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第5章 夏休み編
第162話「異能力「解放」」
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防衛団の所有する施設のとある部屋で、守里は景信から、自身が持つ異能力についての話を聞く。
景信: 本題である、俺とお前が持つ異能力について話すぞ。
守里: うん。
景信: 俺らが持つ異能力は、「解放」。大雑把に言えば、身体能力を底上げする能力だ。
守里: やっぱり、そんな感じのやつだったか。
景信: もう、何回か使ってるんだろ?
守里: 僕が覚えてる限りでは…4回かな。
景信: 美月ちゃんを助けた時と、根川秀人の検討会議の時、白仮面の事件でアンチの上位構成員を倒した時、あとは昨日、ナンパから日向子ちゃん達を守った時か。
守里: そうそう。こう、内側から力が溢れてくる感じ。
景信: で、詳しく説明をするとな、この「解放」という異能力には、大きく分けて4つの要素がある。
守里: ん?ただ身体能力を上げる能力ってわけじゃないの?
景信: あぁ。この4つの要素が合わさることで、結果的に、身体能力の底上げっていう能力になっているんだ。
守里: なるほどね。
そして、その4つの要素について、景信が説明する。
1つ目は、身体能力の上昇。
これが「解放」の能力のメインの力で、アドレナリンとβエンドルフィンの分泌量の増加と、血管の拡張により、身体能力を上げられる。
2つ目は、自然治癒力の上昇。
細胞分裂の速度を上げることで、身体能力の上昇により壊れた体を、急速に回復させられる。
3つ目は、五感の鋭化。
感覚器官が、より小さな事象を捉えられるようになり、特に聴覚が鋭くなる。
4つ目は、情報処理能力の向上。
感覚神経から伝えられる信号の処理速度が上がり、より早く次の動きを判断できるようになる。
景信: って感じだ。
守里: この4つの要素が組み合わさることで、身体能力が上がるってことね。
景信: う~ん、まぁ4つ目はちょっと特殊なんだがな。
守里: 特殊?
景信: おう。多分、お前はまだ使えてない要素だ。
守里: また分かんなくなってきたな笑…
景信: 続けるぞ笑。この解放の具体的なイメージは、扉だ。
守里: 扉?
景信: そう。長い道に扉がいくつかあって、扉を開けるほど、より強い力を得られるんだ。
守里: 強い力って、それだけ身体能力が上がるってこと?
景信: ま、そうだな。ただ、扉を開いて奥に進めば進むほど…つまり、強い力を得れば得るほど、体への負担はデカくなる。
守里: うん。
景信: 扉は合計4つ。最初の扉を開けば、第1段階で、さっき言った1、2、3の要素を使える。次の扉を開けば、第2段階で、第1段階より強い力と4の要素を使える。
守里: あ、ってことは、僕はまだ第1段階までしか使えてないってことか。
景信: そういうこと。それで次の扉を開けば、第3段階で、解放の能力を限界まで使える。
守里: 限界まで?じゃあ、最後の扉は?
景信: それなんだがな、お前も使ったから分かると思うんだが、この能力を使うと、ちょっとした興奮状態になる。
守里: 確かに…
景信: それが、扉を開いて進む程、強くなっていくんだ。
守里: じゃあ、第3段階まで行くと?
景信: 自我を失う。それに体への負担もかなり大きくなるから、体が完全にぶっ壊れるまで暴れ続ける、暴走状態になる。
守里: 最悪じゃん…
景信: だろ?そこで、最後の扉だ。これを開ければ、完全解放となり、自我を保てるようになる。
守里: だったら、早く完全解放まで使えるようにならないと…
景信: 笑、気概が良いな。
守里: どうすれば良いの?
景信: それを説明するには、俺ら「解放」の能力者に掛けられた縛りについて話さなきゃならない。
守里: 縛り…
景信: 今さっき言った通り、この能力は暴走する可能性がかなり高い。だから、生まれた時に暗示をかけられ、縛りを施されるんだ。
守里: 僕もやられたの?
景信: あぁ、もちろんだ。この縛りがなかった場合、能力を使おうとしたら、誤って第3段階まで一気に開くなんてことも有り得るからな。
守里: 暴走状態…
景信: そう。だから、それを防ぐための縛りだ。これは、扉の鍵と思ってもらっていい。
守里: その扉の鍵を開いてからじゃないと、次の段階には進めないってことか。
景信: それと、もう1つ。その縛りによって、俺達、「解放」の能力者は、大切な人を守るため、という目的の元でしか能力を使用できない。
守里: え…
景信: 大切な人を守るっていう目的以外では、この能力は使えないんだ。お前にも心当たりがあるんじゃないか?
