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虚無。
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「エレナ、今日は花を持って来たんだ。」
ノックもなしに入って来たのはアランだ。
何処か照れ臭そうに頬を少し赤らめ、パンジーの花の咲いた鉢を持ったアランは「ほらっ。」と言わんばかりに、パンジーの花を見せるが、エレナはたった一度パンジーを一瞥した後
「そう、、、。」たった一言呟いた。
アランは窓枠の少し空いたスペースにコトンッと持って来たパンジーの鉢を置くがが、窓枠は既にここ数日の間にアランが持って来た、色とりどりの花で埋め尽くされている。
花だけではない。
ぬいぐるみに絵画、宝石にドレスとここ最近王都で流行っている物は全て取り寄せエレナに買い与えた。
そうすれば、、エレナの笑顔が戻ると信じアランはエレナの笑顔を見る為であれば、少しの金も惜しまない。
部屋はそのお陰で今までと比べ豪華で華やかなものへと変わったにも関わらず、ロッキングチェアにキィキィと揺られるエレナが勿体無いと怒る事もなければ、喜ぶわけでもなく、アランを見て「そう、、、。」たった一言そう言うのだ。
こんなの嫌だ、、エレナの笑顔が見たい、、。
エレナと会話がしたい。
「エレナ、、ごめんね。ごめん、エレナ。謝るから、ねっ?お願いだよ、、私と話して欲しい。」
そんな思いで、涙ながらに謝罪の言葉をエレナに向けるが、そんなアランを見てもエレナは「そう、、、。」と返事する以外話してくれないのである。
「エレナ、、!嫌だ、、嫌だよエレナ。普通に話したい。君の笑顔が見たい。お願いだよエレナ。」
エレナが座る目の前に片膝をついたアランはそっとエレナの膝に置かれた手を握り必死に訴えるが、エレナはそれでも、「そう、、、。」それしか返してくれない。
そんなエレナを見たアランは顔を歪め「嫌だ、、嫌だよ、。」と駄々を捏ねるが、「そう、、。」以外に返事をしてくれないエレナを見て、何を思ったのか買って来たぬいぐるみの中から犬のぬいぐるみを引っ張り出して来たのだ。
「ほら、、ほら見て?エレナ。犬、好きだっただろう?ほら!ゴールデンレトリバーっていう犬なんだよ?可愛いだろう?」
エレナの膝にゴールデンレトリバーのぬいぐるみを乗せてやれば、僅かばかりではあるが、その口元が綻んだのをアランは見逃さなかった。
パァッと目を輝かせたアランは、「あぁ!!エレナ!!エレナエレナ!!」と少しばかりの感情を見せてくれたエレナを力一杯抱きしめ涙をダクダク溢しながら泣くのである。
「エレナ、、ごめんごめんよエレナ。」
泣きじゃくりながらも、椅子に座るエレナの足元に縋る男はフワフワとした髪の毛も相待って、何だか犬の様で
「ポム、、、。」っと、名前を呼びエレナが頭を撫でてやれば更に涙を零した。
「エレナ、、愛してる。本当に本当だ。これからはずっとずっとエレナの側にいるから。もう、絶対に離れないから、、。愛してる。」
青い瞳を涙で揺らしながら言うアランの言葉にエレナが「そう、、、。」っと言う事はなく、返事をするかの様に、アランの頭を優しく撫でつけてやれば、アランは目を弧の形にして泣いて喜ぶのだ。
その後、その言葉通りアランはエレナの側を必要以上に離れる事はなくなった。
今まであれだけ通っていたローゼの元にも全く行かなくなり、痺れを切らせたローゼが使用人に迎えに行かせてもアランがローゼの元に行く事は無くなった。
「ポム、、。いい子ね、、。ポム、」
うわ言のように遠くを見つめながらエレナはアランの柔らかい髪を撫でる。エレナの手は白く綺麗で、撫でられれば心地が良いとすら思う。
アランの髪を撫でる時のエレナは口元に少し笑みを浮かべており、本当は名前を呼んで欲しい処ではあるが、アランはエレナの膝に縋り、されるがままに頭を撫でられるのだった。
