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第6章 修学旅行編
第185話「食欲旺盛な奈良の鹿」
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大仏殿を出た守里達は、二月堂や法華堂等の、他の建物を見て周り、自由時間は残り1時間程度となっていた。
奈良公園
鹿せんべい自動販売機前
守里: さぁ、ここからが本番だ。
春時: ここまでの道中も、鹿を近くで見ることはあったが…
陽芽叶: その時は、可愛かったんだけどね笑
守里: 餌を持ったら、話が違うみたい。
春時: 見かけたもんな……中々な状況になってるヤツら。
守里: うん。みんな、気をつけよう。
美月: そんなに警戒しないといけない?笑
川嶋: 油断はダメだよ、美月。
守里: そうだよ。
美月: まぁ、2人がそう言うなら、気をつける。
春時: 祐希もだぞ
祐希: そんな心配しなくても大丈夫だって~
守里: …
陽芽叶: でもなんか、祐希ちゃんだったら本当に大丈夫そうじゃない?
守里: 確かに、体育祭の動物を捕まえる競技では、無敵に近かったけど…
祐希: この祐希様に任せなさい!!
春時: ま、一旦好きにさせてみようぜ、祐希は。
川嶋: え?
守里: 一旦だよ、一旦。
祐希: よっしゃー!早速!
一番乗りに、自動販売機にお金を入れ、祐希は、鹿せんべいを手に入れる。
川嶋: ほ、本当に気をつけるんだよ!
祐希: はいはい!いってきま~す!
そう言いながら、祐希は鹿達の元へ走り出した。
川嶋: 分かってるんだか…
春時: まぁまぁ、俺達も餌やりに行こう。
守里: みんなでまとまって行くのもアレだし、分かれよっか。
美月: じゃあ、私、守里と!
陽芽叶: 私も。
春時: 分かった、分かった笑。志帆はどうする?1人で回る?
川嶋: あら、そこは一緒に回らない?、じゃなくて良いの?笑
春時: えーっと……チラッ
守里: 笑、志帆は春時と一緒で良い?
川嶋: 良いよ。
美月: 祐希はどうするの?
守里: 先に見つけた方が、一緒に行動するようにしよう。
川嶋: はーい。じゃあ、集合時間の15分前……あと40分は、別行動ってことで。
こうして、鹿せんべいをそれぞれ買った守里達は、守里、美月、陽芽叶のグループと春時、川嶋ペアに分かれて、食欲旺盛な鹿の群れへ飛び込んだ。
守里: できれば、1頭ずつ相手したいよね。
美月: だね。
陽芽叶: あ、あそこに2頭だけいる。
守里: あの子達に、餌あげよっか。
美月: OK!!鹿さ~ん!
鹿せんべいを箱から取り出しつつ、2頭の鹿に駆け寄る美月。
その動きを察知した鹿達は、勢いよく美月の方を振り向く。
美月: っ!!
それに驚いた美月は、動きを止めるが、鹿達は止まらなかった。
美月: しゅ、守里~
守里: そうやって飛び出すから…
陽芽叶: 人気者じゃん、美月ちゃん笑
反射的に、鹿せんべいを持った手を上にあげた美月の周りに、鹿がまとわりつく。
美月: 動けない~
守里: なら、僕の分で…
見かねた守里は、自身の持つせんべい1枚を、美月の動きを封じる鹿達の前に持っていく。
守里: こっちだよ~
せんべいに食いついた鹿達は、美月から離れ、守里の後を追う。
美月: た、助かった~
陽芽叶: なにやってんの笑
美月: あんなに勢いよく来るとは思わないじゃん。
陽芽叶: きっとお腹が空いてるんだよ。
美月: もう、目がギンギン笑
陽芽叶: 鹿もそうなるんだね笑
美月: ほら、見てみ。あの守里のせんべいを食べてる鹿達を。
陽芽叶: 笑、ギンギンか……確かにそう見えなくもない。
守里: まだ食べる?笑
既に2枚のせんべいを消費してしまった守里は、未だに食欲の衰えない鹿達に、さらにせんべいをあげようとする。
美月: ってか、よくよく考えればさ。
陽芽叶: うん。
美月: あの鹿達、守里にあーんしてもらってるよね?
陽芽叶: まぁ、そうなるね。ただの餌やりだけど。
美月: …ずるい。
陽芽叶: 笑、動物にも嫉妬するの?
