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「とりあえず分かっているのは、魔石とは少し魔力を流すと、属性それぞれに決まった効果を発揮し、効果のオンオフが可能、という事ですね」

「水の魔石は水が出て~、火の魔石はそれ自体が発火するね~。雷の魔石もそれ自体にバチバチと電気を纏うよ~。土の魔石はだんだんと重くなっていくね~?途中で止まるから質で限界値が変わるのかも~。闇の魔石は黒い煙りが出るよ~。ただの煙りみたいで害はないみたいだし~、一定の範囲以上には広がらないね~」

「無の魔石は魔力を流しても何も起きないッス。単体では効果を発揮しないか、魔石を加工したりしないとダメなんスかね?」


  正直何をどうしたらいいのかがさっぱり分からん。手探りにも程がある。
  ポーションには最初からヒントがあった。魔物の灰を使う事もそうだが、そもそも薬草の使い方なんぞは、磨り潰して混ぜたり煮込んだりが大体だ。

  だが魔道具はノーヒントだ。
  ガワを用意して、魔石を動力のように扱うのかなという予想はあるが、まずその魔石に謎が多い。
  雷の魔石なんかは電池の様に使えば、何かの電化製品辺りが作れそうに思うが、じゃあ電化製品の内部構造が分かるのかというと、俺だけではなくオタトリオにもお手上げだ。

  そもそも魔道具という名前からして、単に魔石を使った道具ということなら、もっと単純な物が多いのかもしれない。暖房とか水筒とかなら水や火の魔石がそのまま使えそうだし、闇の魔石は単純に煙幕にいいかもな。土の魔石は……漬け物石か?

  ううむ……使い方によってはそれなりに便利な物もできそうだが、今求めている物はできそうにない。
  やっぱり街で調べるしかないか?俺としては魔法と同じように、無の魔石が色々と万能な力を秘めているんじゃないかと思うんだが。
  多分加工しないと効果が出ないのだろうが、そもそも加工の仕方が謎だ。

  錬金とかどうだろうか?最近のポーション作成でそれなりに上がってきたんだが。
  左手に魔石を持って錬金を意識してみる……特に何も感じない。困った時の魔物の灰はどうだ?って、灰を何に使うんだ。魔石に塗り込むってか?

  ふざけて灰を魔石に塗ろうと右手で摘まんだ時、錬金スキルに反応がきた。

  なんだ急に?……もしかして二つを同時に持ったからか?どうすればいいのかが何となく頭に浮かんでくる。
  一つ試してみるか。無魔法で属性魔法を起こすように、現象に対する知識を頭に思い浮かべながら、魔力を込めて灰を魔石に注入するイメージを……できた。それッ!


「うわッ!?」

「眩しいッス!!」

「何~?何が起こったの~?」

「すまん!ちょっと明るく設定し過ぎたわ」


  簡単な照明を作ろうと思ったんだが、加減を間違えた。もう一度魔力を流してオフにした。一度完成させたら他の魔石の様に、オンオフができるようだ。
  ただし修正は出来ないようなので、新しく、今度はもう少し明るさを抑えた物を作った。


「お~!流石兄貴ですね!」

「どうやったッスか?」

「これなら~室内でも安心して使えるね~。松明だと家事になる危険があるから~」


  オタトリオに説明をした。
  望む物が作れそうなことに四人で喜んだが、一つ気にかかる。魔物の灰って何なんだ?いくらなんでも万能過ぎないか?
  耐火レンガは混ぜれば割れなくなり、肥料にすれば植物の成長を助け、紙に使えば破れにくく漂白もされる。一貫性がない。

  まるでその時の願望を叶えてくれているかのような……まてよ?願望を叶える?……バカなと思うかもしれないが、一番真実に近い気がする。
  オタトリオと相談しよう。



  四人で考察してみたが、やはり願望を叶えるが一番しっくりくる。ただ、望んだ効果を生み出しているのは灰に込めらている魔力ではないか?
  何故なら無魔法だって知識と魔力を使い、知識に基づき、その時望む現象を起こしている。
  属性魔法にしても、火を起こしたい、風を吹かせたいという願いが、予め簡略化されたモノだろう。
  つまりこの世界では、対価になる魔力を支払えば、魔法と言う形である程度の望みを叶えられる……そういう事なのではないか?

