浮気してるくせに、旦那様は私を逃してはくれない。

霙アルカ。

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狂った友人。

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何故、、何故。
何で、、なんで、、何で。。

「なん、、で、、。」

エレナが問うても誰も答えてなどくれない。
エレナが考えても、今自分に起こっている事など出来るわけがない。

どうしてこうなっているか等、エレナが一番聞きたい事だ。

「あはっ、変な顔。」

プロポーズをいきなりしたかと思えば、嫌がるエレナを引き摺りベッドに放り投げたレオンは、恍惚と顔を歪め恐怖に顔を歪めるエレナを見下ろすのだ。

「なっ、なに、、?どうしたのレオン、なんか変だよ?、、全く面白くないけど何、、何の冗談??」

そう、問うエレナの声は震えており、この状況が冗談で済まない事もわかっている。
何と言っても問われた本人は、未だ怯える表情を浮かべるエレナを見下ろし、エレナがレオンと距離を取ろうと引き下がれば、追うようにレオンがエレナのベッドに乗って来るので、ギジリとベッドが鈍い音を立てた。

「エレナちゃんはさ~、男の子か女の子どっちがいい?俺はやっぱり1人目は男の子がいいなぁ。」

不気味に微笑みながらそう問うて来る男をエレナは知らない。
レオンとは凄く深い付き合いをしたわけではないが、味方のいない侯爵邸で唯一気軽に話ができる存在であり、エレナの話を聞いてくれる存在で、勝手に友人だとすら思っている。

少し適当で、いつもゲラゲラと笑っている印象はあるが、決してエレナを馬鹿にする様に笑ったり、エレナが嫌がる様な事をする人ではなかったはずなのだ。

アランとは幼馴染だと聞いているし、レオンがそこまで2人を憎んでいる理由などわからないのに、アランを傷つける為にエレナを傷つけようとする事も、エレナには到底理解などできない。

ジワジワと近づいて来るレオンから逃れようと後ずされば、「あ~、でも双子を産むってのもありだよね?」不気味で、、それでいてどこか幸せそうにレオンは微笑むのだ。

本気を出せばエレナ等直ぐに捕まえられるだろうに、レオンはこの状況を楽しんでいるのか逃げるエレナをケタケタと笑いながら追いかけて来るもので、エレナは恐怖と悲しさから既に涙をボタボタと溢している。

だって知らない、、こんなに狂ったレオンを。
何でアランがそれ程までに憎まれているのかもわからない。
何で自分が、こんな目に遭わなければいけないのかも、、分かるわけない。

「レッ、、レオン、変だよ?ねっ、いつものレオンに戻って?今なら怒らないから、ねっ?」

「あのさぁ、エレナちゃんの言ういつもの俺って何??」

逃げるエレナの足を捕まえたレオンは抵抗するエレナの足を引っ張り、自分の方へと近づけその上へと跨った。

ガタガタと震えるエレナを見下ろす瞳は暗く濁り、エレナを見ているはずなのに、その目は更に遠くを見ている様にすら思える。

「俺ね??寧ろ皆んなにはいつもいつもニコニコニコニコニコニコニコニコしてやつてんの。何でかわかる?」

フルフルと涙で顔をグチャグチャにしたエレナが首を振れば、その首を片手でガシッと固定されてしまう。

抵抗する事もできる事も出来ず、深緑色のレオンの瞳から逃げる事すら許されない。

「殺す前にさ、ニコニコしてたら殺されるなんて思わないじゃん?」

「誰を、、?」

聞かなくても、何となくわかった。
だってこのレオンは、先程から2人を憎いと言っているのだもの。

「エレナちゃんも嫌いっしょ?だから、俺らが子供産んで、結婚しちゃえばアランもショック受けるじゃん?そんでアランがショックでどうにかなったらローゼも傷つくっしょ?」

「だからさ!作ろうよ!俺、男の子と女の子2人とも欲しいなぁ、、。」

目の前で楽し気に笑う男は、きっととうに狂ってるのだろう。
ケタケタと引っ切り無しに笑う男に、以前までのレオンの面影は既に消え失せている。

「いっ、、嫌!変だよ!そんな考え、おかしいよ!レオン!」

怒り手元にあった枕を投げつけてやれば、レオンの顔面に命中し、ボフンと音が鳴る。

がっ、、枕が落ち現れた顔を見てエレナは絶句した。
レオンは不気味な程に口角を吊り上げ、エレナはとってもとっても怖がっているのに関わらず、レオンはとっても幸せそうに微笑むんだもの。

「気持ち悪い、、。」

エレナが思わずぽつりと溢した言葉をレオンはどう受け取ったのだろうか。

逃げようとするエレナを片手で押さえたまま、瞬き一つせず見下ろす姿は、まるで何かに取り憑かれているようで、何も読み取れない瞳はただただ怖く暗く濁った瞳から、何故かエレナは目を離せないでいた。
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