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第25話 試験結果
しおりを挟む 罰ゲームありの勝負を受けてからというもの、俺は本気で頑張った。
二週間ゲームは完全に禁止し、家に帰れば勉強と家事に没頭する日々。
レナの応援を受けながら、最大効率で勉強した。
ちなみに、レナの応援は演歌を熱唱するという非常にうるさいものだったので、初日に止めさせた。
それからは簡単なお菓子を作ってくれたりして応援してもらっている。
当たり前だけど、レナの作るお菓子はめっちゃうまかった。
そして迎えたテスト当日。
前日はしっかり八時間眠って、脳みそを最大まで活性化させている。
俺はもともと勉強ができるほうだし、日々の復習を欠かさないタイプだ。
そのうえで二週間みっちりと勉強してきたので、完ぺきに仕上がっていると言っても過言ではない。
実際、テストはすらすらと解くことができたし、確実に学年十位以内に入っているだろうという手ごたえを感じていた。
「できれば五位以内に入ってればいいんだけどな……」
『あれだけ頑張ったんだから、海斗なら大丈夫よ』
掲示板に試験結果が張り出された当日。
それを確認しようと群がる生徒たちの後ろのほうで、俺は顔を強張らせながら天に祈りをささげていた。
レナはポジティブ思考のおかげか、気楽そうに宙でくつろいでいる。
自分の順位を見てきゃあきゃあ騒ぐ者。もしくは肩を落とす者。
やがて前のほうにいた生徒たちがはけ、俺たちは掲示板に近づいた。
順位を下のほうから見ていく。
ない、ない、ない、ない……。
学年順位は上位二十位以内の者だけ名前付きで結果が張り出されている。
ない、ない、ない……。
十位から二十位の間に、俺の名前はなかった。
ない、ない……。
ゆっくりと上を見ていくが、まだ俺の名前は見当たらない。
ない……。
そして――。
「……あった」
やっと、見つけた。
上から二番目に『西崎海斗 平均点96点』と張り出されているのを。
『すごいじゃない、海斗! 今日はお祝いね!』
「……だな。ハンバーグでも作るか」
『やったー! ハンバーグ食べれる~! ふんふふ~んふふ~ん♪』
喜びを噛みしめながらそう言えば、レナは一気にテンションがマックスになった。
子供のように無邪気にはしゃぐ姿が可愛らしかった。
◇◇◇◇
帰宅後。
天月に試験結果が出たことをラ〇ンで伝えるなり、すぐに「電話しますね」というメッセージとともに着信音が響く。
天月のほうは俺のところよりも二日ほど早く試験結果が出ていたので、向こうはさぞかし楽しみにしていたのだろう。
しかし、勝つのは俺だぜ!
二位という試験結果を胸に、俺は意気揚々と電話に出た。
「もしもし、天月。今回は俺の勝ちだぜ」
『フフフ。その様子だとさぞかし自信があるのでしょうが、奇遇ですね。私もメチャメチャ自信あるんですよ』
「フッ、御託はナシだ。まずは俺の順位を教えてやろう。――二位だ!」
某絵柄が独特な大人気マンガのポーズを取りながら、俺は宣言する。
電話越しに『に、二位……だと……!?』という驚いた声がして、天月のトーンが明らかに落ちた。
「……そうですか。先輩は二位だったのですね……」
電話越しでもわかる天月の落ち込んだ様子に、俺は勝利を確信した。
「天月は何位だったのかな~?」
「私は一位でした……」
「え?」
一瞬、聞き間違いかと思った。
スピーカーモード越しに聞いているレナも首を傾げている。
いやまさか、あれだけ暗い様子で告げたんだから聞き間違いに決まっているだろう。
「天月は何位だって?」
『一位です! 先輩よりも上です! 学年トップです! 私の勝ちですね!』
一転して太陽の日差しのように明るい声音で告げてきたので、嫌でも理解してしまった。
俺は負けたのだと。
またもや騙されて、からかわれていたのだと。
「自分が勝ったと勘違いして調子に乗ってる先輩を叩きのめした時が一番生を実感しますねぇ~」
スマホ越しに、いつもの小悪魔モードと化した天月の声が聞こえてくる。
「ああああ恥ずかしすぎて死にたい! 数分前のイキっていた自分を殴りたい!」
『じゃあ、先輩は罰ゲームでレナちゃんをデートに誘うということで……』
「はっ! そうだ!」
『どうしたんですか?』
電話を切られる直前、ある出来事が脳裏によぎった。
「実はちょっと前に、夏休みに一緒に旅行しようってレナを誘ったから、それでデートに誘った判定にしてもらうことは――」
『無理です。それよりも、チキンな先輩から誘うくらいには仲が進展したんですね。微笑ましい限りです。じゃっ、後は頑張ってくださいね。アディオス!』
俺の提案をバッサリ切り捨てた天月は、流れるように俺をからかってから上機嫌な様子で通話を切った。
完全に俺の自爆である。
あとで追及されてさらにからかわれるんだろうな。
言わなきゃよかったよ。
俺はゆっくりとスマホを置く。
……デート。デートか……。
緊張して真っ白になった思考で振り返れば、先ほどから静かになっていたレナが恥ずかしそうにクッションで顔を半分ほど隠しながら……それでいて少しばかりの期待が込められた瞳で、こちらの様子をうかがうように上目づかいで見てきた。
