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第6章 修学旅行編
第188話「肉で梅を釣る」
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旅館で泊まる部屋にやって来た守里達が、同じ部屋で泊まることになっている6組の男子が誰か、という話をしていると、ちょうど部屋の扉が叩かれた。
ガチャ
??: やぁ。さっきぶり。
春時: え?!
守里: 灰崎君?
灰崎: どうも。
春時: う、うん。それで、なんの用?
灰崎: なんの用って……ここに泊まりに来た。
春時: 泊まりに来たって…
守里: まさかの灰崎君が、同じ部屋の6組の子?
灰崎: そうだよ。
3班男子2: 生徒会の議長さんと、同じ部屋って、なんか光栄笑
3班男子1: え、議長?!生徒会役員?
灰崎: そんなそんな笑。普通によろしく。
春時: おぉ…(何かと縁があるな…)
守里: よろしく。入って、荷物下ろしたら?
灰崎: うん。失礼します……ほぉ、見事な和室だ。木村君の自室もこんな感じ?
春時: え?ま、まぁ。
灰崎: へぇ~
3班男子1: 灰崎…君も、知ってるんだな。その話。
灰崎: 笑、呼び捨てでも、なんなら謙心でも良いよ。
3班男子1: なら、灰崎で。
灰崎: 分かった笑。その話って言うのは、木村君の家のことで良いんだよね?
3班男子1: おう。
灰崎: うん、知ってる。
春時: 灰崎も噂で?
灰崎: いや、僕の場合は、ね笑。
守里: え?
灰崎: あれ、覚えてない?体育祭の時に、ちょろっと話してたじゃん。
守里: あ、言われてみれば、確かに話したかも…
いや、話したというか、ほぼ呟きに近かったと思うんだけど…
春時: なんだ、守里が言ったのかよ笑
灰崎: 午後の部に入って、ほら、森崎君が、不審者達を捕まえに行くちょっと前に、突然、鹿川さんがツチノコが居そうな場所はどこだ!って叫んで。
3班男子1: え、ツチノコ?
3班男子2: …聞いたことある。ツチノコの存在を信じている究極のおバカが、生徒会にいるとか何とか…
春時: それで?(バスに乗る前に叫んでた子か。)
灰崎: 副会長が、洋っていうより、和の雰囲気のある場所に居そうやない?妖怪やったらって言って。
3班男子1: 副会長もそんなこと言うんだな。
3班男子2: なんでも、変な自作キャラクターを描いてるらしいよ。
春時: 七星先輩がね……うん、言いそう。
灰崎: そして、鹿川さんが、和室なんて学校にあるかな~って言ったら、森崎君が、春時の部屋ってボソッと呟いたんだよ。
守里: うん、本当にボソッとだけど。
春時: よく、そんなこと覚えてたな笑
灰崎: 昔から、記憶力は良いんだ。
3班男子1: そんなレベルじゃないと思うんだが…
3班男子2: さすが生徒会役員…
灰崎: ま、とにかくそういうわけで、木村君の家のことは知ってるんだ。
春時: なるほど。
守里: あの後、香蓮とはどうだったの?
灰崎: それがさ、梅澤さんは話しかけても無視するわ、僕は他の子から話しかけられるわで、なんの進展もなし笑
守里: それは、残念だったね笑
灰崎: まぁでも、少なくとも無関心ではなくなったわけだから、今日一日で1歩は進めたってことで、満足だよ。
春時: 確かに、そういう考え方もできるな笑
3班男子1: 灰崎は、梅澤さんと仲良くなろうってしてるのか?
灰崎: うん。中々上手くいってないけど笑
3班男子1: そ、そうか…
3班男子2: お前も、灰崎君と一緒に頑張ってみたら?
灰崎: え?
3班男子1: …分かった。灰崎!梅澤さんと仲良くなれるよう、一緒に頑張ろう!
灰崎: 笑、うん。
春時: 仲間が増えたな笑
3班男子1: おう!
灰崎: ちなみにさ、梅澤さんと仲良くなる良い方法とかない?
