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第18話 昼食での一コマ
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キッチンに追いやられた俺は、冷蔵庫から食材を取り出して調理を開始する。
作るレシピはもう決めてあるので、淡々と作業を進めるだけだ。
「……にしても、俺の知らないところで一緒に遊ぶくらいには仲良くなったのか」
レナが天月と仲良くなったのは、俺としても喜ばしいことだ。
レナには満足して成仏してほしい。
天月と楽しい思い出を作れればより成仏が近くなるだろうし、何よりいい彩になるだろうからな。
「まっ、なんにせよ今は料理に集中だな」
せっかく天月が楽しみにしてくれているのだから、料理好きのプライドにかけて最高の料理を提供したい。
そして、一時間後。
「できたぞー」
リビングに顔を出して完成したことを伝えれば、ラブコメ派とファンタジー派に分かれて好きなラノベ談義に花を咲かせていた天月が期待の声をあげた。
「いい匂いがこっちまで漂ってきてますよ。食べるのが超楽しみです!」
『美沙っちは期待して待ってなさい! 私も皿運ぶの手伝うわ』
「おう。手じゃなくて霊力を使うようにな」
『わかってるわよ』
皿を割るなよという意味を込めて茶化すと、レナはふんっと鼻を鳴らしながら腕組みをする。
俺たちが料理の乗った皿を持って戻ってくると、天月はなぜかニヤニヤしていた。
「……どした?」
「いえ、ナチュラルに夫婦みたいなことしてたから微笑ましく思ってただけですよ~」
『ふ、ふふふ夫婦みたいとか何言ってんの!』
「ただ手伝ってもらってただけだし!」
レナは顔を赤くしながらうろたえる。
たぶん俺も同じくらい顔を赤くしていると思う。
「二人とも素直じゃないですねぇ」
そんな俺たちを見て、天月は小悪魔っぽい表情でクスリと笑う。
俺はその場の空気を変えようと、早口でまくし立てるように料理の説明を始めた。
「今回のメニューは豚のしょうが焼きと筑前煮だ! どれも自信作だからさっさと食べるぞいただきます!」
『そ、そうね! 早く食べましょ! ほら美沙っちも!』
「ん、そうですね」
相変わらずのいたずらっぽい表情だった天月だけど、料理を口にしたとたんすぐに変わった。
ぱっちりとした瞳をさらに大きくしながら、咀嚼に集中する。
反応は悪くないけど……。
「……舌に合うか?」
恐る恐る尋ねたら、ゴクリと飲み込んだ天月が瞳を輝かせながら口を開いた。
「はい! レナちゃんが絶賛するだけあって、メチャクチャおいしいです!」
『ちょ、蒸し返さないで!』
「そうか。ありがとな」
料理を絶賛しつつも、天月らしい返しに俺は頬をポリポリと掻く。
気恥ずかしさを紛らわすために、俺も豚のしょうが焼きを口に運んだ。
「ん、うま!」
たっぷり調味料に漬け込んだ豚肉に片栗粉をまとわせることによって、うまみが閉じ込められて凝縮されていた。
噛めば噛むほどそのうまみが溢れ出してくる。
こってりとした濃厚な味わいが米との相性抜群で、食べ進める手が止まることはない。
筑前煮は控えめな優しい味付けがたまらない仕上がりになっていて、たっぷり入った根菜類をおいしくいただくことができた。
「どうだった?」
『私のイチオシは筑前煮ね。すごく薄味なのに、味がしっかりしみ込んでいてものすごくおいしかったわ』
レナがあの時の。
ショッピングモールから帰るときに見せてくれたのとそっくりな笑顔で、そう言ってくる。
「最高でした。これを毎日食べられるレナちゃんが羨ましいくらいです」
感想を聞けば、やはり大好評だった。
特に筑前煮は自信作だったのだけれど、野菜があまり好きではないレナが絶賛するほどうまく作れたようだ。
だけど、それよりも。
料理を褒められたことよりも、レナが屈託のない笑顔を見せてくれたことのほうが嬉しかった。
◇◇◇◇
『海斗海斗』
昼ごはんの後は三人でゲームをして、休憩がてらお菓子をつまんだところでレナが話しかけてきた。
「どした?」
『明日は美沙っちと二人で遊びに行ってくるから、お昼ごはんは作らなくていいからね』
「俺はハブられる感じなの?」
「私たちだけの秘密です」
『だから海斗は家で寂しく過ごしときなさい!』
なんだかよく分からないけど、教えてくれる気はないようだ。
俺はとりあえず頷いておいた。
