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5 男爵令嬢の憎しみ
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王太子がシンシアにチェリーボンボンを贈ったという噂はあっという間に王宮を駆け巡った。
「やっぱり、最後は公爵令嬢のシンシア様に軍配が上がるのよ」
「なにせ王国に豊穣をもたらす伝説の令嬢ですもの。何の取り柄もない男爵令嬢が勝てるはずないわよね」
王宮の端端で噂話がもちきりだった。
この状況が面白くないのは男爵令嬢のケリーだ。
王太子の部屋を訪れたケリーはさっそくあの話を探り始めた。
「殿下…チェリーボンボンをシンシア様に差し上げたそうですね?」
「ああ…ただの気まぐれだよ」
「私も欲しいですわ、チェリーボンボン」
王太子の袖をそっと引き、斜め下からじっと見上げた。
男どもは私みたいな可憐な女の甘えた姿が大好きなのよ。
ねえ、ほら。
だが、王太子はケリーの手をさりげなく袖から離した。
え…?
シンシアは動揺した。
私の手を、離した?
王太子はそのままひとりで窓際へ移動した。
窓からは庭園の女神像が見える。
「そうだ、ただの気まぐれだ」
女神像を眺めながら王太子はシンシアを思い浮かべていた。
何かがおかしい。
王太子の様子にケリーは嫌な予感がしていた。
まさかと思うけど、あのシンシアとかいう女、殿下に取り入れ始めたの?
「殿下…?その…私の口から言うのもアレですけど、婚約破棄のお話は進んでいますの?」
「ああ…そうだな…どうだろうな」
気のない返事だった。まるで上の空。
「殿下!?」
こちらを振り向きもしない…!
ケリーは確信した。簡単に蹴落とせる相手だとあなどっていたけど、シンシアという女はかなりしたたかな相手のようだ。
負けるものですか…!未来の王妃になるのは私よ!!
私がそのためにどれだけ策略を練ってきたか!思い知らせてやる!!
ケリーの童顔で可愛らしい茶眼に憎悪の火が宿った。
「やっぱり、最後は公爵令嬢のシンシア様に軍配が上がるのよ」
「なにせ王国に豊穣をもたらす伝説の令嬢ですもの。何の取り柄もない男爵令嬢が勝てるはずないわよね」
王宮の端端で噂話がもちきりだった。
この状況が面白くないのは男爵令嬢のケリーだ。
王太子の部屋を訪れたケリーはさっそくあの話を探り始めた。
「殿下…チェリーボンボンをシンシア様に差し上げたそうですね?」
「ああ…ただの気まぐれだよ」
「私も欲しいですわ、チェリーボンボン」
王太子の袖をそっと引き、斜め下からじっと見上げた。
男どもは私みたいな可憐な女の甘えた姿が大好きなのよ。
ねえ、ほら。
だが、王太子はケリーの手をさりげなく袖から離した。
え…?
シンシアは動揺した。
私の手を、離した?
王太子はそのままひとりで窓際へ移動した。
窓からは庭園の女神像が見える。
「そうだ、ただの気まぐれだ」
女神像を眺めながら王太子はシンシアを思い浮かべていた。
何かがおかしい。
王太子の様子にケリーは嫌な予感がしていた。
まさかと思うけど、あのシンシアとかいう女、殿下に取り入れ始めたの?
「殿下…?その…私の口から言うのもアレですけど、婚約破棄のお話は進んでいますの?」
「ああ…そうだな…どうだろうな」
気のない返事だった。まるで上の空。
「殿下!?」
こちらを振り向きもしない…!
ケリーは確信した。簡単に蹴落とせる相手だとあなどっていたけど、シンシアという女はかなりしたたかな相手のようだ。
負けるものですか…!未来の王妃になるのは私よ!!
私がそのためにどれだけ策略を練ってきたか!思い知らせてやる!!
ケリーの童顔で可愛らしい茶眼に憎悪の火が宿った。
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