おいしい狩猟生活

エレメンタルマスター鈴木

文字の大きさ
上 下
26 / 39

26

しおりを挟む
  拠点周りの木々の間引き範囲を広げながら、木を運びに帰ってくる度に、訓練中の者の悪い所を指摘して矯正いく。
  自分が祖父に学んだ時を思い出しながら。



《新しいスキルを取得しました》

指導:1  new



  おお?魔物からの吸収以外では初めてだな。
  こうやって行動で覚える事の方が普通なんだろう。

  指導の効果は、自身の指導を受けた者が、その受けた指導の内容に関連するステータスやスキルが上昇しやすくなる。
  というものだ。

  今の状況にうってつけだな。



  昼だな。
  折角だし、新鮮な蟹を食べよう。
  ハサミにも足にも、殻には穴が空いていなかったし、寄生虫の類いは居なさそうだ。
  足の一本は生の刺身にしてもいいかもな。

  ハサミを鍋で、足をそれぞれ焼きと生にする事に。
  関節部分から少しずつ割るのが大変だった。

  鍋の具材は、蟹以外では椎茸やネギ、春菊だけの簡単な物だ。

  焼き蟹も刺身も、醤油が無いので塩で。
  それでも、蟹その物の味が良くて十分だ。
  流石魔物素材!

  皆でどの食べ方が好きか、ワイワイ話しながら食べる。
  黙々と静かに食べる蟹もいいが、今の俺達にはこうやって騒いで食うのが相応しい気がするな。



  午後からは的に当てるのが上手い者を中心に、俺が所謂トレインで引っ張って来た兎を一斉に射たせる。
  いきなり速く動く獲物は難しいので、デバフ攻撃のある闇魔法で動きを遅らせる。

  やや反則気味だが安全がかかってる。
  食糧も減ってきたので、兎狩りは丁度いい。



  矢や投げ槍を当てるのが上手い者の中には、早速だがスキルを取得した者も表れ始めた。
  女性陣にも生産系スキル取得者が出始めている。

  まだ未取得の物は入手しやすいのだろう。

  皆の平均ステータス能力値も調べてみた。



【ステータス】

体力:C
魔力:F
筋力:D
耐久:D
魔攻:F
魔防:E
技量:C
速度:D
反応:C
努力:B



  こんな感じだ。
  正直、よくわからん。
  前の世界では無かったものだ。
  俺のステータスも含めて、余り当てにはしないでおこう。
  どうせステータスが高くても死ぬときは一瞬だ。

  ただ有用なスキルは積極的に取りにいかせたい。
  身体強化などはその最たるものだ。

  兎では取得できないようだし、街方面に良さそうな魔物が居ないか、少し調べてみるか。



  夕飯が済んで食休み中。

  午後は果物採取に木々の間引きと訓練の指導に費やした。
  拠点周辺は適度に緑を残しつつも、かなりの距離まで見張らしが良くなった。
  本日完成した物見櫓も相まって、魔物の発見は更に早まるだろう。

  そんな事を考えていた訳ではないだろうが、街方面から拠点に向かって、複数の魔物が接近しているという知らせが見張りから届いた。
  見張りが見た目から判断したところ、ファンタジーの有名モンスター第二段。

  ゴブリンのようだ。



  既に柵の側に弓を持った者や投げ槍を持った者が集まりつつあった。
  弓はあれから更に増え五十張りになっている。

  もしもこいつらの知能が高かった場合、陽動の可能性がある。
  全員がこちら方面に掛かりきりはまずいので、別方向への警戒にも何人か別けた。
  物語では見知っていても、実際に遭遇するのは初めての魔物だ、油断なく行こう。


「横に三十人並べ。こちらから点呼!  奇数は第一射目、偶数は二射目に分ける。木々の途切れ目までは弓を交代で射て。
  そこから更に接近されたら投げ槍に持ち替えて投擲だ。それでも死なない個体がいたら俺が始末する」


  初見の敵で強さがわからない為何とも言えないが、数はみる限り十二体と多くはない。
  俺の出番は無いかもしれない。


「もう少し待て。鳴子に引っ掛かって、音に驚き動きが止まった時に一射目だ。……よし射て!」


  ガラガラと鳴子の発する音に驚き、その場でアタフタとするゴブリン達に、奇数組の矢が飛来する。
  三体程、頭と心臓に当たり死んだ様だが、残りは腕や足に当たりはしたがまだ生きている。

  すかさず二射目が放たれた。
  更に五体が死に、残りは四体に。
  その四体にしても足に矢が刺さり立つことが出来ていない。
  後は狙い射ちで確実にいけ。



  戦闘後、トドメ判定を獲得した十二人が身体強化を取得した。
  熟練度は一と低いが、身体能力はそれなりに上がっている。
  だが身体強化は、元々のステータスによって補正に大きな差が出るようで、俺ほど劇的に変わった者はいないようだ。
  それでも今の状況では頼もしい戦力となってくれるだろう。



  気になるのはこのゴブリン達、どうも何かから逃げて来たようで、矢傷以外に無数の痣や、恐らくは爪によるものだろう裂傷も見られる。

  街方面で何らかの異変があった。
  そういうことなのかもしれない。

  これは拠点の防衛機能を更に拡張した方が良さそうだな。
しおりを挟む
感想 149

あなたにおすすめの小説

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

双子の姉妹は無双仕様

satomi
ファンタジー
双子の姉妹であるルカ=フォレストとルリ=フォレストは文武両道というか他の人の2~3倍なんでもできる。周りはその事実を知らずに彼女たちを貶めようと画策するが……

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

アリステール

public p
ファンタジー
死んだことは覚えてないけど知らない世界にいた 格が足らないから鍛えなおしてきなさいと言われ地球とは別の世界へ生まれなおすことになる ゲームみたいな世界で動力とかいう力があるらしい? わからないことだらけだけどなんとかするしかない。そんな主人公アリスの物語 ※小説家になろう で同時更新中 -----以下の情報は■■■■■に監視されています----- 管理とは? ■■■■■はその存在すら知覚できないほどの上位生物により作られました 地球の■■■■をはじめに、動力があり未知の生物が跋扈する■■■■、地球の前身とも似た■■■■■が管理されています 生物の核をなす魂、その魂そのものが■■■■■を死による転生をもって渡り歩き、魂の価値を高めていくために行われます

素直になる魔法薬を飲まされて

青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。 王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。 「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」 「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」 わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。 婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。 小説家になろうにも投稿しています。

1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~

鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合 戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる 事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊 中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。 終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人 小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である 劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。 しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。 上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。 ゆえに彼らは最前線に配備された しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。 しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。 瀬能が死を迎えるとき とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

処理中です...