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第一章
少女とディー
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「あいら、あいらはどこだ。私の可愛いあいらはどこに居る?」
真っ黒な漆黒な髪を持つ少女は、男の叫ぶ声を聞き、クローゼットの中でクスクスと笑った。
「あいらー、ここか!違うなぁ、、ならここか!」と男はあいらを探しており、あいらはそれがおかしくてクスクスとまた笑う。
クローゼットの隙間を開けてみれば、あいらの大好きな人が直ぐそこであいらを探していた。
好きと言っても10歳のあいらの好きは、恋愛の好きではなく、大切な人へ向ける好きである。
クスクスとあいらが笑っていると、その声が聞こえたのか男はニヤリと笑い、勢いよくあいらの隠れるクローゼットのドアを開けた。
「ここだな!ほーら見つけたぞ。僕の可愛いレディ。」
男はクローゼットの中で笑うあいらの脇に手を挟み、そのまま少女を抱き上げた、だが、、あいらは抱き上げられた瞬間、顔から笑みを消した。
「ディー!!!変な匂いがする!甘ったるくて、、なんか頭がくらくらする!!」
ディーの体からは、何やらいくつかの花を掛け合わせたような匂いがしており、あいらはその匂いに思わず鼻を摘む。
「んん?そうか?俺にはわからないけどなぁ。」と自分の体をクンクンと匂ってみせた。
でも、臭いものは臭いのである。
あいらはバタバタとディーに腕を離してほしくて暴れると、直ぐにその場に下ろしてくれる。
そして、すぐさま彼と距離をとり「ディー!くさいの!!」と大声で言ってから逃げてやった。
「なんだと!!そんな口の悪い子は捕まえて、お仕置きだ!」と追いかけてくるディーからあいらはキャーキャー叫びながら逃げた。
その微笑ましい光景を見た周りの使用人達は二人を見て幸せそうに微笑む。
「ほおら、捕まえたぞ。」
大人の足にかなうわけもなく、あいらはあっけなく捕まった。
ディーは捕まえたあいらを抱き上げ、ニコリと微笑んだ。
太陽に透ける金髪にあいらを幸せそうに見るその目は青く、その造形は驚く程にかっこいいとあいらは思う。
捨てられ、虐められ、慰めものにされかけたあいらを暗闇の中から救い出したのは、ディーだけだった。
ディーはあいらにとって親のような存在であり、希望であり、光であった。
そんな彼を絶望へと追いやる事など、この時のあいらはまだ知らない。
18歳になったあいらは、今でもあの頃の自分を強く恨んでいる。
真っ黒な漆黒な髪を持つ少女は、男の叫ぶ声を聞き、クローゼットの中でクスクスと笑った。
「あいらー、ここか!違うなぁ、、ならここか!」と男はあいらを探しており、あいらはそれがおかしくてクスクスとまた笑う。
クローゼットの隙間を開けてみれば、あいらの大好きな人が直ぐそこであいらを探していた。
好きと言っても10歳のあいらの好きは、恋愛の好きではなく、大切な人へ向ける好きである。
クスクスとあいらが笑っていると、その声が聞こえたのか男はニヤリと笑い、勢いよくあいらの隠れるクローゼットのドアを開けた。
「ここだな!ほーら見つけたぞ。僕の可愛いレディ。」
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「ディー!!!変な匂いがする!甘ったるくて、、なんか頭がくらくらする!!」
ディーの体からは、何やらいくつかの花を掛け合わせたような匂いがしており、あいらはその匂いに思わず鼻を摘む。
「んん?そうか?俺にはわからないけどなぁ。」と自分の体をクンクンと匂ってみせた。
でも、臭いものは臭いのである。
あいらはバタバタとディーに腕を離してほしくて暴れると、直ぐにその場に下ろしてくれる。
そして、すぐさま彼と距離をとり「ディー!くさいの!!」と大声で言ってから逃げてやった。
「なんだと!!そんな口の悪い子は捕まえて、お仕置きだ!」と追いかけてくるディーからあいらはキャーキャー叫びながら逃げた。
その微笑ましい光景を見た周りの使用人達は二人を見て幸せそうに微笑む。
「ほおら、捕まえたぞ。」
大人の足にかなうわけもなく、あいらはあっけなく捕まった。
ディーは捕まえたあいらを抱き上げ、ニコリと微笑んだ。
太陽に透ける金髪にあいらを幸せそうに見るその目は青く、その造形は驚く程にかっこいいとあいらは思う。
捨てられ、虐められ、慰めものにされかけたあいらを暗闇の中から救い出したのは、ディーだけだった。
ディーはあいらにとって親のような存在であり、希望であり、光であった。
そんな彼を絶望へと追いやる事など、この時のあいらはまだ知らない。
18歳になったあいらは、今でもあの頃の自分を強く恨んでいる。
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