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第5章 夏休み編

第167話「梅澤の過去」

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林原と松高が蓮花に、梅澤の武勇伝を語っている間に、梅澤と守里は料理を完成させ、リビングに運ぶ。



梅澤: おい、できたぞ。


林原: うわっ!美味そうですね!!


松高: さすが、梅澤先輩。


梅澤: じゃあ、これ食べてて。私達は、2人で話すことがあるから。


蓮花: お兄ちゃん?


守里: うん。蓮花は、2人とご飯食べててね。


蓮花: 梅澤さんの手料理、食べなくていいの?


守里: 僕は、完成してすぐに、少しだけ食べたから笑


梅澤: そういうことだから、な。


林原: え~一緒に食べましょうよ!


梅澤: 話すことがあるって言ってんだろ。


松高: お2人だけでですか?


梅澤: あぁ。色々あんだよ。風紀委員関係の話し合いとかが。


林原: へぇ~先輩方も大変なんですね~


梅澤: 分かったら、先食べてろ。話が終わったら、私達も一緒に食べるから。


林原: 了解です!


松高: 分かりました。


守里: 蓮花、晩ご飯もあるし、食べ過ぎたらダメだよ。


蓮花: 分かってるって!心配しないで、お兄ちゃん!


守里: 笑、はーい。


梅澤: じゃ、行くぞ、守里。


守里: うん。


林原: テレビつけよ!テレビ。


松高: 蓮花は何みたい?サブスク入ってるけど。


蓮花: う~ん、そうですね~



と、3人は仲良く料理を食べ始めた。



梅澤: こっち来い。


守里: え?外じゃないの?



玄関に向かおうとした守里を引き止める梅澤。



梅澤: バカか。外じゃ誰が聞いてるか分からんだろ。私の部屋だ。


守里: 香蓮の部屋?それって…


梅澤: …寝室だよ。そこしかねぇんだから。


守里: いや、でもさすがに…


梅澤: ジロジロ部屋を見なけりゃ、私も別に気にしねぇし。


守里: …了解。


梅澤: ほら、行くぞ。



そうして2人は、梅澤の自室に入る。


ガチャ




梅澤: そこの椅子に座れ。


守里: 分かった。



勉強机らしき机(教科書は一切置いてない)に向かう椅子に守里は座り、梅澤はベッドの上に座る。



守里: 片付いてるんだな。


梅澤: 私の部屋が汚いと思ってたのか?


守里: 別にそういうわけじゃないんだけど、僕が見てきた女子の部屋って、基本散らかってたからさ笑


梅澤: それって、日向子とか飛香?


守里: いや、飛香の部屋には入ったことないよ。


梅澤: へぇ~


守里: 日向子は整理整頓が苦手でね。今はやってないけど、中学までは、僕がたまに片付けに行ってたんだ。


梅澤: ふ~ん。やっぱ仲良いな。


守里: 幼なじみだからね。


梅澤: じゃあ、美月の部屋は?ここと違う?


守里: そりゃもちろん。美月の部屋はもっと散らかってるよ。


梅澤: 笑、そっか。


守里: 香蓮が片付けに行ってあげたら?笑


梅澤: いや、それは守里に任せるわ。


守里: え~絶対、香蓮がやる方が、美月も喜ぶと思うんだけどな~


梅澤: 絶対にない。


守里: そんな言い切る?笑


梅澤: あぁ。


守里: じゃあ、美月に聞いてみるよ。


梅澤: そうしてみろ、多分、守里の方が良いって言うから。


守里: 分かった笑


梅澤: …よし、時間かけすぎるのもアレだし、そろそろ話、始めるか。


守里: だね。


梅澤: まずは、私と防衛団の関係についてだが。お前も知ってる通り、私には親がいない。物心ついた時には、ここから少し離れた児童養護施設にいた。


守里: うん。


梅澤: その施設には、10人ぐらいかな。私と同じように両親がいない子供がいて、施設長と一緒に暮らしてた、私が中学生になるまでは。


守里: 何があったの?


