亡命聖女─アンデッドを祓える力は内緒だけど、隣の大陸の王陛下が溺愛してくる

nanahi

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82 運命

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かつてクシュマトハ王国はアンデッドを統べ、恐怖で大陸を支配した。
だがローザリアが構想するユートピアは、アンデッドが人を襲うことなく、一緒に暮らしていく。そんな温かい国だ。

無論、モンスターとの共存という選択に対して、他国から非難の声が上がることも少なくなかった。


私に務まるのだろうか。人とアンデッド双方を統治していくことが。
万が一またアンデッドが暴走などしたら、次の惨劇を呼ぶことになる。


今更だが、国のことを考えると、その重圧の大きさにローザリアの手は小刻みに震えた。


「怖いのか?女王よ」


そんな新人女王ローザリアを見て、イヴァーシュケが声をかけてきた。腹の包帯が痛々しいが、アンデッドには人間以上の治癒能力があり、戦闘の傷もだいぶ癒えてきたようだった。


「どうして私、こんな運命、与えられた?」


ローザリアがぽつりと呟くと、イヴァーシュケはひょうひょうと答えた。


「その運命を受け止められないんだっら、無理に受け止めなくていもいい。その辺に転がしておけ。そのうち、運命と共に生きることが当たり前になるから」


その言葉にローザリアはポカンとした。運命を転がしておけ、なんて自分にはない発想だった。


「ふ…」


ローザリアは思わず吹き出した。イヴァーシュケはなぜ笑われているのか不思議なようだった。ローザリアは楽観的な忠臣の言葉に気持ちが軽くなったのを感じた。


そうだ、前例のない国づくりに正解はない。
正解は自分たちで作るんだ。


「イヴァーシュケ…ありがとう」


改めて運命を受け入れる覚悟ができたローザリアはイヴァーシュケに礼を言った。


「俺たちはアンデッドになった運命をちっとも後悔してない。だって、アンデッドの方が人間よりずっと自由だ」


そう言って大きく手を広げたイヴァーシュケは、いたずらっぽく片眉を上げ、ローザリアに微笑んだ。


「そうだ、俺が隣の大陸のアンデッドを引き取りに行こう。普通の人間では手に余るだろうからな」

「行ってくれる?」

「もちろんだ、女王。タランティア、久々の船旅だぞ。楽しみだな」

「はい。イヴァ様」


この時、出会って以来ずっと氷の彫像のようだったタランティアの表情がわずかにほころんだことを、ローザリアは見逃さなかった。






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