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第23話 夏休みの予定
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着信音が鳴り響く。
俺は一度深呼吸して心を落ち着かせてから、緑色のマークをタップした。
「もしもし。久しぶり、ばあちゃん」
『ほっほっほ。元気にしとったかい?』
スマホの向こうから穏やかな声が聞こえてくる。
その懐かしい声に、先ほどまで荒ぶっていた心が落ち着きを取り戻していく。
――ことはできなかった。
『海斗よ。何か気が乱れているようじゃが、嬉しいことでもあったのかの? 例えば、好きな女の子に誕生日を祝ってもらったりとか』
「ブフォオ!?」
思わず吹き出してしまう。
レナのことは友達として好きではあるものの、恋愛感情かといわれると違うと思う。
だから厳密には違うのだけど、ばあちゃんの例えはほとんど合っていたのだから驚いてしまうのも無理はない。
うちのばあちゃん、なんか知らないけどいつも勘が鋭いんだよなぁ。
そんなことを考えながら、なんとか呼吸を整えて通話に戻る。
「……友達に誕生日を祝ってもらってたところだ。決してばあちゃんが想像しているようなことじゃないからな!」
『ほっほっほ。そうかいそうかい。どちらにせよ、海斗のことを大事に思ってくれている友達がいるっちゅうのが、わしゃあ嬉しいわい。さて、わしからも伝えておこうかの。海斗、誕生日おめでとう』
「お、おう。ありがと」
誕生日を祝うためにわざわざ電話をかけてきてくれたことが嬉しくて、俺はつい頬を掻く。
『それで海斗に聞いときたいことがあるんじゃが、今年の夏も遊びに来るのかの?』
「期末テストはまず補習を受けるようなことにはならないと思うから、今年も遊びに行けると思う。日程はまた今度伝えるよ」
『では、楽しみに待ってるからの』
「ん、バイバイ」
通話を切る。
夏休みのスケジュールを思い浮かべながら「一週間くらいシフト開けるって店長に伝えとかないとな」などと考えていたら、先ほどのやり取りを不思議そうに眺めていたレナが話しかけてきた。
『海斗海斗。さっき死にそうになってたけど、おばあちゃんと何話してたの?』
「ん? あー……まあ、誕生日を祝ってもらった」
『普通それでむせる?』
「嬉しすぎて喉が詰まった」
『ふーん? 海斗っておばあちゃんっ子なんだ』
「それはそう」
レナは純粋に気になったようだけど、誤魔化すしかなかった。
『好きな子に誕生日を祝ってもらった』と祖母に言われて、少しだけ意識してしまったなんて言えるはずないじゃん。
再び沈黙が訪れる。
変に意識してしまっているせいで、なんか気まずい。
「……夏休みにばあちゃんの家に一週間くらい行こうと思うんだけど、お前もついてくるか?」
話題を変えようとして口から出たのは、そんな言葉だった。
あああなんか一緒に旅行しようって誘っちゃったんだけどぉぉぉ!!!
これって、いわゆるデートなんじゃ……。
俺は首を振る。
いかんいかん。さっきから変な方向に考えてばっかだ。
『海斗が誘ってくるなんて珍しいわね。それで、どんなところなの?』
「あ、うん……。えーっとだな…………。まあ、一言で言うなら田舎だ。ホントにド田舎だ」
『自然がいっぱいある感じ?』
「そうだけど、興味出てきたか?」
『ん、たまには自然に囲まれてゆっくり過ごすのもありじゃない?』
「……じゃあ、一緒に行くってことでいいのか」
俺が小さく呟けば、レナは元気よく『ん!』と返事した。
なんかあっさりOKされたんだけど!?
ばあちゃん家とはいえ、普通一緒に泊りがけで出かけるものなの!?