守里: ……あ、うん。
景信: 要するに、縛りによって、俺達はいきなり暴走状態になって自滅するのを防いでもらう代わりに、能力の使用を制限されているってことだ。
守里: なるほど…
景信: それで、どうやったら完全解放まで使えるようになるかだが…
守里: うん。
景信: 完全解放については、よく分からん。
守里: は?
景信: というか、おそらく能力者個人の感覚に左右されるものが多すぎて、説明できないんだ。
守里: 父さんは使えるの?
景信: 使える。けど、俺の感覚を言語化できる自信がない。
守里: そっか。自分でどうにかするしかないわけね。
景信: あぁ。
守里: なら、第3段階までは?
景信: 第3段階までだったら、繰り返し能力を使い、その中で、コツみたいなのを掴めば、次の扉の鍵を外して、進めるようになると思うぞ。
守里: 繰り返しやってコツを掴む…
景信: それに、能力を繰り返し使うことで、体も破壊と回復を繰り返して強くなるから、より強い負担にも耐えれるようになってくる。
守里: …でも、縛りがあるから、何回も使えるようなもんじゃないと思うんだけど。
景信: それはまぁ、なんというか、この「解放」の能力は単純に強いからな。能力を使わせたくなかったんだと思う。
守里: ふ~ん…
景信: そう聞くと、縛りは邪魔のように思えるだろ?
守里: 少しね。でも僕の暴走を防いでくれてたわけだし。縛りがなかったら、これまでに能力を使った時に、暴走してた可能性もあったんでしょ?
景信: おう。それにな、俺の見解だが、この縛りがあるからこそ、完全解放の扉を開くことができると思うんだ。
守里: ほう…それはまたなんで?
景信: …なんとなく笑
守里: 父さんの直感ってわけか。
景信: 信じられるだろ?笑
守里: ちょっとはね笑
景信: 笑、ここまでの話は理解できたか?
守里: まぁ、なんとなく。
景信: じゃ、最後に、おそらくお前が1番びっくりすることを教えてやる笑
守里: なんか怖いんだけど。
景信: …お前、森崎守里はな、歴代の「解放」の能力者の中でも特殊で、常に第1段階の扉を開いてる状態にあるんだ。
守里: ………は?
景信: だから、お前は常時、第1段階の扉を開いて、「解放」の能力を使用している状態にあって、お前が使用していたと思っていたのは、第1段階ではなく、第1段階と第2段階の間にある…そうだな、第1.5段階だった、ということだ。
守里: いやいやいやいや、よく分かんない。
景信: だよな笑。俺もそれに気づいた時、驚いたし。でも、少しはそれで納得できたこともあるんじゃないか?
守里: …確かに…僕は、ちょっと身体能力が高すぎるから…
景信: それは、常に能力を使ってたからってわけだ。
守里: はぁ…
景信: そこで、お前だけに特別処置をしたんだよ。
守里: 特別処置?
景信: あぁ。新たに縛りを加えてもらった。その第1.5段階の扉を良い感じに作り出して、その向こう側に、お前の、敵を攻撃しようとする意識…攻撃意識を封じ込めてもらったんだ。
守里: …
景信: だって、そんな能力を使って身体能力が上がってる状態で、人を攻撃したら、相手がどうなるか分かったもんじゃないだろ?
守里: そういうことだったのか…
景信: つまり、お前の場合は、常に第1段階を開き、「解放」の1、2、3の要素を使っている状態で、大切な人を守るという目的でのみ能力を使用可能という縛りの元、その先に、攻撃意識を取り戻せるようになる第1.5段階。そして第2段階、第3段階、完全解放があるってことだ。
守里: ややこしいな。
景信: なんとか理解してくれよ笑
守里: ちょっと時間かかるかもだけど、頑張る。
景信: 頼んだ。
守里: 僕の能力についての説明はこれまで?
景信: あぁ。終了だ笑
守里: ふぅ~なんか疲れたよ。
景信: おいおい笑、これぐらいで疲れてたら、防衛団団長にはなれないぞ。
守里: 笑…あ、もしかしてさ、その防衛団の団長って、この「解放」の能力者じゃないとなれない?
