浮気してるくせに、旦那様は私を逃してはくれない。

霙アルカ。

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旦那様の溺愛が凄い。

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エレナは、左指にはまる青い宝石のついた指輪を見た後、アランとの結婚までの経緯を思い出しながら、「ふぅっ。」とため息を吐いた。

実家や領地の事を考えれば、エレナはアランと結婚した事に後悔はない。
見目麗しく、侯爵と言う爵位を持っているだけでなく、魔法を使う事ができるアランに欠点など一つもない。
寧ろ、持参金を用意する事も出来きない嫁ぎ遅れの自分と結婚してくれた事に感謝すらしないといけないとエレナは思うのだが、エレナは今も尚この結婚をして良かったのかと、不安になるのだ。

アランは優しく、エレナに尽くしてくれる。
アランに欠点など一つもない。だが、エレナはアランの青い瞳が少し怖かった。
あの目に見られると、どういうわけかエレナの頭の中はアランで埋め尽くされ、アランが好きだと言う気持ちで一杯になってしまうからである。

「エレナ!!見てくれ、今日街に出た際、エレナに似合いそうなドレスを買ってきたんだ!」

勢いよくドアが開いたかと思えば、今し方悩んでいた原因の相手がノックもせずにエレナの部屋へと入ってきた。

入って来たアランの腕には大量の箱が抱えられており、180センチ以上あるだろうアランの背よりも積み上げられた箱を今にも落としそうにゆらゆらと揺らしながら、アランはエレナの元に向かってくるのだ。

「ちょっ、待ってください!!危ないですから!」

荷物のせいで前が見えないのであろう、大量の荷物と共に、アランがエレナの元へと向かう。

エレナもどうしようかと考え、反対から荷物を支えれば、ギリギリのバランスを保っていた様々な形をした箱が、ドサドサと音を立てて、その場に落ち、そのお陰で大量の箱を抱えていたアランと真っ正面で目が合った。

「おはよう、エレナ。君にプレゼントを買ってきたんだ!」

「、、旦那様!私はドレスはクローゼットにあるだけで十分ですし、アクセサリーだってもう沢山貰いましたから。これ以上買ってきては駄目だと何度言えばわかるんですか?!」

エレナと目が合うや否やハキハキとそれはそれは嬉しそうにアランが言う物だから、エレナは声を荒げアランを怒ると、アランは顔を俯かせシュンっと項垂れた。

「エレナに、似合うと思ったんだ。」

エレナよりも大きな体躯をした男が、犬のように項垂れる姿は、アランの整った顔立ちのお陰で可愛らしくすら見えてしまう。

前回も手に持ち切れない程のプレゼントを持ってきたので怒ったのだが、その時も同じようになった為、「気持ちはとっても嬉しいです。」と頭を撫でながら言ってやったのだ。

それがいけなった、、。
そのせいで、アランはまた大量のプレゼントをエレナに買ってきてしまった。
箱の中はまだ見てすらいないが、どれもオシャレや流行に疎いエレナでも知っている程の名店の名が書かれた箱ばかりである。

と言う事は、値段も大分と張るわけで。。。
実家では、お古のドレスを何度も縫い直し使っていたエレナにとって、アランの豪遊っぷりは目に余るものがある。

「旦那様、、旦那様の気持ちは私本当に嬉しいんですよ?」

「なら!!」

優しい言葉をかけると、ぱぁっと顔を綻ばせアランは喜ぶ。
エレナは犬が好きだ。
昔実家で大きなポムと名付けたゴールデンリトルバーを飼っており、エレナに一番懐いていた。

今目の前で喜ぶアランはポムにそっくりで、頭とお尻には耳と尻尾があるのでは無いかと思う程に、可愛らしいとエレナは思う。

だが、ポムに似ているからと言ってここで優しくしたらいけないとエレナはわかっている為、あえてプイッと顔を逸らした。

「私、お金を無駄遣いする人は嫌いです。」

そして、ピシャリと言いはなてば、アランは唇を噛み締め、ショックだと言う事が顔を見ただけで分かるほどに、その顔を歪ませた。

エレナとて、アランに悲しい顔をさせたいわけではない。
だからこそ、心を鬼にしてアランに分かってもらおうとするのだが「私は好きだよ?エレナ?」とアランに言われ、いつの間に腰に手を回されて、エレナは抱きしめられていた。

エレナは突然プロポーズをされた日から今日までに、アランの思いは痛い程に伝わっており、その気持ちを嘘だとは思ってなどいない。

嘘だと思ってないからこそ、アランの重いはエレナに重すぎるのである。
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