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幼馴染の過去。
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アラン・リルテッドには二人の幼馴染がいる。
一人はこの国の王の娘であり、王女のローゼ。
二人目は、伯爵家の一人息子であり、焦茶色の髪をしたレオンは既に炎の魔法を操る事ができた。
三人は、アランとレオンが17歳になるまで、多くて週に一度。少なくとも月に一度は欠かさず王の命により引き合わされたのである。
だが、アランにとって王宮で二人に会わされる時間はとても退屈だった。
ローゼは会いに行く度にギャンギャンと「ワンチャンが欲しい~。」などの我儘を言い、願いが叶わなければギャンギャンとまた泣き喚いた。
「やばくね!俺の魔法まじ天才!」
レオンはレオンでまだ幼く魔法が使えぬアランに対し、これ見よがしに己の技を見せつけてくるので、少しウザいと感じる。
退屈ではあるが、家に帰って親のヒステリックな叫び声を聞いているよりは、幼いローゼの泣き喚く声を聞いてる方がよっぽどマシだと思うのだ。
「ほら、ローゼ。遊んであげるからおいで。」
コイコイと手招きすれば、ニパァ!と満面の笑みで笑うローゼは妹のように可愛い。
「ローゼ!犬!犬が欲しい!」
犬の人形を抱きしめながら目を爛々と輝かせるローゼは犬が必ず貰えると思ってるのだろう、その瞳は期待で満ち溢れている。
これは面倒だ。
また、犬はいないと言ったり、あげられない。など言ったら、泣き喚かれる事は目に見えている。
「ほら、レオンが犬になるってさ。」
パチンと指を弾く度に、炎をボッと指から出して見せていたレオンは「ハッ!誰が!」と口答えするが「ほら、レオンお手。」と言って右手を出せば、己の手を添え「ワン!」と返事をするのだ。
魔法を毎日毎日自慢してくる所はウザいが、存外アランはレオンの事も気に入っている。
「わぁ!ワンチャン!ローゼにもお手して!」
「ワンワン!」
そんな戯れ合う二人にアランは優しげな笑みを向けるのだ。
時が経てば、三人でいる時間は当たり前となり、三人の友情は深くなった。アランにとって三人でいる時間こそ、心の落ち着ける時間となっていく。
アランが10歳になった頃、アランの父は娼婦の女性と浮気し、それを知った母は半狂乱になって、アランの父と己の腹をナイフで刺した。
執事の話では、父の腹は3回ナイフで刺されていたらしい。それでもまだ生きて懲りずに浮気をするのだから、実の父ながら大した者だと思う。
前から母は薄々浮気をしている事には気付いていたが、娼婦の女は何を思ったのか本妻にして欲しいと父にねだり、適当な返しを本気と捉えたのか、家にまで押しかけて来たのである。
家に帰り、血だらけの父の書斎を見てアランは思った。面倒だと。
そして、同時にどうして自分の家はこんなにもおかしいのだろうと、悲しくなった。
アランは父にも母にも愛された事など一度もない。
物心ついた時から、喧嘩ばかり。時にはお互いが居ないのを見計らって、子供の目も憚らず浮気し合ってるのをアランは知っている。
隠す気もなく堂々としているのだから、逆に清々しいとすら思う。
10歳になったアランは、この家が狂ってる事などとうの昔に気づいている。
父と母はお互い何とか一命は取り留めたが、元々深い溝が出来ていたのに関わらず、今回の一件で更にその溝は大きくなり、母に至っては父と似た顔をしたアランを父に隠れて打った。
「何故!!何で、他の女の所に行くのよ!!!!」と泣き喚く女は何とも醜い。
己の怒りを子に向ける母が憎いとは思わない。
ただ悲しかったし、可哀想な人だと思った。
10歳にもなれば自身の小さな傷くらい治せることも出来たが、あえてアランは治すことはしなかった。
そうすれば、父に心配され、母には「ごめんなさい。」と抱きしめてもらえるかと思ったが、二人がアランの顔を見る事はないのだ。
「アラン、お前目すんげー腫れてんじゃん!!」
「わぁ、痛そう、、、アランどうしたの、可哀想。」
王宮の庭園に集まる二人の元へ行けば、レオンは腫れたアランの目を見て腹を抱え笑い転げている。
失礼なやつだ。
ローゼはアランの痛々しく腫れた目を、自分の事のように心配し、目に涙を浮かべている。
レオンは笑い転げてはいるが、アラン自身を見てくれ、ローゼは心配をしてくれる。
アランにとって、敵のいない三人で過ごす庭園は心を癒す唯一の場所となった。
そして、目が腫れた日からアランの母は顔を殴る事はやめたが、体をぶって殴った。
アランが傷を治せる魔法を使えるのをいい事に、深い傷までつけるのだ。