守里: 香蓮と仲良くなる方法か……う~ん……あ、晩ご飯の時に、食べ物あげるとかどう?
灰崎: 食べ物か…
3班男子1: なんで?
守里: 香蓮って、めちゃくちゃ大食いなんだよ。だから、食べ物をあげれば、喜ぶと思ったんだけど……春時、どう思う?
春時: そうだな笑。祐希とか日向子みたいに、食べ物をあげて単純に喜ぶとは思えないが、多少は効果があるんじゃないか?
灰崎: 2人のお墨付きなら、やってみる価値大だね。
3班男子1: だな!やってみる!!
3班男子2: (いや、灰崎君は席近いだろうし、まだできそうだけど、席が離れてるお前がやるのは、無理じゃないか?できたとしても、めちゃくちゃ目立つでしょ笑)
春時: ま、頑張れ笑
灰崎: うん。倉田さんと、鹿川さん…は、別としても、他の役員が頑張ってるのに、僕だけがなんの成果もあげられないってのは、マズイし。
守里: まゆたんは、アレだとしても、倉田さんが香蓮と仲良くなるっていうのは?
春時: っ!(まゆたん?!)
灰崎: その話も出てはいたんだけど、同じクラスってのもあるし、そういう他人とパイプを作ることに関しては、僕の方が得意ってことでね。梅澤さんが、中々難しい性格ってことは、予め分かってたから。
守里: そういうことね。
灰崎: まぁ、僕の方が得意って言っても、倉田さんと比べたらって話で、人と仲良くなるのは、鹿川さんが1番得意なんだよ笑
守里: 笑、ちょっと分かるかも。
灰崎: 頭のネジは数本飛んでるけど、人の懐に入るのが上手いんだ。
春時: その、頭のネジが数本飛んでるってのは、かなりの欠点のような気が…
灰崎: まぁね笑。でも、話すと面白い子なんだ。
3班男子2: その倉田さんって人は、どういう人なの?灰崎君から見て。
灰崎: 倉田さんか~
守里: しっかり者だよね。
灰崎: うん。生徒会で1番キチンとしてる人かな。仕事から私生活まで。
春時: 鹿川さんとは真逆なタイプ?
灰崎: 鹿川さんも、ノルマはちゃんと達成するんだけどね笑
3班男子1: 生徒会の仕事のノルマ……ヤバそう…
灰崎: あとは、そうだな~意外と緊張しいだよ。
守里: え、そうなの?
灰崎: うん。1回スイッチが入ったら、今日の出発の挨拶みたいに、堂々と話せるんだけど、そのスイッチが入るまでは、噛まずに言えるかな、大丈夫かな、とか言って、緊張しまくってるんだ笑
守里: そのイメージは無かった笑
3班男子2: やっぱ、誰にでも長所と短所はあるもんなんだね。
灰崎: 笑、よし、そろそろ夕食の時間だし、食事処に移動しよう。
守里: あ、ほんとだ。
春時: 話してたら、あっという間だったな笑
3班男子1: お腹減ったぜ!
3班男子2: 2人は、梅澤さんと仲良くなるために、頑張るんでしょ。
3班男子1: おう!俺の分を分ける。
灰崎: 僕もそうするよ。
守里: 上手くいくと良いね笑
灰崎: …おっと、これも持ってかないとボソッ…
と、守里達は楽しく話しながら、部屋を出て食事処に向かった。
◇◇◇
食事処
修学旅行1日目の夕食は、翌日からの自由行動を、より良いものにするためなのか、班ごとで鍋を囲む形になっていた。
学年主任のいただきますで、食事が始まり、守里達も、明日のことを話しつつ、食べ始める。
もちろん、真剣に明日のことを話している…話そうとしているのは、3人だけなのだが。
守里: 明日はまず、京都駅から電車に乗るんだよね。
川嶋: うん。嵯峨嵐山駅まで。
春時: その駅のすぐ近くに、トロッコに乗る場所があるんだよな?
