好き勝手スローライフしていただけなのに伝説の英雄になってしまった件~異世界転移させられた先は世界最凶の魔境だった~

狐火いりす@商業作家

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第23話 武闘派盗賊団を捕まえてお金ゲットだぜ!

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 俺は盗賊団の参謀。
 今日も今日とて略奪行為を働いている。
 今は森の中をうろついていた冒険者を殺して手に入れた物品の整理作業中だ。

「見ろよ、このガントレット。こりゃ間違いなくダンジョン産の物だぜ。強力な特殊効果がついてやがる」

「ほう、そのようですね。ボスに相応しい逸品だ。これで我が盗賊団はさらに強くなるでしょう」

「おうよ! もう俺たちを止められる者はいねぇばごらばっ!?」

「『ぎゃーーーっ!?』」

 何かによってアジトの建物が破壊されたかと思いきや、鉄の塊にボスが撥ね飛ばされてしまった。
 なんということだッ!?
 ボスがやられてしまったァァァ!?

「何者だ!? 貴様らは!」

 俺たちは警戒して戦闘態勢に入る。
 ボスがやられてもまだ俺がいる!
 俺の超絶指示で神連携を生み出し、必ずやボスの仇を取ってやりますぞ!

「『ヤバぁぁぁぁぁい!? 人が倒れてるぅぅぅ!?』」

 鉄の塊の中から、二人の人間が現れた。

 片方は金髪で長身のまな板女。
 女らしさ全くねぇー……。
 興味ないわ、あれは殺そう。

 もう片方は銀髪の美少女だった。
 なんという美しさだ……!? あれは間違いなくとんでもなさすぎる高値で売れる……!
 生け捕りにして売り飛ばしてやろうフフフ。

「なんなんですか貴方たちは!? 村長が倒れちゃったんですけど、どう責任取るつもりなんですか!? この方が死んでしまわれたらこの村はお終いなんですよ!?」

 まずは村人のふりをして話しかける!
 俺たちが盗賊であることはまだバレていないはず。

 あの二人が善良な村人に手をかけてしまった罪悪感でパニックになっているうちに不意打ちする!
 我ながらナイスな作戦だ!

「むっ、村人のふりをしたって無駄だぁ!」

『そ、そうだぞっ! お、おおおお前たちがとうじょく……盗賊だということは見破っておるのだからなぁっ!』

 何ィィィィッ!? バレているだとォォォッ!?
 ……いや、まだだ! カマをかけられているだけの可能性がある!
 動揺するんじゃない、俺!

「貴方たち失礼じゃないですか! 人をいきなり犯罪者呼ばわりして!」

「そんなこと言ったって俺たちの目は欺けないぞ!」

『欺けないったら欺けないんだ!』

「無実の人を轢いてしまった罪を認めたくないだけでしょうが! 大人しく罪を認めて謝りなさい! 私も一緒に謝るからほら!」

 鉄の塊の中からもう一人女が現れた。
 白髪はくはつ巨乳の美人だぁラッキー……じゃなくて、あの女よく見たら足元が透けてやがる!?
 人じゃない! ……レイスか!?

「……ということは貴様はネクロマンサーか! どうやら最初から俺たちの正体はバレていたようだな! 俺たちを討伐しに来た冒険者どもめ!」

「そ、そそそそうだぜ! 俺たちはお前らを討伐しに来た!」

『えーッ!? ホントに盗賊だったじゃなくて我は最初から気づいていたぞ!』

「本当に盗賊だったとは……。なぎさも零華も運がよかったですね」

 バレてしまっては仕方ない!
 俺たちの実力で仕留めるまでよ!

『フッ、ここは我に任せるがいい! この程度の相手など我だけで充分だ』

 急に自信満々になった銀髪美少女が一歩前に出る。
 ぼふんっと煙が発生したかと思えば、次の瞬間そこには白銀の狼がたたずんでいた。

『命が惜しくば大人しく捕まってもらおうか』

 なんという美しさ……! なんという存在感……!
 人に変化できるなんて、この御方は間違いなく神獣様だ!

