上 下
44 / 318
第3章 美月編

第44話「秀人の誘い」

しおりを挟む
翌日

放課後



若月: じゃあ、今日も頑張って。


守里 美月: はい!



守里と美月は風紀委員の仕事に向かう。


そして、何事もなく、見回りルートの最後辺りまで来た2人。



守里: ふぅ…今日も異常なしかな。


美月: そうだね。


守里: でも、その分、僕らの仕事がなくなるから、何とも言えないよ笑


美月: 確かに。でもそれだけ…平和ってことだから、良いじゃん。


守里: まぁね。ところで、その昨日話してた美月の友達ってクラスの人なの?



守里は美月に聞く。



美月: うん。そうだよ。体育祭の時に仲良くなったんだ。


守里: へぇ…



うーん、やっぱりあれ以降、特に変わった様子はないんだよな。

でも、この友達ができたっていうのが嘘っぽい。


守里は体育祭の日、美月に異常を感じ、夜に拒絶されてから、諦めず美月を探り続けていた。

だが、この2週間、特に成果は得られなかった。


教室でも誰とも話してる様子はないし、体育祭の時に友達になったって言ってるけど、ほとんどの時間、僕と一緒にいたはず…


僕と一緒じゃなかったのは、それぞれが競技中の時、でもその間に友達ができたってことは、流石にないか…


それなら、休憩中…

美月が休憩中だった時に、友達ができた、いや何かがあったと考えるべきだ。


守里は、体育祭と、その日の夜の美月の様子から、美月が誰にも言えないような何かを抱えていることに、確信を覚えていた。



守里: 今度、その友達、紹介してよ。


美月: …え、なんで?


守里: いや、なんとなく。


美月: 向こうが良いって言ったらね笑


守里: 期待しとく笑



と、守里と美月が仕事をしつつ、話していると…



??: あ、やっと来た、美月ちゃん。



路地裏から男が、守里達の前に出てくる。



守里: ん?知り合い?美月さん。


美月: …


守里: っ!



守里が美月の方を見ると、美月が目を大きく開き固まっていた。



??: あぁ、これはこれは、森崎君じゃないか。


守里: えーっと、ごめんなさい。君が誰だか分からないんだけど…


??: まぁそうだよね。一応同じ学校の同級生なんだよ。


守里: あ、そうなの?


??: 根川秀人といいます。


守里: 根川君か…森崎守里です。よろしく…


秀人: うん、よろしくね。


守里: それで、美月さんに何か用?


秀人: いや、美月ちゃんに伝えたいことがあってね。


守里: …へぇ…


秀人: で、森崎君には、一旦離れていて貰いたいんだけど。



それを聞き、守里は再び美月を見る。



美月: …



美月は俯き黙っていた。


根川君を見てから、美月の様子がおかしくなった。

ということは、コイツが美月の異常の原因の一端になっていると考えていいな。


それなら、今ここで、コイツと美月を2人きりにするのは不味いか…



守里: それは、僕がいると話せないような内容なの?


秀人: そりゃあもちろんだよ。だってデートの予定の話なんだから。デュフフ


守里: …デート?


秀人: あれ?美月ちゃんから、何も聞いてなかった?



ここで秀人はチラッと美月を見る。



秀人: 僕と美月ちゃんは付き合ってるんだよ。


守里: っ!!



コイツと美月が付き合っているだと…



秀人: 分かってくれたかな?森崎君。だから、離れていてくれない?


守里: …僕達は仕事中なんだ。妨害はやめてくれ。



これで引き下がってくれないかな?



秀人: チッ、うるせぇな。黙って言うこと聞いとけよ。どうなっても知らねぇぞ。



どうなってもって、どういうことなんだ…


状況が完全に把握出来ていない以上、下手には動けない…

ここは引き下がるしかないか…



守里: …分かった。



守里は、美月と秀人から距離をとるが、美月から目は離さない。



秀人: いや~ここで待ち伏せといて正解だったよ。


美月: …なんでここに…


秀人: 美月ちゃんが風紀委員なのは分かってるからね。見回りのルートさえ把握しとけば、待ち伏せは簡単だって。まぁ邪魔なのはいるけど。



そう言って、秀人は守里を見る。



美月: それでなんの用なの?


秀人: さっきも言ったでしょ、次のデートについてだよ。


美月: …


秀人: 明日の17時に、昨日のデートで解散した所に来てもらっていい?


美月: …あのカフェの近く?


秀人: そうそう。


美月: …何するの?


秀人: んーそれは来てからのお楽しみかな。デュフフフフフ


美月: …


秀人: 来ないと分かってるね。


美月: っ!!ブルブル


秀人: じゃ、よろしくね。バイバイ美月ちゃん。あ、森崎君!!もういいよ!!



そう言って、秀人は去っていった。



守里: 美月、どんな話だったの?



守里は美月に駆け寄る。


そして、美月が震えていることに気づく。



守里: 美月!大丈夫?!


美月: …だ、大丈夫、大丈夫だから…


守里: アイツに何か言われたの?!


