社畜、ケモミミ幼女を拾う。~てぇてぇすぎる狐っ娘との癒され生活が始まりました~

狐火いりす@商業作家

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第7話 葛葉ちゃんのお誕生日会

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「さーて、それでは始めていきますか! 楽しみに待っててね、葛葉ちゃん」

「わくわく!」

 葛葉ちゃんは私の近くをウロチョロする。

 なんで葛葉ちゃんがそわそわしているのかというと、今日は待ちに待ったお誕生日会をする日だからだ。
 おいしいものを食べてプレゼントがもらえるということで、待ちきれないみたい。
 見ていて微笑ましいよ。

 ちなみに、今日が休みなのは私が死に物狂いで有休をとったからだ。
 割とあっさり許可が取れたと思ったら、パワハラクソ上司から「これ、有給中に終わらせとけよ」と大量のノルマを課されたので、てぇてぇ葛葉ちゃんを見て現実逃避しようと思う。

「まずはケーキから作っていこっか」

 私はレシピ本を開く。

 ケーキの種類を何にするかはかなり悩んだけど、今回はガトーショコラを作ることにしたよ。
 昔ガトーショコラを作った時はかなり上手にできたから、これなら失敗することはないと思う。
 作るときのコツもしっかり覚えてるしね。

 というわけで、レシピ通りに作っていく。
 時間はかかったけど、特に失敗することなく仕上げることができた。
 うんうん、ちゃんとおいしそうだ。

「それじゃあ、ガトーショコラはいったん冷蔵庫に仕舞って……。次は料理だね」

 メニューはナポリタンスパゲッティ、ハンバーグ(きのこソース)、ポテトサラダ、それからスーパーで買ってきたちょっとお高いフルーツの盛り合わせだ。
 葛葉ちゃんは好き嫌いせずになんでも食べてくれるいい子なので、そういう面では心配いらないだろう。
 どれだけおいしいと思ってもらえるかが肝心となるわけだけど、このメニューなら大きく外すことはないかな。

「わぁ……! いいにおいがいっぱいだぁ!」

「もう少しで完成するからね」

「やったー! なるせお姉ちゃんのおりょーり食べられる~」

 はぁ~、てぇてぇ。
 葛葉ちゃんに癒されてやる気が限界突破しちゃった私は、料理作りにより一層集中するのだった。


「はい、完成っと!」

 プレート皿に料理を盛りつけ終わった私は、テーブルクロスを敷いた食卓の上にセッティングしていく。
 最後にぶどうジュースを注いだグラスを置いたら、セッティング終了だ。

「葛葉ちゃん、できたよ~」

「わぁ~い! いただきますしよー!」

 よほど楽しみだったようで、私が呼びかけると葛葉ちゃんは秒でかけ寄ってくる。
 椅子を引いてあげると、葛葉ちゃんはぴょんっと跳び乗ってきた。
 いつもならすぐにいただきますってするところだけど──。

「その前に……はい、これ」

 私はあるものを手渡す。

「なるせお姉ちゃん、これなぁに?」

「これはね、クラッカーっていうんだよ。ひもがついてるでしょ? それを引っ張ったら、ぱぁんって音が鳴るの」

「もうひっぱっていい?」

「ちょっと待ってね。私がせーのって言うから、そしたら一緒に鳴らしてくれるかな?」

「はーい。なるせお姉ちゃんといっしょにならす~」

 よしよし、それじゃあ始めようか。
 今日は誕生日会なんだから、まずは祝ってあげないとね。

「葛葉ちゃん、お誕生日おめでとう! これからも葛葉ちゃんが元気で過ごせるよう願ってるよ。では、せーの!」

「えい!」

 葛葉ちゃんと一緒にクラッカーを引く。
 ぱぁんっという小気味いい音が鳴った。

「わっ!?」

 葛葉ちゃんはクラッカーの音に一瞬びっくりしたみたいだけど、すぐにはしゃぎ出した。

「ありがと、なるせお姉ちゃん。葛葉、すっごくうれしい!」

「葛葉ちゃんの笑顔が見れて私も嬉しいよ。それじゃあ、いただきますしよっか」

「それ、きょうは葛葉が言いたい!」

「うん、いいよ」

 私は二つ返事で頷く。

「いっくよー。手をあわせましょう!」

「合わせません!」

「なんで!? あわせてー! いただきますってできないでしょ!」

「ごめんごめん、冗談だよ。ほら、合わせました」

「むー。またおなじことしたら、なるせお姉ちゃんのごはんも葛葉がたべちゃうからね!」

 そう言って、ぷんぷん怒る葛葉ちゃん。
 そんな姿もてぇてぇです。
 眼福。

「こんどこそ、いただきます!」

「いただきまーす」

 挨拶したところで食べ始める。
 葛葉ちゃんはすべての料理を一口ずつ食べてから、幸せそうに目を細めた。

「どれもおいひぃ~」

 うんうん、私のチョイスは間違ってなかったみたいだね。
 手を止めることなく食べ進める葛葉ちゃんを見て、私はほっこりした気分になる。

 あと、可愛い。
 口の中いっぱいにご飯を詰め込んでるせいでちゃんと喋れてないんだけど、それがまた可愛いのなんのって。
 葛葉ちゃんを眺めながら料理を楽しんでいたら、あっという間に時間が過ぎてしまった。