守里: マップ見た感じ、そうだとおも…
美月: はい、守里、あーん。
守里: いや、美月。家じゃないんだから。
春時: 家ではやってるのかよ。
守里: ほんとたまにね。美月が泣き叫び始めたら、仕方なくって感じ。
川嶋: あんた、そんなことしてるの?
美月: テヘ?
川嶋: はぁ……あ、祐希、ちゃんと取り箸で取って。
祐希: え~誰か気にする?
川嶋: そういうことじゃないの。もう17なんだから、誰から見られても恥ずかしくないように…
祐希: 分かったから……全く、志帆は口うるさい姑になりそうだな。モグモグ
川嶋: なんだって?!
守里: まぁまぁ志帆、落ち着いて。
美月: ほら、志帆は良いから、あーん!
早く志帆をツッコミ役として復活させないと、こっちを押さえられない。
美月を押さえられるのは、飛香か志帆だけ…
いや、もう1人…
守里: 陽芽叶さん!
隣に座る美月を見ていた守里は、助けを求めるような目で、真正面に座る陽芽叶を見る…が…
陽芽叶: なに?守里笑
守里: え…
陽芽叶は立ち上がって、肉を掴んだ自分の箸を、守里の方に向けていた。
陽芽叶: 美月はダメでも、私なら良いよね笑。ほら、あーん。
守里: い、いや…
美月: なっ!陽芽叶ちゃん、それは私の特権だよ!
陽芽叶: あーんが美月ちゃんの特権だなんて、聞いたことないけど笑
美月: じゃあ、今教えてあげます!守里へのあーんは、家族である美月ちゃんだけの特権なんですよ!陽芽叶!!
陽芽叶: 笑、それは誰が決めたの?美月ちゃん。それに、守里は納得してるの?
美月: クッ守里!
陽芽叶: 守里。
美月 陽芽叶: あーん!
守里: ちょっと…
川嶋: 姑って、まだ子供も産んでないし、結婚もしてないし、なんなら彼氏もいないんだけど!
祐希: あ、彼氏いないんだ…モグモグ
川嶋: はっ!///
「「(委員長、彼氏いないんだ…)」」
そんな川嶋の叫びを、1組全員が聞いていた。
川嶋: こ、この~
祐希: そんなカッカしないの。子供じゃないんだからさ笑…モグモグ
川嶋: こ、子供……祐希に…子供って……
春時: あ、これ美味い…モグモグ(こりゃ、収集つかねぇな。放っとこ。)
と、5班の席が、大いに盛り上がっている中で、3班は…
日向子: あっしゅん、もっとお肉ちょうだい!
飛香: …(美月のやつ、ここぞとばかりにイチャつきやがって…)
日向子: お肉!!
飛香: …(それに、陽芽叶ちゃんもなんか加わってるし…)
日向子: あっしゅんってば!!
飛香: うわっ……わ、分かった、お肉ね。
鍋の前で目をギラギラとさせている日向子が持つお椀に、飛香はお肉と野菜やキノコ類を取る。
日向子: 人参とキノコも入ってるんだけど…
飛香: 好き嫌いせずに食べな。
日向子: ブー
秋吉: なんで日向子の分を、飛香が取ってるの?
東野: 日向子の好き嫌いで、お肉がすぐに無くなっちゃうからだって。
秋吉: なるほど。
3班男子1: 俺の分の肉を、梅澤さんのところに…
3班男子2: いや、鍋の肉を人に持っていくのは、さすがにじゃない?笑。それにお前だけの分ってわけでもないし。
3班男子1: だよな。どうすれば、梅澤さんに…
東野: え、もしかして、梅澤ちゃんにアタック仕掛けようってしてるの?
3班男子1: アタックっていうか、仲良くなりたくてよ…
東野: へぇ~笑
秋吉: 澪奈、そんな楽しそうな顔しないの。
3班男子2: (東野さんは、そういう話が大好きそうだもんな…)
秋吉: …
シュッ
3班男子2: (あ、凄い速さで東野さんのお椀に、野菜を移した…秋吉さんは野菜が苦手なのかな笑)
そして、6組の席では…
梅澤: バクバク…
灰崎: 聞いてた通り、よく食べるね。ほら、このお肉もいる?取ってあげるよ。
梅澤: いらねぇ。自分で取る。バクバク
灰崎: まぁまぁ、そんなこと言わずに…
梅澤: バクバク
灰崎: ……なら、これとかいる?
