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第19話 メシのうまさで異世界人をビックリさせてやったぜ!

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『コンちゃんと風呂入ってくるね』

「きゅい~」

 ペットコンビは冒険者組に興味がない様子で退出していった。
 残った俺とシロナでいろいろと話を聞いてみるか。
 まずは自己紹介してもらおう。

「俺たちはAランク冒険者パーティー『究極浪漫砲』だ。俺はカイト。このパーティーのリーダーをしているシーフだ」

「俺はリック。前衛を務めるタンクだ」

「私はミリアです。バフをかけれる攻撃特化担当です!」

 細身の男がカイト。
 斧使いっぽい屈強な男がリック。
 魔法使いの女がミリアと名乗った。

 バフで強化してからリックがヘイトを稼ぎ、カイトが隙を作ったところでミリアがドデカい攻撃をぶちかますってわけか。
 パーティーバランスいいな。

「Aランク冒険者なら簡単に稼げると思うのですが、なぜこんな危険な場所へ来たんですか? ……魔境ここで死んだ私が言うのもあれですけどね」

 シロナが不思議そうに尋ねる。
 ただ生きていくだけなら、わざわざこんなところまで来る必要ないもんな。

「俺たちには金が必要なんだ」

「訳アリですか。危険を冒してまで稼がないといけないほどの……」

「ああ。カジノで豪遊するために大金が必要なんだ」

「ただのギャンブル中毒者じゃねぇか!」

「勘違いしないでくれ。何かあった時のために充分な貯金をして、必要経費や生活費に余裕を持たせた上で残りの金をギャンブルに全ベットしているだけだ」

「堅実なのか中毒者なのか分かんねーな」

「それに、私たちはもう堅実に生きていくことなんてできないんです……!」

 ミリアが切実な様子で訴えた。

「一回の仕事で大金がドンと入ってくる喜びに脳が破壊されちゃって……ちまちま稼ぐだけじゃ満足できないんです……!」

 聞けば、三人は魔境に来たら数日はこもって魔物狩りするとのここ。
 高く売れる魔物をできるだけたくさん持ち帰って、一度の遠征でどれだけ多く稼げるのか?
 それしか考えることができないそうだ。

「魔物を売っ払ってどんだけ稼げるのか、その最高記録を塗り替えたい」

「ギャンブルでとんでもない額の大金当ててみてぇ」

「私たちは脳汁でびっしゃびしゃに濡れ散らかしたいんです」

「限界ギャンブラーすぎるだろ、お前ら」

 三人もれなく変人だった。
 ギャンブル中毒者こえぇ~。

「高く売れる魔物を狩ってるって言ってたが、狙ってる魔物とかいるのか?」

「今はカワウソの魔物をメインターゲットにしていますね。ちょうど需要に対して供給がゼロになっているので、高値で売りさばけるチャンスなんです」

 カワウソ!?
 あの超絶可愛い生き物がこんなとこにいるのか!?
 マジかよ、魔境最高じゃん!

「俺もカワウソ探しについていっていいか? あの天使みたいな可愛い姿を拝みてぇ~」

「「「カワウソが可愛い……?」」」

「正気ですか、なぎさ」

 なぜか全員から引かれた。
 えぇ~、コツメカワウソめっちゃ可愛いだろ。
 動物園のアイドルだぞ、アイドル。
 そう言っても過言じゃねーと思うんだが。

「まあ同行するのは別に構わねぇが」

「助けてもらった礼にもなるしな」

「……なりますかね? 一緒にカワウソ探しじゃ釣り合ってない気がしますけど」

 引かれた理由は結局分からずじまいだったが、とりあえずカワウソ探しに同行させてもらえることになった。
 明日が楽しみだぜ!
 カワウソに会えるといいな~。



 そして翌朝。
 一番起きした俺は朝からペペロンチーノを作った。

 うまいペペロンチーノを作るためのコツは、にんにく・鷹の爪を弱火で五分以上炒めて油に香りとうま味を移すこと。
 ゆで汁と油を乳化させることの二点だ。
 この二点さえクリアすればうまくなること間違いなしだぜ。

