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「神様、質問があります!」


  例の学生達の中の一人が代表して質問するのだろう。元気よく手を上げながら神に声を掛けた。


「なんだね?我に答えられる事ならよいのだが」

「あの、こう何と言うか、特別な力とかは貰えたりしないんですか?凄い魔法が使えるようになったり、物凄い剣の達人になったり!」


  やっぱりか。所謂チートな能力を貰いたいんだろうが…。多分無理なんじゃないかな。


「君の言っているのは、チートと言うものの事だろう?そちらの世界の神々に情報を貰っている故、そういった知識は既に得ている。そして先程の質問の答えだが、我にはそのような力を与える事は不可能だ」

「え!?何でですか!?」

「この世界には確かに魔術や武術のスキルが存在する。スキルを習得する事で様々な力を行使する事が可能となる。だがそこで魂の話に戻るのだが、スキルとは魂に紐付けされているものなのだ。繰り返し魔術や武術を学び、訓練する事で魂にスキルとして刻み込まれるのだ。
  他にも魔物を殺す事により魂の力を吸収し、その魔物のスキルを取り込むといった方法もある。ただし吸収出来るのは魔物だけで、魔物ではない動植物や人からは吸収できないがな。何故なのかは分からぬ。世界がそうあるからとしか言えぬ。
  さて、ここまでの話でもうわかったであろう?我々神々でも魂には手を加えられんのだ。当然ながら魂に紐付けされるスキルを与える力など、我々には無いのだ」

「じゃあ魂ではなく肉体は!?肉体を強化する事はできるんじゃないですか!?」

「肉体を強化する事は可能ではある。ただし限りなく無意味だ。それどころかマイナスでしかない。例えば我が君の肉体をオーガのように強靭にしたとしよう。だがその強靭な肉体はほんの数日で消え去り、代わりに魂の力以上に無理矢理強化された事で、その反動を受ける事になるのだ。死にはしないが暫く激痛が襲うだろう。
  詳しく説明すると、肉体の強化は魂に蓄積される努力値によって上限が決まるからだ。身体を鍛えた時の努力、魔物を苦労して倒した努力などが魂に蓄積され、その努力値分だけ肉体の強化できる上限が上昇していくのだ。だから我が無理矢理上限以上に肉体を強化しても、すぐに上限から溢れた力は減少し、その溢れた分だけ肉体に痛みをもたらしてしまうのだ。
  逆に魔物を倒して努力値を貯め、肉体の強化上限を上げたとしても、身体を鍛える鍛練を行わなければ何時までも肉体の強さはそのままだ。何故なら魔物を倒すだけでは上限を上げるだけだからだ。
  つまり一番良いのは素直に鍛練を行う事なのだ」

「そんなぁ…」


  まぁスキルの話は置いといても、努力せずに楽して強くなろうなんて甘すぎるな。
  そもそも糞ドラゴンから助けて貰ってるんだ。これ以上の何かを求めるもんじゃないな。
  ただどうしても聞いておきたい事がある。俺も質問してみよう。


「質問、いいですか?」

「何かね?」

「魔物って食べられますか?」


  …なんだ?すすり泣きやヒソヒソ話す声が止まってシーンとしだした?ありゃ、神様まで固まってる?何故だ!


「あの?」

「あ、ああ。魔物を食べられるか、だったな?勿論、食べられる。しかも大体に置いては普通の動植物よりも、魔物の方が味が良いとされている。例えば家畜の牛、豚、鶏よりも魔物のミノタウロスやグレートホーン、オークやグリンブルスティ、ミサイルペッグ等の方が遥かに味が良いとされる。植物系魔物についても同様だ。
  それとドラゴン等の高位の魔物はとてつもない美味とされている。強さや内包する魔力に美味さが比例しているようだな」


  おお!?これは朗報だ。気合いが入るな!
  しかし、ドラゴン?…あの時の赤糞飛びトカゲが、とてつもない美味?なるほどなるほど。

  俺の異世界狩猟生活の、とりあえずの目標が決定しました。
  あの野郎を必ず狩って食ってやる!美味しく頂いて、あの腐った性根を俺の腹の中で反省させる。必ずだ!

  それと気になる点があった。ミノタウロスやオークは人型だが食べれるのか。豚は綺麗好きって言うし、小説のイメージのように臭くは無いのかもしれない。ならば否はない。見つけたら狩って、美味しく頂こう。それとまだ聞きたい事がある。


「では不味い魔物もいるのでしょうか?もしいるのなら、どんな魔物がそれに当たるのか教えて頂きたいのですが」

「不味い魔物もそれなりに存在する。ゴブリンやコボルト等の人型は、オークのように綺麗好きではないため、大体が酷い臭いで味も悪い。ゾンビ等の不死系やスライム等の不定形も、一部例外はあるが食えたものではないだろう。それとゴーレムなどのそもそも食せない魔物もいる。しかし、君は何故こんな事を聞くのだ?」

「いえ、食べないのに命を奪うのはどうかと思いまして。初めからそういう知識があれば、無駄に散らす命を減らせるかな、と」


  糧を獲るために殺す。それ以外の殺生はなるべく少ない方がいい。そう思っているのだが…。


「その考え方は我としても好ましく思うが、魔物相手にその考えは無用だ。君達の世界には心優しい魔物が登場する話もあるようだが、この世界の魔物にはそんな甘い話は一切無い。この世界の魔物は殺戮衝動や破壊衝動の塊なのだ。人間など目にすれば即、殺しにかかってくるぞ?普通の生物と同じと考えて慈悲の心など掛けようものなら、自分や周りの人間の命を危険に晒す事になる。それに魔物は生殖によって増える以外に、魔力溜まりから僅かに自然発生もするのだ。昨今は数が増えすぎているくらいだし、魔物を倒せば自身の強化にもなる。積極的に狩るべきだ」


  少し考えが甘かったか。まさか魔物がそんなに狂暴な存在だとはな。地球の生物と同じとはいかないか、そりゃ。
  身勝手だとしても自分の命には代えられないしな。せめて無駄に苦しめたりせずに、いつものように素早く仕留めるようにしよう。


「うむ、良い目だ。決断も早くて良いな、君は。
  それといい事を教えよう。食するのに向かない魔物達にもその死を無駄にしない方法がある。魔物にはそれぞれ有益な素材となる部位があるのだ。先ずは魔石、これはどんな魔物にも存在し、大体は心臓の近くに埋まっている。魔石は様々な魔道具の燃料になるし、街で売って資金にするのもいいだろう。他にもゴブリンの角は磨り潰せば低位の風邪薬となる。コボルトの毛皮は水を弾くため、雨具に向いているし、スライムのジェルはよく燃え、火も長持ちするため松明等に適している。
  そしてコレが一番君の考えに寄った答えだと思うが、燃やすことが可能な魔物を燃やし残った灰は、例外なく畑などの肥料に適する。それに魔物それぞれのランクにより効果の高低はあるが、灰はポーションに使う材料として欠かせない物なのだ。
  どうだね。多少は心が軽くなったかね?」

「はい。ありがとうございます」


  既に覚悟は決めた後だったが、いい事を教えて貰った。無駄を出さないよう努めよう!
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