景信: そういうこと。だから、お前が最初に聞いてきた、団長が世襲制なんじゃ?っていうのは、あながち間違いじゃなかったってことだ。
守里: そっか笑
景信: 俺から話そうって思ってたことは、これぐらいだが、お前からなんかある?
守里: う~ん…そうだな~あ、防衛団とアンチについて聞いときたいことが。
景信: 答えられることだったら。
守里: まず、防衛団の役職?ってどんなのがあるの?階級が分かれてて、それで役割が違うのは、森田さんから聞いて知ってるんだけど。
景信: それぐらいだったら大丈夫だ。まず、うちには、戦闘部、情報部、作戦部の3つの部署がある。それで、それぞれに統括…まぁこれも階級的には特級なんだが…がいて、その下に特級や1級がいるって感じ。
守里: ふ~ん…2級は戦闘担当って聞いたけど?
景信: そうそう、2級は全員、戦闘部に所属してる。
守里: 3級は?
景信: 知ってると思うが、3級は雑用係で、色んな役割を持ってるから、その役割ごとに、各部署に所属してる。例えば、戦闘支援なら戦闘部、調査なら情報部、事務作業、運搬なら作戦部だ。
守里: なるほど。
景信: ちなみに、森田は戦闘部の1級団員。矢口も同じく戦闘部の2級団員。
守里: 日村おじさんは、特級なんでしょ?
景信: あぁ。副団長だからな。なんなら、戦闘部の統括。
守里: あの人、めちゃくちゃ強いんだね。
景信: もちろん!俺の次に強いからな笑
守里: へぇ~お義母さんは?
景信: かおりか。かおりは、情報部統括。
守里: やっぱり、そのぐらいのとこにいたんだね。
景信: 情報部は新設でな。元々、作戦部の中に調査隊ってのがいたんだが、かおりが独立させたいって言って、新たに情報部ができたんだ。
守里: お義母さんに、父さんの居場所を突き止められたんだもんね笑
景信: 笑、色々聞いてたら、かおりは異常に諜報技能に長けてるってことが分かって。
守里: 諜報…情報部は、相手の情報を調査するための部署なのか。
景信: そうそう。で、かおりを情報部の統括に任命したってことだ。
守里: 偶然の大抜擢だったわけね。
景信: 今となっては、かおりのおかげで、アンチとも戦えてるって感じだよ。
守里: そっか。お義母さん様々じゃん。
景信: 感謝してもし切れない笑
守里: じゃあ、次はアンチについて聞きたいんだけど、あの組織ってどのぐらいの規模なの?
景信: 規模か…防衛団としても、未だに正確に把握し切れてはいないんだが、今、防衛団が守ってる地域…伊衛能の外部にも、拠点がいくつも発見されてる。
守里: え?じゃあ下手したら、全国規模なの?
景信: もしかしたらな。
守里: マジか…
景信: あぁ。その拠点から、伊衛能にいるアンチへ物資が供給されてたから、拠点は見つけ次第、潰すようにしてるんだが、中々難しい。単純に数が多いんだ。
守里: まだ、アンチのトップが誰かは分からないの?トップを確保出来れば、アンチの動きも止められると思うんだけど。
景信: それこそ、お前が倒した上位構成員からも情報を引き出そうとしたが、そのトップや幹部クラスの情報は持ってなかった。
守里: そっか…
景信: …ま、とにかく頑張るよ。
守里: うん。
景信: ごめんな。こんなことしか言えなくて。
守里: いや、大丈夫。僕も何かしらの情報を掴めるようにアンテナ張っとく。
景信: それはありがたいが、自分から、危ないことに突っ込むようなことはするなよ。するとしても、森田と矢口に話を通せ。
守里: 了解。
景信: ちなみに、お前が倒した上位は、上位に成り立てで戦闘が得意じゃなかったみたいだからな。
守里: え?
景信: とにかく、気をつけろってことだ。
守里: …分かった。
景信: 笑、他に質問はないか?
守里: …じゃあ、最後に聞きたいんだけど…
景信: なんだ?
守里: 防衛団の目的ってなんなの?
景信: …
守里: 伊衛能の治安維持だけだったら、存在を公にした方が利がありそうだし。それをしないってことは、他に目的、もしくはそれをできない理由があるんじゃないの?
