ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

文字の大きさ
上 下
50 / 340
第3章 美月編

第50話「突入」

しおりを挟む
根川秀人に連れ去られた美月がいると思われる、町外れの工場群跡地へとやって来た守里。


防衛団の力を借りて、美月を必死に探しているが、未だ発見できていなかった。



守里: まだ、発見の報告はないですか?


森田: はい、北側の捜索が終わり、今東側、そして南側の捜索を行ってます。


守里: もっと人員は増やせないんですか?


矢口: すみません、多分無理っす。


守里: そうですよね…



防衛団に無理は言えない。


この人達は伊衛能一帯を守ってるんだ。

そう簡単に配置を動かすことはできない。



森田: 西側の未探索の工場は、あそこに見える3つだけみたいです。



タブレットに表示されたマップを見ながら、森田が言う。



守里: 分かりました。行きましょう。




数分後…



森田: いませんね…


矢口: 西側にはいないのか…



早く見つけないといけないのに!



守里: クソ!!


森田: 坊ちゃん、落ち着いて下さい。焦ったら、見つかるもんも見つけられません。



焦る守里を鎮める森田。



守里: ふぅ…すみません。



守里は森田達からちょっと離れた所に行き、目の前に広がる木々を見る。


ここにはいるはずなんだ。


この工場群は険しい森に囲まれていて、車の出入口は2つしかない。

そこは防衛団の人が封鎖してるし、森を無理やり抜けるのは不可能だろう。

美月を連れ去った車が中にあって、出入口を封鎖している防衛団の人から連絡が無いってことは、確実に美月達はこの工場群にいる。


早く見つけないと…


美月を助けないと…


再び守里の頭に血が登る。


いや、落ち着け…

森田さんの言う通り、焦らず冷静にいるべきだ。


守里は目の前にある景色を見渡し、心を落ち着けようとする。



守里: ふぅ…よし、森田さんのところに…ってあれは…



小さくだが、木々に隠れた建物らしき影が、守里の視界に入る。



守里: 森田さん!!



すぐに森田を呼ぶ守里。



森田: どうしました?坊ちゃん。


守里: あそこに何か建物がありません?


森田: え?


矢口: あ、確かにあるっすね!


森田: ちょっと待ってください!確認します。



森田が再び、タブレットに表示されたマップを見る。



森田: やっぱり、あんな建物は表示されていない…


矢口: でも、実際にはある…


守里: 行ってみましょう。


森田: ですね。



守里達は隠されていた建物に向かう。



守里: ここですか…工場みたいですけど…


矢口: 上手いこと隠されてる。これじゃあ、よく見ないと、森の外からは見つけられないっすね。


森田: 道も何も無いか。意図的に隠された建物だ。


守里: もうちょっと近づきましょう。



工場に近づく3人。



森田: 中に入ってみ…


ガヤガヤガヤ


森田: …いますね。


守里: 当たりですか。


矢口: 連絡入れとくっす。


「私に何をするつもりなの?!!」


守里: 美月の声だ。


森田: 中の状況を把握したいですね。



そう言って森田は工場を見回す。



森田: …中を覗けるような場所はなさそうです。


守里: 中からの音だけで、状況を把握をしないと…



そう言って守里は集中する。




「目覚めたと思ったら、いきなり騒ぎ始めやがって。」


「ここはどこなの?!」


「静かにしてくれないかな?美月ちゃん。」


「そうだぞ、俺らの機嫌を損ねると不味いんじゃないか?w」


「あいつらに電話しようかな?ここに来てって。」


「っ!!…それだけはやめて…」


「はぁ…にしても、いじめられただけで、ここまでソイツらにビビるかねw」


「だねデュフフ、ってかまだなの?」


「あ?もうちょっと待っとけや。あれが溶け切るまで。」


「溶け切らないと、美月ちゃんに飲ませられないのか。」


「そうだ。せっかく上から、くすねてきたやつなんだ。ちゃんと使いたいだろw」


「確かに、下手にやって、失敗したくないな~デュフフ」


「あれはなんなの…」


「デュフフフフフ、あれはね、美月ちゃんを僕の物にするためのお薬なんだよ 。」


「僕のじゃなくて、俺達のだろw」


「ごめんごめん、じゃあ、あとちょっと待っててね、美月ちゃん。デュフフ」




守里: …そういう事か。


森田: 聞こえたんですか、坊ちゃん。


矢口: 俺には全くでしたけど…


守里: とにかく時間が無いみたいです。もう突入するしかないかもしれない。


森田: どういうことですか?


守里: どうやら、根川は美月に何らかの薬を飲ませようとしてるみたいなんです。


矢口: 薬っすか。どんな物か分かったもんじゃないっすね…


守里: はい、それを防がないと…


森田: 中にいる人数は分かりましたか?


守里: 美月に根川秀人、根川雄斗の3人は確実にいますけど、他は正確には分からないです。でも、足音や話し声から、10人以上はいそうです。


森田: 分かりました。


矢口: 援軍を待つ時間はなさそうっすね。



森田は少し考えて…



森田: 突入しましょう。坊ちゃんは…


守里: 今更、待機はなしですよ。


森田: …分かりました。でも、無理だけはしないように、お願いします。


守里: 了解です。


矢口: じゃあ俺が扉を開けるんで、中に。



守里、森田、矢口は工場の扉の前に移動する。



矢口: 行きます。



バンッ!!!