梅澤: 男達に襲撃されたんだ。


守里: 襲撃?


梅澤: ソイツらは誰かを探してたみたいなんだが、結局、お目当ての人は見つからなかったみたいで、施設長を殺して、施設を燃やして、どっか行きやがった。


守里: 嘘でしょ…


梅澤: まだ、私は弱かったし、他の子も小さくて、どうすることもできなかった。ただ、目の前で父親代わりだった施設長が殺されるのを、家が焼け尽くされていくのを、見ていることしかできなかったんだ。


守里: …


梅澤: それで、私達が立ち尽くしていたところに、また別の男達が来た。


守里: …それが、防衛団?


梅澤: あぁ。最初はみんな警戒して、怯えてたんだが、防衛団がすぐに保護してくれて、また別の施設…そこは託児所っぽかったけど、そこで新しい暮らしが始まったんだ。


守里: 託児所か…


梅澤: 中学からは、私もそこで暮らしてた。でも、守里も知ってる通り、この辺のヤンキーを倒しまくってた。深夜から朝起きるまで、その施設で過ごして、それ以外は学校にいたか、ヤンキーを倒してたって感じ。


守里: もしかしてそれは、児童養護施設を襲った奴らを見つけるため?


梅澤: まぁ、それもあったが、1番は…また、防衛団の人達に会って…いや、私を助けてくれた人に会って、ありがとうって言いたかったんだ。防衛団と同じように、悪を倒してれば、少なくとも暴れ回って、目立っていれば、また会えるんじゃないかって思って。


守里: その託児所では、防衛団の人に会わなかったの?


梅澤: 私達を助けてくれた人には、1度も会わなかったよ。そこにいた大人から、防衛団が悪を倒す正義の人達ってのは聞いてたが。


守里: じゃあ、香蓮は、自分を助けた防衛団の人を見つけるために、暴れ回ってたんだね。


梅澤: そういうこと。まぁその結果としては、防衛団に会うこともできなかったんだが、中学が終わって、高校生になってからは、一人暮らしを始めたいって思って、そこの責任者に言ったんだ。


守里: なんで?


梅澤: そりゃ、自分が周りからどんな風に見られてたかも分かってたし、私があの託児所に居続けるのもどうかと思ったからな。


守里: う~ん…


梅澤: ま、とにかく、私が高校では一人暮らしをしたいって言ったら、すぐに話が進んで行って、能高に入学することになり、この家に1人で住むことになり、家賃や生活費を出してもらえるようになっちまった。


守里: それは…すごいね。びっくりしたでしょ。


梅澤: あぁ。私が言って、次の日にはそうなってたんだぞ。びっくりどころか、もう何も言えなかったよ。


守里: だよね。


梅澤: 正直、防衛団に会うためのヤンキー狩りも続けたいし、バイトする時間がもったいないとか考えてたから、結構すぐにその話を受け入れたんだけどな。


守里: で、その後は、能高に入学して、1年生の頃に、ヤンキー狩りを続けてたところ、葵波さんと愛衣さんにボコられて、仮の風紀委員になって、2年生では、僕達と知り合ったって感じ?


梅澤: そうだ。元々、人と関わるのが得意じゃなかったから、これまで友達なんていたことなかったんだが……ほんと、お前と美月には感謝してる。


守里: なんだよ、改まって笑……友達って良いもんでしょ?


梅澤: うん。今はすごい楽しい。


守里: そりゃ良かった笑


梅澤: ふぅ…これが私の過去。それと私と防衛団の関係だ。さっき言った託児所の責任者ぐらいだぞ。この話を知ってるのは。秘密にしとけよ笑


守里: もちろん。というか、そっか。香蓮も美月達と同じだったんだね。


梅澤: どういうことだ?


守里: 香蓮が防衛団に助けられて、今も生活を支えられてるのと同じように、美月…白城姉妹も過去、防衛団に助けられて、支援を受けてるんだ。


梅澤: え?