美月: 逆に陽芽叶ちゃんは、羨ましくないの?
陽芽叶: たかが動物相手に、羨ましいなんて思わないよ笑。ま、この修学旅行中に1回ぐらいは、守里からあーんしてもらおうっては思ってるけど。
美月: やっぱり……お昼も、なんか狙ってそうだったもんね。
陽芽叶: あ、バレてた?笑
美月: 私、そういうの分かる人だから。
陽芽叶: そういう美月ちゃんも、守里が口に運ぼうとしてたやつを、横から食べようってしてたじゃん笑
美月: そう?笑
と、守里を見つつ、話していると…
ビリッ
陽芽叶: っ!!美月ちゃん、左手を真横にあげて!
美月: え?うん…
戸惑いつつも、陽芽叶が言った通りに、美月はせんべいの束を持っていた手をあげる。
すると、その手に向かって、1頭の鹿が、美月達の真後ろから突っ込んで来た。
美月: うわっ!!!
守里: っ!どうしたの?!
その美月の声を聞き、守里が餌やりを中断し、美月達の元へ駆け寄る。
陽芽叶: 危なかった……後ろから、この鹿さんが走ってきたんだよ。
守里: この鹿め…って、怒っても仕方ないか。
美月: え?鹿だけに?
守里: そんなこと言う余裕があるんなら、大丈夫そうだ。
陽芽叶: ほら、早くあげないと、また突進してくるんじゃないの?
いつまでたっても餌をくれない美月に、痺れを切らした元気一杯の鹿が、美月を鋭い眼光で睨む。
美月: やば……ちゃんとあげるから、待ってって。
慌てて、手に持っていたせんべいを1枚食べさせる美月。
美月: それにしても、陽芽叶ちゃん。よく鹿が突っ込んでくるって分かったね。
陽芽叶: 笑、たまたまだよ。
美月: そのたまたまの陽芽叶ちゃんの言葉が、私の命を救ったんだ~
陽芽叶: 大袈裟すぎ笑
美月: いやいや。あのまま、真後ろから鹿に突進されてたら、絶対怪我してたし。
守里: じゃあ、陽芽叶さんは、美月の命の恩人だね笑
美月: ありがとうございます!我が命の恩人様!!
陽芽叶: まぁ、そこまで言うんなら…どういたしまして笑
守里: あ、また別の鹿が寄ってきたよ。陽芽叶さんもあげたら?
陽芽叶: そうだね。ほら、あげるよ~
美月: え?まだ食べるの?しょうがないな~
守里: 僕も余ってるし、あげるか。
こんな感じで、守里達は和やかに餌やりを続けた。
その一方…
梅澤: ジー
同じ班のメンバーに一言伝えてから、班を抜け、1人自由行動をしていた梅澤は、なんとなくで買ってみた鹿せんべいを持って、鹿をじっと見ていた。
梅澤: ほら、これ。
鹿と目の高さを合わせつつ、手に持ったせんべいを鹿の前に動かすが…
梅澤: あ………チッ
目が合った瞬間に、鹿はものすごい勢いで逃げ出した。
梅澤: せっかく餌やってやってんのに。
と、1人、木の影でイライラしていると…
??: う~ん、そんなに睨みつけてたら、鹿も怖いんじゃないかな?
真後ろから話しかけられる。
梅澤: っ!!……お前は…
??: 笑、灰崎だよ。
梅澤: いきなり後ろから話しかけんなよ。(全く気づかなかった…)
灰崎: ごめん笑。でも、さすがに梅澤さんが可哀想だったからさ。
梅澤: 私が可哀想?
灰崎: だって、その睨んでるのは、わざとじゃないんでしょ?
梅澤: 睨んで?……そんなつもりはない。
灰崎: じゃあ、やっぱり緊張か、それとも真顔がそれなのか……うん、でも、普通に喋ってる顔は怖くないから、緊張かな。
梅澤: …
灰崎: 知らずのうちに、梅澤さんは緊張して、鹿を睨んじゃってたんだよ。だから、意識して笑顔…少なくとも睨まないようにしながら、餌をあげれば、鹿も食べてくれるんじゃない?
