事故物件に引っ越したら、なぜか清楚可憐な美少女幽霊と同棲することになった件について

狐火いりす@商業作家

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第2話 美少女幽霊と同棲することになった件について

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「……ごはん、食うか?」

 引っ越し祝いということでテーブルの上に並べられた豪華な料理を、食い入るように見つめる幽霊少女。
 その様子があまりにも悲壮感たっぷりだったので、見かねてそう問いかけると。

『いいの!?』

 彼女はパッと瞳を輝かせて飛びついた。
 その様子は、さながら猫じゃらしを見つけた子猫のよう。

 それからはあっという間だった。
 気づいた時には、野菜以外の料理が消え去っていた。

『ふ~。二年ぶりにまともなごはん食べれて満足だわ』
「もしかして、二年前にこの部屋で死んだ女子高生がお前なのか?」
『そそ。ゴキブリに驚いて食べてた飴ちゃん喉に詰まらせて地縛霊になったのよ』
「死因悲しすぎるだろ」

 リアルにギャグマンガみたいな死に方して、成仏できるわけないか。
 幽霊になった理由に納得したところで、満足げにお腹をさすっていた彼女が話しかけてくる。

『ん、ありがと。アンタはごはんをくれたことに免じてここに住ませてあげるわ』
「なんで偉そうなんだよ。俺、正式な居住者なんだけど?」
『ここは私の縄張りだから』
「どこの海賊ですか?」
『そーいうことだから、よろしく』

 反論は受け付けないといった感じで、そっぽを向きながら一方的に告げてくる。

「え、何? 俺、お前と同居しないといけないの?」
『地縛霊の意味わかる?』

 思わず聞いてみたら、質問を質問で返された。
 地縛霊。地縛霊か……。

「……ジバ〇ャンみたいな感じだろ? あ、そういうことか」

 かなり前に一世を風靡した人気キャラの名前を出してから、ようやく意味が分かった。
 彼女はこの家から出ることができないから、必然的に同居することになるのだと。

『知らない男と同居なんてホントはしたくないけど、アンタは特別なんだからね!』
「ツンデレの典型例みたいなセリフだな」

 当たり前だけど、俺は除霊能力など持っていない。
 半強制的に俺たちは同居することになって……すぐに沈黙が訪れる。

 初対面なのだから仕方ないけど、やはり気まずいものは気まずい。
 俺は何か話題がないか頭をひねって、ふと気になったことを尋ねた。

「そういえば、俺って霊感とかないんだけどなんでお前のこと見えてるの? 幽霊とか今まで一度も見えたことないんだけど」
『波長が合ったんでしょ』
「ふーん」

 波長がなんなのかはよく分からないけど、気が合うとかそういう感じなのだろう、たぶん。
 納得したところで、再び沈黙が訪れる。

 やっぱり気まずい。
 こういう時って何を喋ればいいんだろうか……あ、一つあった。

「そういえば、自己紹介とかしてなかったな」
『そういえばそうね』

 不本意だけど、この幽霊少女とはしばらく同居することになる。
 名前くらいは知っておかないと不便だろう。

「俺は西崎海斗にしざきかいとだ。まあ、よろしく」
『じゃあ、海斗って呼ぶわ』

 いきなり距離近いな。
 恐るべし幽霊少女のコミュ力。

「で、お前は?」
『私は宮乃みやのレナよ。気軽にレナ様って呼んでいいわ』

 なら、気軽にレナと呼ぶか。
 いきなりの名前呼びは躊躇ためらわれるけど、向こうも名前で呼んでくるのだからいいだろう。

 相変わらずそっぽを向いたままのレナは、一瞬だけちらりと俺のほうを見てからぶっきらぼうに伝えてきた。

『……改めて、よろしく』

 言い終わったところで、再びプイっと体を逸らす。


 こうして、美少女幽霊との同棲生活が始まった。
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