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第1話 魔境に異世界転移させられたので、好き勝手スローライフすることにした!

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 俺はただの一般人、星宮ほしみやなぎさ!
 夜中に日課のランニングをしていたところ、野良猫たちの怪しげな集会現場を目撃した。
 集会を見るのに夢中になっていた俺は、真横から迫ってくるトラックに気づかなかった。

 俺はそのトラックにかれ、目が覚めたら……真っ白な世界にいた。

「……さすがに死に方ショボすぎるだろこれは」

 ふわっと風が吹く。
 真っ白な世界に、神々しいおじいちゃんが現れた。

『ほっほっほ。儂は神じゃ』

「もしもしポリスメン? 神を自称する不審者に監禁されちゃって……」

『待て待て待て待て!!! 儂は不審者じゃない! 神じゃ!』

「冗談だって。ーってるよ」

『突然じゃが、お主は死んだ』

「そうか。で?」

『え? 驚かんの……?』

「だってあれで死んでないほうがおかしいじゃん」

『それはそうじゃが飲み込み早ない?』

「よく言われる。んで要件は? わざわざ俺を神の世界? に呼んだってことはなんかあるんだろ?」

 神様はごほんと咳払いすると要件を話し出した。

『お主には儂の世界に行ってもらいたい』

「いいぞ」

『いいの!? まだ何も条件言ってないんだけど!?』

「いや~、ちょうど死んでて暇だったからさ。異世界転移……死んでるから転生? どっちにしろ、楽しそうだからウェルカム異世界!」

 人生楽しく生きてナンボだろ!
 さっき死んだばっかだけど。

『スキルは【鑑定】、【アイテムボックス】、【言語翻訳】をデフォルトで搭載。これで世界観の違いには困らんじゃろ。後は【創造】があったほうが便利か…………場所的なことも考えるとフィジカルもいじったほうが…………』

 神様がいろいろ調整している間、俺はランニングして時間を潰す。
 猫が可愛すぎて全然走れてなかったからな! 日課の続きだ。

 体感で二十キロほど爆走したところで調整が終わった。
 神様の調整の影響か、途中からどんどん体が軽くなっていって、最後のほうは人外みたいな速度で走れたぜ!

「ヨシ! じゃっ、行ってくる!」

『あ、転移先は魔境にしといたからよろしく!』

 視界が切り替わる瞬間、そんな言葉が聞こえてきた。

 魔境ってどういうこと?
 初耳なんだが!

「……あ、ついた」

 俺の視界に森が現れた。
 ところどころ異世界だなぁって感じの植物が生えてたりするが、雰囲気は日本に近い感じだ。

 耳をすませばセミの声がうっすらと聞こえる。
 季節は夏か、ラッキー。

「夜でもセミが鳴いてるのマジで日本のド田舎って感じだな」

 今俺がいる場所はそれなりに開けている。
 近くに小川が流れているし、ここを拠点にするか。

「……そうだ。【創造】ってやつで家建てられねぇかな」

 使い方は知らねぇが、字面からしていけんだろ!

「ってなわけで、クリエイト・マイホーム!」

 適当に叫んでみた。

 かなり大きいモダンな一軒家が現れた。
 しかも露天風呂付きだ!

 中に入ってみる。

 うおー、ひれぇー!
 キッチンの充実っぷりヤベー!
 ハイスペ業務用冷蔵庫までついてんじゃ~ん!

「蛇口ひねったら水出てくるんだが!? しかもトイレが水洗なんだが!?」

 なんで水道がつながっているのか謎だが、都合がいいので気にしないことにしよう。
 ご都合主義万歳。

「さてさて、本命の風呂は……って、洗面所もクッソ広いな」

 小さな旅館の脱衣所くらいはあるぞ。
 鏡だってデケェし。

「そーいえば、俺の外見って変わってたりするんだろうか?」

 鏡を見る。

 ぼさぼさの金髪ショート。
 つり目気味な碧眼。
 なぜか173㎝もある身長。

 相変わらず女らしさの欠片もねー姿が映っていた。

「外見変化は特になし……あ?」

 鏡の右上が曇っていることに気づいた。
 なぜか手形っぽい曇り方してるがたまたまだろ。

 とにかく風呂場見学じゃい!

