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旦那様の恋人。
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黒い髪に黒い瞳をした見目麗しい少女と青年が手を繋ぎ仲睦まじく、街の中を歩く姿は、行き交うものの視線を留める。
「アラン、デートなんだから手は恋人繋ぎがいいの!」
やり直しと言わんばかりにアランと一度手を離すと、少女はアランに自分の掌を向けた。
アランに手を出す少女は、アランの幼馴染のローゼである。
王女が街の中を歩いているのも結婚している男性と手を繋いでいるのも、バレて仕舞えば騒ぎの元になる為、今は周りからは二人を見ても誰か分からないように魔法をかけているのだが、見目麗しい二人が街を歩けば、余計注目のまとになってしまう事に二人は気づいていない。
魔法をかけている本人にはローゼが普段と変わらず見えているが、ローゼにはアランが黒髪黒目の全く違う見た目に見えていても、アランはアランだから変わらず好きなのであった。
「ほら、アラン。は!や!く!恋人繋ぎをするの!」
ローゼが催促すれば、アランは「うーん。」と何やら迷ったあと、ローゼの手をギュッと恋人繋ぎで握ってくれる。
アランの自分より大きな手がローゼの手に重なれば、ローゼは堪らなく幸せな気持ちになり、アランが好きなのは自分だと、確信ができる。
だって、この一ヶ月。アランは足し気なくローゼの元へと通ってくれているのだ。
ローゼが家で寛ぎたいと言えば、横で本を読んでくれ。ローゼが一緒に寝て欲しいと言えば、添い寝だってしてくれた。
勝手に腕を使って腕枕をしてもらったりもしたが、怒らずに許してくれた。
なんなら、腕枕で眠ったフリをすれば、頭だって撫でてくれたのだ。
ローゼが街に行きたいと言えば連れて行ってくれるし、手も繋いでくれる。
アランはローゼの頼み事なら何でも聞いてくれるのだ。
プラチナブロンドの髪を持つエレナの事を思い出しながら、ローゼはほくそ笑む。
愛されてるって言ってたのに、全然愛されてないではないか。
彼女の言葉はきっと嘘を寄せ集めた言葉だったのだと思えば、あれだけ嫌いだったエレナなんて、最早どうでも良かった。
「ねね、アラン??」
大きな目でアランを見上げれば、「うん??どうした?」と聞き返される。
「エレナとは、どうなの?私アランに会ってていいのかな??怒られないかな??」
目に涙を溜め、俯くローゼの頭を大きな手が優しく撫でた。
ローゼを見るアランの瞳は優しく細められており、エレナの事を思い出しているのかも、、と思えば少し腹が立つ。
「大丈夫。エレナは怒んないよ。」
「嘘!だって前怖かったもん!」
「仲良くするように言ったから、、大丈夫。」
仲良くするようにって何?何で別れるって選択肢が無いの?かローゼはアランの考えている事が理解できない。
「私を捨ててエレナの所に行くんだ。」
アランの手を強く握り締め、歩くのをやめその場で俯いた。
「ローゼ。。。」
「だって、そうでしょう?別れてくれないもの。」
ぷぅっと頬を膨らませ拗ねて見せるが
「エレナは妻だ。」とローゼの求める返事をアランがくれる事はない。
なら、私は何?
「やっぱり、私を捨てるんだ。」
目にたっぷりの涙を溜め、うぅっ、、と泣いて見せれば、アランに抱きしめられる。
アランはとても優しい人。
だから、エレナと別れられない可哀想な人。
大丈夫。私、アランの為なら!!何だって出来るから!!
可愛らしい少女が今とんでもなく恐ろしい事を考えている事に気づきもしないアランは、街中の中心だと言う事も忘れ、力一杯少女を抱きしめてやる。
誰が見てるか何て、考えもせず。
この小さな少女は自分が守ってやらないと。そう考えるのだ。
「アラン、デートなんだから手は恋人繋ぎがいいの!」
やり直しと言わんばかりにアランと一度手を離すと、少女はアランに自分の掌を向けた。
アランに手を出す少女は、アランの幼馴染のローゼである。
王女が街の中を歩いているのも結婚している男性と手を繋いでいるのも、バレて仕舞えば騒ぎの元になる為、今は周りからは二人を見ても誰か分からないように魔法をかけているのだが、見目麗しい二人が街を歩けば、余計注目のまとになってしまう事に二人は気づいていない。
魔法をかけている本人にはローゼが普段と変わらず見えているが、ローゼにはアランが黒髪黒目の全く違う見た目に見えていても、アランはアランだから変わらず好きなのであった。
「ほら、アラン。は!や!く!恋人繋ぎをするの!」
ローゼが催促すれば、アランは「うーん。」と何やら迷ったあと、ローゼの手をギュッと恋人繋ぎで握ってくれる。
アランの自分より大きな手がローゼの手に重なれば、ローゼは堪らなく幸せな気持ちになり、アランが好きなのは自分だと、確信ができる。
だって、この一ヶ月。アランは足し気なくローゼの元へと通ってくれているのだ。
ローゼが家で寛ぎたいと言えば、横で本を読んでくれ。ローゼが一緒に寝て欲しいと言えば、添い寝だってしてくれた。
勝手に腕を使って腕枕をしてもらったりもしたが、怒らずに許してくれた。
なんなら、腕枕で眠ったフリをすれば、頭だって撫でてくれたのだ。
ローゼが街に行きたいと言えば連れて行ってくれるし、手も繋いでくれる。
アランはローゼの頼み事なら何でも聞いてくれるのだ。
プラチナブロンドの髪を持つエレナの事を思い出しながら、ローゼはほくそ笑む。
愛されてるって言ってたのに、全然愛されてないではないか。
彼女の言葉はきっと嘘を寄せ集めた言葉だったのだと思えば、あれだけ嫌いだったエレナなんて、最早どうでも良かった。
「ねね、アラン??」
大きな目でアランを見上げれば、「うん??どうした?」と聞き返される。
「エレナとは、どうなの?私アランに会ってていいのかな??怒られないかな??」
目に涙を溜め、俯くローゼの頭を大きな手が優しく撫でた。
ローゼを見るアランの瞳は優しく細められており、エレナの事を思い出しているのかも、、と思えば少し腹が立つ。
「大丈夫。エレナは怒んないよ。」
「嘘!だって前怖かったもん!」
「仲良くするように言ったから、、大丈夫。」
仲良くするようにって何?何で別れるって選択肢が無いの?かローゼはアランの考えている事が理解できない。
「私を捨ててエレナの所に行くんだ。」
アランの手を強く握り締め、歩くのをやめその場で俯いた。
「ローゼ。。。」
「だって、そうでしょう?別れてくれないもの。」
ぷぅっと頬を膨らませ拗ねて見せるが
「エレナは妻だ。」とローゼの求める返事をアランがくれる事はない。
なら、私は何?
「やっぱり、私を捨てるんだ。」
目にたっぷりの涙を溜め、うぅっ、、と泣いて見せれば、アランに抱きしめられる。
アランはとても優しい人。
だから、エレナと別れられない可哀想な人。
大丈夫。私、アランの為なら!!何だって出来るから!!
可愛らしい少女が今とんでもなく恐ろしい事を考えている事に気づきもしないアランは、街中の中心だと言う事も忘れ、力一杯少女を抱きしめてやる。
誰が見てるか何て、考えもせず。
この小さな少女は自分が守ってやらないと。そう考えるのだ。
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