そう言って灰崎は、部屋から出てくる際に持ってきた、黒い布に包まれた箱を取り出した。
梅澤: チラッ……バクバク
灰崎: 笑
布を外し、箱を開けると、そこの中には…
灰崎: A5ランク松坂牛の極上ロースと、肩ロース、リブロースです。
冷気と共に、キラキラと輝く肉が並べられていた。
梅澤: なっ……ゴクン
灰崎: 食べたい?笑
梅澤: …タダでとは言わないだろ。目的は。
灰崎: 仲良くできれば……いや、無視しないと約束してくれるなら、全て差し上げます笑
梅澤: ………分かった。無視しないでやるから…
灰崎: 笑、ありがとう。どうぞ。
肉を箱ごと梅澤に渡す。
梅澤: …おう。
恐る恐る箱の中の肉を1枚、箸で取り、鍋の中に入れる。
そして…
梅澤: いただきます……パクッ………フンッ!!
灰崎: どう?笑
梅澤: うま…///……い、いやなんでもない…
と言いつつ、梅澤は肉を取り、鍋の中でしゃぶしゃぶし、食べるという動作を止めなかった。
灰崎: 喜んでもらえたようで何より笑
こんな2人のやり取りを、周りで見ていた他の班員は…
「「(いや、なんで持ってきてるの…)」」
共通の疑問を抱いていたのだった。
灰崎: (若月先輩から事前に聞いて、梅澤さん用に、これを取り寄せといて正解だった。)
梅澤: バクバク(これ美味すぎだろ!)
このように、各席、ワイワイと楽しい雰囲気で、夕食の時間は過ぎて行った。
to be continued
ガチャ
??: やぁ。さっきぶり。
春時: え?!
守里: 灰崎君?
灰崎: どうも。
春時: う、うん。それで、なんの用?
灰崎: なんの用って……ここに泊まりに来た。
春時: 泊まりに来たって…
守里: まさかの灰崎君が、同じ部屋の6組の子?
灰崎: そうだよ。
3班男子2: 生徒会の議長さんと、同じ部屋って、なんか光栄笑
3班男子1: え、議長?!生徒会役員?
灰崎: そんなそんな笑。普通によろしく。
春時: おぉ…(何かと縁があるな…)
守里: よろしく。入って、荷物下ろしたら?
灰崎: うん。失礼します……ほぉ、見事な和室だ。木村君の自室もこんな感じ?
春時: え?ま、まぁ。
灰崎: へぇ~
3班男子1: 灰崎…君も、知ってるんだな。その話。
灰崎: 笑、呼び捨てでも、なんなら謙心でも良いよ。
3班男子1: なら、灰崎で。
灰崎: 分かった笑。その話って言うのは、木村君の家のことで良いんだよね?
3班男子1: おう。
灰崎: うん、知ってる。
春時: 灰崎も噂で?
灰崎: いや、僕の場合は、ね笑。
守里: え?
灰崎: あれ、覚えてない?体育祭の時に、ちょろっと話してたじゃん。
守里: あ、言われてみれば、確かに話したかも…
いや、話したというか、ほぼ呟きに近かったと思うんだけど…
春時: なんだ、守里が言ったのかよ笑
灰崎: 午後の部に入って、ほら、森崎君が、不審者達を捕まえに行くちょっと前に、突然、鹿川さんがツチノコが居そうな場所はどこだ!って叫んで。
3班男子1: え、ツチノコ?