梅澤: …余計なお世話だ。
そう言って梅澤は、灰崎から離れる。
灰崎: …笑(ついて行こ。)
梅澤: (…あ、鹿いた。)
灰崎から逃げるように、スタスタと歩いた先に、1頭の鹿を見つける。
梅澤: 笑顔…
言われた通りにするのは癪だったものの、餌はあげたかった梅澤は、できる限りの笑顔で、鹿に近づき、目線を合わせ、せんべいを口の方へ。
梅澤: …(どうだ…)
すると、鹿はお腹がすいていたようで、勢いよくせんべいを食べ始めた。
梅澤: よし…笑
その鹿の様子を見て、笑みがこぼれる梅澤。
灰崎: 笑、あんな感じで笑うんだ、梅刺奴欺さんも。
と、同じように笑みを浮かべていた灰崎は…
「おーい!灰崎君!!」
偶然、通りかかった同じクラスの女子に、名前を叫ばれ…
梅澤: あ?
灰崎: やべ…
梅澤: …見てやがったのか。
灰崎: また、バスで!!!……
その名前を叫んだ女子のグループに手を振り、どこかに行くのを見送った後、梅澤の方を振り返る。
梅澤: …
灰崎: いや、梅澤さんとは仲良くなっとこうって思ってさ。
梅澤: …ナンパかよ。
灰崎: クラスメイトなのにナンパは違うでしょ。
梅澤: …まぁそうだな。で、なんで私と仲良くなろうなんてしてんだよ。放っとけ。
灰崎: だって、多分梅澤さんは、次期風紀委員長じゃん。
梅澤: は?何言ってんだお前。んなわけねぇだろ。
灰崎: う~ん、全然可能性は高いと思うよ。僕は。
梅澤: そうかよ。勝手にそう思っとけ。でも、私には構うな。
灰崎: 残念ながら、そうはいかないんだよね。生徒会として、次期委員長達とはパイプを作っとけって言われてるし。
梅澤: …(そういう事か…)
灰崎: 今さっき、梅澤さんは勝手に次期風紀委員長だって思ってくれて良いって言った事だし、僕はそう思って、梅澤さんと仲良くするために動くよ。
梅澤: うぜぇ。
灰崎: まぁまぁ、そんなこと言わずに。
梅澤: ついてくんな。
再び、灰崎から離れようとする梅澤だが…
灰崎: 少しだけ話そうよ。
灰崎はそれについて行く。
梅澤: …
灰崎: 森崎君のこととかさ。
梅澤: 守里?本人に聞け。
灰崎: いや~他の人からの意見も聞きたいじゃん。
梅澤: なら、私じゃなくても良いだろ。
灰崎: なんとなくだけど、梅澤さんからなら、他の人からじゃ聞けないような情報を聞けそうだと思って。
梅澤: ……それはお前の思い違いだ。日向子や飛香、美月の方がよく知ってる。
灰崎: あとから聞きに行くよ。ま、正直いつでも聞けるしね。
梅澤: だったら、私も今じゃなくていいだろ。
灰崎: せっかく同じ班っていう良い機会に恵まれたんだから、梅澤さんに森崎君のことを聞くなら、あと梅澤さんと仲良くなるなら、この修学旅行中しかないでしょ。
梅澤: あぁ~もう!このストーカーが!!
ビュンッ!!
執拗い灰崎の付きまといに、痺れを切らした梅澤は、振り返りざまに蹴りを放つ。
灰崎: 危なっ!
パシッ
その梅澤の鋭い蹴りを、灰崎は半身で躱す体勢に入り、梅澤の足首を片手で掴む。
梅澤: なっ…
灰崎: ほんと驚いたよ。でも、僕も慌てて避ける必要なかったね。寸止めだし。
そう、梅澤は怒りつつも、蹴り足の膝を完全には伸ばさず、足がギリギリ灰崎に届かないようには、していたのだった。
梅澤: (止めたって言っても、足を掴むなんて……コイツ…)
梅澤の灰崎への警戒度が数段上がる。
灰崎: あ、ごめん。足掴んじゃって。
そう言って、灰崎は手を離し、少し後ろへ下がる。
梅澤: …
灰崎: それと、やりすぎた。この場は一旦引くよ。
梅澤: 二度と来んな。
灰崎: う~ん、それはできないかな笑。同じ班だし、梅澤さんとは仲良くなっとかないとだし。
梅澤: それなら、今のお前への印象は最悪だぞ。
灰崎: それは残念。また次から頑張ります。
梅澤: 無視する。
灰崎: 笑、じゃ。
と、灰崎は梅澤の元を去ろうとしたのだが……
灰崎: …ん?あれは…
to be continued
奈良公園
鹿せんべい自動販売機前
守里: さぁ、ここからが本番だ。
春時: ここまでの道中も、鹿を近くで見ることはあったが…
陽芽叶: その時は、可愛かったんだけどね笑
守里: 餌を持ったら、話が違うみたい。
春時: 見かけたもんな……中々な状況になってるヤツら。
守里: うん。みんな、気をつけよう。
美月: そんなに警戒しないといけない?笑
川嶋: 油断はダメだよ、美月。
守里: そうだよ。
美月: まぁ、2人がそう言うなら、気をつける。
春時: 祐希もだぞ
祐希: そんな心配しなくても大丈夫だって~
守里: …
陽芽叶: でもなんか、祐希ちゃんだったら本当に大丈夫そうじゃない?
