5 / 31
第5話 一緒にゲーム
しおりを挟む
『ごちそうさま! 今日もおいしかったわ』
「へいよ。ありがとさん」
満足げな様子でレナが箸を置く。
俺は態度こそぶっきらぼうだけど、料理を褒められること自体に悪い気はしていない。
内心ではそれなりに喜んでいた。
やはり、褒められれば嬉しいもんだ。
ふと、そこで。
なんとなく思ったことをそのまま口したといった感じで、レナが呟いた。
『私もおいしい料理を作れたらな~。そしたらお腹が空いたときに自分で作れるのに』
その言葉には、本人は意識していないのだろうけど、わずかな羨望が含まれていた。
その羨望が俺に向けられているのは間違いない。
だから提案する。
「今度、料理を教えてやろうか?」
『え!? いいの?』
双眸を大きく開かせたレナが、思わずといった感じで聞き返す。
料理ができるようになりたい。
レナのこの願望も、ある種の未練みたいなもんだ。
「料理が作れるようになったら、お前も多少は満足できるだろ」
『ふふん、私は天才だからあっという間に上達して見せるわよ。海斗の舌をビックリさせてあげるわ!』
「自分に自信持ちすぎだろ」
レナのポジティブ思考を羨ましく思いつつ、俺は頭の中でカレンダーを開く。
日程はすぐに決まった。
「今度の週末、料理教室を開催する!」
『ドンと来なさい!』
俺は自信ありげに胸を張ったレナを見て笑う。
どうやら教え甲斐がありそうだ。
◇◇◇◇
「さてと、久しぶりに遊びますか」
洗い物や諸々の家事を終わらせた後。
俺はソファに腰を下ろして、ゲーム機の繋がれたテレビを起動した。
数秒後、テレビの画面に有名なゾンビホラゲーのタイトル画面が現れる。
ゲームプレイ自体が久々だったから操作が若干おぼつかないけど、それもプレイしてるうちにすぐに慣れた。
いきなりゾンビが現れたりするたびにビックリして叫びながらも、プレイはおおむね順調。
一度ミスって死んだりしたものの、一時間程度で最後の中ボスである磁力を操る男を無事に倒すことができた。
「ふぅ~、ご愁傷様」
キリのいいところまで進んだということで、コントローラーを置いて一息つこうとした時。
マンガを読み進めながらも、俺のほうをチラチラと見ていたレナが話しかけてきた。
『ねぇねぇ、一緒にゲームしない?』
レナは悟られないようにしているつもりだろうけど、さすがレナクオリティ。
一緒に遊びたくてうずうずしていたのが丸分かりだった。
「お前って意外と寂しがり屋だよな」
『は、はぁ!? 別にそんなことないし!』
レナはいつもツンとした態度をとっているけど、中身はわりと構ってちゃんなのだ。
俺が話しかけなくても、すぐに向こうから話しかけてくる。
お互いに気を遣わない関係なのもあって、レナとのやり取りは気楽で……まあ、それなりに楽しかった。
『一緒に遊んでほしいとか一ミリも思ってないんだからね!』
「なら、風呂にでも入ってこようかな~」
『私は海斗をボコボコにする! ほら、宣戦布告したわよ! 男なら逃げずにかかってきなさい!』
強引に話を進めたレナによって、俺たちは某大人気ゲーム会社の看板キャラが大集合した格ゲーをすることになった。
『端っこに寄りなさい』
レナに言われて、ソファーの端に詰める。
直後、レナが俺の隣にぼふっと勢いよく座った。
ふわりと甘い香りが鼻孔をつく。
拳三つ分くらいは離れているとはいえ、俺の体に緊張が走った。
『久しぶりに暴れてやるわよ!』
そんな俺にはお構いなしに、レナは関節をぽきぽき鳴らす動作をしている。
『痛っ!? ボキッて音したんだけど!』
指を押さえながらフーフー息を吹きかけるレナ。
