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第1章 出会い編

第1話「捨てるところだった手紙」

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薄暗い部屋の中でうずくまる。

体が震えて立ち上がることも、言葉を発することもできない。



??1: 次はお前だな。



とうとう僕の番が来てしまったようだ。

僕に銃口が向く。


目の前の男が引き金を引いた。



??2: 守里ーーーー!!!



闇の中に響き渡る銃声。


突然目の前を何かが塞ぎ、それが下に落ちる。

咄嗟にそれを抱える。

視界を下に向けると、その何かは僕の大切な家族だった。



守里: え…ね、姉ちゃん、、、



自分の手に付く赤い血。



??1: 順番が狂っちまったな、まぁどっちにしろ死ぬんだから関係ねぇかw



思考が止まる。



??1: じゃあな、恨むなら…



男が何を言っているのかも頭に入ってこない。

男が再び銃口を向けてくる。

視界の端で倒れている人と、自分の手に抱えられている人。

そして目の前に広がる赤い液体。



守里: よくも、、、俺の大切な人を!!!!




バキ




そこで僕の(俺の)意識は途絶えた…


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


カーテンの隙間から部屋に光が差し込む。

ベッドの上にその光が当たる。



守里: ん…うん~もう朝か。



ベッドから体を起こし、枕元に置いてある携帯を取る。



守里: 10時か、結構寝たな。お腹も空いたし朝ご飯食べよ。



そう言って部屋を出て階段を下り、キッチンへ行き冷蔵庫を開ける。



守里: 何食べよう…うん、あんまり食材もないんだよね。今日買いに行こうかな。



冷蔵庫を閉めつつ、リビングの方へ。



守里: お、いいの発見!!



ダイニングテーブルに置いてあった食パンに気づき、手に取る。



守里: そういえば、昨日の夜に食べて、そのまま机に置いてたんだったな。



食パンをトースターに入れて、焼き上がるのを待つ。


明日が始業式か、もう俺も高2なんだな。

去年は可もなく不可もなくって感じだったけど、今年はどうだろう。

楽しく過ごせれば良いな。


未来に期待を膨らませつつ、去年の思い出を振り返る。


チン


パンの焼き上がりを教えてくれる音が、広いリビングに響く。



守里: お、できたか。



焼き上がった食パンにかじり付きつつ、テレビをつける。


ピ

「では、食べていきたいと思いまーす!!ん、これ!相当美味いよ!!ぜひスタジオにいるゲストさんも食べて見てくださいよ!!」

ピ

「いやー凄いですね、金山社長の腕には驚かされますよ!たった数年でここまで会社を大きくするとは、、これからが楽しみですね。では次のニュースです。」

ピ

「どうも!!まずはこのお店…」

ピ

「最近、ここも治安が悪くなってきてねぇ、昨日もあそこの、えーとなんて言ったっけな。あ、そうそうあそこの三角公園で騒ぎがあったのよ。でね、、」

ピ

「次は野球の話題です!…」

ピ

「明日の天気は晴れ、、」



守里: 良いの無いな~、やっぱテレビはいいや。



ピ


そう言って黙々と食べ始める。


ピンポーン


食べ終わったところでインターホンが鳴った。



守里: ん?なんだろ。はーい!


「宅配便でーす!」


守里: 宅配便か、なんか頼んでたっけ?



玄関に向かい、扉を開ける。


ガチャ



業者1: どうも~


守里: あ、いつもお世話になってます。お疲れ様です。



外に立っていたのは、いつも守里の家に荷物を届けてくれる配達業者だった。

彼らは1人暮しをしている僕に気を遣ってなのか、よく話しかけてくれる、気の良い人達だ。



業者2: お届けものっす。


守里: はい、ありがとうございます。なんか随分と大きい荷物ですね。


業者2: そうっすね。重いので気をつけて下さい。



守里は荷物を受け取る。



守里: …確かに重いですね。



受け取った荷物を玄関に置き、伝票を受け取って、サインをする。



業者1: 春休みも今日までですか。


守里: そうなんですよね、もうちょっと休みたかったです笑


業者1: まぁ学生ですから。学校で青春していきましょ!


