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第6章 修学旅行編

第186話「鹿との戯れ」

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灰崎: …ん?あれは…



梅澤の元を離れようとした灰崎だったが、振り返った先にある道の向こうに、気になるものを発見する。



灰崎: ねぇ、梅澤さん。あれって…


梅澤: (無視だ無視…)


灰崎: なんか、人が鹿に襲われてるんだけど。


梅澤: は?



あまりに予想外の言葉に、思わず梅澤は灰崎がいる方向を見た。


すると、ずっと先に、たくさんの鹿と、その鹿達の間から伸びる人の足が目に入る。



灰崎: 様子を見てくる。



すぐさま灰崎は、その現場に向かう。



梅澤: ……チッ、気になるだろうが!!



それに続き、梅澤も走り出した。



灰崎: やっぱり、人の足…大丈夫ですか?!


??: 笑、やめてやめて!



鹿達の足音や咀嚼音と共に、そういう声が聞こえる。



灰崎: すぐ助けます!えっと、まずは、鹿達を退けないと。


梅澤: おい!邪魔だ!!


ドンッ!!



地面に足を振り下ろし、鹿達へ向けて全力の威圧を放つ。

それにより、集まっていた鹿達が、慌てて散っていった。



灰崎: 笑(圧強すぎ…)大丈夫ですか?…って…



鹿がいなくなったことで、その中心に倒れていた人物を視認した灰崎は驚く。



??: あれ?鹿さん達…


灰崎: この子は確か…


梅澤: って、祐希かよ。


祐希: あれ、梅ちゃんじゃん。


灰崎: …あ、副会長の妹さん。


祐希: …そうだけど、鹿さん達は?


梅澤: はぁ、心配して損した。


灰崎: 鹿に襲われてたみたいだけど、大丈夫だった?


祐希: 襲われて?誰が。


梅澤: 多分コイツ、餌やってただけだぞ。


灰崎: あれで?


祐希: そうだよ!鹿さん達に餌やりしてたんだ。って、せんべい無くなってる!


梅澤: そりゃそうだろ。あの量の鹿に、あんな勢いで食われてたんだから。


祐希: もう1つ買ってこよっかな~


灰崎: もうそろそろ集合時間だから、やめといた方が良いんじゃない?


祐希: あなた誰?


梅澤: コイツの事なんか聞かなくていいよ。


祐希: 梅ちゃんの友達?


梅澤: は?ちが…


灰崎:そうそう笑。梅澤さんの友達の、灰崎謙心って言います。いつもお姉さんにお世話になってます。


祐希: ってことは、生徒会の人か。よろしく。


灰崎: よろしくね。祐希さん。


祐希: うんうん。


梅澤: じゃ、私はもう行くから。


灰崎: そんなこと言わず…


祐希: 一緒に集合場所まで行こうよ!


梅澤: …はぁ…(面倒くさ…増えたし。)



こうして、梅澤は2人のストーカーを引き連れて、集合場所の駐車場に向かった。


◇◇◇


守里: せんべいもあげ終わったし、そろそろ駐車場に行こう。


陽芽叶: そうだね。


美月: もうちょっと、鹿と戯れたかったな~


守里: とか言いながら、もう1つ買ってたじゃん。


美月: まぁね笑


陽芽叶: なら美月は、もう少しだけここで鹿と遊んでたら?私は、守里と一緒に行くから笑


守里: え?


美月: させるか!私も行く!


陽芽叶: はいはい笑



おぉ、美月の手綱を握れる人が、とうとう…

陽芽叶さん、ありがとう。



守里: よし、行こう。



守里、美月、陽芽叶の3人も、集合場所であるバスの駐車場に向かう。




その道中で…



守里: ん?春時じゃん。


春時: あ、守里。



ベンチに座る春時を発見する。



美月: 私達もいるよ!


陽芽叶: やっほ~


春時: おう。ってことは、もう帰る時間か。


守里: うん。そろそろ戻らないとね。


春時: 分かった。


美月: 志帆は?