「うおーーー!!! 室内風呂も露天風呂も充実してんなー!」

 今すぐ楽しみてぇところだが、俺の腹がぐ~~~と鳴った。

 実はこう見えて俺、料理が得意なんだよね。
 異世界記念に豪華なもん作りますか!

 俺は意気揚々と冷蔵庫を開く。


「調味料しか入ってねぇ……ッ!」


 ……まあいい。
 俺には【創造】があるんだ。
 出でよ、食料品!

「……あれ? 出でよ、食料品! 食料品……!」

 何も出てこなかった。
 食料品がダメだったのかと思ったが、他のもので試しても【創造】を使うことができなかった。

 俺はラノベでおなじみのステータスと唱えてみる。


────────

名前:星宮なぎさ
種族:人間だった
称号:自由人

生命ライフ:良好
魔力:完全消耗中

────────


 原因分かったよ。
 家の時に魔力を使い切ってしまったんだ。

 ……ところで、種族:人間だったって何?
 なんで過去形なんだよ。

 ぐ~~~と腹が鳴る。
 魔力が回復するまで水とマヨネーズで食いつなぐのはさすがに嫌だなぁ。
 肉を食いてぇ。

「……仕方ねぇ。狩りにいくか」

 俺は手刀で木を斬り刻み、即席の槍を作った。

 はるか彼方、アフリカに住むマサイ族は槍一本でライオンを狩るという。
 なら俺が槍を持ったら最強じゃね?

 というわけで森に突撃してみた。
 もともと趣味で夜に生物採取とかしてたから、視界が悪くてもスイスイ進めるぜ。

「お、いたいた!」

 二メートル超えのクソデカイノシシがのっしのっしと歩いているのを発見!
 幸先いいな!


────────

種族:デスファングボア
ランク:S
称号:死の牙

────────


「今夜は牡丹鍋じゃーーー!!!」

 俺は槍を突き出す。
 イノシシの体表に命中したが、その辺の木を加工しただけの槍じゃ傷一つつけることができなかった。

 ので俺は拳で仕留めることにした。


「パンチング牡丹鍋アターーーック!!!」

「プギィィィィィィィィィィ~~~!」


 よっしゃ~! 新鮮な肉ゲットだぜ!
 ちょうどいい感じに首から上を消し飛ばしたので、血抜きをスムーズに済ませることができた。

「えっさほいさえっさほいさえっさっさ!」

 イノシシを担いで帰宅した俺は、キッチンに備えられていたダマスカスナイフを使ってイノシシを手早く捌く。
 ほどなくして肉を取り出すことができた。

「今日食べる分はこれくらいでいいか」

 残りは【アイテムボックス】へぶち込んでおく。
 時間停止の機能ついてるから腐る心配しなくていいぜ!

「う~し、作ってくぞ~!」

 カセットコンロに鍋をセットする。
 今日は記念飯なのでBBQスタイルだ!

 まずは鍋にだしの素と水を入れて煮込む。
 次に味噌を入れまして、弱火にしたところでイノシシ肉を投入。
 そのまま弱火でじっくり煮込む。
 強火で煮るのは味噌の風味が飛ぶ&イノシシ肉がパサつく原因になるのでNGだ。

「肉だけじゃ寂しいよな」

 俺はその辺を探索する。
 ほどなくして、ノビルに似たネギ属の雑草を見つけることができた。
 きれいに洗ってから、球根をカットして鍋に投入する。
 球根は酢味噌で食べよう。

「さすがにごぼうは生えてないからごぼうパウダーで代用して、しいたけもグアニル酸パウダーしいたけ粉末で代用っと。これで煮込んで最後に味を調えれば完成!」

 牡丹鍋とノビル球根の酢味噌のできあがりだ。

 さっそくぱくり。

「うめ~~~! やっぱ牡丹鍋はいいな!」

 イノシシ肉のさっぱりした味に味噌の濃い風味が合うんだよな~。
 ノビルもどきもネギの代用として申し分ないし、球根の酢味噌もうめぇ。

 星空を眺めながら自分で獲った肉を食べるのは楽しかった。
 ……が、なぜか少しだけ物足りなかった。


「せっかく異世界に来たわけだし、いっちょやってみるかスローライフ! 人生楽しく生きてナンボだろ!」


 決めたぜ。
 俺は好き勝手生きて、この世界を楽しみまくってやる!

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