業者2: そっか~もう高2になるんすよね。あの坊っち…



パシッ



業者2: 痛っ!!



話している途中でいきなり業者がもう1人の頭を叩いた。



業者1: バカ!ダメだろ!!


守里: え、えーと…大丈夫ですか?


業者1: いや、あの…こいつの頭に虫が止まっていたもんですから笑


業者2: そ、そうなんすよ。もう兄貴ったら力が強くて笑


守里: へーそうだったんですか。あ、はいこれ!サイン書き終わりましたよ。



守里は業者1に伝票を渡す。



業者1: では失礼します。明日から頑張って下さいね。


業者2: 頑張って下さいっす!!


守里: はい!頑張ります。そちらも頑張って下さいね。



そう言って業者二人は門を出て行った。


ガチャ



守里: ほんと愉快な人達だ笑、多分僕がこの家に引っ越してきてからずっとだもんな。



ん?今更だけど、ずっと同じ業者の人が配達し続けるってことはあるのか?


と、一瞬考えたが、守里はまぁいいかとすぐに切り替えた。



守里: さっ、この大きな箱の中身を確認してみますかねっと…え、何これ?



箱の中には大量の生活用品と食料が入っていた。



守里: なんでこんなのが…あとこれ送ってきたの誰よ。



疑問に思いつつ、荷物を倉庫や冷蔵庫にしまっていく。

空っぽになった箱の底に1枚の紙があった。

その紙に気づいた守里は、それを拾ってゴミ箱の方へ。



守里: ふ~ん…ん?あ、これ手紙か。どれどれ…



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
守里へ

明日、14時にギフトモールの地下駐車場の46番に来い。
久しぶりに会おう。
それに伝えたいことがある。

父より
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



守里: え、父さん?!!絶対に行かないとだな。にしてもホント久しぶり…1年ぐらいか?



中3までは父さんと2人で暮らしてたけど、今は父さんとは、離れて暮らしている。

父さんは昔から家を空けることが多かったから、一人暮らしは問題なかったんだけど、いきなり引っ越しすることになって、父さんとも連絡が取れなくて、中々大変だったんだよな。

今何やってるんだろう?

明日会えるのが楽しみだ。

いや、にしても、もうちょっと分かりやすくできなかったのかな笑

配達されたダンボールの中によく入ってる、あんまり持ってても意味無いような紙かと思って、普通に捨てるところだったよ。

気づいて良かった~

ま、食料が沢山届いて、買い物に行く必要もなくなったし…



守里: よし、新学期の準備でもするか!



父との再会を心待ちにしながら、新年度の準備をして、その日は終わった。


◇◇◇◇◇


翌朝


朝日が登り、鶏の鳴き声が響きそうな頃…

守里の家の前で、制服姿の女性が仁王立ちしていた。



??: おーーーーい!!!守里!!!学校行くよーーー!!!!



大きな声が辺りに響き渡る。



??: (もう、まだ寝てるのか。起こしに行こ!!!)勝手に家に入っちゃうからねーーー!!!



??はカバンから鍵を取り出し、玄関の扉を開ける。


ガチャ



??: おっじゃましまーーーす!!



ドタドタ


足音を鳴らしながら階段を登り、沢山ある部屋のうちの守里の部屋に一直線に向かう。


ガチャ!!


ドアノブを壊すような勢いで、守里の部屋の扉を開ける。



??: (まだ寝てるのか…なら笑)オリャーー!!!



??は飛び上がり守里の寝ているベッドにダイブした。



守里: グハッ!!!


??: おい!!守里起きろーー!!



守里の上に飛び乗った??は守里の肩を掴み、めちゃくちゃに揺らす。



守里: 分かった、起きるから!!まず退いてくれ!日向子!!


日向子: はーい!


守里: もう朝からなんだよ、まぁまぁ痛かったぞ。


日向子: それはごめんって、でも起きない守里が悪いんだからね!!せっかく幼なじみが、一緒に学校行こって誘いに来てるんだから。


守里: いや、幼なじみでも、勝手に家に入ってくるやつはいないだろ。


日向子: それは私達が特別だからってことで許してよ笑


守里: …



こいつは"南雲日向子なぐも ひなこ"。

話にも出ている通り、僕の小さい頃からの幼なじみで、性格を一言で表すと「天真爛漫」って感じだ。

とにかく元気で明るくて、ずっと僕の隣にいる。

困っている人がいたら、助けずにはいられないような正義感の強い良いやつ。

でも、いかんせんバカだし、力の加減がわかってないんだよな。

僕が引っ越してからは、周りに他の家がないから問題ないんだけど、あいつのバカでかい声は中学の頃、地域住民から鶏の鳴き声扱いされてたぐらいだ。



日向子: ほら守里!さっさと朝ご飯食べて、学校に行こ!!


守里: はいはい、すぐに準備するから先に下に行ってて。


日向子: はーい!!



日向子はすぐに部屋から出て行き、階段を降りていった。



守里: ふぅ…朝から疲れるな笑



クローゼットを開け、制服を取りだし着替える。



守里: よし、行くか。



学ランとカバンを持って階段を下りる。

リビングに入ると日向子はキッチンに立っていた。



日向子: お、守里やっと来たか。この私が守里のためにチーズトーストを作ってあげたぞ!ほら早く食べろ!!!


守里: 笑、分かったから。ありがとな、日向子。


日向子: いえいえ。



まっこんな関係だ。


日向子と喋りつつ、朝食を食べ終え、その他諸々の準備を終え、玄関に向かう。



日向子: よし!!出発だーー!!!


守里: あんまり大声で騒ぐなよ。


日向子: はーい!!


守里: いってきます。



そう言って守里は日向子と共に家を出た。



日向子: そういえば守里!


守里: なに?


日向子: 昨日のわんちゃん特集見た?


守里: いや見てないよ。


日向子:めちゃくちゃ面白かったんだよね。特に子犬ちゃんたちが競走してるやつ。


守里: へぇー、ホント日向子は犬が好きだよな。


日向子: あ!いい事思いついた!!!行くぞ守里!!


守里: え?!


日向子: 学校まで競走だ!!!、負けた方は明日のお昼ご飯奢りだよ!!よーいドン!!!!!



そう言って日向子は走り出した。



守里: おいおい、嘘だろ!!



守里は呆れながらも日向子に遅れて走り出した


くっそ!あいつめちゃくちゃ足速いんだよな。



"伊衛能いえの高校"前



守里: やっと背中を捉えたぞーー!!!日向子!!


日向子: 負けないぞー!!守里!!!



二人は猛ダッシュしていた。


よしあともうちょっとでゴールだ!!!

お、あの後ろ姿は!!


道の先に1人で本を読みながら、とぼとぼ歩く小さな背中が見える。



守里: おはよーー!!飛香ーー!!!!


日向子:あ!ホントだ!!あっしゅんおはよー!!!!またねー!!!!!



2人は友達に挨拶をしつつ、全力でその横を走り過ぎる。



飛香: え…うん…おはよ。



いくぞ!!!ラストスパートだ!!



守里: うぉーーーーー!!!!


日向子: 負けるか!!!!



そのままの勢いで2人は校門を通り過ぎる。



「やったーーーー!!!」



勝負に勝ったのは…



日向子: 勝ったーー!!守里、明日のお昼奢ってね笑!!


守里: くそーーー負けた!!



あー疲れた、朝からこんなことするもんじゃないわ。

しかも負けたし。



守里: ふぅ…


日向子: ほらっ!!早くクラス割り見に行こうよ!!


守里: 日向子がいきなり競争を始めるから、こうなってんだろ。


日向子: そんなこと言うなら、わざわざ勝負に乗ってこなかったらいいじゃん!!


守里: いや無視したら、日向子めんどくさくなるでしょ。


日向子: なんだって~~!!


守里: この前なんか勝負を無視したら、永遠に後ろから脇腹小突いてきたじゃないか。


日向子: もう忘れました~


守里: あの時結構、辛かったんだからな。


日向子: そんなに言うならまたやってあげよう!!


守里: やらないで!!



そうやって言い合いを続けていると…



飛香: いつまで騒いでんの。新学期初日からみっともないよ笑


守里: 飛香か…


日向子: でもだってね、守里がね、日向子のことめんどくさいとか言うんだもん。


飛香: 笑、それは同感。


日向子: あっしゅんまでそんなこと言うのーー!!もう知らない!!!


飛香: まぁまぁ冗談だから、ね、守里もそうでしょ。



飛香から否と言わせないようなオーラのこもった視線が向けられる。



守里: え、うん、そうだよ。冗談だよ。日向子。


日向子: そっか笑、冗談か、なら良かった。ほら2人とも早くクラス割り見に行こ!!!



流石だな飛香、日向子の扱い方が完璧だ。



飛香: 分かったから。守里も行くよ。


守里: うん。



この子は"山室飛香やまむろ あすか"。

僕達は小学生の時に友達になって、そこから中高と同じ学校に通っている。

日向子とは真反対の性格で、クールで頼れる存在って感じかな。



守里: えーっとクラス割りが張り出されてるところはどこだ?


飛香: あそこに人だかりができてるから、そこにあるんじゃない?


守里: そうっぽいね。行こうか。


日向子: みんな同じクラスになれるかなーーウキウキ


守里: それだと色々と楽だからいいんだけどな。


飛香: まぁそうだね。


守里: にしても人が多いな、もうちょっと早めに来れば良かったか。


日向子: だから私は早く学校行こって言ってたんだよ、守里!


飛香: いや絶対そんなこと考えてなかったでしょ笑


日向子: うっ、バレたか…


守里: 俺が二人の分も見てくるよ、待ってて。


日向子 飛香: よろしく!




守里: えーっとどこかな…まずは女子の方から…



掲示板に貼ってある、クラス割りの大きな紙を、女子の方から、順に見ていく守里。

おっ!日向子の発見、1組か。

それに飛香の名前もあるな。

じゃあ、あとは僕のなんだけど。

苗字的に後ろの方にあるかな。



守里: よしよし、あった、あった。って僕も1組か。みんな同じクラスだな。




日向子:あ!守里が戻ってきたよ。


飛香: 守里、結果は?


守里: みんな同じクラスだったよ。


日向子: やったね飛香!


飛香: うん笑、そうだね。


守里: じゃ、教室行こ。


日向子: お先に行きまーす!!!



日向子は校舎の方に駆け出して行った。



守里: 流石、日向子だよな笑


飛香: だね。でもあの子クラス聞かずに行ったけど笑


守里: どうせすぐ戻ってくるよ笑、ほら…


日向子: 守里!!!私たちのクラスどこ!!!


飛香: みんなで行くよ、日向子!


日向子: はーい!!


守里: 去年は1階だったけど、今年は2階か。移動教室の時は楽だけど。行き帰りはちょっと面倒くさいかな。


飛香: だね。もう階段は疲れるよ。


守里: なにおばさん臭いこと言ってんの笑


飛香: ギロッ


守里: いやっ怖!


飛香: そうやって余計なことをすぐ口にするから、彼女が出来ないんだよ守里は!


日向子: そうだ!そうだ!


守里: うるさい笑、そんなこと言われても、勝手に口から出ちゃうからしょうがないだろ。


飛香: 治しなさいよ、その癖。将来変なことに巻き込まれるよ。


守里: 飛香が言ったら、実際に起こりそうだから、やめて。


日向子: もういいから、早く教室に行こ!!


飛香: ふん!


守里: ごめんって飛香、気をつけるから。


飛香: はいはい。



上履きに履き替え、階段を登って教室に向かった。




to be continued
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