春時: 笑、志帆なら…ほら、あそこ。



そう言って春時が見た方向を見ると、川嶋が3頭の鹿に餌をあげていた。



川嶋: ちょちょちょ、順番!あなた食べたでしょって。私覚えてるから…仲良く!こっち、こっち、あなた食べてないもんね。



どうやら、1頭の鹿に、まだ餌をあげられておらず、他の2頭を退けつつ、その1頭に餌をあげようと奮闘しているらしい川嶋。



美月: あれ、何やってるの?


春時: あの1番小さい鹿に餌をやりたいらしい。


守里: なるほど。


陽芽叶: へぇ~


川嶋: あなた食べてないもんね。知ってる知ってる。あげたいあげたい。あなた賢いわね~あなた達2人はいっぱい食べたでしょ!


陽芽叶: なんか、お母さんみたいになってるんだけど笑


美月: 確かに笑


守里: 志帆にもあんな一面が…


春時: 俺もびっくりしたぜ。志帆は動物が好きみたいだ。


川嶋: ほら、みんな同じ量を食べるんだよ。これ、平等って言うの。平等!みんな一緒、みんな仲良しと一緒よ。


守里: 平等を説いてる笑


美月: 馬の耳に念仏状態でしょ笑


陽芽叶: 笑


春時: 頑張ってんのよ。


川嶋: はいはい、上手上手…お、はい、食べな食べな……よし、食べた食べた、良かった~



長い戦いの末、川嶋は3頭全ての鹿に、餌を与えることができたようだった。


そして…



川嶋: 仲良くしようぜ~~あ、無くなった……うん、見える?ないない、ないないでしょ。分かる?おしまい。ごちそうさまでした。



持っていたせんべいを全てあげ終えた。



川嶋: ふぅ~


守里: 餌、あげ終わった?



それを見計らって、守里達が近づく。



川嶋: あ、え?みんな?


美月: いや~面白かったよ!


陽芽叶: 志帆ちゃん、可愛かった。


川嶋: み、見てたの?!///


守里: ついさっき来たんだ。


春時: 俺はずっと見てたけどな笑


川嶋: そ、そっか~///(恥ずかしい!)


守里: 笑、楽しめた?


川嶋: …うん//


美月: 動物好きなの?


川嶋: まぁまぁかな。


陽芽叶: (あ、顔の赤みが無くなった。復帰早っ!)


春時: (冷静になるまでの時間が短くなってる…鍛えられたな笑)


守里: よし、もう時間だから駐車場に行こう。


川嶋: ほんとだ。行かないと。


美月: バイバイ!鹿さん達!


陽芽叶: これからも平等だよ!笑


川嶋: っ!!///もう!


春時: 良いじゃん。志帆の言った通りに、あの鹿達はするかもよ。


川嶋: 春時まで!///


守里: 笑



そうして、春時、川嶋と合流した守里達は、駐車場に向かって再び歩き出した。


◇◇◇


駐車場



剣崎: あ、川嶋さんの班も、これで全員到着かな。



駐車場で、生徒が戻ってきたかどうかの確認をしていた剣崎がそう言う。



川嶋: 全員ってことは、祐希も、もういますか?


剣崎: うん。さっき、6組の子と一緒に来たよ。ほら、あそこ。


守里: 6組…


川嶋: ちょっと祐希!



遠くに見えた祐希を呼ぶ川嶋。



祐希: あ、志帆!それに守里達も!


梅澤: やっと来た!おい、守里!美月!早く祐希を離してくれ!!


陽芽叶: えっと…


春時: すごい状況だな笑


守里: なんか既視感……はっ、休日の美月。


美月: え?



コアラのように梅澤に抱きついている祐希を見て、守里達は各々反応した。



川嶋: ごめんなさい!ちょっと、祐希、こっち来なさい!



そう言って、川嶋が梅澤と祐希に近づく。



祐希: え~時間まで良いじゃん!


梅澤: 離れろ!


川嶋: 梅澤さんも嫌がってるでしょ。


祐希: 仲良しだもんね!梅ちゃん!


梅澤: こんの~


守里: はいはい。もう良いでしょ?祐希。離してあげて。



見かねた守里も梅澤の元へ。



祐希: …


守里: ジー


祐希: は~い。



梅澤から離れ、祐希は守里の隣に立った。



梅澤: やっと離れた…


川嶋: 祐希、ダメでしょ!迷惑かけちゃ!