「ごちそうさまでしたー! ぜんぶおいしかったよ、なるせお姉ちゃん」

「満足するにはまだ早いよ、葛葉ちゃん。お誕生日ケーキが残ってるんだからね。もちろん今食べるでしょ?」

「ん、いますぐたべる! 葛葉、まだまだいっぱいたべれるよ!」

 まだまだお腹を空かせた葛葉ちゃんを満足させるために、私はホール状態のガトーショコラを持ってくる。
 机の上に置くなり、それを見た葛葉ちゃんは目を輝かせた。

「なにこれなにこれ~!? すごくおいしそうだよ、なるせお姉ちゃん!」

「食べるのはちょっと待ってね」

 ガトーショコラにろうそくを刺し、火をつけていく。
 葛葉ちゃんは年齢不詳なので、ろうそくの数はなんとなく五本にしておいた。

「改めて、お誕生日おめでとう!」

「えへへ、ありがとう」

「ろうそくの火は、お誕生日の人がふーってして消すんだよ」

「わかった! 葛葉、ふーってする!」

 葛葉ちゃんは自信ありげに力こぶを作ってから、ろうそくに息を吹きかける。
 最後の一本がなかなか消えなくて必死にふーふーする姿は、てぇてぇの一言に尽きたよ。

「やった~! ぜんぶけせたよ! 葛葉すごい?」

「うん、すごいすごい! それじゃあ、切り分けていくね。どれくらい食べたいの?」

「いっぱい!」

「いっぱいね。了解」

 葛葉ちゃんの要望通り、かなり大きめにカットする。
 「おたんじょうびおめでとう!」とメッセージの書かれた板チョコを乗せてから、葛葉ちゃんに渡した。

「これがおたんじょうびけーき……! いただきまぁす! あむ」

 よほど待ちきれなかったのか、葛葉ちゃんは速攻でガトーショコラを口に運ぶ。
 一口食べた瞬間、葛葉ちゃんはカッと目を見開いた。
 それからは、一心不乱にガトーショコラを頬張る。

「どう? 気に入ってくれた?」

「ん! 葛葉、これだいすき!」

 嬉しそうにガトーショコラを食べる葛葉ちゃんを見て、私の目じりが下がる。
 こんなにも喜んでもらえて、本当に嬉しいよ。

「おいしかったぁ。さいこう~」

「ふふ。ガトーショコラはまだ残ってるから明日も食べれるよ」

「ほんと!? わーい!」

 すでにこれでもかってくらい楽しんでくれてるけど、お楽しみはまだあるからね。
 もっと葛葉ちゃんを喜ばせるべく、私は収納スペースから大きな袋を持ってくる。
 それに気づいた葛葉ちゃんは、不思議そうに駆け寄ってきた。

「ねーねー、それなぁに?」

「なんだと思う?」

「んーっと…………いっぱいのどんぐり!」

 全然違うけど、てぇてぇから実質正解だね。

「この中に入ってるのはね、葛葉ちゃんのお誕生日プレゼントだよ」

「ぷれぜんと! ふくろあけていい?」

「もちろん。何が入ってるからは見てからのお楽しみだよ」

 葛葉ちゃんは「ぷれぜんとぷれぜんと~」と繰り返しながら、ゆっくりと袋を開ける。
 中に入っていた箱を手に取った葛葉ちゃんは、緊張した様子でそーっとふたを取る。
 箱から出てきたのは、子供用の服一式だった。

「わぁ……! これって葛葉のふく?」

「そうだよ。葛葉ちゃんに絶対似合うと思って買ってきたんだ」

「なら、葛葉おきがえするから、にあってるかみてほしいな」

「もちろん見ますとも」

 葛葉ちゃんのファッションショー見たくねぇやついる!?
 いねぇよなぁ!?

「じゃあ、おきがえするからまってて」

 ってなわけで、待つこと数分ほど。
 着替えを済ませた葛葉ちゃんが戻ってきた。

「どうかな?」

「世界一似合ってます!」

「えへへ」

 葛葉ちゃんはよほどお気に召したのか、試着した状態でいろいろなポーズを披露してくれた。
 もちろんどのポーズもてぇてぇかったです。

「なるせお姉ちゃん、今日はありがとね」

 葛葉ちゃんは私に抱き着きながら、そう伝えてきた。
 こっちこそ、葛葉ちゃんの笑顔をいっぱい見れてよかったよ。

「お誕生日会は楽しかった?」

「さいこーだったよ! なるせお姉ちゃんのおたんじょうびになったらね、こんどは葛葉がおいわいしてあげる!」

「ホントに!? ありがとね、秋がすごく楽しみだよ」

 こうして、葛葉ちゃんのお誕生日会は大成功に終わったのだった。

「……そういえば、おしごとはだいじょーぶなの? なるせお姉ちゃん」

「んあああああヤッバい! ノルマ忘れてたぁぁぁああ!!!」

 仕事は死に物狂いで終わらせました。
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