その様子を見ていたら、ドキドキさせられているのが馬鹿馬鹿しく思えてきた。
やっぱ、ただの残念美少女だ。
そうこうしているうちにキャラ選択が終わる。
すぐに開戦の火ぶたが切って落とされた。
『空前メテオどーん! 埋めてゴリラパーンチ! 掴んで崖にどーん! 私の勝ち! なんで負けたか明日までに考えといてください!』
「んばあああああああああああああああ!!!」
俺は秒でボコボコにされた。
手玉に取られて、反撃する余地もなかった。
月とスッポンとはまさにこのことだろう。
「もう一回だもう一回!」
『いいわ。チャンスをあげる。私の慈悲深さに感謝しなさい!』
俺は意地になって何度も再戦したけど、結局スッポンのままだった。
『これで十連勝ね』
「お゛お゛ん゛!」
『私に負けたことが悔しすぎて壊れちゃったの?』
ドヤ顔で煽りまくってくるレナ。
どうしてもレナに勝ちたい俺が「別のゲームをしよう」と言いったことで、今度はこれまた有名なレースゲームをすることに。
こちらは実力が拮抗していて、白熱した試合になった。
「ふぅ、俺はそろそろやめるよ。明日も早いからもう風呂入って寝ないといけないしさ」
気が付いたらあっという間に二時間ほど経っていた。
時間を忘れてまでゲームに熱中したのはいつぶりだろうか?
もう少し遊びたいところだけど、これ以上は明日の生活に支障が出るから仕方ない。
『ん、楽しかったわ。また一緒に遊んであげてもいいわよ』
レナはそっぽを向きながら、『おやすみ』と一言だけ言い残してその場から消える。
それが照れ隠しであることは、付き合いの短い俺でも分かった。
一人残された俺はゲーム機を片付ける。
「まあ、悪くはなかったな」
自然と口から言葉が零れる。
バカ騒ぎしながら競い続けた二時間は、「また一緒にゲームしたいな」などと思ってしまうくらいには楽しかった。
「へいよ。ありがとさん」
満足げな様子でレナが箸を置く。
俺は態度こそぶっきらぼうだけど、料理を褒められること自体に悪い気はしていない。
内心ではそれなりに喜んでいた。
やはり、褒められれば嬉しいもんだ。
ふと、そこで。
なんとなく思ったことをそのまま口したといった感じで、レナが呟いた。
『私もおいしい料理を作れたらな~。そしたらお腹が空いたときに自分で作れるのに』
その言葉には、本人は意識していないのだろうけど、わずかな羨望が含まれていた。
その羨望が俺に向けられているのは間違いない。
だから提案する。
「今度、料理を教えてやろうか?」
『え!? いいの?』
双眸を大きく開かせたレナが、思わずといった感じで聞き返す。
料理ができるようになりたい。
レナのこの願望も、ある種の未練みたいなもんだ。
「料理が作れるようになったら、お前も多少は満足できるだろ」
『ふふん、私は天才だからあっという間に上達して見せるわよ。海斗の舌をビックリさせてあげるわ!』
「自分に自信持ちすぎだろ」
レナのポジティブ思考を羨ましく思いつつ、俺は頭の中でカレンダーを開く。
日程はすぐに決まった。
「今度の週末、料理教室を開催する!」
『ドンと来なさい!』
俺は自信ありげに胸を張ったレナを見て笑う。
どうやら教え甲斐がありそうだ。
◇◇◇◇
「さてと、久しぶりに遊びますか」
洗い物や諸々の家事を終わらせた後。
俺はソファに腰を下ろして、ゲーム機の繋がれたテレビを起動した。
数秒後、テレビの画面に有名なゾンビホラゲーのタイトル画面が現れる。
ゲームプレイ自体が久々だったから操作が若干おぼつかないけど、それもプレイしてるうちにすぐに慣れた。
いきなりゾンビが現れたりするたびにビックリして叫びながらも、プレイはおおむね順調。