祐希: 友達だもん!ね?梅ちゃん!


梅澤: 友達って…


美月: 友達だよね!



そこに、美月も参戦する。



梅澤: …はいはい。友達ですよ。


美月: 笑


祐希: いぇーい!


灰崎: じゃあ、その流れで僕も…


梅澤: お前は違う!



後ろにいた6組の集団の中から、灰崎が出てくる。



守里: あ、灰崎君。


灰崎: 久しぶり?かな。森崎君。


守里: だね。夏休み以降、会ってないし。


灰崎: うん。


美月: 私も久しぶり!灰崎君。


灰崎: 笑、白城さん、久しぶり。




陽芽叶: 誰?


春時: あぁ、あの人は、生徒会議長の灰崎謙心。守里と美月とは、体育祭の時に仲良くなったみたい。


陽芽叶: へぇ~




川嶋: 灰崎…謙心…君…ってまさか!


祐希: 生徒会の…チラッ


守里: 議長。


祐希: そうそう!生徒会の議長の人!


灰崎: 笑、よろしくね。川嶋さん。


川嶋: っ!!!!


梅澤: なぁ守里、美月。コイツと仲良いんなら、どうにかしてくれ。コイツ、私と仲良くなりたいとか言って、ストーキングしてくんだよ。


灰崎: ストーキングとは人聞きが悪いな笑


守里: そうなの?灰崎君。


灰崎: いや、会長からのお達しでね。次の委員長候補の人達とは仲良くなっておく、まぁ少なくとも、会ったら話すぐらいにはなっとけってことで、梅澤さんと仲良くなろうって頑張ってたんだ。


守里: なるほど。


美月: そういうこと……って、香蓮が次の委員長候補?!


灰崎: うん。次の風紀委員長候補。


梅澤: 絶対違う。2人もそう思うだろ?


守里: う~ん、どうだろ。


美月: ありえなくもない…


梅澤: え…


灰崎: ってことで、奮闘中。ちなみに、川嶋さんもその対象だよ。


美月: 志帆も?!


灰崎: 森崎君は、この前聞いてたよね。


守里: うん。



もう動き始めてるのか…


って、そりゃそうだよな。

2ヶ月後には生徒会選挙があるし。



灰崎: ってことで、よろしく、川嶋さん……って…


川嶋: チーン


守里: あ、気絶してるね。


美月: 立ったまま気絶…


梅澤: すげぇな…


祐希: 立ったまま寝てるの?!祐希もそれやりたい!


灰崎: こうなるのか…


美月: 志帆と仲良くなるのは大変かもね笑


梅澤: それなら、私ともな。


守里: 頑張って、灰崎君。


灰崎: まぁ、僕だけじゃないけど。うん、頑張るよ。


美月: 僕だけじゃないってことは、他の2年生の役員の人も?


灰崎: そうだよ。ほら、ちょうど…



駐車場の入口の方を見る。




鹿川: ツチノコ見つからなかった~!!!


西条: だからツチノコなんていないって!!




灰崎: ごめん、鹿川さんは違う。


守里: だよね笑


灰崎: ま、とにかく、そういう事だから。


守里: 分かった。香蓮も、灰崎君は良い人だから仲良くね。


梅澤: チッ…気が向いたらな。一生無さそうだが。


美月: 志帆にも言っとく。


祐希: 志帆!起きて!!(祐希が志帆を起こす…なんか良い!)



と、和気あいあいと話していたところで…



先生: 時間になったから、各クラス、バスに乗り込め!!



学年主任の一言で、生徒達がバスに乗り出す。



守里: じゃあ、また。


美月: じゃあね、2人とも!ほら、志帆、起きて。


川嶋: はっ!!ここは……あ、時間?行こう!


祐希: バイバイ!!


梅澤: おう!


灰崎: またね。



こうして、守里達4人は、6組の2人と別れ、バスの近くにいた春時、陽芽叶と合流してから、バスに乗り込んだ。



灰崎: (まぁ、森崎君とはもう仲良しだし…それに、ね笑)




to be continued
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