3班男子2: …聞いたことある。ツチノコの存在を信じている究極のおバカが、生徒会にいるとか何とか…
春時: それで?(バスに乗る前に叫んでた子か。)
灰崎: 副会長が、洋っていうより、和の雰囲気のある場所に居そうやない?妖怪やったらって言って。
3班男子1: 副会長もそんなこと言うんだな。
3班男子2: なんでも、変な自作キャラクターを描いてるらしいよ。
春時: 七星先輩がね……うん、言いそう。
灰崎: そして、鹿川さんが、和室なんて学校にあるかな~って言ったら、森崎君が、春時の部屋ってボソッと呟いたんだよ。
守里: うん、本当にボソッとだけど。
春時: よく、そんなこと覚えてたな笑
灰崎: 昔から、記憶力は良いんだ。
3班男子1: そんなレベルじゃないと思うんだが…
3班男子2: さすが生徒会役員…
灰崎: ま、とにかくそういうわけで、木村君の家のことは知ってるんだ。
春時: なるほど。
守里: あの後、香蓮とはどうだったの?
灰崎: それがさ、梅澤さんは話しかけても無視するわ、僕は他の子から話しかけられるわで、なんの進展もなし笑
守里: それは、残念だったね笑
灰崎: まぁでも、少なくとも無関心ではなくなったわけだから、今日一日で1歩は進めたってことで、満足だよ。
春時: 確かに、そういう考え方もできるな笑
3班男子1: 灰崎は、梅澤さんと仲良くなろうってしてるのか?
灰崎: うん。中々上手くいってないけど笑
3班男子1: そ、そうか…
3班男子2: お前も、灰崎君と一緒に頑張ってみたら?
灰崎: え?
3班男子1: …分かった。灰崎!梅澤さんと仲良くなれるよう、一緒に頑張ろう!
灰崎: 笑、うん。
春時: 仲間が増えたな笑
3班男子1: おう!
灰崎: ちなみにさ、梅澤さんと仲良くなる良い方法とかない?
守里: 香蓮と仲良くなる方法か……う~ん……あ、晩ご飯の時に、食べ物あげるとかどう?
灰崎: 食べ物か…
3班男子1: なんで?
守里: 香蓮って、めちゃくちゃ大食いなんだよ。だから、食べ物をあげれば、喜ぶと思ったんだけど……春時、どう思う?
春時: そうだな笑。祐希とか日向子みたいに、食べ物をあげて単純に喜ぶとは思えないが、多少は効果があるんじゃないか?
灰崎: 2人のお墨付きなら、やってみる価値大だね。
3班男子1: だな!やってみる!!
3班男子2: (いや、灰崎君は席近いだろうし、まだできそうだけど、席が離れてるお前がやるのは、無理じゃないか?できたとしても、めちゃくちゃ目立つでしょ笑)
春時: ま、頑張れ笑
灰崎: うん。倉田さんと、鹿川さん…は、別としても、他の役員が頑張ってるのに、僕だけがなんの成果もあげられないってのは、マズイし。
守里: まゆたんは、アレだとしても、倉田さんが香蓮と仲良くなるっていうのは?
春時: っ!(まゆたん?!)
灰崎: その話も出てはいたんだけど、同じクラスってのもあるし、そういう他人とパイプを作ることに関しては、僕の方が得意ってことでね。梅澤さんが、中々難しい性格ってことは、予め分かってたから。
守里: そういうことね。
灰崎: まぁ、僕の方が得意って言っても、倉田さんと比べたらって話で、人と仲良くなるのは、鹿川さんが1番得意なんだよ笑
守里: 笑、ちょっと分かるかも。
灰崎: 頭のネジは数本飛んでるけど、人の懐に入るのが上手いんだ。
春時: その、頭のネジが数本飛んでるってのは、かなりの欠点のような気が…
灰崎: まぁね笑。でも、話すと面白い子なんだ。
3班男子2: その倉田さんって人は、どういう人なの?灰崎君から見て。
灰崎: 倉田さんか~
守里: しっかり者だよね。
灰崎: うん。生徒会で1番キチンとしてる人かな。仕事から私生活まで。
春時: 鹿川さんとは真逆なタイプ?
灰崎: 鹿川さんも、ノルマはちゃんと達成するんだけどね笑
3班男子1: 生徒会の仕事のノルマ……ヤバそう…
灰崎: あとは、そうだな~意外と緊張しいだよ。
守里: え、そうなの?