景信: …答えられない。
守里: 僕には?
景信: いや、防衛団の団員にも話してない。少なくとも特級じゃないと話してない。
守里: …なら、しょうがないね。
景信: …もしかしたら、守里だったら、俺が教えなくても分かるかもだけどな。
守里: 僕だったら?
景信: 笑、よし、この質問はこれで終わりだ。他になんかあるか?
守里: …ないよ。
景信: じゃあ、今日はこれで終わりだ。お昼ご飯食べるぞ。
守里: え?
景信: お腹すいてるだろ。昼時だし。
守里: う、うん。
景信: 笑、久しぶりに一緒に食べよう。
守里: 笑、分かった。
すると、景信はどこかに電話をかけ、少しして、森田が2人分の刺身定食(イカ多め)を運んできた。
そして、守里と景信は、守里の話や守里の周りの話に花を咲かせながら、楽しくお昼ご飯を食べた。
その間、景信は暖かい親の目で、守里を見ていたのだった。
1時間後…
守里: なら、帰るね。
景信: あぁ。
守里: 頑張ってよ笑
景信: もちろん笑。守里の方も頑張れよ。
守里: うん。
景信: あ、それと最後に聞いときたいんだが…
守里: さっき、お昼ご飯食べてる時に聞けばよかったじゃん笑
景信: 忘れてたんだよ笑
守里: 笑、で、何?
景信: お前にとって、大切な人って誰だ?
守里: 大切な人?
景信: 何がなんでも、自分の命に替えても守りたいって人だ。家族は抜いてな。
守里: 家族を抜いて…守りたい…
立ち止まって目を瞑り、考える。
何がなんでも守りたい…
命に替えても守りたい…
…!!!
守里: …
景信: 誰か分かったか?ピンと来ただろ。おそらく。
守里: うん。
景信: それは、何人だ?
守里: …6…いや、7人。
景信: そうか。
守里: なんで?
景信: …その子達と、家族は絶対に守れよ。俺との約束だ。
守里: …うん。
景信: 笑、じゃあな。
守里: またね笑
そうして、守里は再び重厚な扉を開け、父といた部屋を出て、森田達と合流し、この前と同じく、普通車で5分かからずに帰宅した。
to be continued
景信: 本題である、俺とお前が持つ異能力について話すぞ。
守里: うん。
景信: 俺らが持つ異能力は、「解放」。大雑把に言えば、身体能力を底上げする能力だ。
守里: やっぱり、そんな感じのやつだったか。
景信: もう、何回か使ってるんだろ?
守里: 僕が覚えてる限りでは…4回かな。
景信: 美月ちゃんを助けた時と、根川秀人の検討会議の時、白仮面の事件でアンチの上位構成員を倒した時、あとは昨日、ナンパから日向子ちゃん達を守った時か。
守里: そうそう。こう、内側から力が溢れてくる感じ。
景信: で、詳しく説明をするとな、この「解放」という異能力には、大きく分けて4つの要素がある。
守里: ん?ただ身体能力を上げる能力ってわけじゃないの?
景信: あぁ。この4つの要素が合わさることで、結果的に、身体能力の底上げっていう能力になっているんだ。
守里: なるほどね。
そして、その4つの要素について、景信が説明する。
1つ目は、身体能力の上昇。
これが「解放」の能力のメインの力で、アドレナリンとβエンドルフィンの分泌量の増加と、血管の拡張により、身体能力を上げられる。
2つ目は、自然治癒力の上昇。
細胞分裂の速度を上げることで、身体能力の上昇により壊れた体を、急速に回復させられる。
3つ目は、五感の鋭化。
感覚器官が、より小さな事象を捉えられるようになり、特に聴覚が鋭くなる。
4つ目は、情報処理能力の向上。
感覚神経から伝えられる信号の処理速度が上がり、より早く次の動きを判断できるようになる。
景信: って感じだ。
守里: この4つの要素が組み合わさることで、身体能力が上がるってことね。
景信: う~ん、まぁ4つ目はちょっと特殊なんだがな。
守里: 特殊?
景信: おう。多分、お前はまだ使えてない要素だ。
守里: また分かんなくなってきたな笑…
景信: 続けるぞ笑。この解放の具体的なイメージは、扉だ。
守里: 扉?