矢口が勢いよく扉を開き、守里と森田が中に入る。


工場の中は、薄暗く、壁際にはドラム缶や木箱が積み上がっており、奥の方に秀人と男が4人、そして、天井に伸びる柱に縛り付けられてる美月。

その手前には、柄の悪そうな男達がたくさんいた。



雄斗: あ?誰だ?!



奥にいる男4人のうち、1番ガタイの良い男が叫ぶ。



守里: 美月!


美月: っ!!!守里君!


秀人: …森崎君ですか。


森田: 根川雄斗に、根川秀人。あと、中位構成員が3人に、下位が数十人ってところか。


雄斗: てめぇは…


守里: 行きます。


森田: はい。



雄斗達が動揺してる間に、美月に近づこうとするが…



雄斗: チッ!!まぁいい!お前ら止めろ!!



その声で、下位構成員が守里達の突撃を防ぐために動く。



守里: 邪魔だ!どけ!!


森田: フンッ!



守里は、無理やり突破しようとするが、数が多く上手くいかない。


それに対し、森田は下位構成員を殴り飛ばして行く。



下位: グハッこいつ強え!


下位: なにもんだ!


森田: さっさとどけ!!


下位: どんどん行くぞ!!


しかし、次から次へと壁が行く手を阻む。


森田: チッ、数が多い。


矢口: 俺も行く!!オラッ


下位: 数で押せ!!


下位: ブハッ


森田: 邪魔だ!!


矢口: コラッ!!


下位: グッ


下位: まだまだだぞ!!


下位: 行け行け!!



そこに矢口も加わるが、中々数が減らない。



雄斗: おい、まだか?



雄斗が、そばの木箱の上にある瓶を見つつ、後ろにいる男に尋ねる。



中位: あと少しだ。


秀人: 兄貴、どうする?


雄斗: あぁ?まぁそうだな、あいつらを潰すことは確定だが…あの弱い奴は、美月ちゃんの知り合いなんだろ?


秀人: うん。


雄斗: それなら、目の前で俺らの物になるところを見せてやりたいじゃないかw


秀人: デュフフフ、それもそうだね。


雄斗: よし、じゃあお前らも加わってこい。殺さない程度になw


中位: はいよ。


森田: (不味いな、下位のヤツらだけなら問題ないんだが、今の状態から中位まで入ってくるとなると…それに…)


守里: ハァハァ



守里はただ前に行こうと踏ん張るだけで、周りから攻撃を受け続ける。



森田: (坊ちゃんが限界だ。ある程度の攻撃には耐えれるって言っても、限度がある。今はダメージが蓄積しすぎて、かなり危険…)


中位: オラッ!!!


森田: させるか!!



守里に殴りかかった中位構成員の腕を、森田が蹴りで弾く。



守里: 森田さん…


森田: 坊ちゃん、一旦下がってください。このままだと…


守里: 嫌だ!!


森田: 坊ちゃん!


中位: 自分の心配をしたらどうだ!!


森田: クッ



別の中位構成員の蹴りをモロに食らう森田。



矢口: 大丈夫か!森田!!



もう1人の中位の相手をする矢口が叫ぶ。



森田: あぁ、当たり前だ。こんなヤツらにやられるかよ。


矢口: だな笑



そう言って2人は、それぞれの敵へと向かう。



守里: ハァハァ



なんで僕は前に進めないんだ…


結局、人に頼ってしまう。

今もそうだ、美月を助けると意気込んでおきながら、森田さんと矢口さんに任せて、僕はまともに戦うこともできない…


なんてザマなんだ…


守里は俯く。



中位: おいおい、後ろの坊ちゃんって奴は諦めちまったみたいだぞw


森田: あぁ?


中位: まぁそりゃそうだよな。目の前に助けたい女がいるのに、自分は何もできずボコられ続けることしかできないんだもんなw


森田: 黙れ!



森田が、中位構成員の顔目掛けて殴り掛かる。



中位: 事実だろうがw



が、もう1人の中位が森田の腕を掴み抑える。



森田: 坊ちゃんを見くびらない方が良いぞ。



そう言って森田は腕を掴んだ中位構成員を振り回し、周りにいた下位構成員達を吹き飛ばす。


そして目の前にいる中位に蹴りを入れる。



中位: カハッ、さすがだな…


森田: …


中位: ふぅ…でも、終わりだ。


森田: あ?


雄斗: よっしゃ、完成したぞ!


美月: っ!!


守里: っ!!!!


秀人: マジか!兄貴!!



雄斗が薬の入った瓶を手に取る。



雄斗: ほら、お前、しっかりと見とけよw



守里の方を見ながら言う。



美月: い、いや…


森田: おい!!やめろ!!!



と、森田が雄斗の方に行こうとするが…



中位: だから、てめぇの相手は俺らなんだよ。


森田: チッ


矢口: 邪魔するな!!



中位構成員と下位構成員が、物量で森田と矢口を押さえ込む。



森田: (数が多すぎて、体を動かせない…このままだと…)


秀人: やっと、やっと、美月ちゃんを僕の物にできるんだね。デュフフフ


雄斗: 秀人、美月ちゃんの口を開けておけ。


秀人: 分かったよ。デュフフ


美月: いや、やめて!!! 



雄斗と秀人が美月に近づく。



守里: …



やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ…


僕の家族を傷つけるな…

僕の大切なものを傷つけるな…


守らないと、守らないと、守らないと…



美月: 守里!!!!助けて!!!!!


守里: !!!!!!!



家族を守らないと!!!!!!!!




カチ




守里: 俺の家族に手を出すな!!!!!





to be continued

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...