亡命聖女─アンデッドを祓える力は内緒だけど、隣の大陸の王陛下が溺愛してくる

nanahi

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43 豹変

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自分を可愛がってくれた院長のことをローザリアはバルクレーにも話したことがあった。これをバルクレーは利用したのだ。

ナシン王国はザーラ王国の属国になっていたので院長と話をつけることも容易かった。

もちろん、孤児院に戻すなどというのも嘘だ。バルクレーは、取り戻したローザリアは一生自分のそばに置くつもりだった。


「院長先生、助けたい」


大切な人たちが命の危険にさらされているのをローザリアは放っておけなかった。ユークリッドはざっとバルクレーの手紙に目を通し、最後のページが院長からのメッセージだと理解した。


「ナシン王国、行く」

「ダメだ!バルクレーの罠だ!」


泣いて取り乱しているローザリアを抑えながら、ユークリッドはローザリアに言い聞かせようとした。


「嫌!会いたい!院長先生、会いたい!」


ローザリアは幼子のように駄々をこね泣き叫ぶ。


「どうして言うことを聞いてくれないんだ!?」


僕に従った方が安全なのに。ユークリッドはローザリアに初めて腹の底から苛立ちを覚えた。


”コントロールしなければならない”


ふいにユークリッドの脳内に誰とも知れない声が降りてきた。

ユークリッドは頭が締め付けられるような強烈な圧迫感を感じ、思わず頭をおさえた。次第に目は血走り、酔ったような感覚が全身を包む。


”自分のものにしなければならない”

「自分のものにしなければならない」


操られたようにユークリッドは脳内で響く声をそのまま口にした。ユークリッドの異変にローザリアが気づいた。


「陛…下?」


ユークリッドの顔を恐る恐る覗き込んだ途端、ユークリッドはローザリアの両腕を乱暴に掴み、そのまま文机に押し倒した。ローザリアが驚いた目を向けるとユークリッドは狂気に満ちた目で自分を見返した。


「言うことを、聞け」


陛下が豹変した──!


ローザリアはこれまで暖かい光を放っていたユークリッドが冷たく真っ黒なものに変わってしまったと悟った。


「君は、僕のものだ」


ユークリッドは感情のない声音で囁くと、ローザリアの唇を奪おうと顔を近づけていった。





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