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第6章 修学旅行編

第190話「部屋移動大作戦」

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突然かかってきた森田との電話を終え、情報部の特級団員に会うために、旅館を抜け出さなければならなくなった守里は、一旦部屋に戻った。



ガチャ



春時: あ、戻ってきた。


灰崎: 電話は終わった?


守里: うん、電話は終わったんだけど…


春時: どした?


守里: ちょっと、外出てくる。


3班男子1: え、外に?それって、ダメなんじゃ…


3班男子2: うん、一応ダメって言われたけど。


守里: 見逃してくれないかな?


3班男子1: 見逃すも何も、別に俺達は先生に言うつもりはないが……あ、生徒会役員はどうなんだ?


灰崎: 笑、言わないよ。


3班男子2: 先生が来た時には、適当に誤魔化しとくから。


守里: ありがとう。って、春時、結真姉さんとの電話は?


春時: ついさっき終わったぞ。これ、携帯。


守里: あぁ、ごめんね、急に電話代わっちゃって。


春時: いやいや。こっちも色々と話せたから良かった。


守里: そっか笑。じゃあ、いってきます。


春時: おう。早めに戻ってこいよ。


灰崎: いってらっしゃい。



ガチャ



守里: まずは、先生達に見つからずに、旅館を出なければ…



こうして、守里の旅館脱出が始まった。


◆◆◆


美月達の部屋



川嶋: じゃあ、私は勉強するから、騒いでても良いけど、節度は守ってね。


美月: え~ほんとにやるの~


川嶋: ルーティーンだから、やらないと寝れないの。


陽芽叶: それはなんというか、難儀な…


美月: 志帆は真面目すぎるんだって!このぐらいダラケてた方が……いや、これは違うか。


祐希: zzzzzz



畳の上で大の字で寝る祐希。



陽芽叶: 志帆ちゃんと祐希ちゃんを足して2で割ったぐらいが、ちょうど良いぐらいなのかな?笑


美月: 確かに笑。香蓮はどう思う?


梅澤: ま、そうだな。でも、意外と川嶋は変だし、変人になるんじゃないか?


川嶋: なっ…私が変?


梅澤: 変だよな?


美月: うん。変だね。


川嶋: …陽芽叶ちゃんは?


陽芽叶: 笑…ノーコメントで。


川嶋: 私に味方はいないのか…


美月: ってか、それは置いといて、守里達の部屋に遊びに行かない?


川嶋: …ダメに決まってるでしょ。剣崎先生も夕食後に言ってたじゃない。同性間での部屋移動は消灯時間までなら良いけど、異性間はダメだって。


美月: そうだけどさ~


川嶋: 守里達とは、日中ずっと一緒にいるんだから、夜ぐらい我慢しなよ。


美月: ぶ~


梅澤: どんだけ守里と一緒にいたいんだよ笑


美月: だって~


陽芽叶: でも、確かに漫画の世界だと、こういう修学旅行での部屋移動ってありがちだから、少しは憧れるよね笑


美月: はっ!仲間がいた!


川嶋: 陽芽叶ちゃんも、美月と同じで、守里達の部屋に行きたい派?まぁ、そりゃそうか。


梅澤: え?あ、そういうことなの?


陽芽叶: 笑、できれば行きたい。


美月: じゃあさ、陽芽叶ちゃん…いや、陽芽叶!ここは協力しない?


陽芽叶: …協力ね~勝算は?


美月: ある。


陽芽叶: …


美月: …



2人はお互いの心の内を確認するかのように、目を合わせる。



陽芽叶: 分かった。一旦、協力関係を結ぼう。


美月: 笑、そう来なくちゃ。じゃあ早速、作戦の詳細を…


川嶋: はぁ…全く。


梅澤: あぁなったら、もう止めらんねぇな笑


川嶋: 修学旅行が始まるまでは、陽芽叶ちゃんもあっち側だとは思ってなかったよ。


梅澤: 同じ班で大変だろ。


川嶋: 代わってみる?笑


梅澤: 笑、遠慮しとく。


川嶋: だろうね。さっ、私は勉強を始めますか。


梅澤: 私はそうだな……面白そうだし、ついて行くか。


美月: よし、行こう。


陽芽叶: うん。



2人は作戦会議を終えたのか、部屋を出ようとしていた。



川嶋: 早めに帰って来てよ。


梅澤: はーい。


美月: 香蓮もついてくるの?


梅澤: そのつもり。


美月: 心強い味方ができた笑


陽芽叶: まずは、3班の部屋だね。


梅澤: 3班って確か……あぁ、なるほど、味方を増やすんだな?


美月: そういうこと。


梅澤: 次は?


美月: …その仲間に決めてもらう。


梅澤: まだ決まってないのかよ笑


美月: …作戦開始!



ガチャ



川嶋: 楽しそうでなにより…カキカキ


祐希: zzzzzz




10分後…


部屋を出た美月、陽芽叶、梅澤の3人は、作戦通りに行動し、無事、仲間を増やした。



美月: もう一度、飛香発案の作戦を確認するよ。


日向子: うん!!!!


飛香: バカっ、声が大きい。


日向子: あ、ごめん…


陽芽叶: 笑


梅澤: 通常運転だな笑


美月: 現在21時50分。スケジュールによると、21時30分が最後の生徒達がお風呂に入り終わる時間。そして、生徒が部屋移動を行う可能性が最も高くなり、先生達の警戒が最も強くなる時間の直前でもある。


日向子: なら、余計に守里達の部屋に行きにくいじゃん!


美月: 笑、まぁ話を聞いて。この女子の部屋があるフロアから、男子の部屋があるフロアへ移動するための通路は、合計6本。


梅澤: 多いのか少ないのか、よく分からん。


飛香: その6本の通路には、先生が常に見張りとしている。


美月: 交代で見張りをやるにしても、十分な人数、先生達はいる。ただ、この時間にだけ、見張りがいなくなる可能性のある通路が、1本だけある。


日向子: どこ?!!


美月: それは、お風呂場の脱衣所に入る前の、男と女の暖簾があった通路。私達も通ったでしょ?お風呂に入る時に。


日向子: うん……?


梅澤: 私はまだ分からん。


日向子: 梅ちゃん、一緒だね!


梅澤: …


美月: あそこの通路では、先生がお風呂に来た生徒を確認していた。


飛香: で、最後の生徒がお風呂に入り終わるということは、その先生は仕事を終えるってこと。つまり…


陽芽叶: 一旦、先生達の部屋に戻る。そして、生徒がお風呂に入り終わる時間の21時30分っていうのは、あくまで予定の時間で、前後する可能性が高いから、その先生が通路を離れる時間ちょうどに、交代する見張りの先生が来るとは思えない。


日向子: ?


梅澤: まぁとにかく、その通路に見張りがいなくなる時間が生まれるってことだろ?


美月: そういうこと。私達がお風呂に行った時点で、少し予定より遅れてたっぽいから、ちょうど今頃…



そう言ったところで、美月達は目的の、脱衣所前の通路へ入る直前の曲がり角に到着する。



美月: …うん。やっぱり最後の生徒がお風呂から上がったところみたい。



曲がり角から顔をのぞかせ、通路の先に、お風呂から上がったであろう女子生徒達と、その生徒達と話している先生を確認する。



日向子: すごい!!美月ちゃん!!


美月: そ、それほどでも笑


梅澤: 満更でもなさそうだが、飛香の作戦だろ。


美月: でも、この作戦を開始したのは私!


飛香: いいから、集中。


美月: はーい。


陽芽叶: 笑



そして、生徒達と先生が別れ、女子生徒達は美月達がいる方向へ歩き、先生は上の階へと向かう階段をのぼり始めた。



飛香: さっ、行くよ。


美月: Go!


梅澤: …


陽芽叶: ペコ


日向子: うん!!あ、秘密でお願いね!


女子生徒1: はいはい笑


女子生徒2: 成功を祈ってるよ~


女子生徒3: 日向子に飛香、あと美月ちゃんまでいるってことは、あそこかな笑


女子生徒4: 伊藤さんと梅澤さんも一緒なんだ。



すれ違う女子生徒達に、見逃すようお願いしながら、誰もいなくなった通路を進む5人。



美月: よし、あと半分。



というところだったのだが…




ビリッ




陽芽叶: あ…



突然、立ち止まる陽芽叶。



飛香: どうしたの?


梅澤: ?


日向子: 陽芽叶ちゃん?


陽芽叶: 失敗だ。


美月: え?失敗って…


??: あら、またお風呂に入るつもりなの?



階段から声が聞こえた。



美月: なっ……剣崎先生。


剣崎: 笑、白城さんに南雲さん、山室さん。それに伊藤さんと…梅澤さんもいるのね。


日向子: なんで剣崎先生がここにいるんですか?!



ものすごく驚いた表情で、日向子が尋ねる。



剣崎: 別に、なんとなくエントランスから上がって来てみただけだけど……なにか、私に見られたら都合の悪いことでもするつもりだったのかしら?その南雲さんの表情は笑


日向子: ギクッ


飛香: はぁ…


美月: いや~お風呂2回目とか無理なのかな?って思ってですね。


梅澤: (なんという表情管理……日向子のミスを帳消しにするかのような、素早く効果的なフォロー……さすが美月。)


剣崎: お風呂2回目か~他のみんなもまた、お風呂に入りたいの?


飛香: はい。(今回は無理だ。諦めるしかない。)


日向子: い…


飛香: ギロッ!!!!


日向子: はい!


美月: ここのお風呂が、ものすごく気持ち良かったもので。


剣崎: そうなの?私、まだ入ってないから気になるな~


美月: …先生も入ったらどうですか?


剣崎: 笑、残念ながら、私のお風呂の時間は、もうちょっと先なのよね~生徒達の安全を確保しないといけないから…ね笑


美月: (これは私達がやろうとしてたこと、バレてる…)


剣崎: それで、みんなが気になってることだけど、2回目のお風呂は許可できないかな。特別扱いするわけにもいかないし。ということで、部屋に戻ってゆったりとおしゃべりするか、明日も予定ギッシリなわけだし、早めに寝たらどうかな?


飛香: (これは、見逃してあげるから早く部屋に戻りなさいって意味だ…)


美月: そっか~じゃあ、また明日だね。


飛香: うん、そうだね。


日向子: え?


飛香: 良いからボソッ


美月: よし、みんな部屋に戻ろう!おやすみなさい!先生。


日向子: おやすみなさい!


梅澤: ペコ


陽芽叶: おやすみなさい。


飛香: おやすみなさい、剣崎先生。


剣崎: うん笑、おやすみなさい。



こうして、美月達の守里達の部屋へ行こう作戦は、失敗に終わったのだった。


ちなみに、美月達の部屋に残っていた川嶋によると、部屋に帰ってきた後の美月は、まるで幼稚園児のように、守里の部屋に行きたいと駄々をこねていたとのことだ。



剣崎: ルールはルールだからね。本当は見逃してあげたかったんだけど…ごめん、白城さん達。



再び、誰もいなくなった脱衣所の前で、1人呟いた剣崎は、1階のエントランスに向かって、階段を降り始めた。




to be continued
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