守里: 確かに、体育祭の動物を捕まえる競技では、無敵に近かったけど…
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春時: ま、一旦好きにさせてみようぜ、祐希は。
川嶋: え?
守里: 一旦だよ、一旦。
祐希: よっしゃー!早速!
一番乗りに、自動販売機にお金を入れ、祐希は、鹿せんべいを手に入れる。
川嶋: ほ、本当に気をつけるんだよ!
祐希: はいはい!いってきま~す!
そう言いながら、祐希は鹿達の元へ走り出した。
川嶋: 分かってるんだか…
春時: まぁまぁ、俺達も餌やりに行こう。
守里: みんなでまとまって行くのもアレだし、分かれよっか。
美月: じゃあ、私、守里と!
陽芽叶: 私も。
春時: 分かった、分かった笑。志帆はどうする?1人で回る?
川嶋: あら、そこは一緒に回らない?、じゃなくて良いの?笑
春時: えーっと……チラッ
守里: 笑、志帆は春時と一緒で良い?
川嶋: 良いよ。
美月: 祐希はどうするの?
守里: 先に見つけた方が、一緒に行動するようにしよう。
川嶋: はーい。じゃあ、集合時間の15分前……あと40分は、別行動ってことで。
こうして、鹿せんべいをそれぞれ買った守里達は、守里、美月、陽芽叶のグループと春時、川嶋ペアに分かれて、食欲旺盛な鹿の群れへ飛び込んだ。
守里: できれば、1頭ずつ相手したいよね。
美月: だね。
陽芽叶: あ、あそこに2頭だけいる。
守里: あの子達に、餌あげよっか。
美月: OK!!鹿さ~ん!
鹿せんべいを箱から取り出しつつ、2頭の鹿に駆け寄る美月。
その動きを察知した鹿達は、勢いよく美月の方を振り向く。
美月: っ!!
それに驚いた美月は、動きを止めるが、鹿達は止まらなかった。
美月: しゅ、守里~
守里: そうやって飛び出すから…
陽芽叶: 人気者じゃん、美月ちゃん笑
反射的に、鹿せんべいを持った手を上にあげた美月の周りに、鹿がまとわりつく。
美月: 動けない~
守里: なら、僕の分で…
見かねた守里は、自身の持つせんべい1枚を、美月の動きを封じる鹿達の前に持っていく。
守里: こっちだよ~
せんべいに食いついた鹿達は、美月から離れ、守里の後を追う。
美月: た、助かった~
陽芽叶: なにやってんの笑
美月: あんなに勢いよく来るとは思わないじゃん。
陽芽叶: きっとお腹が空いてるんだよ。
美月: もう、目がギンギン笑
陽芽叶: 鹿もそうなるんだね笑
美月: ほら、見てみ。あの守里のせんべいを食べてる鹿達を。
陽芽叶: 笑、ギンギンか……確かにそう見えなくもない。
守里: まだ食べる?笑
既に2枚のせんべいを消費してしまった守里は、未だに食欲の衰えない鹿達に、さらにせんべいをあげようとする。
美月: ってか、よくよく考えればさ。
陽芽叶: うん。
美月: あの鹿達、守里にあーんしてもらってるよね?
陽芽叶: まぁ、そうなるね。ただの餌やりだけど。
美月: …ずるい。
陽芽叶: 笑、動物にも嫉妬するの?
美月: 逆に陽芽叶ちゃんは、羨ましくないの?
