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9 ネイブ宰相
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赤い夕日が地平線に溶けようとしている。
王宮の外、塀の陰で二人の男が立ち話をしている。
「ソロ侯爵、あのことをバラされたくなければ、私への支援、重々頼みましたよ」
切れ長の目の美形の青年が年配の侯爵を脅している。
この青年はネイブ・シア・ドット。知略に長け、ドット伯爵の妾の子ながらも異例の出世を遂げ、若干25歳にして宰相に着任した男だ。裏でかなり手を汚し今の地位を手に入れたともっぱらの噂だった。
その美貌からネイブに恋する令嬢も少なくなかったが、彼が垣間見せる無機質な冷たさに身を引く者も多かった。
弱みを握られたのか何も言い返せないまま、ソロ侯爵はそそくさと逃げるようにその場から去った。
「ふん、ちょろいもんだな」
ネイブは冷たく光る銀眼をソロ侯爵の丸まった背中に向けた。
「貴族たちの攻略まであと一息だ。ユークリッド、王座にいられるのもいつまでかな?」
ネイブは愉快そうに銀色の髪をかきあげた。
「退屈な執務に戻るか」
ネイブが人目のつかない裏口から王宮に戻ろうとした途中、庭園の隅で三人の影と遭遇した。ユークリッドとレオだ。
「おっとこれは陛下──」
一礼をしたネイブが二人の後ろにいる見知らぬ少女に気づいた。
「陛下、こんな時間にここで何を?その令嬢はどちらの?」
ユークリッドはネイブの問いに心なしか動揺して見えた。代わりに答えたのは二人の前にさっと出たレオだった。
「彼女はローザリア嬢。亡き先王様の古い知人のお嬢様です。お体が弱くこの地で養生したいとのことで、離れで静かに過ごして頂いています」
「そうでしたか。それは失礼しました。ゆっくり養生されてください」
視線をずっと落としている少女が一瞬ちらとネイブの銀の髪を盗み見た。だがすぐに目を逸らし、ぎこちなくネイブに会釈した。
王宮の外、塀の陰で二人の男が立ち話をしている。
「ソロ侯爵、あのことをバラされたくなければ、私への支援、重々頼みましたよ」
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「貴族たちの攻略まであと一息だ。ユークリッド、王座にいられるのもいつまでかな?」
ネイブは愉快そうに銀色の髪をかきあげた。
「退屈な執務に戻るか」
ネイブが人目のつかない裏口から王宮に戻ろうとした途中、庭園の隅で三人の影と遭遇した。ユークリッドとレオだ。
「おっとこれは陛下──」
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