守里: まぁ、香蓮と違って、防衛団という組織に助けられたっていう認識はないだろうけど。


梅澤: …じゃあ、美月達は防衛団のことを知らないんだな?


守里: うん。まず、防衛団っていう組織があることも知らないし、僕がそこと繋がってることも知らない。というか、僕と防衛団の関係は、防衛団の団員以外で知ってるのは、香蓮だけだと思う。


梅澤: 本来なら、私にも隠し通すつもりだったんだろ?


守里: あの人達は、防衛団という組織を絶対に、公には出したくないみたいだから、知る人は少なければ少ないほど良いからね。僕も誰にも言わずにいようと思ってた。


梅澤: なんか、わりぃ。


守里: 笑、別にいいよ。秘密を共有できる人ができて、ちょっと楽になったし。


梅澤: それは私もだ。元々、この話は誰にも話す予定はなかった。防衛団は影の組織らしいから、人に話すのはマズイと思ってたし、自分の過去を話すのも、ちょっと恥ずかったしな。だが今日、お前に話せて、少し余裕ができた。


守里: 香蓮は1人で抱え込み過ぎなんだって。もうちょっと周りに頼りな、これからは。良い感じの舎弟もできたことだし。


梅澤: アイツらはまだ頼りねぇよ笑。でもそうだな…将来的には、だな笑。


守里: ってか、ちなみになんだけど、その香蓮が探してた防衛団員ってどんな人なの?


梅澤: すごく、優しい人だったよ。施設が燃やされた時も、他の団員の人達が状況確認を急ぐ中、その人だけは、呆然と立ち尽くしてた私達に、ずっと暖かい言葉をかけてくれて。だからこそ、感謝を伝えたかったんだ。


守里: へぇ。外見の特徴とかは、覚えてる?


梅澤: もう何年も前だから、今は変わってるかもしれねぇが、中背中肉…いや、ちょっと太ってたかな。あと髪型が特徴的だった。


守里: どんな?


梅澤: …すまん。特徴的ってのが印象に残り過ぎてて、どんな髪型かは覚えてない。


守里: そっか…


梅澤: あ、言ってなかったが、私の梅刺奴欺って名前をつけてくれたのは、その人だ。


守里: え?そうだったの?


梅澤: おう。私達は、施設で何があったのかを、託児所に移動する車の中で、順番にその人に聞かれてたんだが、私の番になった時にな、私を安心させるためなのか、好きな食べ物とか、色んなことを聞いてきて。


守里: それで梅刺奴欺って?


梅澤: 私も、なんでそうなったかは分からないんだが、じゃあ、あだ名は梅刺奴欺だな、って言ってくれてな。


守里: おぉう…



梅刺奴欺って、神様の名前からとったんだろうか…

どういう考え方で、それに至ったかは思いつかないけど、その防衛団員は、なかなかのネーミングセンスだな。



梅澤: 嬉しかった。


守里: 嬉しかったんかい。


梅澤: なんか、言葉にするのは難しいけど、初めて、私っていう存在を、この世界に定着させてくれたっていうか……それまでの私は、周りとの接触を極力絶って、フラフラと過ごしてただけだったから。すごく嬉しかったんだよ。


守里: なるほどね。梅刺奴欺っていうあだ名…異名は、香蓮にとって大切なものだったのか。


梅澤: あぁ。だからこそ、ヤンキー狩りしてた時も、積極的にその名前を名乗ってたんだ。その人に気づいてもらいやすくなるかもって思ってたし。


守里: じゃあ、防衛団にその異名を知ってもらうって言う点では、成功だね。


梅澤: え?


守里: あの白仮面の一件の時に、香蓮を車で送ったじゃん。


梅澤: おう。


守里: あの後…香蓮を降ろした後に、車を運転してた防衛団員が言ってたんだ。香蓮のことも知ってたって。


梅澤: そうか…良かった。


守里: 笑




to be continued
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