灰崎: うん。1回スイッチが入ったら、今日の出発の挨拶みたいに、堂々と話せるんだけど、そのスイッチが入るまでは、噛まずに言えるかな、大丈夫かな、とか言って、緊張しまくってるんだ笑
守里: そのイメージは無かった笑
3班男子2: やっぱ、誰にでも長所と短所はあるもんなんだね。
灰崎: 笑、よし、そろそろ夕食の時間だし、食事処に移動しよう。
守里: あ、ほんとだ。
春時: 話してたら、あっという間だったな笑
3班男子1: お腹減ったぜ!
3班男子2: 2人は、梅澤さんと仲良くなるために、頑張るんでしょ。
3班男子1: おう!俺の分を分ける。
灰崎: 僕もそうするよ。
守里: 上手くいくと良いね笑
灰崎: …おっと、これも持ってかないとボソッ…
と、守里達は楽しく話しながら、部屋を出て食事処に向かった。
◇◇◇
食事処
修学旅行1日目の夕食は、翌日からの自由行動を、より良いものにするためなのか、班ごとで鍋を囲む形になっていた。
学年主任のいただきますで、食事が始まり、守里達も、明日のことを話しつつ、食べ始める。
もちろん、真剣に明日のことを話している…話そうとしているのは、3人だけなのだが。
守里: 明日はまず、京都駅から電車に乗るんだよね。
川嶋: うん。嵯峨嵐山駅まで。
春時: その駅のすぐ近くに、トロッコに乗る場所があるんだよな?
守里: マップ見た感じ、そうだとおも…
美月: はい、守里、あーん。
守里: いや、美月。家じゃないんだから。
春時: 家ではやってるのかよ。
守里: ほんとたまにね。美月が泣き叫び始めたら、仕方なくって感じ。
川嶋: あんた、そんなことしてるの?
美月: テヘ?
川嶋: はぁ……あ、祐希、ちゃんと取り箸で取って。
祐希: え~誰か気にする?
川嶋: そういうことじゃないの。もう17なんだから、誰から見られても恥ずかしくないように…
祐希: 分かったから……全く、志帆は口うるさい姑になりそうだな。モグモグ
川嶋: なんだって?!
守里: まぁまぁ志帆、落ち着いて。
美月: ほら、志帆は良いから、あーん!
早く志帆をツッコミ役として復活させないと、こっちを押さえられない。
美月を押さえられるのは、飛香か志帆だけ…
いや、もう1人…
守里: 陽芽叶さん!
隣に座る美月を見ていた守里は、助けを求めるような目で、真正面に座る陽芽叶を見る…が…
陽芽叶: なに?守里笑
守里: え…
陽芽叶は立ち上がって、肉を掴んだ自分の箸を、守里の方に向けていた。
陽芽叶: 美月はダメでも、私なら良いよね笑。ほら、あーん。
守里: い、いや…
美月: なっ!陽芽叶ちゃん、それは私の特権だよ!
陽芽叶: あーんが美月ちゃんの特権だなんて、聞いたことないけど笑
美月: じゃあ、今教えてあげます!守里へのあーんは、家族である美月ちゃんだけの特権なんですよ!陽芽叶!!
陽芽叶: 笑、それは誰が決めたの?美月ちゃん。それに、守里は納得してるの?
美月: クッ守里!
陽芽叶: 守里。
美月 陽芽叶: あーん!
守里: ちょっと…
川嶋: 姑って、まだ子供も産んでないし、結婚もしてないし、なんなら彼氏もいないんだけど!
祐希: あ、彼氏いないんだ…モグモグ
川嶋: はっ!///
「「(委員長、彼氏いないんだ…)」」
そんな川嶋の叫びを、1組全員が聞いていた。
川嶋: こ、この~
祐希: そんなカッカしないの。子供じゃないんだからさ笑…モグモグ
川嶋: こ、子供……祐希に…子供って……
春時: あ、これ美味い…モグモグ(こりゃ、収集つかねぇな。放っとこ。)
と、5班の席が、大いに盛り上がっている中で、3班は…
日向子: あっしゅん、もっとお肉ちょうだい!
