事故物件に引っ越したら、なぜか清楚可憐な美少女幽霊と同棲することになった件について

狐火いりす@商業作家

文字の大きさ
上 下
15 / 31

第15話 友達

しおりを挟む
「西崎君。きみ、悪霊に憑りつかれてるよ。祓ってあげる」


 その言葉と共に霧雨が手をかざしてくる。
 ビックリして固まる俺とは対照的に、レナは過去一で慌てふためいていた。

『助けて海斗! 除霊されちゃう!』
「え、お前より強い霊能力者なの!?」
『上級悪霊くらいなら余裕で倒せるほどの力を感じるわ!』

 レナは本人曰く中級悪霊だ。
 上級悪霊がどれくらいの強さなのかは分からないけど、順当に考えてレナよりは強いだろう。
 その上級悪霊を簡単に倒せるほどの霊能力者となると、レナが太刀打ちできるはずもないのは当然だ。

『お願い! 肉壁になって!』

 恐怖からかパニックになったレナが俺の後ろにへばりついてくる。
 ちょっと待って肉壁とか物騒なワードが聞こえたんだけど!?

『海斗の雄姿は忘れないわ!』
「俺が死ぬこと前提で話してない!? お前のせいで死んだら化けて出てやるからな!」
『その時は悪霊同士、また友達になりましょ!』

「我が力の根源に命ずる。魔を祓い、天へと導く聖なる奇跡を――」

 なんか魔王との戦いで決着をつけるために勇者が放つ必殺技みたいな詠唱が始まったんだけど!?
 神聖魔法かなんかの使い手ですか!?

「ストーーーーップ! いったんストップ! 除霊しなくていいから!」
「……しなくていいの?」

 いよいよヤバいことになりそうだったから俺が叫びながら制止すると、霧雨は案外すんなりと詠唱を中断してくれた。
 人の話をちゃんと聞いてくれるタイプでよかったぁ~ホントに。

 俺は頭を整理してから、レナのことを説明した。

 波長が合うこと。
 悪霊だけど悪いやつではないこと。
 除霊してほしくないこと。
 レナには成仏してほしいこと。

 自分でもなんでこんなに必死なのか分からなかった。

「ふーん。宮乃さんみたいな悪霊を見るのは初めてだよ。時間を奪っちゃって悪かったね」

 俺の説明に納得してくれたようで、霧雨は軽く謝ってから去っていった。

『な、なんかよく分からない奴だったわね』
「悪いやつじゃないってことしか分からなかったな」
『不思議ちゃんすぎる』
「ん、同意」





◇◇◇◇


 学校でのひと騒動の後。
 家に帰る途中も、どうして必死にレナをかばったのか考え続けた。

 その結果、一つの結論が導き出される。
 その結論に確信を持つため、俺はレナに尋ねた。

「……なあ、レナ。お前が俺を肉壁にしようとした時に、友達がうんたらかんたら言ってただろ?」
『まあ、言ったわね』

 そのことを掘り返されるとは思っていなかったのか、レナはプイっと視線を逸らした。

『その……なんだ……お前は俺のこと友達だと認識してるってことでいいのか?』
『……そうよ。察しなさいよ』

 レナが恥ずかしそうに言ってくる。
 友達……か。

 出会ったばかりのころはレナのことなんて嫌いだったのに、その言葉はすとんと腑に落ちた。
 なぜだか胸の内が温かくなった気がした。

 やっと分かった。レナを必死でかばった理由が。
 レナと一緒に過ごす今の日常が楽しいんだ。

「そっか。じゃあ、俺たちは今日から友達だな」
『……もっと前からに決まってるでしょ』
「……それもそうだな」

 俺は頬をポリポリ掻きつつ同意する。
 レナは相変わらず顔を逸らしたままでこちらを見ようともしないけど……。

 その横顔は、ほんのりと朱に染まっていた。
 ちょっとだけデレてくれたレナは、なんだかとても可愛かった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...