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  そろそろ時間だ。起きよう!
  しかし少し寝るだけでもスッキリするなぁ。
  出発前に元移動組を入れて改めてミーティングだ。
  色々擦り合わせしとかないとな。



  拠点予定地までは二十分程かかる。子供の足もあるから多少は延びるが。

  俺が先頭で感知を全開に警戒、何かあればステータスに任せて速攻で対処する。
  それを前提にしながらも、油断無く女子供は真ん中に、両サイドと殿を男性陣で守りながら進む。

  列が長くなりすぎるから本当は数度に分けたいんだが、向こうで待機してる間に何かあると困る。色々大変なのは承知で、一度に移動しきる事になった。

  とりあえずまず飯にしよう。
  特に男性陣は昨日ろくに食べてない者ばかりだ。しっかり肉を食わせよう。



  古い物から順番に食べようか。  先ずは昨日用意しておいたワニ肉だ。
  ニラの匂いと海水の塩気が染みている。熱した石にココナッツオイルを引き、焼く。
  いい匂いだ。
  待っている間にサケの身のオイル和えを各々摘まんで貰う。ワニもそうだが海水直漬けだからな。ちょっとにがりの影響がキツイかもだが、十分食える。

  皆の食事中に、俺は弓を作っている。俺のメインウェポンだ。
  地球では一番使っていたが、こちらでは今まで加工できるナイフも弦も無かったからな。

  石斧振ってろや原始人とか言った奴は、後で狩りの囮役な。

  今は間に合わせの簡単な物だが、ちゃんと弓に適したイチイの木製で、弦はボス狼の腱を加工して作った。
  かなり強力な弦になったので、カテゴリは強弓だ。非常に俺好みになったので満足。
  不意打ちで遠くからドスッ!これが一番だ。

  銃?知らない子ですね。

  矢は矢竹が無いので普通に乾いた枝で、火で炙りながら真っ直ぐに矯正し、矢羽は野鳥の羽根を使ってある。ついさっき急いで投げナイフで仕留めた。お肉も勿論美味しく頂きますとも。
  鏃はサケとワニの牙の中から、薄めで鋭角な二等辺三角に近いものを選んである。
  枝の先端に切り込みを入れて鏃を挟み、フミ婆がココナッツファイバーで紡いだ強い糸でキツく縛ってある。
  今できる精一杯の品だ。

  さて、全員食べ終わりそうだ。俺も急いで済まそう。

  女王蜂の姿焼きを食べてたら皆にドン引きされました。美味いのに!



「体調の悪くなった人は直ぐに申告するように!」


  移動を開始した。
  それぞれに必要な物を持ち、俺の水魔法と塩とハチミツで作った、即席の経口補水液をココナツ水筒に入れて肩から紐で下げている。

  男性陣が率先して重いものを持ってくれたのは助かるな。それにやっぱり男手が多いと女性陣が安心できるんだ。戻ってきてくれて助かるよ本当。

  順調に進んでいたが感知に反応が。角兎だ。

  丁度いい。鍛練と並行して、弟子と子分の強化もしていくつもりだったんだ。仕留めさせよう。

  本当はしっかりと基礎を仕込んでからのつもりだったんだが、予想以上にこの世界が危険な事と、俺以外にもきちんとした戦力が早めに欲しいため、魔物から力を吸収させようと考え直した。
  いきなり強くなっていい気にならないように、俺がきっちり指導するつもりだ。


「では剣道有段者の楓から、一撃で仕留めるつもりで、殺れ」

「はい!ゲン師匠!」


  刀なんて今はないから、楓には薙刀を持たせてある。
  先が狼の爪だから反りは逆になっているがな。……長い草刈り鎌とか言うな。薙刀と言ったら薙刀だ!

  万が一に備えて、直ぐに手が出せるように近くに待機。  よし、静かにな?


「チェヤァァァァー!!」

「自分から気付かせるバカがあるか!」


  当然兎は気付いて迎撃態勢に。牙を剥き出しにして威嚇している。
  ……こいつは狩猟じゃなくて警備巡回に回すつもりで育てよう。決定。

  それはともかく戦闘の結果は?角で刺そうと兎は頭を突き出し跳躍したが、楓は角を見た時からこの攻撃方法を予期していた様で、すんなりと避けることに成功した。

  そして後には木に角が突き刺さって、バタバタともがく間抜けな兎が残った。……魔物って意外とこういうの多いよな。
  何とも言えない顔で楓がトドメを刺したところで進行を開始した。
  他の子らにも後々場を整えよう。



  その後は何事もなく無事到着。真っ先に蛇を確認したが無事だった。よしよし。

  皆それぞれやれる事を探して、行動を開始し始めている。大体の事は事前の会議で決めてあった。


・整地、トイレ掘り、拠点防衛の掘と柵の設置。

・雨風を凌ぐ小屋を建てる。上空へのカモフラージュを忘れずに。

・赤土を使った土鍋を作るための窯を作る。

・見晴らしをよくするため、周囲の木を間引きする。

・風呂を作る。


  先ずはこれだけ。
  今日は俺も拠点の方に時間を割くつもりだ。

  穴掘りは男手があるので、中々捗っている。
  魔物の肋骨部分をピックにして木と組み、地面を穿ち柔らかくするグループと、柔らかくなった部分をスコップ型に削った木で掬い、ココナツの外皮のボウルに詰めるグループ。
  そして女の子達はそれを窯と住居作成地に運ぶ。

  一つの生物のように、もくもくと動く様はちょっと怖い……言わないが。

  ちゃんと水分はとるんだぞ?



  周囲の木の間引きは俺だけの仕事だ。逆に人がいると危ない。
  引っこ抜いて担いで運ぶからな。
  引っこ抜きでも伐採スキルの効果が乗っているようで、ステータスも相成りズボズボと根ごと綺麗に抜ける。

  以前の様な木々が犇めき合い、暗く、魔物が隠れやすそうだった場所が、適度に間引かれ広くなった空間に日の光が差し込み、見晴らしがよくなってきている。
  なんということでしょう。

  そしてオタトリオに魔法について相談した時に教わった魔法が、ここで大いに役に立つ。

  水魔法は水を操る。

  なら木から水を抜くこともできるのではないか?
  試した結果、出来ました。

  これは大いに役に立つ。木を枯らして、直ぐに使える建材その他を増産できる。
  しかも消費魔力が少ない。無から有を産み出すのではなく、元々ある物を利用しているからだ。

  ついでに樹液や樹脂も余さず吸い出し回収。

  ついでとは言ったが、その効果は高い。例えば白樺の樹液は湿疹などの病気や、便秘や美容にもいいし、更に飲みやすい。女性陣に喜ばれるだろう。
  樹脂も塗料や接着剤、他にも色々用途がある。

  木も生き物だ。無駄にはできない。



  今用意した木を持って行くついでに、一度窯の様子を見てみるか。
  それともうすぐ十時頃か?一度皆に休憩を入れてもらおうか。
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