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第7話 スイーツ教室
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料理教室を開催した翌日。
キッチンにはエプロンをつけた俺と、またもや腕まくりして気合いばっちりな様子のレナが立っていた。
料理を失敗したレナが今度はスイーツを作りたいと言い出したために、急きょスイーツ教室を開催することになったのである。
『今度はちゃんと作って見せるわ!』
「お菓子作りは丁寧さが大切だから、変なことだけはするなよ」
『今回は海斗の言うことをしっかり聞きます! オリジナリティを出そうとかはしません!』
「なら良し」
釘をさすように聞けば、レナは昨日の失敗をきちんと反省した様子だったので、俺は何も問題ないと判断した。
レナの実力なら、変なことさえしなければおいしいものが作れるはずだ。
『ねぇねぇ、何を作るの?』
「お菓子作りの定番のやつ」
『なるほど。飴細工でお城を作るのね』
「難易度高すぎて草」
という軽いやり取りをしてから本題に入る。
「今回作るのは型抜きクッキーだ」
『おっ、いいわね!』
「よし、さっそく作っていくか」
今回作るのは型抜きクッキーなので、材料を混ぜ合わせてできた生地を平たく伸ばすだけでいい。
絞り出すタイプではないので、初心者でも簡単に作ることができるだろう。
材料の混ぜ方からちょっとしたコツまでレクチャーしてから、実際にレナが作っていく。
俺が見守る中、レナは真剣な表情で作業に取り組んでいた。
こういう一生懸命な姿勢は好感が持てるな。
内心でそんなことを考える。
『ふぅ。これくらいでいいかしら?』
「おう、上出来だ」
俺が合格のサインを出せば、レナはやり切ったという感じでガッツポーズをした。
「それじゃあ、次は型抜きだ。いろんな型があるから、好きなの使え」
お菓子作り用の材料を買い出しに行ったついでに百均で買ったいろいろな型を並べれば、レナはどれを使おうかといった感じで物色しだす。
『かわいいのが多いわね』
「お前が好きそうなのを選んできたからな」
『ふ~ん、よくわかってるじゃないの』
そう言いながら、レナは手に取った型で生地をくり抜いていく。
天板の上に、花や動物の形をした生地が並べられる。
それをオーブンで焼けば──。
『わぁ! おいしそうじゃん!』
オーブンを開ければ、食欲をそそる香ばしい匂いが溢れ出てくる。
もちろん、見栄えのほうもバッチリだった。
「やったな、レナ。上出来だぞ」
『やった……! 上手に作れたわ!』
クッキーの完成具合を褒めると、レナは嬉しそうにはにかんだ。
初めて見せるレナのその表情に、思わず視線が釘付けになる。
レナに悟られないように俺はすぐに表情を引き締めた。
それから、完成したクッキーを皿に盛る。
『いただきまーす!』
「ん、いただきます」
食卓に座るなり、レナはすぐに食べ始める。
おいしそうに頬張るレナの姿を見せられて、食欲がわかないわけがない。
俺もすぐにクッキーを口に運んだ。
「うまい」
一口食べた瞬間、そう口にしていた。
香ばしい匂いを放つクッキーはサクサクで、生地に混ぜ込んだアーモンドパウダーのコクが深みを出している。
ほんのりとした控えめな甘さがちょうどよくて、どれだけ食べても飽きないような味に仕上がっていた。
「うまいか?」
作った本人に感想を聞いてみる。
『めっちゃおいしいわ! 特にチョコクッキーが最高ね!』
「チョコが好きなのか?」
『ん、めっちゃ大好き!』
一心不乱にクッキーを頬張っているレナは、小動物みたいで可愛らしかった。
俺はその様子を微笑ましげに見ながらも、クッキーに伸ばす手は止まらない。
気持ち多めに作ったはずのクッキーは、あっという間になくなってしまった。
『は~、満足』
「だな。もっと作っておけばよかったぜ」
本当に何気なく、残念だと俺が呟いたら──。
『……また作ってあげてもいいわよ』
レナはそっぽを向きながら、小さくそう口にした。
「ぜひまた作ってくれ」