体の傷は治るが、アランの心の傷は少しずつ少しずつと、深くなっていく事に誰も気づかない。
一人はこの国の王の娘であり、王女のローゼ。
二人目は、伯爵家の一人息子であり、焦茶色の髪をしたレオンは既に炎の魔法を操る事ができた。
三人は、アランとレオンが17歳になるまで、多くて週に一度。少なくとも月に一度は欠かさず王の命により引き合わされたのである。
だが、アランにとって王宮で二人に会わされる時間はとても退屈だった。
ローゼは会いに行く度にギャンギャンと「ワンチャンが欲しい~。」などの我儘を言い、願いが叶わなければギャンギャンとまた泣き喚いた。
「やばくね!俺の魔法まじ天才!」
レオンはレオンでまだ幼く魔法が使えぬアランに対し、これ見よがしに己の技を見せつけてくるので、少しウザいと感じる。
退屈ではあるが、家に帰って親のヒステリックな叫び声を聞いているよりは、幼いローゼの泣き喚く声を聞いてる方がよっぽどマシだと思うのだ。
「ほら、ローゼ。遊んであげるからおいで。」
コイコイと手招きすれば、ニパァ!と満面の笑みで笑うローゼは妹のように可愛い。
「ローゼ!犬!犬が欲しい!」
犬の人形を抱きしめながら目を爛々と輝かせるローゼは犬が必ず貰えると思ってるのだろう、その瞳は期待で満ち溢れている。
これは面倒だ。
また、犬はいないと言ったり、あげられない。など言ったら、泣き喚かれる事は目に見えている。
「ほら、レオンが犬になるってさ。」
パチンと指を弾く度に、炎をボッと指から出して見せていたレオンは「ハッ!誰が!」と口答えするが「ほら、レオンお手。」と言って右手を出せば、己の手を添え「ワン!」と返事をするのだ。
魔法を毎日毎日自慢してくる所はウザいが、存外アランはレオンの事も気に入っている。
「わぁ!ワンチャン!ローゼにもお手して!」
「ワンワン!」
そんな戯れ合う二人にアランは優しげな笑みを向けるのだ。
時が経てば、三人でいる時間は当たり前となり、三人の友情は深くなった。アランにとって三人でいる時間こそ、心の落ち着ける時間となっていく。
アランが10歳になった頃、アランの父は娼婦の女性と浮気し、それを知った母は半狂乱になって、アランの父と己の腹をナイフで刺した。
執事の話では、父の腹は3回ナイフで刺されていたらしい。それでもまだ生きて懲りずに浮気をするのだから、実の父ながら大した者だと思う。
前から母は薄々浮気をしている事には気付いていたが、娼婦の女は何を思ったのか本妻にして欲しいと父にねだり、適当な返しを本気と捉えたのか、家にまで押しかけて来たのである。
家に帰り、血だらけの父の書斎を見てアランは思った。面倒だと。
そして、同時にどうして自分の家はこんなにもおかしいのだろうと、悲しくなった。
アランは父にも母にも愛された事など一度もない。
物心ついた時から、喧嘩ばかり。時にはお互いが居ないのを見計らって、子供の目も憚らず浮気し合ってるのをアランは知っている。
隠す気もなく堂々としているのだから、逆に清々しいとすら思う。
10歳になったアランは、この家が狂ってる事などとうの昔に気づいている。
父と母はお互い何とか一命は取り留めたが、元々深い溝が出来ていたのに関わらず、今回の一件で更にその溝は大きくなり、母に至っては父と似た顔をしたアランを父に隠れて打った。
「何故!!何で、他の女の所に行くのよ!!!!」と泣き喚く女は何とも醜い。
己の怒りを子に向ける母が憎いとは思わない。
ただ悲しかったし、可哀想な人だと思った。
10歳にもなれば自身の小さな傷くらい治せることも出来たが、あえてアランは治すことはしなかった。
そうすれば、父に心配され、母には「ごめんなさい。」と抱きしめてもらえるかと思ったが、二人がアランの顔を見る事はないのだ。
「アラン、お前目すんげー腫れてんじゃん!!」
「わぁ、痛そう、、、アランどうしたの、可哀想。」
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失礼なやつだ。
ローゼはアランの痛々しく腫れた目を、自分の事のように心配し、目に涙を浮かべている。
レオンは笑い転げてはいるが、アラン自身を見てくれ、ローゼは心配をしてくれる。
アランにとって、敵のいない三人で過ごす庭園は心を癒す唯一の場所となった。
そして、目が腫れた日からアランの母は顔を殴る事はやめたが、体をぶって殴った。
アランが傷を治せる魔法を使えるのをいい事に、深い傷までつけるのだ。
体の傷は治るが、アランの心の傷は少しずつ少しずつと、深くなっていく事に誰も気づかない。
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