美月: …大丈夫だから、ね、もう行こう?…



美月が守里の目を見て言う。



美月: (お願いだから、もう触れてこないで…)


守里: …


美月: 私は大丈夫だから…



美月の強い願いを感じる守里。



守里: じゃあ、最後に1つ良い?


美月: …うん。


守里: 僕の助けが必要?


美月: …



美月は黙り、考える。



美月: (守里君はずっと私のことを気にかけてくれてる。優しいな…でも守里君に話すわけにも、助けを求めるわけにもいかない…根川君にそれがバレて、またあの地獄が始まってしまうかもしれないから。)



そして美月は、これまでの守里の優しさ、強さ、そして弱さを思い浮かべる。



美月: (それに、こんな守里君を巻き込みたくない…)



美月は答えを出す。



美月: 要らない。



守里の目をまっすぐ見て、美月は答える。



守里: …そうか、分かったよ。


美月: これで話は良いよね。なら見回りを早く終わらせよ?


守里: そうだね。



そして2人は見回りを終わらせ、学校へと戻った。




風紀委員室


ガラガラ



守里 美月: 失礼します。


若月: ん?戻ったか。


守里: お疲れ様です、若月さん。


美月: お疲れ様です。


若月: おう。それで、報告は?


守里: はい、異常なしでした。


若月: そうか、ありがとう。他に何か気になった事とかはないか?


守里: そう…ですね…


美月: 特にありません。


守里: …僕も特にありません。


若月: …分かった。じゃあ今日はもう解散で良いぞ。珠美と優太の方はもう終わってるからな。


守里: 早かったんですね。


若月: いや、今日は守里達の方が遅かったからじゃないか?


守里: え、そうですか?


若月: あぁ。


守里: ちょっと寄り道しちゃったからですかね笑


若月: おいおい笑、ここで言うなよ。


守里: あ、すいません笑


若月: まぁ、ちゃんと仕事をやってくれれば、何も言うつもりはないから。


守里: 若月さんも1、2年の頃は、そういうのやってたんですか?


若月: 笑、私がそんなことをするわけないだろう。


守里: そうですよね。


若月: 葵波とか愛衣はやってたっぽいがな。


守里: あの2人はまぁ…


若月: 仕事はできるから問題は無いんだけど。


守里: 若月さんは、2人をかなり信用してますよね。


若月: そりゃあね。1年の時から一緒に仕事やってたし、アイツらから大事なことも学んだし。


守里: へぇ、大事なことってなんです?


若月: 力を抜くことかな。前まではずっと意識を張って、全てのことに全力で取り組んでいたんだ。


守里: 若月さんは真面目ですもんね。


若月: よく言われるよ。でも、葵波と愛衣を見て、力の抜き時を見極めて、力を抜くようになってから、楽になったし、重要な時に、より力を出せるようになったからな。


守里: 若月さんは変わることができたんですね、葵波さんと愛衣さんのおかげで。


若月: そうだ。だから、あの2人には感謝しているし、信用もしているんだ。


守里: なるほどです。それになにより、強いですもんね。


若月: あぁ、腕っ節は学校でもトップクラスだし、ここら辺では敵無しだっただろうな。


守里: 「だった」ですか…


若月: 今は正直、分からん。


守里: いや、この辺りのチンピラには負けないでしょ。


若月: それがな、最近変わってきてるんだよ。


守里: え?


若月: 4月にも喚起した通り、この辺…伊衛能で暴力事件が発生しているだろ?


守里: みたいですね。まだその事件を目撃はしていませんが。


若月: 笑、巻き込まれる方が困るよ。それで、どうやらその事件は、1つの暴力団というか組織によるものだということが分かったんだ。


守里: へぇ…



そんな組織があるのか…


でも、父さんが言うには、防衛団がそんなヤツらが伊衛能に現れないようにしているはず…

って言うことは、その組織は、防衛団と敵対しているという組織のことか。


でも、じゃあなんで、そんな情報を若月さんが知っているんだ?



守里: 若月さんはどこからその情報を?


若月: 警察からだ。


守里: 警察ですか。


若月: うちの風紀委員は、ここら一帯の治安の維持の一役を買ってるからな。それで警察から情報を貰えたんだ。


守里: そういうことですか…



防衛団は警察と協力関係にある。

ということは、防衛団が警察にこの情報を流したと考えるべき…

何か状況が動いたのか?


まぁいい…今は自分に近いところからだ。



守里: ありがとうございました。色々と話してくださって。


若月: いや、良いんだよ笑


守里: ではここら辺で失礼しますね。


若月: ああ、また今度な。美月も。


美月: はい、失礼します。



ガラガラ



守里: よし、帰ろうか。


美月: うん。


守里: じゃあ、いつも通り、先に帰っといて。


美月: 分かった。またね。


守里: またね。



そうして2人は帰宅した。




to be continued
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

お尻たたき収容所レポート

鞭尻
大衆娯楽
最低でも月に一度はお尻を叩かれないといけない「お尻たたき収容所」。 「お尻たたきのある生活」を望んで収容生となった紗良は、収容生活をレポートする記者としてお尻たたき願望と不安に揺れ動く日々を送る。 ぎりぎりあるかもしれない(?)日常系スパンキング小説です。

処理中です...