景信: そう。長い道に扉がいくつかあって、扉を開けるほど、より強い力を得られるんだ。
守里: 強い力って、それだけ身体能力が上がるってこと?
景信: ま、そうだな。ただ、扉を開いて奥に進めば進むほど…つまり、強い力を得れば得るほど、体への負担はデカくなる。
守里: うん。
景信: 扉は合計4つ。最初の扉を開けば、第1段階で、さっき言った1、2、3の要素を使える。次の扉を開けば、第2段階で、第1段階より強い力と4の要素を使える。
守里: あ、ってことは、僕はまだ第1段階までしか使えてないってことか。
景信: そういうこと。それで次の扉を開けば、第3段階で、解放の能力を限界まで使える。
守里: 限界まで?じゃあ、最後の扉は?
景信: それなんだがな、お前も使ったから分かると思うんだが、この能力を使うと、ちょっとした興奮状態になる。
守里: 確かに…
景信: それが、扉を開いて進む程、強くなっていくんだ。
守里: じゃあ、第3段階まで行くと?
景信: 自我を失う。それに体への負担もかなり大きくなるから、体が完全にぶっ壊れるまで暴れ続ける、暴走状態になる。
守里: 最悪じゃん…
景信: だろ?そこで、最後の扉だ。これを開ければ、完全解放となり、自我を保てるようになる。
守里: だったら、早く完全解放まで使えるようにならないと…
景信: 笑、気概が良いな。
守里: どうすれば良いの?
景信: それを説明するには、俺ら「解放」の能力者に掛けられた縛りについて話さなきゃならない。
守里: 縛り…
景信: 今さっき言った通り、この能力は暴走する可能性がかなり高い。だから、生まれた時に暗示をかけられ、縛りを施されるんだ。
守里: 僕もやられたの?
景信: あぁ、もちろんだ。この縛りがなかった場合、能力を使おうとしたら、誤って第3段階まで一気に開くなんてことも有り得るからな。
守里: 暴走状態…
景信: そう。だから、それを防ぐための縛りだ。これは、扉の鍵と思ってもらっていい。
守里: その扉の鍵を開いてからじゃないと、次の段階には進めないってことか。
景信: それと、もう1つ。その縛りによって、俺達、「解放」の能力者は、大切な人を守るため、という目的の元でしか能力を使用できない。
守里: え…
景信: 大切な人を守るっていう目的以外では、この能力は使えないんだ。お前にも心当たりがあるんじゃないか?
守里: ……あ、うん。
景信: 要するに、縛りによって、俺達はいきなり暴走状態になって自滅するのを防いでもらう代わりに、能力の使用を制限されているってことだ。
守里: なるほど…
景信: それで、どうやったら完全解放まで使えるようになるかだが…
守里: うん。
景信: 完全解放については、よく分からん。
守里: は?
景信: というか、おそらく能力者個人の感覚に左右されるものが多すぎて、説明できないんだ。
守里: 父さんは使えるの?
景信: 使える。けど、俺の感覚を言語化できる自信がない。
守里: そっか。自分でどうにかするしかないわけね。
景信: あぁ。
守里: なら、第3段階までは?
景信: 第3段階までだったら、繰り返し能力を使い、その中で、コツみたいなのを掴めば、次の扉の鍵を外して、進めるようになると思うぞ。
守里: 繰り返しやってコツを掴む…
景信: それに、能力を繰り返し使うことで、体も破壊と回復を繰り返して強くなるから、より強い負担にも耐えれるようになってくる。
守里: …でも、縛りがあるから、何回も使えるようなもんじゃないと思うんだけど。
景信: それはまぁ、なんというか、この「解放」の能力は単純に強いからな。能力を使わせたくなかったんだと思う。
守里: ふ~ん…
景信: そう聞くと、縛りは邪魔のように思えるだろ?
守里: 少しね。でも僕の暴走を防いでくれてたわけだし。縛りがなかったら、これまでに能力を使った時に、暴走してた可能性もあったんでしょ?
景信: おう。それにな、俺の見解だが、この縛りがあるからこそ、完全解放の扉を開くことができると思うんだ。
守里: ほう…それはまたなんで?
景信: …なんとなく笑
守里: 父さんの直感ってわけか。
景信: 信じられるだろ?笑
守里: ちょっとはね笑
景信: 笑、ここまでの話は理解できたか?