『さっきからなんか変よ、海斗』
「べ、別に普通なんじゃない、かな?」
『やっぱりおかしいわ』
レナは俺の態度を訝しんではいるものの、結局気づくことはなかった。
いろいろと変に意識してしまって、俺の心臓が暴れ狂っていることに。
俺は一度深呼吸して心を落ち着かせてから、緑色のマークをタップした。
「もしもし。久しぶり、ばあちゃん」
『ほっほっほ。元気にしとったかい?』
スマホの向こうから穏やかな声が聞こえてくる。
その懐かしい声に、先ほどまで荒ぶっていた心が落ち着きを取り戻していく。
――ことはできなかった。
『海斗よ。何か気が乱れているようじゃが、嬉しいことでもあったのかの? 例えば、好きな女の子に誕生日を祝ってもらったりとか』
「ブフォオ!?」
思わず吹き出してしまう。
レナのことは友達として好きではあるものの、恋愛感情かといわれると違うと思う。
だから厳密には違うのだけど、ばあちゃんの例えはほとんど合っていたのだから驚いてしまうのも無理はない。
うちのばあちゃん、なんか知らないけどいつも勘が鋭いんだよなぁ。
そんなことを考えながら、なんとか呼吸を整えて通話に戻る。
「……友達に誕生日を祝ってもらってたところだ。決してばあちゃんが想像しているようなことじゃないからな!」
『ほっほっほ。そうかいそうかい。どちらにせよ、海斗のことを大事に思ってくれている友達がいるっちゅうのが、わしゃあ嬉しいわい。さて、わしからも伝えておこうかの。海斗、誕生日おめでとう』
「お、おう。ありがと」
誕生日を祝うためにわざわざ電話をかけてきてくれたことが嬉しくて、俺はつい頬を掻く。
『それで海斗に聞いときたいことがあるんじゃが、今年の夏も遊びに来るのかの?』
「期末テストはまず補習を受けるようなことにはならないと思うから、今年も遊びに行けると思う。日程はまた今度伝えるよ」
『では、楽しみに待ってるからの』
「ん、バイバイ」
通話を切る。
夏休みのスケジュールを思い浮かべながら「一週間くらいシフト開けるって店長に伝えとかないとな」などと考えていたら、先ほどのやり取りを不思議そうに眺めていたレナが話しかけてきた。
『海斗海斗。さっき死にそうになってたけど、おばあちゃんと何話してたの?』
「ん? あー……まあ、誕生日を祝ってもらった」
『普通それでむせる?』
「嬉しすぎて喉が詰まった」
『ふーん? 海斗っておばあちゃんっ子なんだ』
「それはそう」
レナは純粋に気になったようだけど、誤魔化すしかなかった。
『好きな子に誕生日を祝ってもらった』と祖母に言われて、少しだけ意識してしまったなんて言えるはずないじゃん。
再び沈黙が訪れる。
変に意識してしまっているせいで、なんか気まずい。
「……夏休みにばあちゃんの家に一週間くらい行こうと思うんだけど、お前もついてくるか?」
話題を変えようとして口から出たのは、そんな言葉だった。
あああなんか一緒に旅行しようって誘っちゃったんだけどぉぉぉ!!!
これって、いわゆるデートなんじゃ……。
俺は首を振る。
いかんいかん。さっきから変な方向に考えてばっかだ。
『海斗が誘ってくるなんて珍しいわね。それで、どんなところなの?』
「あ、うん……。えーっとだな…………。まあ、一言で言うなら田舎だ。ホントにド田舎だ」
『自然がいっぱいある感じ?』
「そうだけど、興味出てきたか?」
『ん、たまには自然に囲まれてゆっくり過ごすのもありじゃない?』
「……じゃあ、一緒に行くってことでいいのか」
俺が小さく呟けば、レナは元気よく『ん!』と返事した。
なんかあっさりOKされたんだけど!?
ばあちゃん家とはいえ、普通一緒に泊りがけで出かけるものなの!?
『さっきからなんか変よ、海斗』
「べ、別に普通なんじゃない、かな?」
『やっぱりおかしいわ』
レナは俺の態度を訝しんではいるものの、結局気づくことはなかった。
いろいろと変に意識してしまって、俺の心臓が暴れ狂っていることに。
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