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11 冷たい王女

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王太子は王女を星の館のうち五等星の間に入らせることにした。

ブランカは王妃候補が入る一等星の間だ。そうしなければ、アンダルケが納得しないだろうことはわかっていた。

五等星の間はブランカの居室から一番遠い位置にある。マール家の嫌がらせから守るため、あえて位の低い部屋に移したのだ。


「そういえば王女はいつから床に膝をつかされていたのだ」


王女付きの侍女を呼び出し尋ねると、侍女は声を震わせて答えた。


「まる30時間にございます」

「なん、だと……!?」


侍女が口を押さえながら続けた。


「王女様は微動だにせずお耐えになり……でもそのせいで、両膝が腫れ上がってしまわれて」


侍女が、いくら蛮族の姫様だとしてもおいたわしい、と言って泣きだした。

王太子は王女目がけて自室を飛び出した。


∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵


王女は寝室で眠っていた。
顔色が悪い。
王太子は王女の手を取った。


氷のように冷たい──!


「冷え切っているではないか! もっと布団をもて!」

「それが、いくら温め申し上げても、一向に体温が上がらないのです」


侍女がストーブを持ち運びながら、オロオロと答える。
確かに毛布や掛け布団がこれ以上無理なほど、王女の上に積み上がっている。

王女は目を固く閉じたまま、ただ細い息をしている。


何とかしなければ。


「至急、私の主治医を呼べ!」

「はっ、はい!」


周囲がバタバタと動き回る。
王太子はおもむろに自分の上着を脱ぎ、王女の隣に滑り込む。
皆はギョッとした顔で王太子の方を見るも、あえて見ないフリをし始める。


「王女……守りきれず、すまなかった」


冷たい王女の体を布団の中で抱き寄せる。
王女は反応しない。


頼む、回復してくれ……!


王太子は初めて神に本気で祈った気がした。
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