守里: まぁ、なんとなく。
景信: じゃ、最後に、おそらくお前が1番びっくりすることを教えてやる笑
守里: なんか怖いんだけど。
景信: …お前、森崎守里はな、歴代の「解放」の能力者の中でも特殊で、常に第1段階の扉を開いてる状態にあるんだ。
守里: ………は?
景信: だから、お前は常時、第1段階の扉を開いて、「解放」の能力を使用している状態にあって、お前が使用していたと思っていたのは、第1段階ではなく、第1段階と第2段階の間にある…そうだな、第1.5段階だった、ということだ。
守里: いやいやいやいや、よく分かんない。
景信: だよな笑。俺もそれに気づいた時、驚いたし。でも、少しはそれで納得できたこともあるんじゃないか?
守里: …確かに…僕は、ちょっと身体能力が高すぎるから…
景信: それは、常に能力を使ってたからってわけだ。
守里: はぁ…
景信: そこで、お前だけに特別処置をしたんだよ。
守里: 特別処置?
景信: あぁ。新たに縛りを加えてもらった。その第1.5段階の扉を良い感じに作り出して、その向こう側に、お前の、敵を攻撃しようとする意識…攻撃意識を封じ込めてもらったんだ。
守里: …
景信: だって、そんな能力を使って身体能力が上がってる状態で、人を攻撃したら、相手がどうなるか分かったもんじゃないだろ?
守里: そういうことだったのか…
景信: つまり、お前の場合は、常に第1段階を開き、「解放」の1、2、3の要素を使っている状態で、大切な人を守るという目的でのみ能力を使用可能という縛りの元、その先に、攻撃意識を取り戻せるようになる第1.5段階。そして第2段階、第3段階、完全解放があるってことだ。
守里: ややこしいな。
景信: なんとか理解してくれよ笑
守里: ちょっと時間かかるかもだけど、頑張る。
景信: 頼んだ。
守里: 僕の能力についての説明はこれまで?
景信: あぁ。終了だ笑
守里: ふぅ~なんか疲れたよ。
景信: おいおい笑、これぐらいで疲れてたら、防衛団団長にはなれないぞ。
守里: 笑…あ、もしかしてさ、その防衛団の団長って、この「解放」の能力者じゃないとなれない?
景信: そういうこと。だから、お前が最初に聞いてきた、団長が世襲制なんじゃ?っていうのは、あながち間違いじゃなかったってことだ。
守里: そっか笑
景信: 俺から話そうって思ってたことは、これぐらいだが、お前からなんかある?
守里: う~ん…そうだな~あ、防衛団とアンチについて聞いときたいことが。
景信: 答えられることだったら。
守里: まず、防衛団の役職?ってどんなのがあるの?階級が分かれてて、それで役割が違うのは、森田さんから聞いて知ってるんだけど。
景信: それぐらいだったら大丈夫だ。まず、うちには、戦闘部、情報部、作戦部の3つの部署がある。それで、それぞれに統括…まぁこれも階級的には特級なんだが…がいて、その下に特級や1級がいるって感じ。
守里: ふ~ん…2級は戦闘担当って聞いたけど?
景信: そうそう、2級は全員、戦闘部に所属してる。
守里: 3級は?
景信: 知ってると思うが、3級は雑用係で、色んな役割を持ってるから、その役割ごとに、各部署に所属してる。例えば、戦闘支援なら戦闘部、調査なら情報部、事務作業、運搬なら作戦部だ。
守里: なるほど。
景信: ちなみに、森田は戦闘部の1級団員。矢口も同じく戦闘部の2級団員。
守里: 日村おじさんは、特級なんでしょ?
景信: あぁ。副団長だからな。なんなら、戦闘部の統括。
守里: あの人、めちゃくちゃ強いんだね。
景信: もちろん!俺の次に強いからな笑
守里: へぇ~お義母さんは?
景信: かおりか。かおりは、情報部統括。
守里: やっぱり、そのぐらいのとこにいたんだね。
景信: 情報部は新設でな。元々、作戦部の中に調査隊ってのがいたんだが、かおりが独立させたいって言って、新たに情報部ができたんだ。
守里: お義母さんに、父さんの居場所を突き止められたんだもんね笑
景信: 笑、色々聞いてたら、かおりは異常に諜報技能に長けてるってことが分かって。
守里: 諜報…情報部は、相手の情報を調査するための部署なのか。
景信: そうそう。で、かおりを情報部の統括に任命したってことだ。
守里: 偶然の大抜擢だったわけね。
景信: 今となっては、かおりのおかげで、アンチとも戦えてるって感じだよ。
守里: そっか。お義母さん様々じゃん。
景信: 感謝してもし切れない笑
守里: じゃあ、次はアンチについて聞きたいんだけど、あの組織ってどのぐらいの規模なの?