一度ミスって死んだりしたものの、一時間程度で最後の中ボスである磁力を操る男を無事に倒すことができた。
「ふぅ~、ご愁傷様」
キリのいいところまで進んだということで、コントローラーを置いて一息つこうとした時。
マンガを読み進めながらも、俺のほうをチラチラと見ていたレナが話しかけてきた。
『ねぇねぇ、一緒にゲームしない?』
レナは悟られないようにしているつもりだろうけど、さすがレナクオリティ。
一緒に遊びたくてうずうずしていたのが丸分かりだった。
「お前って意外と寂しがり屋だよな」
『は、はぁ!? 別にそんなことないし!』
レナはいつもツンとした態度をとっているけど、中身はわりと構ってちゃんなのだ。
俺が話しかけなくても、すぐに向こうから話しかけてくる。
お互いに気を遣わない関係なのもあって、レナとのやり取りは気楽で……まあ、それなりに楽しかった。
『一緒に遊んでほしいとか一ミリも思ってないんだからね!』
「なら、風呂にでも入ってこようかな~」
『私は海斗をボコボコにする! ほら、宣戦布告したわよ! 男なら逃げずにかかってきなさい!』
強引に話を進めたレナによって、俺たちは某大人気ゲーム会社の看板キャラが大集合した格ゲーをすることになった。
『端っこに寄りなさい』
レナに言われて、ソファーの端に詰める。
直後、レナが俺の隣にぼふっと勢いよく座った。
ふわりと甘い香りが鼻孔をつく。
拳三つ分くらいは離れているとはいえ、俺の体に緊張が走った。
『久しぶりに暴れてやるわよ!』
そんな俺にはお構いなしに、レナは関節をぽきぽき鳴らす動作をしている。
『痛っ!? ボキッて音したんだけど!』
指を押さえながらフーフー息を吹きかけるレナ。
その様子を見ていたら、ドキドキさせられているのが馬鹿馬鹿しく思えてきた。
やっぱ、ただの残念美少女だ。
そうこうしているうちにキャラ選択が終わる。
すぐに開戦の火ぶたが切って落とされた。
『空前メテオどーん! 埋めてゴリラパーンチ! 掴んで崖にどーん! 私の勝ち! なんで負けたか明日までに考えといてください!』
「んばあああああああああああああああ!!!」
俺は秒でボコボコにされた。
手玉に取られて、反撃する余地もなかった。
月とスッポンとはまさにこのことだろう。
「もう一回だもう一回!」
『いいわ。チャンスをあげる。私の慈悲深さに感謝しなさい!』
俺は意地になって何度も再戦したけど、結局スッポンのままだった。
『これで十連勝ね』
「お゛お゛ん゛!」
『私に負けたことが悔しすぎて壊れちゃったの?』
ドヤ顔で煽りまくってくるレナ。
どうしてもレナに勝ちたい俺が「別のゲームをしよう」と言いったことで、今度はこれまた有名なレースゲームをすることに。
こちらは実力が拮抗していて、白熱した試合になった。
「ふぅ、俺はそろそろやめるよ。明日も早いからもう風呂入って寝ないといけないしさ」
気が付いたらあっという間に二時間ほど経っていた。
時間を忘れてまでゲームに熱中したのはいつぶりだろうか?
もう少し遊びたいところだけど、これ以上は明日の生活に支障が出るから仕方ない。
『ん、楽しかったわ。また一緒に遊んであげてもいいわよ』
レナはそっぽを向きながら、『おやすみ』と一言だけ言い残してその場から消える。
それが照れ隠しであることは、付き合いの短い俺でも分かった。
一人残された俺はゲーム機を片付ける。
「まあ、悪くはなかったな」
自然と口から言葉が零れる。
バカ騒ぎしながら競い続けた二時間は、「また一緒にゲームしたいな」などと思ってしまうくらいには楽しかった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる