上 下
183 / 306
第6章 修学旅行編

第183話「奈良の大仏さん達」

しおりを挟む
およそ3時間、新幹線に揺られながら、両隣に座る美月、陽芽叶と、楽しくお喋りをしたり、執拗な'す'攻めのしりとりを乗り越えた守里は、ようやく…



祐希: 奈良にとうちゃーく!!!



自分が扉から出る順番となり、勢いよく扉からジャンプし、地面に足を着けた祐希。



守里: 笑、元気いっぱいだな。


美月: 新幹線の中で、ずっと寝てたからでしょ。


祐希: うわぁ~ここが奈良か!!


春時: って言っても、まだ駅だぞ笑


美月: でも、なんかこの、木の感じが奈良っぽくない?


陽芽叶: 確かに。


祐希: あ!あれなんだろう?!



3時間の睡眠と、昼食の駅弁により、エネルギーが満タンとなった祐希は、早速走り出そうとする。



川嶋: ストップ!祐希!



それを、荷物の取り出しに少し手間取り、遅れて新幹線から出た川嶋が、引き止める。



祐希: え~


川嶋: すぐにバス移動なんだから。ほら、みんなも行くよ!


祐希: は~い。


陽芽叶: うん。


美月: また乗り物移動か~


春時: あと少しの我慢だって。


守里: 奈良公園についたら、3時間は自由なんだし。


祐希: 奈良公園?


陽芽叶: 笑、昨日教えたじゃん。


祐希: どういうとこだっけ?


陽芽叶: たくさん鹿がいるところだよ。


祐希: あぁ~!


春時: 餌やりできるぞ。


美月: 祐希の力の見せどころだね笑


祐希: 任せといて!



腕まくりをするような動作をしつつ、周りにドヤる。



川嶋: はいはい、分かったから。


祐希: もうちょっと良いじゃん~



小さな背中を無理やり押して、祐希を移動させる川嶋。



守里: 笑、さすが班長。


美月: 志帆を班長にして正解だった笑


陽芽叶: なんか、そう思う場面が、これからたくさんありそう笑


春時: かもな笑



そうして、守里達はバスに乗り、奈良公園へ。


ちなみに、守里の隣は、乗った順番で春時となり、争いは起こらなかった。


◇◇◇


奈良公園



剣崎: じゃ、好きに見回ってきて良いよ!ただし、倉田さんが言ってたように、能高生としての自覚を持って、規律ある行動をよろしく。他のお客さんや、職員さんに迷惑をかけないようにね!


「はい!」


剣崎: いい返事。よし、16時にまたここで。いってらっしゃい!



全クラスが到着したのを確認し、各クラスで担任が注意事項を話した後、班行動に入る。



祐希: 鹿鹿鹿鹿鹿!!!


美月: そんな勢いで行ったら、鹿もビビっちゃうでしょ笑


川嶋: 予定通り、先に東大寺に直行して、その後ゆっくり回る感じで行こうか。


守里: うん。


春時: ほら、祐希行くぞ~


祐希: 鹿は?


陽芽叶: 先に大きな大仏を見に行こう。


祐希: 大仏…


守里: 笑、祐希はあんまり興味無いよな。でも、後から鹿とは戯れられるから、先に大仏の方に行こ。



若干落ち込んだ祐希の肩に、手を乗せる。



守里: ダメ?祐希。


祐希: 笑、しょうがないな~


守里: じゃ、出発…


祐希: 進行!!



守里とテンションを取り戻した祐希が、奥の東大寺に向かって歩き出す。



美月: なんか見たことあるような展開…


春時: 元気満タンの祐希は、ほぼ日向子だからな。必然的に、守里の祐希の扱い方が日向子と同じになるんだ。


美月: やっぱそうだよね。いつもの大型犬をなだめる時と同じだもん笑


陽芽叶: 大型犬笑


川嶋: よし、私達も行こう。


◇◇◇


東大寺大仏殿



祐希: でっか~


陽芽叶: うわぁ…


美月: さっきの門のところにあったのも大きかったけど、これは桁違い…


守里: あの手でさえ、僕より大きくない?