景信: 規模か…防衛団としても、未だに正確に把握し切れてはいないんだが、今、防衛団が守ってる地域…伊衛能の外部にも、拠点がいくつも発見されてる。
守里: え?じゃあ下手したら、全国規模なの?
景信: もしかしたらな。
守里: マジか…
景信: あぁ。その拠点から、伊衛能にいるアンチへ物資が供給されてたから、拠点は見つけ次第、潰すようにしてるんだが、中々難しい。単純に数が多いんだ。
守里: まだ、アンチのトップが誰かは分からないの?トップを確保出来れば、アンチの動きも止められると思うんだけど。
景信: それこそ、お前が倒した上位構成員からも情報を引き出そうとしたが、そのトップや幹部クラスの情報は持ってなかった。
守里: そっか…
景信: …ま、とにかく頑張るよ。
守里: うん。
景信: ごめんな。こんなことしか言えなくて。
守里: いや、大丈夫。僕も何かしらの情報を掴めるようにアンテナ張っとく。
景信: それはありがたいが、自分から、危ないことに突っ込むようなことはするなよ。するとしても、森田と矢口に話を通せ。
守里: 了解。
景信: ちなみに、お前が倒した上位は、上位に成り立てで戦闘が得意じゃなかったみたいだからな。
守里: え?
景信: とにかく、気をつけろってことだ。
守里: …分かった。
景信: 笑、他に質問はないか?
守里: …じゃあ、最後に聞きたいんだけど…
景信: なんだ?
守里: 防衛団の目的ってなんなの?
景信: …
守里: 伊衛能の治安維持だけだったら、存在を公にした方が利がありそうだし。それをしないってことは、他に目的、もしくはそれをできない理由があるんじゃないの?
景信: …答えられない。
守里: 僕には?
景信: いや、防衛団の団員にも話してない。少なくとも特級じゃないと話してない。
守里: …なら、しょうがないね。
景信: …もしかしたら、守里だったら、俺が教えなくても分かるかもだけどな。
守里: 僕だったら?
景信: 笑、よし、この質問はこれで終わりだ。他になんかあるか?
守里: …ないよ。
景信: じゃあ、今日はこれで終わりだ。お昼ご飯食べるぞ。
守里: え?
景信: お腹すいてるだろ。昼時だし。
守里: う、うん。
景信: 笑、久しぶりに一緒に食べよう。
守里: 笑、分かった。
すると、景信はどこかに電話をかけ、少しして、森田が2人分の刺身定食(イカ多め)を運んできた。
そして、守里と景信は、守里の話や守里の周りの話に花を咲かせながら、楽しくお昼ご飯を食べた。
その間、景信は暖かい親の目で、守里を見ていたのだった。
1時間後…
守里: なら、帰るね。
景信: あぁ。
守里: 頑張ってよ笑
景信: もちろん笑。守里の方も頑張れよ。
守里: うん。
景信: あ、それと最後に聞いときたいんだが…
守里: さっき、お昼ご飯食べてる時に聞けばよかったじゃん笑
景信: 忘れてたんだよ笑
守里: 笑、で、何?
景信: お前にとって、大切な人って誰だ?
守里: 大切な人?
景信: 何がなんでも、自分の命に替えても守りたいって人だ。家族は抜いてな。
守里: 家族を抜いて…守りたい…
立ち止まって目を瞑り、考える。
何がなんでも守りたい…
命に替えても守りたい…
…!!!
守里: …
景信: 誰か分かったか?ピンと来ただろ。おそらく。
守里: うん。
景信: それは、何人だ?
守里: …6…いや、7人。
景信: そうか。
守里: なんで?
景信: …その子達と、家族は絶対に守れよ。俺との約束だ。
守里: …うん。
景信: 笑、じゃあな。
守里: またね笑
そうして、守里は再び重厚な扉を開け、父といた部屋を出て、森田達と合流し、この前と同じく、普通車で5分かからずに帰宅した。
to be continued
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