喜びのあまり反射的に頼んだら、レナは少しだけ頬を緩めながら「ん」と返してきた。
キッチンにはエプロンをつけた俺と、またもや腕まくりして気合いばっちりな様子のレナが立っていた。
料理を失敗したレナが今度はスイーツを作りたいと言い出したために、急きょスイーツ教室を開催することになったのである。
『今度はちゃんと作って見せるわ!』
「お菓子作りは丁寧さが大切だから、変なことだけはするなよ」
『今回は海斗の言うことをしっかり聞きます! オリジナリティを出そうとかはしません!』
「なら良し」
釘をさすように聞けば、レナは昨日の失敗をきちんと反省した様子だったので、俺は何も問題ないと判断した。
レナの実力なら、変なことさえしなければおいしいものが作れるはずだ。
『ねぇねぇ、何を作るの?』
「お菓子作りの定番のやつ」
『なるほど。飴細工でお城を作るのね』
「難易度高すぎて草」
という軽いやり取りをしてから本題に入る。
「今回作るのは型抜きクッキーだ」
『おっ、いいわね!』
「よし、さっそく作っていくか」
今回作るのは型抜きクッキーなので、材料を混ぜ合わせてできた生地を平たく伸ばすだけでいい。
絞り出すタイプではないので、初心者でも簡単に作ることができるだろう。
材料の混ぜ方からちょっとしたコツまでレクチャーしてから、実際にレナが作っていく。
俺が見守る中、レナは真剣な表情で作業に取り組んでいた。
こういう一生懸命な姿勢は好感が持てるな。
内心でそんなことを考える。
『ふぅ。これくらいでいいかしら?』
「おう、上出来だ」
俺が合格のサインを出せば、レナはやり切ったという感じでガッツポーズをした。
「それじゃあ、次は型抜きだ。いろんな型があるから、好きなの使え」
お菓子作り用の材料を買い出しに行ったついでに百均で買ったいろいろな型を並べれば、レナはどれを使おうかといった感じで物色しだす。
『かわいいのが多いわね』
「お前が好きそうなのを選んできたからな」
『ふ~ん、よくわかってるじゃないの』
そう言いながら、レナは手に取った型で生地をくり抜いていく。
天板の上に、花や動物の形をした生地が並べられる。
それをオーブンで焼けば──。
『わぁ! おいしそうじゃん!』
オーブンを開ければ、食欲をそそる香ばしい匂いが溢れ出てくる。
もちろん、見栄えのほうもバッチリだった。
「やったな、レナ。上出来だぞ」
『やった……! 上手に作れたわ!』
クッキーの完成具合を褒めると、レナは嬉しそうにはにかんだ。
初めて見せるレナのその表情に、思わず視線が釘付けになる。
レナに悟られないように俺はすぐに表情を引き締めた。
それから、完成したクッキーを皿に盛る。
『いただきまーす!』
「ん、いただきます」
食卓に座るなり、レナはすぐに食べ始める。
おいしそうに頬張るレナの姿を見せられて、食欲がわかないわけがない。
俺もすぐにクッキーを口に運んだ。
「うまい」
一口食べた瞬間、そう口にしていた。
香ばしい匂いを放つクッキーはサクサクで、生地に混ぜ込んだアーモンドパウダーのコクが深みを出している。
ほんのりとした控えめな甘さがちょうどよくて、どれだけ食べても飽きないような味に仕上がっていた。
「うまいか?」
作った本人に感想を聞いてみる。
『めっちゃおいしいわ! 特にチョコクッキーが最高ね!』
「チョコが好きなのか?」
『ん、めっちゃ大好き!』
一心不乱にクッキーを頬張っているレナは、小動物みたいで可愛らしかった。
俺はその様子を微笑ましげに見ながらも、クッキーに伸ばす手は止まらない。
気持ち多めに作ったはずのクッキーは、あっという間になくなってしまった。
『は~、満足』
「だな。もっと作っておけばよかったぜ」
本当に何気なく、残念だと俺が呟いたら──。
『……また作ってあげてもいいわよ』
レナはそっぽを向きながら、小さくそう口にした。
「ぜひまた作ってくれ」
喜びのあまり反射的に頼んだら、レナは少しだけ頬を緩めながら「ん」と返してきた。
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