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閑章1

第64話「守里の姉ちゃん」

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突然、様子が変わった守里について行き、結真達はわけも分からないまま、伊衛能病院の地下へと降りる。


チーン



看護師: どうぞ。



守里の前の壁が開く。



守里: ありがとうございます。


看護師: いえ。



守里はエレベーターを降り、進んで行く。



結真: …っ!ちょっ守里!


美月: 行くよ、2人とも。


桜: …


蓮花: う、うん…



唖然としていた結真達も、慌てて守里の後について行く。



桜: ここ、どこなんだろ。


美月: 随分と下に降りたね。


結真: この病院って、そんな地下までなかったと思うんだけど…


蓮花: なんか、色味がないというか、真っ白。


美月: あと多分ここは、入院棟なんだろうけど、ひと気が無さすぎる…


結真: 確かに、今の時間帯なら、もっと人がいてもおかしくないよね。


蓮花: ここになんの用事があるんだろう、お兄ちゃん。


桜: さっきの看護師さんとの会話の感じからして、よく来てるみたい…


美月: うん。



少し歩いたところで、守里が立ち止まり、扉の方を向く。



結真: ここなの?用事があるのは…


守里: うん。失礼します。



ガラガラ


守里は病室の中に入る。



守里: みんなも入ってきて。


結真: 失礼します…?


美月 桜 蓮花: 失礼します…



結真達の目に入ったのは、広い病室の中に一つだけあるベッドに寝ている女性だった。



結真: 守里、この人は…


守里: 1ヶ月ぶり、姉ちゃん。


結真: っ?!!


美月: 姉ちゃん?どういうこと?!


守里: 今日は、この前言ってた新しい家族を連れて来たよ。


桜: お兄ちゃん?



守里はそのベッドに近づきながら話す。



結真: 守里、説明して。


守里: うん。



そう言って、守里は結真達の方を向く。



守里: この人は、僕の姉ちゃんの"森崎優茉もりさき ゆま"。結真姉さんと同じ名前なんだ。


結真: え?!そうなの?


守里: うん。


美月: …


守里: …


美月: …え、それで説明終わり?


守里: うん。


結真: もっと他にあるでしょ。どんな人なのかとか、なんでここにいるのかとか。


守里: 僕も分かんない。


桜: ?


蓮花: どういうこと、分からないって?


結真: 守里のお姉さんなんでしょ。分からないってことはないよね?


守里: そんなこと言われても、分からないことは分からないよ。



全員が守里の言葉に困惑する。



美月: …守里は、よくここに来てるの?


守里: うん、月の初めに来てる。


美月: (そういえば、5月の初めにも予定があるとか言って、遅くに帰ってきた…)


結真: …お姉さんはいつから、ここにいるの?


守里: いつから…分からない。


結真: (もしかして記憶が…)



そして、結真達は守里に、姉に関する質問を投げかけていく。


しかし…



結真: (お姉さんのことについて、守里が分かるのは、名前と年齢だけか…)


蓮花: ねぇ、お兄ちゃん。


守里: どうした、蓮花。


蓮花: お兄ちゃんは、お姉さんのこと好き?


守里: …



蓮花の質問に守里は固まる。



蓮花: お兄ちゃん?



そして…
 


守里: …ウグッ



守里が頭を抱え込み、呻き声をあげる。



結真: っ!!守里、大丈夫?!


桜: お兄ちゃん?!


美月: 守里!!


蓮花: お、お兄ちゃん?!ごめんなさい!!蓮花のせいで…


守里: だ、大丈夫…蓮花のせいじゃ…ないよ…



守里は頭の痛みに耐えながら言う。



結真: 守里、無理しないで!(守里の記憶を、無理やり呼び起こすようなことは、マズイのかも…)


守里: ぼ、僕は…姉ちゃんの…ことが…


美月: 守里!


守里: 大好き……



そう言うと守里は、床に座り込んでしまう。



蓮花: お兄ちゃん?!


守里: 蓮花…


蓮花: 大丈夫なの?


守里: 何も問題ないけど…あ、みんな、姉ちゃんに自己紹介してよ。せっかくだからさ。



守里はさっきまでの様子が無かったことのように、立ち上がる。



結真: う、うん…


桜: (もう、わけが分かんないよ…)



その後、結真達が自己紹介をして…



守里: よし、もう帰ろうかな。


結真: 帰るの?