飛香: …(美月のやつ、ここぞとばかりにイチャつきやがって…)
日向子: お肉!!
飛香: …(それに、陽芽叶ちゃんもなんか加わってるし…)
日向子: あっしゅんってば!!
飛香: うわっ……わ、分かった、お肉ね。
鍋の前で目をギラギラとさせている日向子が持つお椀に、飛香はお肉と野菜やキノコ類を取る。
日向子: 人参とキノコも入ってるんだけど…
飛香: 好き嫌いせずに食べな。
日向子: ブー
秋吉: なんで日向子の分を、飛香が取ってるの?
東野: 日向子の好き嫌いで、お肉がすぐに無くなっちゃうからだって。
秋吉: なるほど。
3班男子1: 俺の分の肉を、梅澤さんのところに…
3班男子2: いや、鍋の肉を人に持っていくのは、さすがにじゃない?笑。それにお前だけの分ってわけでもないし。
3班男子1: だよな。どうすれば、梅澤さんに…
東野: え、もしかして、梅澤ちゃんにアタック仕掛けようってしてるの?
3班男子1: アタックっていうか、仲良くなりたくてよ…
東野: へぇ~笑
秋吉: 澪奈、そんな楽しそうな顔しないの。
3班男子2: (東野さんは、そういう話が大好きそうだもんな…)
秋吉: …
シュッ
3班男子2: (あ、凄い速さで東野さんのお椀に、野菜を移した…秋吉さんは野菜が苦手なのかな笑)
そして、6組の席では…
梅澤: バクバク…
灰崎: 聞いてた通り、よく食べるね。ほら、このお肉もいる?取ってあげるよ。
梅澤: いらねぇ。自分で取る。バクバク
灰崎: まぁまぁ、そんなこと言わずに…
梅澤: バクバク
灰崎: ……なら、これとかいる?
そう言って灰崎は、部屋から出てくる際に持ってきた、黒い布に包まれた箱を取り出した。
梅澤: チラッ……バクバク
灰崎: 笑
布を外し、箱を開けると、そこの中には…
灰崎: A5ランク松坂牛の極上ロースと、肩ロース、リブロースです。
冷気と共に、キラキラと輝く肉が並べられていた。
梅澤: なっ……ゴクン
灰崎: 食べたい?笑
梅澤: …タダでとは言わないだろ。目的は。
灰崎: 仲良くできれば……いや、無視しないと約束してくれるなら、全て差し上げます笑
梅澤: ………分かった。無視しないでやるから…
灰崎: 笑、ありがとう。どうぞ。
肉を箱ごと梅澤に渡す。
梅澤: …おう。
恐る恐る箱の中の肉を1枚、箸で取り、鍋の中に入れる。
そして…
梅澤: いただきます……パクッ………フンッ!!
灰崎: どう?笑
梅澤: うま…///……い、いやなんでもない…
と言いつつ、梅澤は肉を取り、鍋の中でしゃぶしゃぶし、食べるという動作を止めなかった。
灰崎: 喜んでもらえたようで何より笑
こんな2人のやり取りを、周りで見ていた他の班員は…
「「(いや、なんで持ってきてるの…)」」
共通の疑問を抱いていたのだった。
灰崎: (若月先輩から事前に聞いて、梅澤さん用に、これを取り寄せといて正解だった。)
梅澤: バクバク(これ美味すぎだろ!)
このように、各席、ワイワイと楽しい雰囲気で、夕食の時間は過ぎて行った。
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一方、ウィルムの常連客たちは突然の退職が代表の私情で行われたことと、その後の不誠実な対応、さらには後任であるラストンの無能さに激怒。大貴族、Sランク冒険者パーティーのリーダー、秘境に暮らす希少獣人族集落の長、世界的に有名な鍛冶職人――などなど、有力な顧客はすべて商会との契約を打ち切り、ウィルムをサポートするため次々と森にある彼の工房へと集結する。やがて、そこには多くの人々が移住し、最強クラスの有名人たちが集う村が完成していったのだった。
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