『うめー!』

「朝からこれは天国です」

「こ~ん」

 うまそうにペペロンチーノを食べる零華たちを、冒険者組が羨ましそうに見つめていた。

「お前らにも作ってやるよ。カワウソ探しに連れて行ってもらう礼だ」

「いいんすか!?」

「ありがてぇぜ!」

「この料理食べるのは初めてです……! わくわく!」

 というわけで冒険者組にもペペロンチーノを振舞う。
 初めて見る料理を恐る恐る食べた冒険者組は、目を輝かせて一心不乱に食べ始めた。

「うますぎだろ!? なんだこの料理!」

「その辺の店の料理とは比べ物にならねぇ!」

「パスタの中でこれが一番好きです、私!」

「「俺も!」」

『そうだろうそうだろう!』

「なぎさのご飯は美味しくて当然です!」

「きゅい!」

 なんか零華たちがメシのうまさでマウントを取り始めた。
 作ったの俺なんだけどな。
 みんなが喜んでるならまあいいか。

 こうして朝メシを済ませた俺は、冒険者組と共にカワウソ探しに出掛けた。
 冒険者組からこの世界の街についてなどいろいろな話を聞きながら歩いていると、ついにカワウソと対面することができた。

「あれが俺たちの狙っているカワウソだ」

「あれがカワウソ……」

 俺が想像していたカワウソはキュートで可愛らしい生き物だ。
 しかし、現れたのはとてもカワウソとは思えない狂気に満ちた化け物だった。

 体長五メートルほどの化け物カワウソがワニを踊り食いしていた。

「カワウソってコツメじゃなくてオオカワウソのほうかよ!」

 オオカワウソを知らない人は画像検索してくれ。
 到底カワウソとは思えない恐ろしい生き物が出てくるから。
 可愛さの正反対の極致に到達したみたいな見た目してるぞ、オオカワウソは。

「やるぞ!」

「おう!」

「バフかけました!」

 ミリアが杖を掲げると、冒険者組全員が淡い光に包まれた。
 斧を担いだリックがオオカワウソと正面から殴り合う。

 リックに狙いを定めたオオカワウソの眼球に、カイトの投げたナイフが突き刺さった。
 オオカワウソが悲鳴を上げる。

 その隙に、ミリアが魔法を放った。

「デスフレイムノヴァ!」

 紫の爆発がオオカワウソに直撃する。
 キレイに首から上だけが消し飛んだ。

「息ピッタリだなお前ら」

「一応俺ら魔境常連だから」

「Aランク程度の魔物なら遅れはとらねぇぜ!」

「このくらい序の口ですよ!」

 ミリアがオオカワウソの死体を【アイテムボックス】に仕舞う。
 目的を達成したのでいったん帰宅することにした。

「カワウソを見れてよかったですね、なぎささん!」

「よかった。……よかったのか? いや、よくないな」

「なんで自問自答してるんですか。大きさこそ違えど、カワウソはみんなあんな見た目ですよ」

「えっ!?」

 嘘だろ、この世界にはコツメカワウソはいないのかよ……。
 もしくは超レアか生息域が限られていて冒険者組が存在を知らないか。

 とにかく、可愛いカワウソを見れなかったことだけは確かだった、残念。

「アイスでも食べて気分転換するか!」

 俺は帰宅するなり一目散に冷蔵庫に向かう。
 タッチパネルに十二桁のパスワードを入力した。

 前に一度、不法侵入してきた邪竜ちゃんに盗み食いされちまったからな。
 対策でオートロックとパスワードを導入したってわけだ。
 これで邪竜ちゃんに冷蔵庫を漁られる心配はない。

 俺は意気揚々と扉を開いた。



『お帰り!』

 邪竜ちゃんが入っていた。

『寒かったのじゃ!』

「そのまま凍えて朽ち果ててくれ」


 どうやって十二桁のパスワード突破したんだよ。
 適当に入力して当たるような確率じゃないだろ。
 俺、本ッッッ当にコイツのことが恐ろしいよ。
 ガチで誰か助けてくれ!

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