守里: うん、これ以上話すことないし。みんなは何かあるの…


結真: え、いや、ないけど…


美月: 私も…



守里は桜と蓮花を見るが、2人とも首を横に振る。



守里: なら、帰ろうよ。晩ご飯も食べないとだし。


結真: …そうだね。



そうして、守里達は病室を出て、乗ってきたエレベーターの所へ。



看護師: お帰りですね。


守里: はい。


看護師: では、カードを。


守里: 分かりました。



守里は初めに貰ったカードを看護師に渡す。



看護師: 貴女方も。


結真: はい。



その後、エレベーターに乗り、病院の受付があった場所に戻る。



看護師: では、また。


守里: はい。



守里達は病院を出る。




パチ




守里: …あれ?ここは…まぁいいか。


結真: 守里、車はこっちなんだけど。



普通に病院の駐車場を歩いて出ようとした守里を、結真が引き止める。



守里: え、あぁ結真姉さん、それに美月達も。


結真: 家に帰るんでしょ。


守里: うん。


美月: …


守里: なんで、みんな、そんな暗い顔をしてるの、大丈夫?


桜: なんでって…お兄ちゃんが…


結真: 桜、今は…


桜: …


美月: 大丈夫だよ、守里。


守里: そうか、それなら良かった笑


蓮花: (お兄ちゃんが笑った。元のお兄ちゃんに戻ったのかな…)



そうして、結真達は多くの疑問と不安を抱えたまま、家に帰った。


家に帰ってきた結真達は、いつも通りの日常を演じた。




そして、守里が自分の部屋に行った後…



結真: さぁ、考えていきましょうか。


美月: そうだね。



白城4姉妹での家族会議が始まった。



蓮花: 今日のお兄ちゃん、変だったよね?


桜: うん。


結真: 朝からあんなだったっけ?


蓮花: いや、いつも通りのお兄ちゃんだった。


美月: 学校でも、あんまり変わった様子はなかったかな。


桜: 家に帰ってきた時も、変じゃなかったはず…


蓮花: うん。


美月: うーん、お姉ちゃんが帰ってきた時ぐらいからかな?


結真: 私?


桜: というより、美月お姉ちゃんが、なんの用事があったのって聞いた時からじゃない?


蓮花: 確かに…その時、いきなり病院に行かないとって言い出したもんね。


美月: 私の質問がきっかけ?


結真: じゃあ、美月はなんでそんな質問を?


美月: それは、学校から帰る時に、守里が用事があるから先に帰っといてって言ってたからだよ。


桜: でも、お姉ちゃんはお兄ちゃんと一緒に帰ってきたよね?


美月: うん。守里がそう言った時に、春時が守里を教室から連れ出したんだ。それで、戻ってきた後には、一緒に帰ろうって言ってきたの。


結真: もしかして、その元々守里が言ってた用事って、病院に行くことじゃないの?


蓮花: あ、そうかも!!


美月: だとすると、春時が守里を連れ出した時に、私達と一緒に行け的なことを、守里に言ったんじゃないかな。


桜: だから、お兄ちゃんはあんなことを言ってたのか。


結真: となると、春時君は何か知ってるわね。


美月: うん、私が電話をかけた時も、俺からは何も言えないって言ってから。明日、私が話を聞いとくよ。


結真: うん。


桜: 春時君は、その、お兄ちゃんのお姉さんのことも知ってるよね?


美月: 多分…


蓮花: じゃあ、日向子ちゃんとか、飛香さんも知ってるのかな?


結真: まぁ、幼なじみだから。


桜: でも、まさかお兄ちゃんに、お姉ちゃんがいたなんて。


蓮花: 蓮花のお姉ちゃんが増えた!


結真: 笑、そうね。私にもお姉ちゃんができて嬉しい。


美月: でも、お姉ちゃんと名前が同じとは…


桜: 何て呼べばいいかな?


結真: そうね~なら、私のことは、結真ちゃんって呼んで!


美月: …


桜: …


蓮花: …


結真: …じょ、冗談よ笑


美月: だけど、呼ぶ時に困るよね。


蓮花: お兄ちゃんのお姉ちゃんって、結真お姉ちゃんの1つ上?


結真: うん、守里が言ってた。


蓮花: なら、お兄ちゃんのお姉ちゃんは、お姉さんって呼ぼうよ。


桜: じゃあ、結真お姉ちゃんはお姉ちゃんで、お兄ちゃんのお姉ちゃんはお姉さんってことね。


美月: 確かに、お姉さん大人っぽかったから…


結真: え、それは私が子供っぽいってこと?


美月: うん。


蓮花: だね。


桜: さくもそう思う…


結真: …(これは褒められているのかしら…)




to be continued

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