春時: そうかもな…



東大寺の大仏殿の中に入った守里達は、まず、奈良の大仏の大きさに圧倒される。



川嶋: 大きさは…15mだって。台座も含めると、18m。


守里: ざっと祐希10人分か。


美月: 久しぶりに聞いた、その例え笑


祐希: 10倍…ウヌヌ…


陽芽叶: 祐希ちゃんを1.5m換算なのね。


川嶋: 実際の身長は1.53mだけど笑


春時: まぁまぁ、3cmぐらいなら端折っても問題ないって笑


祐希: あぁ?


守里: 笑、祐希にとっては重要な3cmなんだよな。


祐希: うん!!それなのに、春時…


春時: ごめんごめん笑


川嶋: ちなみに、さっき美月が言ってた、南大門にある金剛力士像は8mちょい。


陽芽叶: よく知ってるね。


川嶋: でしょ?笑


守里: さすが志帆だ。


川嶋: ヘヘ


美月: 楽しみで楽しみで、ずっと調べてたもんね笑。今回の修学旅行で行くところを。


川嶋: み、美月!


陽芽叶: 志帆、可愛い笑


川嶋: ///もう~やめてよ!


守里: 笑、じゃあ、志帆。この両隣にいる大仏?は?


川嶋: え?あぁ。確か…



背負っているリュックに手を入れ、1冊のノートを取り出す。



川嶋: え~っと…盧舎那仏の右脇が…


祐希: ご、ごといわ?



川嶋が右脇と言った瞬間に、自分から見て右側にいた金色の像の前の立札を読もうとした祐希。



美月: 盧舎那仏…奈良の大仏の右脇なんだから、逆側でしょ?


祐希: あ!そうか!


川嶋: 笑、じゃあ今、祐希が読もうとした方は、如意輪観音って言うんだよ。


祐希: にょいりんかんのん?


川嶋: そうそう。


春時: へぇ~観音様か…


川嶋: それで、右脇…私達から見て、左側の像が、虚空蔵菩薩。


陽芽叶: 名前カッコいい。


守里: 盧舎那仏に、虚空蔵菩薩、如意輪観音……全部種類が違うんだね。


春時: そりゃそうだろ。同じ仏像を何個も置かないって。


守里: いや、それはそうなんだけど。仏様と、菩薩様、あと観音様でしょ?


春時: あぁ、そういう事か。


祐希: ふ~ん……ねぇねぇ、志帆!


川嶋: どうしたの?祐希。


祐希: 仏様と観音様、あと…


守里: 菩薩様な。


祐希: そう、菩薩様!その違いって何?


川嶋: 違いか…


美月: あれ、志帆、調べてきてない?笑


川嶋: うん。調べてきては無いけど…



改めて、ノートを確認する川嶋。



美月: しょうがない!代わりに、この美月ちゃんが、調べてあげよう!



そう言って、意気揚々と携帯を取り出す美月だったが…



川嶋: 笑、そのぐらいは普通に知ってるよ。


美月: え?


春時: マジ?


陽芽叶: 志帆ちゃん、すごい!


祐希: それで何なの?


川嶋: まず、一概に仏様と言っても、仏様にも位があって、菩薩や観音は、その位のこと。あと、祐希が言ってる仏様は、如来様を指してて、この如来っていうのも、仏様の位のことなんだ。


祐希: うんうん。


川嶋: で、観音っていうのは、観音菩薩のことだから、菩薩様と観音様は同じ位にいる仏様。


祐希: ふんふん。


川嶋: そして、さっき言った通り、この盧舎那仏は如来様で、如来って言うのは、仏の中の最高位。ちなみに、如来の一つ下の位が菩薩ね。


祐希: …


川嶋: 祐希、分かった?


祐希: 全然。


守里: なるほど……真ん中の盧舎那仏が、この3つの仏様の中で一番偉い如来様で、左右にいる虚空蔵菩薩、如意輪観音は、如来様の次に偉い菩薩様ってことか。


美月: 要するに、一番偉いのが真ん中の仏様で、横の仏様達は、それの部下ってことだよ、祐希。


祐希: あ~分かった!


陽芽叶: へぇ~


春時: ほんと、よく知ってるわ。


川嶋: 笑、偶然調べる機会があってね。


美月: どういう機会よ笑


祐希: じゃあ、あっちの仏像は?



さらに奥にある、これまた大きな仏像を指して、祐希が聞く。



春時: なんか、めちゃくちゃ装備してるな。


陽芽叶: イカつい。


美月: 持ってるのは、筆と巻物?


川嶋: それは、広目天って言う仏様だよ。


守里: お、もしかして、天っていうのも、仏様の位だったりする?