ノックもなしに入って来たのはアランだ。
何処か照れ臭そうに頬を少し赤らめ、パンジーの花の咲いた鉢を持ったアランは「ほらっ。」と言わんばかりに、パンジーの花を見せるが、エレナはたった一度パンジーを一瞥した後
「そう、、、。」たった一言呟いた。
アランは窓枠の少し空いたスペースにコトンッと持って来たパンジーの鉢を置くがが、窓枠は既にここ数日の間にアランが持って来た、色とりどりの花で埋め尽くされている。
花だけではない。
ぬいぐるみに絵画、宝石にドレスとここ最近王都で流行っている物は全て取り寄せエレナに買い与えた。
そうすれば、、エレナの笑顔が戻ると信じアランはエレナの笑顔を見る為であれば、少しの金も惜しまない。
部屋はそのお陰で今までと比べ豪華で華やかなものへと変わったにも関わらず、ロッキングチェアにキィキィと揺られるエレナが勿体無いと怒る事もなければ、喜ぶわけでもなく、アランを見て「そう、、、。」たった一言そう言うのだ。
こんなの嫌だ、、エレナの笑顔が見たい、、。
エレナと会話がしたい。
「エレナ、、ごめんね。ごめん、エレナ。謝るから、ねっ?お願いだよ、、私と話して欲しい。」
そんな思いで、涙ながらに謝罪の言葉をエレナに向けるが、そんなアランを見てもエレナは「そう、、、。」と返事する以外話してくれないのである。
「エレナ、、!嫌だ、、嫌だよエレナ。普通に話したい。君の笑顔が見たい。お願いだよエレナ。」
エレナが座る目の前に片膝をついたアランはそっとエレナの膝に置かれた手を握り必死に訴えるが、エレナはそれでも、「そう、、、。」それしか返してくれない。
そんなエレナを見たアランは顔を歪め「嫌だ、、嫌だよ、。」と駄々を捏ねるが、「そう、、。」以外に返事をしてくれないエレナを見て、何を思ったのか買って来たぬいぐるみの中から犬のぬいぐるみを引っ張り出して来たのだ。
「ほら、、ほら見て?エレナ。犬、好きだっただろう?ほら!ゴールデンレトリバーっていう犬なんだよ?可愛いだろう?」
エレナの膝にゴールデンレトリバーのぬいぐるみを乗せてやれば、僅かばかりではあるが、その口元が綻んだのをアランは見逃さなかった。
パァッと目を輝かせたアランは、「あぁ!!エレナ!!エレナエレナ!!」と少しばかりの感情を見せてくれたエレナを力一杯抱きしめ涙をダクダク溢しながら泣くのである。
「エレナ、、ごめんごめんよエレナ。」
泣きじゃくりながらも、椅子に座るエレナの足元に縋る男はフワフワとした髪の毛も相待って、何だか犬の様で
「ポム、、、。」っと、名前を呼びエレナが頭を撫でてやれば更に涙を零した。
「エレナ、、愛してる。本当に本当だ。これからはずっとずっとエレナの側にいるから。もう、絶対に離れないから、、。愛してる。」
青い瞳を涙で揺らしながら言うアランの言葉にエレナが「そう、、、。」っと言う事はなく、返事をするかの様に、アランの頭を優しく撫でつけてやれば、アランは目を弧の形にして泣いて喜ぶのだ。
その後、その言葉通りアランはエレナの側を必要以上に離れる事はなくなった。
今まであれだけ通っていたローゼの元にも全く行かなくなり、痺れを切らせたローゼが使用人に迎えに行かせてもアランがローゼの元に行く事は無くなった。
「ポム、、。いい子ね、、。ポム、」
うわ言のように遠くを見つめながらエレナはアランの柔らかい髪を撫でる。エレナの手は白く綺麗で、撫でられれば心地が良いとすら思う。
アランの髪を撫でる時のエレナは口元に少し笑みを浮かべており、本当は名前を呼んで欲しい処ではあるが、アランはエレナの膝に縋り、されるがままに頭を撫でられるのだった。
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