浮気してるくせに、旦那様は私を逃してはくれない。

霙アルカ。

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壊れた幼馴染。

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ポカポカと心地の良い陽の光を浴びながらロッキングチェアに揺られるエレナは窓をコンコンとノックされる音で微睡みから目を覚ました。

未だ重い瞼をコシコシと擦った後、窓に視線を向けると赤い髪を風に靡かせた男が窓をノックしながら何やら言っており、その口元は「やぁ。」と言っている様に見える。

まだ、夢を見てるのかな。

先程擦った目とは逆の目を擦りもう一度窓を見れば今度は「開けて。」とニンマリと楽しげな笑みを浮かべる男が言うのだ。

だが、手で大きくバツを作り、ブンブンと首を振るエレナは断固として窓を開けてやる気などない。

きっとバレたらアランにすっごく怒られる!怒ったアランはとても怖い、、それはそれは怖い、、。

だから駄目だと、何度も首を振った後エレナはまた目を瞑りロッキングチェアに揺ら揺らと揺られることにした。
否、夢だと思う事にした。

「あーぁ、酷いなぁエレナちゃん。こんなにハンサムな男の子が開けてって言ってるのにさぁ。」

「なんで!?かっ、、かぎ!!!」

「まじおもろいその反応。魔法使えるやつなら大抵勝手に出入りできると思うけど?」

そっ、、そんなの悪い事し放題ではないのか?と思うが、実際な所魔法が使える物は生涯暮らしに困らない程の金が貰えるのと、国庫や重要書類が入った金庫等には魔法がかかってる故、その魔法をかけたものより強い魔力を持った人が開けねば開かない様になっている。

その為犯罪などは起きていないが、「えー、エレナ親友なのに開けてくれないとかさびしぃ~。」なんて言いながらエレナの髪を弄ぶ男を見れば、防犯面がとても心配になる。

「アランが怒るから!帰ってレオン!」

「えー、何で何で?俺わかんなーい。アランもローゼとベッタリイチャイチャしてんのに、わかんなーい。」

「アランは、、アランはそんなのしてないもん!いつも私に好きって言ってくれるもん!」

そうなのだ、、アランはあの日からエレナの元へ足しげなく通ってくれており、エレナの元に来ると必ず愛の言葉を沢山告げてくれる。

『好きだ。』とか『愛してる。』とかどれだけありきたりな言葉でも、エレナはアランに愛を囁かれる度に、最早何も考えられなくなり、只々幸せだと感じるのだ。

頬を膨らませプンスカ怒るエレナに対し、レオンは何やら人の悪い笑みを見せた。
ニンマリとそれはそれは何か楽しそうな事を思いついた子供の様に何処か無邪気で少し怖い。
そんな笑顔だった。

「この前俺と離れてから扉開けただろ?」

問いにエレナはただ頷いた。

頷けばレオンは余計に楽しそうに、幸せそうに、少し私を馬鹿にした様に笑うのだ。
そう、仕掛けた罠に引っかかったと言わんばかりに笑うのだ。

「なに、レオン?何で、何で笑うの?」

「いやさぁ、どれにするか悩んだんだよ俺も。エレナちゃんの事は好きだし、エレナちゃんに魅了かけて逆に俺の虜にするかとか。でも、それはあいつのが魔力高いし中々解けてねーから、いついってもかけれないしさー。」

「だから、セレシアの見た目にしたらなんかなっかなって、なった?なぁ、セレシア見てなんて言ってた?どうなってた?窓から見ててもカーテン閉まってて何のことやらだし、なぁ、教えてよー、どーなってたあいつ?なぁなぁ!!」

今、自分の目の前にいる人は、一体誰だろうか?

私が少し前まで話してたレオンはこんな風に人を馬鹿にした笑みを向ける人だっただろうか?

それに、、アランの口からもレオンの口からも出てくるセレシアって、、誰だろうか。
エレナには、わからない。

「せ、、セレシアって。」

エレナが聞き返すと、スンッとレオンから一瞬だが、笑みが消え

「妹、、。」
そう呟いた。
呟くレオンの声は耳をすましていなければ聞こえていなかったと思う程に小さい。

「妹???」

「そーそー、まー死んだけどねぇ。」

またケタケタと笑い出したレオンの瞳孔は開いており、エレナは何も言うことが出来ず、ただレオンを見るしかなかった。

「だからさ!俺アランとローゼが嫌がる姿を、傷つく姿を!死ぬ程悔しがる姿を見たい!あいつらがどうしたらいっちばん死にたくなるか、もー何年も考えてた!」
まるで、とっても明るい話を話すかの様にレオンは声高らかに言う物だから、きっと遠くから見たら楽しい話をしているように見えるだろう。

レオンからしてみれば、楽しい話に変わりないのかもしれないが。

「なっ、、なに言ってるの。レオン?」

呆然とレオンを眺めていたエレナがやっと言えたのはそれだけの言葉だった。

「あー、だからさ?エレナちゃん。」

くるりとエレナの方に振り返ったレオンはエレナの前に行き、跪く。
そう、それはまるで初めの頃アランがエレナにプロポーズをした時の様に。

「俺と結婚しよ?」

そう言った。
狂ってる、そう思った。
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