 お、おおお俺たちは神獣様をあんな目で見てしまった上にとんだご無礼ををを……。


「「「「「た、大変っ、申し訳ございませんでしたぁぁぁぁっ!!!」」」」」


 命を見逃してもらえるだけでも温情だ。
 俺たちは精一杯の土下座をして大人しく捕まった。





◇◇◇◇


「俺たちは最初からわかってたぜ! だよな、零華?」

『そ、そうだぞ! わかっていたんだぞ!』

「ふーん」

 俺たちはシロナにジト目で見られながら車を改造する。
 王都はすぐ近くだし街道もあるからな。
 ここからはオフロード車よりたくさん人数を乗せられる車のほうがいい。
 ちょうど盗賊団を十名ほど捕縛したことだし。

「おーし、バス完成! 再出発するぞー!」

『なぎさ、ガイド的なアナウンスして!』

「右手をご覧ください。森があります。左手にも森があります。森ですね」

「いやヘタクソか!」

 車に盗賊たちを詰め込んで俺たちは再出発する。
 人轢いちまった時はどうなることかと思ったが運よく盗賊で助かったぜ。

 ほどなくして俺たちは王都にたどり着いた。
 意気揚々と門番の下に向かったら、なぜか職質されることになった。

「そちらの狼は神獣様で間違いないか……?」

『我、神獣! 名前は零華! で、こっちがなぎさ! 我の飼い主だ!』

「どうも。神獣の飼い主をやっている無職の星宮なぎさだ」

「神獣の飼い主ィッ!?」

 めちゃめちゃ驚かれた。
 森でミリアたちにあった時もこんな感じだったな。
 やっぱこの世界の人たちからしたら神獣を飼うなんて予想もつかないのだろう。

「なぎさの言っていることは本当ですよ。あ、私は元人間で無職のシロナです」

「レイスが当たり前のように会話している!? まさか自我があるのか!? こんなレイス初めて見た……」

『シロナはしっかり者だぞ!』

「きゅー」

「なっ!? この魔物はカーバンクル!? 幻獣まで手なずけてしまったのか!?」

『コンちゃんは我らの癒しだ!』

「コンちゃんの可愛さなら十時間は余裕で語れるぜ! 聞くか?」

「……いや、遠慮しとく」

 零華と俺が食い気味に詰め寄ると、衛兵は困惑した様子で断ってきた。
 そうか……聞かないのか……。
 ちょっと残念。

「で、このサルとゴリラとチンパンジーはなんだ?」

「俺の手下だ」

「は? 手下? テイムしたとかじゃなくて?」

「俺、こいつらのボスやってるんだ」

「お前は何を言っているんだ? ちょっと理解が追いつかない」

「追いつきませんよね、わかります。私もなぎさが『群れのボスの座を賭けて勝負しようぜ』とか言い出した時は何言ってんだコイツってなりましたよ」

 シロナが衛兵に共感していた。
 俺ってそんなにはちゃめちゃな風に見えてるんだろうか。

「王都に来た理由は?」

「『遠足だ』」

「幼稚園児かな?」

「……目的はわかった。で、後ろの縄で縛られている連中はなんだ? 神獣とかの衝撃で聞くの忘れちまってた」

「ああ、あれ盗賊団。なんかいたから捕まえといた。金くれ!」

「言い方もっと他にあるだろ」

「わかった。報奨金の手続きをするから少し待っててくれ」

 盗賊団を衛兵たちに引き渡して待つこと数十分。
 ようやく王都へ入る許可が出た。

 おっしゃー、遠足行くぞ!

「おやつは三百円までな!」

『先生ー! バナナはおやつに入りますか?』

「バナナはデザートなのでおやつには入りません!」

『やったー! 百本持ってっちゃお!』

 俺たちはスキップしながら王都に入る。
 後ろで衛兵の人がぼそりと呟いた。


「こんな神獣見たくなかった」

「いつもこんなですよ」

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