陽芽叶: たかが動物相手に、羨ましいなんて思わないよ笑。ま、この修学旅行中に1回ぐらいは、守里からあーんしてもらおうっては思ってるけど。
美月: やっぱり……お昼も、なんか狙ってそうだったもんね。
陽芽叶: あ、バレてた?笑
美月: 私、そういうの分かる人だから。
陽芽叶: そういう美月ちゃんも、守里が口に運ぼうとしてたやつを、横から食べようってしてたじゃん笑
美月: そう?笑
と、守里を見つつ、話していると…
ビリッ
陽芽叶: っ!!美月ちゃん、左手を真横にあげて!
美月: え?うん…
戸惑いつつも、陽芽叶が言った通りに、美月はせんべいの束を持っていた手をあげる。
すると、その手に向かって、1頭の鹿が、美月達の真後ろから突っ込んで来た。
美月: うわっ!!!
守里: っ!どうしたの?!
その美月の声を聞き、守里が餌やりを中断し、美月達の元へ駆け寄る。
陽芽叶: 危なかった……後ろから、この鹿さんが走ってきたんだよ。
守里: この鹿め…って、怒っても仕方ないか。
美月: え?鹿だけに?
守里: そんなこと言う余裕があるんなら、大丈夫そうだ。
陽芽叶: ほら、早くあげないと、また突進してくるんじゃないの?
いつまでたっても餌をくれない美月に、痺れを切らした元気一杯の鹿が、美月を鋭い眼光で睨む。
美月: やば……ちゃんとあげるから、待ってって。
慌てて、手に持っていたせんべいを1枚食べさせる美月。
美月: それにしても、陽芽叶ちゃん。よく鹿が突っ込んでくるって分かったね。
陽芽叶: 笑、たまたまだよ。
美月: そのたまたまの陽芽叶ちゃんの言葉が、私の命を救ったんだ~
陽芽叶: 大袈裟すぎ笑
美月: いやいや。あのまま、真後ろから鹿に突進されてたら、絶対怪我してたし。
守里: じゃあ、陽芽叶さんは、美月の命の恩人だね笑
美月: ありがとうございます!我が命の恩人様!!
陽芽叶: まぁ、そこまで言うんなら…どういたしまして笑
守里: あ、また別の鹿が寄ってきたよ。陽芽叶さんもあげたら?
陽芽叶: そうだね。ほら、あげるよ~
美月: え?まだ食べるの?しょうがないな~
守里: 僕も余ってるし、あげるか。
こんな感じで、守里達は和やかに餌やりを続けた。
その一方…
梅澤: ジー
同じ班のメンバーに一言伝えてから、班を抜け、1人自由行動をしていた梅澤は、なんとなくで買ってみた鹿せんべいを持って、鹿をじっと見ていた。
梅澤: ほら、これ。
鹿と目の高さを合わせつつ、手に持ったせんべいを鹿の前に動かすが…
梅澤: あ………チッ
目が合った瞬間に、鹿はものすごい勢いで逃げ出した。
梅澤: せっかく餌やってやってんのに。
と、1人、木の影でイライラしていると…
??: う~ん、そんなに睨みつけてたら、鹿も怖いんじゃないかな?
真後ろから話しかけられる。
梅澤: っ!!……お前は…
??: 笑、灰崎だよ。
梅澤: いきなり後ろから話しかけんなよ。(全く気づかなかった…)
灰崎: ごめん笑。でも、さすがに梅澤さんが可哀想だったからさ。
梅澤: 私が可哀想?
灰崎: だって、その睨んでるのは、わざとじゃないんでしょ?
梅澤: 睨んで?……そんなつもりはない。
灰崎: じゃあ、やっぱり緊張か、それとも真顔がそれなのか……うん、でも、普通に喋ってる顔は怖くないから、緊張かな。
梅澤: …
灰崎: 知らずのうちに、梅澤さんは緊張して、鹿を睨んじゃってたんだよ。だから、意識して笑顔…少なくとも睨まないようにしながら、餌をあげれば、鹿も食べてくれるんじゃない?
