃん、買ってきたお土産を、日向子達にも配ってたっけ。


美月: ほんと仲良かったんだ。


守里: 一緒に遊んでたしね。それこそ、陽芽叶も仲良かったよ。


美月: あ、確かに…守里と陽芽叶がお互いの家で遊ぶぐらいなら、お姉さんも陽芽叶のこと知ってるか。


守里: 陽芽叶はさ、あんな性格だし、お母さんも亡くなってたから、姉ちゃんが同性で唯一甘えられる存在だったみたいなんだよね。陽芽叶のお父さんがそう言ってた。


美月: え…陽芽叶のお母さん、亡くなってたんだ…


守里: そうだよ。陽芽叶を産んだ後すぐに。


美月: 知らなかった…


守里: まぁ、陽芽叶はあんまり自分のことを話したがらないから。結局、陽芽叶は自分がお嬢様かどうかも、教えてくれないし。


美月: 笑、それは私も気になるから、今度聞いてみよう。


守里: うん。あとは…文化祭でメイド喫茶やることになった。


美月: 執事&メイド喫茶ね。


守里: そうそう。すごく楽しみなんだ。だってさ、メイド服が似合うと思わない?日向子とか飛香、祐希も。


美月: …


守里: それと、美月。絶対に似合うと思うんだよ。姉ちゃんにも見せたいな~


美月: 笑、私としては、守里の執事姿も見せたいところなんだけど。


守里: え?


美月: お互いに写真撮っとこ。後からお姉さんに見せる用に。


守里: …分かった。


美月: よし。って、文化祭については、お姉さんが何か言ってたこととか、覚えてないの?


守里: 文化祭か…1回目はお化けのコスプレ、2回目はシスターみたいなののコスプレを家で見せてくれたかも。


美月: そうなんだ。


守里: 確か、そのコスプレをしたまま、晩ご飯を作ってくれたこともあったよ。


美月: ふ~ん笑


守里: ま、覚えてるのはこのぐらいかな。文化祭の準備期間でも、いつも通りの感じだったし。あ、でもちょっとだけ、朝の家を出る時間が早かったかな。


美月: いつも通りの感じって、お姉さんが家事をやってたってこと?


守里: そう。姉ちゃんは、放課後すぐ家に帰ってきて、家事をやりつつ、僕の面倒も見てくれてたんだ。大変だっただろうに…ほんと、感謝しかないよ。



放課後に文化祭の準備ができない代わりに、朝早めに行って準備をしてたってことかな。



美月: 改めて、ありがとうございます!お姉さん。


守里: …よし、帰ろっか。言いたいことも全部言ったし。


美月: …そうだね。また1ヶ月後に来よう。


守里: うん。バイバイ、姉ちゃん。


美月: また今度。



こうして、守里と美月は病室を出て、エレベーターの前の看護師と共に、病院の受付付近まで戻って来た。



美月: ありがとうございました。


看護師: いえ、仕事ですので。また、待ってますね。


美月: はい!


守里: 行くよ、美月。


美月: うん。




to be continued

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~

K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。 次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。 生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。 …決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。 ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。

処理中です...