──二人がなんのために出掛けたのかは、すぐに知ることとなる。
一週間後に訪れるイベントによって。
作るレシピはもう決めてあるので、淡々と作業を進めるだけだ。
「……にしても、俺の知らないところで一緒に遊ぶくらいには仲良くなったのか」
レナが天月と仲良くなったのは、俺としても喜ばしいことだ。
レナには満足して成仏してほしい。
天月と楽しい思い出を作れればより成仏が近くなるだろうし、何よりいい彩になるだろうからな。
「まっ、なんにせよ今は料理に集中だな」
せっかく天月が楽しみにしてくれているのだから、料理好きのプライドにかけて最高の料理を提供したい。
そして、一時間後。
「できたぞー」
リビングに顔を出して完成したことを伝えれば、ラブコメ派とファンタジー派に分かれて好きなラノベ談義に花を咲かせていた天月が期待の声をあげた。
「いい匂いがこっちまで漂ってきてますよ。食べるのが超楽しみです!」
『美沙っちは期待して待ってなさい! 私も皿運ぶの手伝うわ』
「おう。手じゃなくて霊力を使うようにな」
『わかってるわよ』
皿を割るなよという意味を込めて茶化すと、レナはふんっと鼻を鳴らしながら腕組みをする。
俺たちが料理の乗った皿を持って戻ってくると、天月はなぜかニヤニヤしていた。
「……どした?」
「いえ、ナチュラルに夫婦みたいなことしてたから微笑ましく思ってただけですよ~」
『ふ、ふふふ夫婦みたいとか何言ってんの!』
「ただ手伝ってもらってただけだし!」
レナは顔を赤くしながらうろたえる。
たぶん俺も同じくらい顔を赤くしていると思う。
「二人とも素直じゃないですねぇ」
そんな俺たちを見て、天月は小悪魔っぽい表情でクスリと笑う。
俺はその場の空気を変えようと、早口でまくし立てるように料理の説明を始めた。
「今回のメニューは豚のしょうが焼きと筑前煮だ! どれも自信作だからさっさと食べるぞいただきます!」
『そ、そうね! 早く食べましょ! ほら美沙っちも!』
「ん、そうですね」
相変わらずのいたずらっぽい表情だった天月だけど、料理を口にしたとたんすぐに変わった。
ぱっちりとした瞳をさらに大きくしながら、咀嚼に集中する。
反応は悪くないけど……。
「……舌に合うか?」
恐る恐る尋ねたら、ゴクリと飲み込んだ天月が瞳を輝かせながら口を開いた。
「はい! レナちゃんが絶賛するだけあって、メチャクチャおいしいです!」
『ちょ、蒸し返さないで!』
「そうか。ありがとな」
料理を絶賛しつつも、天月らしい返しに俺は頬をポリポリと掻く。
気恥ずかしさを紛らわすために、俺も豚のしょうが焼きを口に運んだ。
「ん、うま!」
たっぷり調味料に漬け込んだ豚肉に片栗粉をまとわせることによって、うまみが閉じ込められて凝縮されていた。
噛めば噛むほどそのうまみが溢れ出してくる。
こってりとした濃厚な味わいが米との相性抜群で、食べ進める手が止まることはない。
筑前煮は控えめな優しい味付けがたまらない仕上がりになっていて、たっぷり入った根菜類をおいしくいただくことができた。
「どうだった?」
『私のイチオシは筑前煮ね。すごく薄味なのに、味がしっかりしみ込んでいてものすごくおいしかったわ』
レナがあの時の。
ショッピングモールから帰るときに見せてくれたのとそっくりな笑顔で、そう言ってくる。
「最高でした。これを毎日食べられるレナちゃんが羨ましいくらいです」
感想を聞けば、やはり大好評だった。
特に筑前煮は自信作だったのだけれど、野菜があまり好きではないレナが絶賛するほどうまく作れたようだ。
だけど、それよりも。
料理を褒められたことよりも、レナが屈託のない笑顔を見せてくれたことのほうが嬉しかった。
◇◇◇◇
『海斗海斗』
昼ごはんの後は三人でゲームをして、休憩がてらお菓子をつまんだところでレナが話しかけてきた。
「どした?」
『明日は美沙っちと二人で遊びに行ってくるから、お昼ごはんは作らなくていいからね』
「俺はハブられる感じなの?」
「私たちだけの秘密です」
『だから海斗は家で寂しく過ごしときなさい!』
なんだかよく分からないけど、教えてくれる気はないようだ。
俺はとりあえず頷いておいた。
──二人がなんのために出掛けたのかは、すぐに知ることとなる。
一週間後に訪れるイベントによって。
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