  ただし、無茶苦茶な願いにはその分多く魔力を消費し、理にかなったもの程魔力消費が少ない。こう考えると色々とスッキリ纏まらないか?例えば、何も無い場所にいきなり金を出す、なんて色々な法則を無視した願いには、魔力がいくらあっても足りないが、空気中の水分から水を生み出す程度なら、科学的に簡単な事だ。

  無魔法は色々と知識は必要になるが、細かく設定できる手作りの服で、しかも原価が安い。
  属性魔法は知識は要らないし楽だが、決められた規格の中からしか選べないのに高い、市販の服。分かりやすく例えるとこうか?
  水魔法で水分を抜いたり、土魔法で鉱石を分離できたりは、属性内の規格の内なのだろう。

  魔石の場合も、属性魔石は既に決まった事が書かれた注文書で、無魔石はまっさらな、何も書かれていない注文書だ。それに注文を書き込むのに魔物の灰という特別なインクを使うんだな。

  魔物の灰については、やはり魔力部分が願った現象を起こしているのだと思う。ただ、少なく限りある魔力を補う様に、器の部分に当たる灰も、足りない素材の代用になってくれているのではないか?耐火レンガや紙作りで足りない素材があるのに、しっかり思い通りの物が出来ていたのは、灰が足りない部分を補完してくれていたからではないかと推察している。

  無魔石を錬金するのに灰が必要な理由はわからないが、二つ揃えば望んだ魔道具を作れる。今大事なのはここだ。
  あとは、ポーション作りも錬金ありきなのかもしれない。最初に錬金無しで作ったポーションの効果が、少ないが(微)と出ていたのは、回復草の薬効そのままだったのだろう。

  魔物の灰……質によって付与できる効果の高低はあるが、現段階でぶっちぎりのチート素材だな。謎はまだまだあるが。



  しかしこうなると無魔石の魔道具は、知識の有無がかなり大事だと思うんだが……ちょっと街にあるような魔道具がどんな物か、本格的に気になるな?この世界の科学知識が低いなら、このままいくとオタトリオが、とんでもない効果の物とか作りそうだし、比べる対象がないとやらかしそうで怖いんだが。

  それにしても、神ももう少し詳しく教えておいてくれればよかったのになぁ……と思うのはワガママか。でも頭使いすぎて熱が出そうなんだよ。
  だがまだ実験は残っている。はぁ……。



  次は色々と魔石のテストをしている。

  当然だが、大きな効果を付与した魔石は消耗が激しく、大きな魔石の方が保有魔力が多い事が直ぐに分かった。また、魔力が切れた魔石は砂の様にサラサラと崩れ、最後は空気に溶けるように消えてしまう事も分かった。
  恐らく魔石は、本来不可視である魔力が、魔物の体内で蓄積し、結晶化する程の密度で固められた物なのだろう。だから魔力が尽きると形が保てず消えていってしまう。

  そして灰を注入した無魔石は、元々は黒い石なのが灰色に変わり、魔力を消費し続けるとだんだんと黒く戻っていき、最後は他の属性魔石と同じように黒い状態で消えてしまう。
  これって魔石の換え時が分かって凄い便利だよな?元々魔石は魔力の塊だから効果を絞れば長持ちするし、魔石取り換え式の魔道具を作るのが良さそうだな。



  方針が決まったので魔道具作りの開始だ。

  魔道具をついに作ると聞いて、手の空いている者も集まってきた。生活を便利にする物を作るという事で、皆がかなり張り切っている。
  色々意見が出そうで忙しくなりそうだなぁ。
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