川嶋: 正解笑。天は、天部のことで、天部は仏様の位の中で1番下。上から順番に行くと、如来、菩薩、明王、天部って感じ。


陽芽叶: 天……アニメでよく聞く、毘沙門天とかも、それ?


川嶋: そうだよ。ってか、毘沙門天なら反対側にいる。


祐希: 反対側?


川嶋: ほら向こうの。



そう言って、川嶋がさした方にも大きな仏像があった。



春時: あの、長い槍みたいなのを持ってるやつ?


川嶋: うん。あれは多聞天って言うんだけど、毘沙門天と同じなんだ。


守里: かの有名な毘沙門天様があれか…


川嶋: あと、そこに2つの大きな顔があるでしょ?


祐希: この怖い顔?


美月: なんか既視感……はっ!



「コラ!美月!!」



美月: お姉ちゃん…


守里: 笑、聞かなかったことにする。


川嶋: その2つ…手前の増長天、奥の持国天、そして広目天と多聞天を合わせて、四天王って言うんだ。


陽芽叶: 四天王…


春時: これまたカッコいい。


川嶋: で、四天王は、東西南北をそれぞれ守護する護法神。まぁ、仏様の護衛ってところ。


守里: だから、序列としては、如来とか菩薩の下なんだね。


川嶋: そういうこと。


守里: はぁ~やっぱ、志帆が同じ班で良かった。すごく勉強になるし、楽しい。


陽芽叶: だね笑


川嶋: いえいえ笑



そう、守里が川嶋を褒める様子を見た美月は…



美月: ジー(志帆がすごいのは分かるけど………私も褒められたい!)



じっと、川嶋を見つめた。



川嶋: え?どうしたの?美月。


祐希: ねぇ!多聞天?の方にも行こ!


守里: はいはい。


春時: そう急かすな笑



祐希に引っ張られて、守里と春時が、美月達から離れて行った。



美月: ジー


川嶋: ?


陽芽叶: 多分、今さっき守里に、志帆ちゃんが褒められたのが、悔しいんだと思う笑


川嶋: あ~笑、なるほど。そうなの?美月。


美月: 別に悔しいわけじゃないけど…


川嶋: だったら、美月もなんか豆知識的なのを話してみたら?


美月: そんなの持ってない。


陽芽叶: 私も同じく。だから、また別のところでアタックをかけるつもりだよ笑


美月: う~ん…


陽芽叶: だって、正直、志帆ちゃんに勝てるわけないじゃん。知識量がものを言う場面で。


川嶋: いや勝てるとか笑。別に私は、2人みたいに守里のことを狙ってないんだけど。


美月: でも~


陽芽叶: 笑、欲張りだな~


川嶋: しょうがない笑。新しい情報ってわけじゃないけど…ゴニョゴニョ


美月: うん…うん……分かった。


陽芽叶: なに?笑


川嶋: 良い感じに、守里に言うんだよ笑


美月: 頑張る!



意気込んだ美月は、守里達の所へ小走りで向かった。



川嶋: ほんと、可愛いんだから。


陽芽叶: ねぇ、志帆ちゃん。私にも教えてくれたって良いんだけど?笑


川嶋: 笑、陽芽叶ちゃんの場合は、私の助けなんて要らないんじゃない?


陽芽叶: なんでそう思うの?


川嶋: う~ん………勘かな。陽芽叶ちゃんは……うん、やっぱり、守里争奪戦の参加者の中で、1番強い気がする笑


陽芽叶: 争奪戦って笑。それに1番強いってなに?


川嶋: 勘でしかないから、私だって上手く言語化できないよ、残念ながら。でもなんか、そう思うんだ。


陽芽叶: へぇ~


川嶋: まぁ良いから、私達もあっちに行こ。


陽芽叶: うん。




こうして、美月に少し遅れて、川嶋と陽芽叶も守里達の元へと向かうのだった。




to be continued
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

パパー!紳士服売り場にいた家族の男性は夫だった…子供を抱きかかえて幸せそう…なら、こちらも幸せになりましょう

白崎アイド
大衆娯楽
夫のシャツを買いに紳士服売り場で買い物をしていた私。 ネクタイも揃えてあげようと売り場へと向かえば、仲良く買い物をする男女の姿があった。 微笑ましく思うその姿を見ていると、振り向いた男性は夫だった…

処理中です...