ドグンッと、電気ショックでも流れたのかというほど心臓が跳ねた。
二週間ゲームは完全に禁止し、家に帰れば勉強と家事に没頭する日々。
レナの応援を受けながら、最大効率で勉強した。
ちなみに、レナの応援は演歌を熱唱するという非常にうるさいものだったので、初日に止めさせた。
それからは簡単なお菓子を作ってくれたりして応援してもらっている。
当たり前だけど、レナの作るお菓子はめっちゃうまかった。
そして迎えたテスト当日。
前日はしっかり八時間眠って、脳みそを最大まで活性化させている。
俺はもともと勉強ができるほうだし、日々の復習を欠かさないタイプだ。
そのうえで二週間みっちりと勉強してきたので、完ぺきに仕上がっていると言っても過言ではない。
実際、テストはすらすらと解くことができたし、確実に学年十位以内に入っているだろうという手ごたえを感じていた。
「できれば五位以内に入ってればいいんだけどな……」
『あれだけ頑張ったんだから、海斗なら大丈夫よ』
掲示板に試験結果が張り出された当日。
それを確認しようと群がる生徒たちの後ろのほうで、俺は顔を強張らせながら天に祈りをささげていた。
レナはポジティブ思考のおかげか、気楽そうに宙でくつろいでいる。
自分の順位を見てきゃあきゃあ騒ぐ者。もしくは肩を落とす者。
やがて前のほうにいた生徒たちがはけ、俺たちは掲示板に近づいた。
順位を下のほうから見ていく。
ない、ない、ない、ない……。
学年順位は上位二十位以内の者だけ名前付きで結果が張り出されている。
ない、ない、ない……。
十位から二十位の間に、俺の名前はなかった。
ない、ない……。
ゆっくりと上を見ていくが、まだ俺の名前は見当たらない。
ない……。
そして――。
「……あった」
やっと、見つけた。
上から二番目に『西崎海斗 平均点96点』と張り出されているのを。
『すごいじゃない、海斗! 今日はお祝いね!』
「……だな。ハンバーグでも作るか」
『やったー! ハンバーグ食べれる~! ふんふふ~んふふ~ん♪』
喜びを噛みしめながらそう言えば、レナは一気にテンションがマックスになった。
子供のように無邪気にはしゃぐ姿が可愛らしかった。
◇◇◇◇
帰宅後。
天月に試験結果が出たことをラ〇ンで伝えるなり、すぐに「電話しますね」というメッセージとともに着信音が響く。
天月のほうは俺のところよりも二日ほど早く試験結果が出ていたので、向こうはさぞかし楽しみにしていたのだろう。
しかし、勝つのは俺だぜ!
二位という試験結果を胸に、俺は意気揚々と電話に出た。
「もしもし、天月。今回は俺の勝ちだぜ」
『フフフ。その様子だとさぞかし自信があるのでしょうが、奇遇ですね。私もメチャメチャ自信あるんですよ』
「フッ、御託はナシだ。まずは俺の順位を教えてやろう。――二位だ!」
某絵柄が独特な大人気マンガのポーズを取りながら、俺は宣言する。
電話越しに『に、二位……だと……!?』という驚いた声がして、天月のトーンが明らかに落ちた。
「……そうですか。先輩は二位だったのですね……」
電話越しでもわかる天月の落ち込んだ様子に、俺は勝利を確信した。
「天月は何位だったのかな~?」
「私は一位でした……」
「え?」
一瞬、聞き間違いかと思った。
スピーカーモード越しに聞いているレナも首を傾げている。
いやまさか、あれだけ暗い様子で告げたんだから聞き間違いに決まっているだろう。
「天月は何位だって?」
『一位です! 先輩よりも上です! 学年トップです! 私の勝ちですね!』
一転して太陽の日差しのように明るい声音で告げてきたので、嫌でも理解してしまった。
俺は負けたのだと。
またもや騙されて、からかわれていたのだと。
「自分が勝ったと勘違いして調子に乗ってる先輩を叩きのめした時が一番生を実感しますねぇ~」
スマホ越しに、いつもの小悪魔モードと化した天月の声が聞こえてくる。
「ああああ恥ずかしすぎて死にたい! 数分前のイキっていた自分を殴りたい!」
『じゃあ、先輩は罰ゲームでレナちゃんをデートに誘うということで……』
「はっ! そうだ!」
『どうしたんですか?』
電話を切られる直前、ある出来事が脳裏によぎった。
「実はちょっと前に、夏休みに一緒に旅行しようってレナを誘ったから、それでデートに誘った判定にしてもらうことは――」
『無理です。それよりも、チキンな先輩から誘うくらいには仲が進展したんですね。微笑ましい限りです。じゃっ、後は頑張ってくださいね。アディオス!』
俺の提案をバッサリ切り捨てた天月は、流れるように俺をからかってから上機嫌な様子で通話を切った。
完全に俺の自爆である。
あとで追及されてさらにからかわれるんだろうな。
言わなきゃよかったよ。
俺はゆっくりとスマホを置く。
……デート。デートか……。
緊張して真っ白になった思考で振り返れば、先ほどから静かになっていたレナが恥ずかしそうにクッションで顔を半分ほど隠しながら……それでいて少しばかりの期待が込められた瞳で、こちらの様子をうかがうように上目づかいで見てきた。
ドグンッと、電気ショックでも流れたのかというほど心臓が跳ねた。
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