梅澤: …余計なお世話だ。
そう言って梅澤は、灰崎から離れる。
灰崎: …笑(ついて行こ。)
梅澤: (…あ、鹿いた。)
灰崎から逃げるように、スタスタと歩いた先に、1頭の鹿を見つける。
梅澤: 笑顔…
言われた通りにするのは癪だったものの、餌はあげたかった梅澤は、できる限りの笑顔で、鹿に近づき、目線を合わせ、せんべいを口の方へ。
梅澤: …(どうだ…)
すると、鹿はお腹がすいていたようで、勢いよくせんべいを食べ始めた。
梅澤: よし…笑
その鹿の様子を見て、笑みがこぼれる梅澤。
灰崎: 笑、あんな感じで笑うんだ、梅刺奴欺さんも。
と、同じように笑みを浮かべていた灰崎は…
「おーい!灰崎君!!」
偶然、通りかかった同じクラスの女子に、名前を叫ばれ…
梅澤: あ?
灰崎: やべ…
梅澤: …見てやがったのか。
灰崎: また、バスで!!!……
その名前を叫んだ女子のグループに手を振り、どこかに行くのを見送った後、梅澤の方を振り返る。
梅澤: …
灰崎: いや、梅澤さんとは仲良くなっとこうって思ってさ。
梅澤: …ナンパかよ。
灰崎: クラスメイトなのにナンパは違うでしょ。
梅澤: …まぁそうだな。で、なんで私と仲良くなろうなんてしてんだよ。放っとけ。
灰崎: だって、多分梅澤さんは、次期風紀委員長じゃん。
梅澤: は?何言ってんだお前。んなわけねぇだろ。
灰崎: う~ん、全然可能性は高いと思うよ。僕は。
梅澤: そうかよ。勝手にそう思っとけ。でも、私には構うな。
灰崎: 残念ながら、そうはいかないんだよね。生徒会として、次期委員長達とはパイプを作っとけって言われてるし。
梅澤: …(そういう事か…)
灰崎: 今さっき、梅澤さんは勝手に次期風紀委員長だって思ってくれて良いって言った事だし、僕はそう思って、梅澤さんと仲良くするために動くよ。
梅澤: うぜぇ。
灰崎: まぁまぁ、そんなこと言わずに。
梅澤: ついてくんな。
再び、灰崎から離れようとする梅澤だが…
灰崎: 少しだけ話そうよ。
灰崎はそれについて行く。
梅澤: …
灰崎: 森崎君のこととかさ。
梅澤: 守里?本人に聞け。
灰崎: いや~他の人からの意見も聞きたいじゃん。
梅澤: なら、私じゃなくても良いだろ。
灰崎: なんとなくだけど、梅澤さんからなら、他の人からじゃ聞けないような情報を聞けそうだと思って。
梅澤: ……それはお前の思い違いだ。日向子や飛香、美月の方がよく知ってる。
灰崎: あとから聞きに行くよ。ま、正直いつでも聞けるしね。
梅澤: だったら、私も今じゃなくていいだろ。
灰崎: せっかく同じ班っていう良い機会に恵まれたんだから、梅澤さんに森崎君のことを聞くなら、あと梅澤さんと仲良くなるなら、この修学旅行中しかないでしょ。
梅澤: あぁ~もう!このストーカーが!!
ビュンッ!!
執拗い灰崎の付きまといに、痺れを切らした梅澤は、振り返りざまに蹴りを放つ。
灰崎: 危なっ!
パシッ
その梅澤の鋭い蹴りを、灰崎は半身で躱す体勢に入り、梅澤の足首を片手で掴む。
梅澤: なっ…
灰崎: ほんと驚いたよ。でも、僕も慌てて避ける必要なかったね。寸止めだし。
そう、梅澤は怒りつつも、蹴り足の膝を完全には伸ばさず、足がギリギリ灰崎に届かないようには、していたのだった。
梅澤: (止めたって言っても、足を掴むなんて……コイツ…)
梅澤の灰崎への警戒度が数段上がる。
灰崎: あ、ごめん。足掴んじゃって。
そう言って、灰崎は手を離し、少し後ろへ下がる。
梅澤: …
灰崎: それと、やりすぎた。この場は一旦引くよ。
梅澤: 二度と来んな。
灰崎: う~ん、それはできないかな笑。同じ班だし、梅澤さんとは仲良くなっとかないとだし。
梅澤: それなら、今のお前への印象は最悪だぞ。
灰崎: それは残念。また次から頑張ります。
梅澤: 無視する。
灰崎: 笑、じゃ。
と、灰崎は梅澤の元を去ろうとしたのだが……
灰崎: …ん?あれは…
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元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
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